今年も原住民語音楽が強し!日本人にも人気のある「盧廣仲」やS.H.E「田馥甄(Hebe)」も賞を受賞しました
こんにちは、台北ナビです。
今年の第32回金曲奨(ゴールデン・メロディー・アワード/GMA)は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、6月26日から8月21日に延期され、細心の感染防止対策措置がとられる中で行われました。
その一環として、今年は現場取材できるメディアが制限され、台北ナビは残念ながら抽選外。テレビでの鑑賞となりましたが、授賞式モニターとバックステージの受賞者スピーチを行ったりきたりする現場より、むしろじっくり授賞式を堪能できたような気がします。
思い起こせば昨年、会場に並ぶゲストたちが揃って黒いマスクをしている姿を特殊に感じたものですが、また今年も同じ光景を見ることになるとは……。そんな思いで授賞式をご覧になった方も少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。
来年こそは、いえ一日も早くコロナ禍が収束することを願いながら、金曲奨リポートをお届けします。
レッドカーペッドを彩る2021年注目のアーティストたち
まずは、見るだけで目の保養になりそうな、レッドカーペットを彩るアーティストの模様からご紹介します。現場不在のナビはゲストの言葉で初めて知りましたが、今年は例年よりレッドカーペットの距離が短かったそう。でも画面に映し出された華やかさは、少しも色褪せていませんでした。華やかなファッション・コレクションをどうぞ!
☆プレゼンターやパフォーマンスのゲスト
金曲奨常連の「滅火器(Fire EX.)」はパフォーマーとして参加。以前は、身が切られるような鋭い空気を発していた雰囲気が、気のせいか丸くなりました?
☆原住民語関連のアーティスト
え、このイケメンは誰?原住民語歌手賞ノミネート、タロコ族の「Lowking姚宇謙(ヤオ・ウーチエン)」です。ナビが知る限り、原住民語歌手では異色なタイプ
|
|
原住民語歌手賞と原住民語アルバム賞ノミネート、パイワン族の「達卡鬧(Dakanow)」。渋カッコいい〜
|
白い衣装を着ているのが「Sanpuy(桑布伊)」
|
|
「陳世川」
|
アルバム『得力量 pulu'em』が年度楽曲賞、原住民語アルバム賞、原住民語歌手賞、作曲家賞、アルバムプロデューサー賞、アルバムデザイン賞、レコーディング賞と驚異の8部門ノミネート!制作チームそろっての登場です。白い衣装で一際目立つのが、我らが「Sanpuy(桑布伊)」、これぞ歌の神のオーラです。余談ながらアルバムデザインの「陳世川」、イケメンじゃないっすか? |
原住民語アルバム賞とバンド賞ノミネートの「漂流出口(Outlet Drift)」。ボーカル「Putad」の小麦色の肌が白い衣装に映えてます!サンダルを脱いで裸足でレッドカーペットを歩くも素敵♡
☆台湾語関連のアーティスト
台湾語女性歌手賞ノミネートの「朱海君(ジュー・ハイジュン)」。羽のようなスリーブでアカペラ披露
|
|
台湾語女性歌手賞ノミネートの「蔡家蓁(ケリー・ツァイ)」。シックなモノトーン、深いスリット越しに見える右足がセクシー
|
