思い出に残るとっておきの体験が味わえます
こんにちは、台北ナビです。
ナビが楽しみにしている秋のイベントが今年も行われました。それは、台東県池上郷で行われている芸術イベント「池上秋収稲穂芸術節」!
台湾好基金会や台東県池上郷文化芸術協会などが中心となって行われていて、今年で11回目。収穫期を迎えた金色の稲田に特設ステージを設け、大自然を背景に芸術鑑賞ができるという世界でも類まれなる祭典です。ナビではこれまでに何度もレポートをご紹介してきましたが、みなさんにもぜひ一度は見ていただきたく、今回もその魅力をお伝えします。
汚れのない大地と空気、池上のよさが分かるイベントです
イベントが行われる池上は、台北から特急列車で約3時間半。台湾一おいしいお米が収穫されるという米どころです。
標高3000メートル級の山々が連なる中央山脈と、海岸山脈に挟まれた花東縦谷にある池上は、おいしい天然水と肥沃な大地に恵まれているほか、空気が澄んでいて、朝晩と日中の温度差が大きいなどと、おいしいお米作りに適している土地でもあります。しかも過度な開発が行われていないので、なんとなく懐かしい田園風景が魅力です。
当初は地元の人たちに芸術を知る機会を与えたいとして始まった「池上秋収稲穂芸術節」ですが、ユニークなステージもさることながら、台湾を代表するアーティストのハイクオリティなパフォーマンスが見られるとして、台湾だけでなく世界各地からも鑑賞者が訪れる人気イベントに成長。チケットの販売が開始されるや否や、直ぐに完売してしまうようになりました。今年は2公演合わせて4912席販売され、いずれも完売御礼。
池上の風景と人を映した写真展もありました
池上駅近くにあり、台湾好基金会が運営するアートスペース「池上穀倉芸術館」では、池上で暮らす人や行楽客の姿を写した写真展が開かれていました。
写真に写る人々の笑顔を見ていると、こちらまで心が温かくなって自然と笑顔になってきます。都会と違い、ゆっくりとした時間が流れる池上は、日頃の疲れを癒すのにぴったりな場所なのかもしれません。
今年は台湾人歌手2人のコンサート
毎年異なるアーティストを招いてパフォーマンスが行われるのですが、今年は、台湾原住民プユマ族出身のフォークシンガー陳建年さんと、台湾の民謡や洋楽などを自在に歌いこなす大御所歌手齊豫さんのコンサートが行われました。
公演の直前には記者会見が開かれ、陳建年さんは「純朴な人々、高いビルがなくて、空気がおいしい。こんな場所でパフォーマンスできることは台東人として誇りに思う」と期待を語りました。
また、台東県池上郷文化芸術協会の梁正賢理事長は、「池上秋収稲穂芸術節の時はお正月みたいな賑やかさになる」と観光面で大きな効果があると語り、「毎年池上に帰ってきてもらって、稲田を見ながら、パフォーマンスを観賞してほしい」と池上に親しみを持ってもらいたいと話しました。
記者会見には地元の池上郷長や池上の小学校や中学校の校長先生なども出席。町全体でイベントを盛り上げている雰囲気が伝わってきました。
会場に向かいましょう。毎年会池上中学校の生徒たちがボランティアとして活躍していて、ナビ一行を大歓迎してくれました。生徒にとってみると、道案内やチケット確認、会場とトイレの清掃など、自分に与えられた仕事をきちんとこなしながら、会場を訪れる人たちとのふれあいを通じて、自分自身が成長する場になるんだとか。
聞くところによると、池上中学校の生徒の学力テストの結果は、以前は県内で下から数えた方が早かったらしいのですが、この池上秋収稲穂芸術節のボランティアを始めた頃から徐々に成績が向上しだし、最近では上位に食い込むほど優秀になりつつあるんだとか。記者会見にも登場した台東県池上郷文化芸術協会の梁正賢理事長は「どこまで関連があるか分からないのだけれど」としながらも、「もしボランティアを通じて積極性がましているのなら嬉しいね」と笑います。