台湾語男性歌手賞と台湾語アルバム賞にノミネートの「浩子(ハオズ)」は、台湾語女性歌手賞歴のある「詹雅雯(ジャン・ヤーウェン)」と、テレビで共に司会者を務める仲良しの「乱彈阿翔(ルアンタン・アーシアン)」と共に登場。「乱彈阿翔」は今回プレゼンターを務めます
メンズライクなスーツで現れたのは「曹雅雯(オリビア・ツァオ)」。アルバム『自本』で、台湾語女性歌手賞と台湾語アルバム賞、作曲家賞、アルバムプロデューサー賞、うち『若是明仔載(feat. ?te)』は年度楽曲賞にもノミネートされています。ピンクカラーは、「?te」とお揃いで合わせたのかな
|
|
台湾語女性歌手賞ノミネートの「黃妃(ホアン・フェイ)」。胸元が深く開いたシックなパンツスーツで、ベテラン感たっぷり
|
☆客家語関連のアーティスト
客家語アルバム賞と客家語歌手賞ノミネートの「謝宇威(シエ・ユーウェイ)」。繊細な声とおしゃれなサウンドが魅力
|
|
客家語アルバム賞、客家語歌手賞にノミネートの「春麵樂隊(ChuNoodle)」のメンバーはリンクコーデでしょうか。鮮やかでおしゃな装いが客家語シーンの新しい風を感じさせます
|
☆新人賞のアーティスト
☆バンド・ボーカルグループ関連のアーティスト
ボーカルグループ賞ノミネートの「尋人啟事(The Wanted)」。アカペラグループです
|
|
ボーカルグループ賞ノミネートの「大象體操(Elephant Gym)」。髪の毛、よく見ると全員赤いカラーでコーデしてるんですね
|
ボーカルグループ賞ノミネートの「追風少女FALI」。なんと全く同じ生年月日という3人。アミ族の伝統的な旋律に、レゲエ、ジャズ、ブルースなどさまざまなスタイルをフュージョしたスタイル
|
|
ボーカルグループ賞ノミネートの「守夜人 Night Keepers」
|
ナビも大注目中の「告五人(Accusefive)」。年度楽曲賞、バンド賞、作曲家賞にノミネート。コミック『お仕事です!』の実写化台湾ドラマ『她們創業的那些鳥事』の主題歌『在這座城市遺失了你』で一気にブレイク。ナビは『披星戴月的想你』も好きです~♡
☆華語関連のアーティスト
年度楽曲賞、華語男性歌手賞、作詞家賞ノミネートの「瘦子E.SO」は、これまでとイメージが違うシックなスーツがかっこいい!頑童MJ116のメンバーと一緒のときはにぎやかでしたが、ソロでも十分な存在感と色気~!
|
|
華語女性歌手賞ノミネートの「蘇慧倫(ターシー・スー)」は、柔らかなトーンと素材のドレスがとっても似合っています。実はナビ、○○年前の留学中にヘビロテしていたのが彼女の曲でした
|
☆その他部門のアーティスト
インストゥルメンタル部門のアルバム賞ノミネートの「异境樂團(Spectro 7)」。メンバーの呉政君は、アルバムプロデューサー賞にもノミネートされているほか、バンド賞ノミネートの生祥樂隊のメンバーでもあります
|
|
インストゥルメンタル部門のアルバムプロデューサー賞、作曲家賞、レコーディング賞にノミネートの「謝燕輝」、「張德銘」、「單為明」
|
「蘇慧倫(ターシー・スー)」に提供した『安和』で、作曲家賞ノミネートの「HUSH」。彼も金曲奨常連ですが、奇抜な衣装が密かに楽しみです。今年はラコステのスーツに、レモン色の羽織り物は台湾人デザイナー「Weisheng Paris」のものだとか。人魚にインスパイアされたのかな?
金曲奨ってどんな賞があるの?
今さら感が否めませんが、これまであえて触れていなかった気がするので、今一度金曲奨の賞について軽くおさらいしたいと思います。
金曲奨の最も台湾らしいとも言うべき特徴は、「優秀歌手賞」および「アルバム賞」において、台湾で使用されている言語別に賞が設けられていることでしょう。そういった縛りはもうなくすべきという議論も行われていますが、今年も例年どおり前述の賞は4つの言語別に賞が設けられました。まず台湾のオフィシャル言語で一般にマンダリンとも呼ばれる言語は今年から「國語」改め「華語」、それから台湾で最も多数の人が使用するローカル言語「台湾語」、客家人の「客家語」、そして各原住民語の言葉を包括する「原住民語」です。金曲奨最高の栄誉ともされる年度アルバム賞は、それぞれの言語でノミネートされた全てのアルバムから中から選ばれます。
そのほか作詞・作曲家賞、編曲家賞、アルバムプロデューサー賞、アルバムデザイン賞、さらにインストゥルメンタル部門も同様にアルバム賞、作曲家賞など、それぞれに特化した賞が設けられており、その数は全部で28になります。賞の数だけでもかなり多いのですが、加えてゲストによるパフォーマンスも授賞式に花を添え、名実ともに台湾で最高峰を誇る音楽アワードといえるでしょう。
これぞ台湾!進化する多言語音楽の競演
まずトップバッターは
原住民語の授与です。プレゼンターは、自身もパイワン族のシンガー・ソングライター「
Matzka(瑪斯卡)」。彼の口から発表された最優秀原住民語歌手賞は、『
得力量 puluem』の「
Sangpuy(桑布伊)」!
初めてライブで「Sangpuy」の歌声を聞いたときは、自然と共鳴するような神々しい歌声に度肝を抜かれたものですが、彼の音楽は「Matzka」が言った「音楽に言葉は関係ない」ことを証明するかのごとく、まさに言語を超えた感動を与えてくれます。今回の受賞はすでに三度目、アルバムをリリースすれば必ず金曲奨の何がしかの賞を受賞するという、今や原住民を代表する歌手になりました。
「Sangpuy」は、受賞スピーチで今夏公視テレビで放送された叙事詩ドラマ『斯卡羅 SEQALU:Formosa 1867(原題)』に触れながら「いまだ認められない原住民の土地の権利、および正名について、皆さんにも関心を持ってほしい」と、原住民の権利回復について訴えました。
最優秀原住民語アルバム賞を受賞したのは、「
漂流出口」の『
海女 Lady of the ocean』。台東に暮らすアミ族の兄弟、それから従兄弟で結成する3人のバンドで、魂を揺さぶられるようなボーカル「Putad」の高音が印象的です。ちょっと先出ししてしまうと、バンド賞にもノミネートされています。
現在認定されている原住民は16部族。部族ごとに言語や文化も異なり、その点だけでも多様なのに加え、昨今は原住民的な要素と現代的な要素を掛け合わせた多彩な音楽を高い完成度で表現するアーティストがますます増え、本当に目が離せません。
「音楽に言葉は関係ない。一生かけて自分を確立するのが重要な課題だ。私が創作する意義でもある」と素晴らしい前振りをした後で、「原稿に書かれていたものを読んだ」と言っていたのは照れ隠し?
|
|
開口一番の「神と祖先に感謝します」という言葉に、原住民のクリスチャンらしさを感じます
|
自らを「民謠實驗搖滾樂隊(フォーク・エクスペリメンタル・ロック・バンド)」と呼ぶ漂流出口の面々。これからどんな新しい音楽が生まれるのかの楽しみ
台湾語部門では、「曹雅雯」が『自本』で最優秀台湾語女性歌手賞と最優秀台湾語アルバム賞のダブル受賞を果たしました。『自本』は、そのほか年度楽曲賞、アルバムプロデューサー賞、作曲家賞、作詞家賞、編曲家賞と計8部門でノミネートされており、完成度の高さがうかがえます。
そして最優秀台湾語男性歌手賞は、『
拾歌』の「