そんなボランティアの活躍もあり、肌寒い風が吹き付ける田園もヒートアップ。今か今かと開演を待ち構えます。
陳建年さんは原住民の青年たちとさわやかな歌声を響かせました
カウボーイのような出で立ちで登場した陳建年さん。コーラス&ダンサーとして原住民の青年8人と一緒に、舞台を大きく使ってのびのびと爽やかに「台東心 蘭花情」「Yinabayuddia」「我們是同胞」「美麗的稻穗」「媽媽的花環」「海洋」の6曲を披露しました。
実はナビ、ここで思わず涙があふれてきました。別に悲しかったわけではないんです。漢民族が台湾に移住するよりも遥か前から台湾に暮らしていた原住民。そしてそこに響く歌声。池上の過度に開発されていない田園風景がとってもマッチしていて、感動の涙が流れてきました。
必要最低限の設備しか用意されていない屋外のステージで繰り広げられるパフォーマンス。シンプルだけど深みがある……これこそが台湾の本来の姿なのかなと想像を張り巡らせながら音楽に酔いしれました。
実は陳さんは元警察官。警察学校を卒業して初めて赴任した場所が会場の近くで、とても思いいれのあるステージになった模様。
と、ここで思わぬ展開が。予め用意されていた歌を歌い上げた陳さんですが、「僕も田園風景を見ながら歌いたいなぁ」とポツリ。司会を務めた曾寶儀さんとおもしろがった観客の大歓声を受けて、観客にお尻を向けて追加で1曲歌い始めたんです。思っていなかった突然のサプライズに会場は大盛り上がり。特別な場所にあるステージは、舞台上でパフォーマンスするアーティストにもユニークなことをさせてしまう特別なパワーがあるんだなと感じました。
ジャンルにとらわれず自在に声色を操る齊豫さんの歌唱に会場ウットリ
続いては齊豫さんの登場。日本人にはあまり知られていない方ですが、台湾のおじ様、おば様世代から絶大な人気を誇る歌手で、多くの人の記憶に残るメロディーを多数持つ大御所です。女性陣から「キャー」と黄色い完成が上がったのも印象的でした。
ヒラヒラと風になびくドレスを身にまとい、存在感は抜群。さきほどの陳建年さんの爽やかさとは違い、しっとりと聞かせる歌声。還暦を過ぎているというのに声量の大きさと音程の高さは驚くばかり。冷たい強風が吹きつけるステージ上でもしっかりと歌い上げ、観客をひきつけました。
「夢田」「船歌」「橄欖樹」「走在雨中」「你是我所有的回憶」「最愛」「民歌組曲」「九月的高跟鞋」「Angel」「夢」「一條日光大道」の11曲と、アンコールの「Amazing Grace」を披露しました。
ステージ後にインタビューに応じた齊さん。「やっと池上に来られた」と喜びを語り、「緊張しやすい性格なので、初めはドキドキして観客の反応が怖かったけれど、きょうの観客は私と同じくらいの年齢層で、一緒に手を叩いたり歌ったりして楽しかった」。舞台装置や照明が必要最低限のステージについては「自然の感じは歌ってて気持ちよかった」と感想を語ってくれました。
帰りも中学生ボランティアが元気に送り出してくれます
鳥のさえずりや風の音、農業用水の流れる音だけが聞こえる池上の田園で観賞する台湾の音楽。単純にパフォーマンスの素晴らしさを楽しむ以外に、自然の美しさも同時に噛み締められる素敵なステージでした。
自然界で人間はちっぽけな存在。広々とした池上の稲田の中で、ステージはとても小さいものなのですが、自然を味方につければ、人々を感動させるパワーを持っているんだなと新しい表現の形を感じられたイベントでもありました。
台湾らしさを感じられる「池上秋収稲穂芸術節」。もちろん2020年も行われる予定です。ぜひみなさんもイベントの開催日時に合わせて池上をはじめとする台東の旅を楽しんでみてはいかがですか?
以上、台北ナビがお伝えしました。
上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。
記事登録日:2019-12-04