許富凱(ヘンリー・シュー)」。実はナビが金曲奨の取材を始めた8年来、2017年と20年を除き毎年ノミネートされていた「許富凱」。プレスルームの台湾人記者に人気があり、またファッションもユニークなので、すっかり受賞経歴があるベテランさんかと勘違いしていましたが、意外にも今回が渾身の初受賞でした。7度目の正直とあって、受賞後しばらく言葉が出ない様子や「この瞬間を7年待った。席から登壇するまで、これまでのことが走馬灯のように思い浮かんだ」との受賞スピーチに、ナビも思わずもらい泣き。ナビの敬愛する伍佰先生は惜しくも賞を逃しましたが、今回ばかりは「許富凱」に心からの祝福を送ります。
台湾語部門のプレゼンターは、自身も台湾語歌手の「羅時豐(ルオ・シーフォン)」と、今年の人気ドラマ『天橋上的魔術師(歩道橋の魔術師)』に主演した「孫淑媚(スン・シューメイ)」。「羅時豐」は『感冒用斯斯~♪』のフレーズのインパクトが強い斯斯感冒のCMで歌を歌っている人ですよ~!最近はYouTuberとしても人気を博しています
台湾における台湾語話者の比率が高いこともあり、これまでも台湾語楽曲は広く親しまれてきましたが、昨今ヒップホップやR&Bなど新たなジャンルでも人気を博し、多様化してきています。歌手賞が一つの客家語と原住民語に対し、華語と同様、男女別に賞が設けられていることでも台湾語の裾野の広さがうかがえます。
そして、最優秀客家語歌手賞は『當太陽升起時』の「羅文裕」。二度目の金曲奨受賞で、『當太陽升起時』は太陽エネルギーでレコーディングされた台湾初のアルバムだそうです。
最優秀客家語アルバム賞は「春麵樂隊」の『到底』が受賞。恥ずかしながらナビ、これまで客家語ミュージックはノーチェックだったのですが、カラフルでおしゃれな「春麵樂隊」を知り俄然興味がわきました。柔らかなボーカルに、ギター、クラリネット、バスクラリネットが絡み合って癒やされます。客家語ミュージックにも新世代が育っているようです。
プレゼンターは、昨年の客家語部門で受賞した「米莎」
|
|
受賞スピーチで「客家語の曲はいいよ!」とアピールする「羅文裕」。確かに客家語って、フランス語のようなふわっとした響きがあります
|
アルバムの中の『到底到底了到底』は、新ドラマ『2049-刺蝟法則』の挿入歌でもあります
若き才能、ニューフェイス続々現る
「黄宣」率いる「YELLOW」や「李友廷」といった注目のアーティストが名を連ねる中、プレゼンターの「ØZI」が「
人生で一度きりの特別な賞」として発表した
最優秀新人賞は、『
A Bedroom of Ones Own』の「
?te(壞特)」。審査員曰く、テクニック、爆発力、ポテンシャルに秀でた「YELLOW」も最終選考に残ったけれど、最後は「?te」のエモーショナルな表現力と個性に軍配が上がったとのこと。
今年、医学部を卒業したばかりという彼女は、小さく震える声で「20歳で一度人生に迷い休学したことがある。振り返ってみることは、私にとって人生を変えるきっかけになった。皆さんも心の中の恐怖に向き合って」と、不安を抱える人への向けたメッセージに心を打たれました。
2019年最優秀新人賞の「ØZI」がプレゼンター。少し英語なまりの中国語がセクシー
|
|
その尖ったファッションとは逆に戸惑った様子が初々しく、サングラスに隠された素顔にも興味をそそられます
|
最優秀バンド賞を受賞したのは「
落日飛車(サンセット・ローラーコースター)」。ボーカルの曾國宏が「今日タクシーの運転手さんに行き先を聞かれたので『金曲奨に参加する」と答えたら、『私も昔はバンドでベースを弾いていたよ。十数年後は君たちも私と一緒に車(タクシー)を運転しているかもしれないね』と言われた。でもいつか本当に夕陽を背負った車で世界中に行きたい。その車の名は『落日飛車(サンセット・ローラーコースター)』」と会場をわかせる、洒落のきいたスピーチにうなりました。
台湾のみならず海外でもシティポップバンドとして人気が高く、日本でもフジロックに出演歴のある「落日飛車」は。音楽好きな方はご存じかも
プレゼンターは、「乱彈」の元ボーカルで三金(金曲奨、金馬奨、金鐘奨)コンプリートの「乱彈阿翔」と、「四分衛」のボーカル「阿山」
ちなみに今ナビがハマっている「告五人」は、バンド賞のほか年度楽曲賞、作詞家賞、バンド賞にノミネートされていたのに、一つも受賞できなかったのが残念!一時ヘビロテしてた「在這座城市遺失了你」、ぜひ聞いてみてください〜!!
台湾で活躍する日本人ギタリストの「大竹研」やベーシストの「早川徹」、ドラマーの「福島紀明」がいる「生祥樂隊」も今回は残念ながら受賞ならず。次回に期待です。
そして最優秀ボーカルグループ賞は「尋人啟事」。女性3人&男性2人のアカペラユニットで、金曲奨初ノミネートにして初受賞という快挙です。この賞にノミネートされるのが3度目となる「原子邦妮」は本当に残念でした。
「萬芳」と「蘇慧倫」を二人一気出しとは、なんて豪華なプレゼンター!90年代に大ブレイクした二人の組み合わせに興奮したのは、きっとナビだけではないはず
インストゥルメンタル部門は以下のとおり。
「
五香放克樂團」の『
派仔之遊』が、
ベストアルバム賞と
ベストレコーディング賞、「
hirsk」の『
噪噪噪噪切』が
ベストアルバムプロデューサー賞に輝きました。
インストゥルメンタル作曲賞には『派仔之遊』の中から『苦樂』と『大理人家』の2曲がノミネートされ、うち『苦樂』が見事受賞。「五香放克樂團」、要注目です!
中国やアメリカ出身者もいる「五香放克樂團」。コロナ禍のため、ほとんどが各人の自宅でレコーディングしたとか
|
|
香港人の「hirsk」 は出席できず、メンバーが代理出席
|
ベスト・ヴォーカル・レコーディング賞は「孫盛希」の5枚目のアルバム『出沒地帶 (Where Is SHI?)』が受賞。実はこのミキシング担当の「單為明」は、インストゥルメンタルの『派仔之遊』のミキシングと同一人物。テクニカル面の凄さはナビのような素人にはわかりづらいですが、ひっそりダブル受賞されていて実は隠れた快挙では?
作詞家賞は『無人知曉』の「葛大為」、編曲家賞は「曹雅雯」『鹹汫』の「鍾興民」が受賞しました。
そして、二人のイケメンプレゼンター「林柏宏」と「陳昊森」が発表したのは最優秀アルバムデザイン賞と、最優秀ミュージックビデオ賞。それぞれ「Soul Of Ears」の『ZETA』、「杜振熙」の『家常音樂』が受賞しました。
「Soul Of Ears」の『ZETA』で最優秀アルバムデザイン賞を受賞した「蕭青陽」は会場に来られず
|
|
『家常音樂』で最優秀ミュージックビデオ賞を受賞した「王宗欣」
|
作曲家賞は「蘇慧倫」のアルバム『面面』の『安和』を作曲した「HUSH」!彼は何度もノミネートされていますが、受賞は今回が初めて。「蘇慧倫」に対して「あなたの存在がこの曲を完璧にした」と述べました。
「陳建騏」
シングルプロデューサー賞は、『麵麵』の「方大同(カリル・フォン)」。ナビが大好きな「周杰倫」、日本人を父に持ち、以前は「盧廣仲」のライブでもおなじみの香港人「荒井十一」もノミネートされていましたが、今回は「
方大同」に受賞を譲りました。
今年はコロナ禍で、台湾在住者以外はほぼ出席を見合わせましたが、「方大同」もその一人。ビデオメッセージでの受賞スピーチとなりました。ちなみにコロナ禍に作られた曲『麵麵』は、麺料理のレシピがそのまま歌になっていて、聞くと麺が食べたくなります。アルバムプロデューサー賞は『
無人知曉』の「
陳建騏」。このアルバムの歌い手である「田馥甄(Hebe)」も、とても嬉しそうでした。
今年『給你們 Dear All』で最優秀華語女性歌手賞など多くの部門でノミネートされていた「萬芳」には、審査員賞が授与されました。
今年、豪華絢爛なステージを盛り上げたゲストの面々
授賞式のオープニングを務めたのは、昨年トリプル受賞を果たした「阿爆」
やっぱり大好き「滅火器」!
金曲奨コンビの「彭佳慧(ポン・ジアホイ)」と「羅文裕」
昨年、最優秀新人賞に輝いた「持修」
「黃宣」と「孫盛希」のジャズナンバー『不開燈俱樂部』、『Give it to me』は、モノクロ映画から始まり最後はポスターの一枚のようなビジュアルで、視覚的にも最高にクール
「黃宣」は編曲家賞、シングルプロデューサー賞、新人賞と3つの賞にノミネートされていながら、今年は受賞がありませんでしたが、今後絶対来る若き才能です。要チェック!
ソーダグリーン改め「魚丁糸」は、『我就奇怪』『空氣中的視聽與幻覺』『終點起點』を披露
背景のステンドグラスに青峰の繊細な声が響いているようで幻想的なステージに
今年、特別貢献賞を受賞した、C-popのゴッドファーザー「羅大佑(ルオ・ダーヨウ)」のメドレーをカバーしたのは「黃韻玲(ケイ・ホアン)」、「告五人」、「家家(ジアジア)」、「老王樂隊(Your Woman Sleep with Others)」、「金智娟(ジン・ジージュエン)」
老王樂隊(Your Woman Sleep with Others)
|
|
黃韻玲(ケイ・ホアン)
|
告五人
最後は満場スタンディングの中、客席にいた「羅大佑」が登場しさらなる大喝采に
年度アルバム賞は、2年連続でパイワン族歌手
そしてついに大詰め!まず年度歌曲獎は、我らが「盧廣仲(クラウド・ルー)」の『刻在我心底的名字』がゲット!ええ、そうでしょうとも。映画『刻在你心底的名字 (君の心に刻んだ名前)』が公開されてからのこの1年、台湾ではどこに行ってもこの神曲を耳にしたので、大納得の受賞です。
続く華語部門では、「林俊傑(リン・ジュンジエ)」、「韋禮安(ウェイ・リーアン)」ら強豪をおさえて、「蛋堡」こと「杜振熙」が最優秀華語男性歌手賞に。さらに「蛋堡」の『家常音樂』が最優秀華語アルバム賞でダブル受賞を果たしました!
近年「LEO王」などヒップホップの若手勢が大きな賞を獲り台湾音楽界の変化を感じさせましたが、そのベースを築いてきた「蛋堡」が受賞するのは当たり前というより、むしろ遅すぎたくらいかもしれません。
審査員の講評によると、華語男性歌手賞の選考は一番難航し、「韋禮安」、「呉青峰(ウー・チンフォン)」が最後まで競った結果、ラップにリズム感があり、すでに模範を確立しているという点で、「蛋堡」に軍配が上がったそうです。今年は台湾初のヒップホップ・オーディション番組『大嘻哈時代(THE RAPPERS)』がスタートするなど、ますます勢いを増すヒップホップ・ブームを反映した結果ともいえるかもしれません。
そして女性最優秀華語女性歌手賞は、「Hebe(ヒビ)」こと「田馥甄」!
審査員によると、「萬芳」と「譚維維」も最終選考まで残り、結論まで30分以上かかったそうですが、アイドルから脱皮して成熟した風格を備えた「田馥甄」が見事トロフィーを勝ち取りました。今回のアルバム『無人知曉』で悲願のソロ初受賞です。「S.H.E」の後、ソロとしてもずっと第一線で活躍してきましたが、受賞はやはり並大抵ではないのですね。
「子どものころ、お風呂場で歌を歌っていて、母親にまだあがらないの?と叱られました。お母さん、水道代は無駄にならなかったよ!」と喜びを表しました。
最後のプレゼンターは昨年同賞に輝いた「阿爆(阿仍仍)」に加えて、今年のオリンピックで台湾を熱狂させた二人、重量挙げ女子59キロ級の金メダリスト・「郭婞淳」と、柔道男子60キロ級の銀メダリスト・「楊勇偉」が登場すると、会場は驚きと大歓声に湧きました。
そして今年、金曲奨最高峰ともいえる
年度アルバム賞を受賞したのは「
Sangpuy」の『
得力量 puluem』!!!
「阿爆」が叫ぶ勢いで発表しましたが、テレビの前のナビも思わずガッツポーズ。 それほど『得力量 puluem』は素晴らしい出来なんです。「Sangpuy」は多くの原住民が登壇した「阿爆」のオープニングに感動したとし、「わたしたち原住民は、皆さんの関心と力が必要です。台湾のすべての民族が互いに支え合い、励まし合い、尊重し合うことを願います。コロナ禍に直面し、台湾がさらに美しく、さらに多くのパワーを得て(得力量)、さらに団結しますように」と、アルバムタイトルをからめた受賞スピーチを述べました。本当におめでとう、「Sangpuy」!
ナビもその歌声に惚れ込んだSangpuy(桑布伊)
『得力量 puluem』が原住民語アルバム賞を逃しながらも年度アルバム賞を受賞した理由について、審査員は「各言語のアルバム賞は、それぞれ異なる音楽的な背景、要素、独自の伝統があり、現在と今後のトレンドの体現を審査基準とする一方、年度アルバム賞は言語を超え、テクニックとメッセージ性が重視され、その年の精神が伝えられているかが問われる」と説明しました。
長年、華語が圧倒的な強さを見せてきた台湾音楽界ですが、最優秀年度アルバム賞は2年続けて原住民語アルバムが受賞しました。これは原住民語ミュージックが、もはや一時の流行や限られたファンの間だけでなく、台湾で広く受け入れられたことを示す結果といえるでしょう。多くの賞にノミネートされていた「YELLOW」の「黄宣」も原住民ですし、「漂流出口」、「žž瑋琪」、「Lowking姚宇謙」、「追風少女FALI」といった原住民語で発信する才能あるアーティストが次々と頭角を表しており、原住民語ミュージックがこれまで以上に存在感を強めています。今後もさらに新しいアーティストが現れる予感に期待しかありません。
一方、四言語の中では、これまで正直一番存在感が薄いといわざるを得なかったのが客家語ミュージック。とはいえ『台北歌手』『茶金』などを始めドラマ作品では広く注目される客家語作品が出てきており、その影響がじわじわ客家語ミュージックにも及んできているのではないかと感じさせてくれたのが、今回の客家語アーティストたちでした。
そもそも金曲奨は「新しい才能を発掘する」というコンセプトに基づき、メジャーな著名アーティストだけではなく、インディーズからも積極的にノミネートします。おかげで毎年才能あるアーティストを新たに知ることができるわけですが、インディーズにそれほど詳しくないナビには、もはや台湾のメジャーとインディーズの区別がつかないほどその境界線は曖昧になりつつあります。金曲奨は、それだけ幅広く選考の範囲を広げ、埋もれた才能にスポットライトを当て世に知らしめる役割を果たしているのでしょう。こうした背景が、よりそれぞれの音楽性を追求する原動力につながり、台湾の多彩な音楽の発展を後押しする一因となっているのかもしれません。欧米や日本、韓国といった海外文化を柔軟に吸収しながらも、ほかの国にはない独自の発展を遂げつつある台湾音楽シーンの未来に、期待は膨らむばかりです。
以上、台北ナビ(二瓶里美)でした。