侍ジャパン来台記念 注目の野球映画「KANO」を詳しく紹介します!

日本統治時代に甲子園で準優勝した、嘉義農林高校野球部の物語。
日本と台湾、野球がつなぐ両国の絆を感じる感動作です

「勝ちたいと思うな、負けられないと思え」という言葉が印象的なポスター

「勝ちたいと思うな、負けられないと思え」という言葉が印象的なポスター

こんにちは、台北ナビです。

2014年2月27日、台湾を愛する日本のみなさんにぜひ見ていただきたい映画が台湾で公開されます。タイトルは「KANO」。日本統治時代に起きたドラマを描く野球映画で、「海角七號~君想う国境の南」の魏徳聖監督がプロデューサーを務め、彼の日台三部作のトリを飾る作品としても注目されています。今年3月に開催される大阪アジアン映画祭のオープニング作品にも選ばれました!

「日台」「野球」といえばまだまだ記憶に新しいのが、今年3月のWBC日台戦です。あの感動をもう一度!と11月8日から10日まで、侍ジャパンが台湾代表と強化試合を行うことになりました。15日~20日には台中でアジアシリーズが開催され、台湾から統一ライオンズと義大ライノズが、日本からは東北楽天イーグルスが参戦します。
映画の公開はまだ先ですが、この機会にぜひ映画「KANO」について詳しく知っていただきたい!というわけで、今回は台湾と野球をこよなく愛するナビが映画「KANO」を詳しくご紹介します。

台湾野球史に刻まれた奇跡のストーリー

映画の舞台は1920年代、台湾が日本政府に統治されていた時代に遡ります。この時日本の一部だった台湾の高校には全国中等学校優勝野球大会(のちの全国高校野球選手権)、いわゆる「甲子園」への出場資格があり、球児たちは台湾の地から夢の舞台を目指していました。しかし実態はどの高校もレギュラーのほとんどを日本人が占め、常勝チームとして甲子園に行くのは、いつも日本人のみで構成された「台北商業高校」だったのです。

ところが1931年、台湾予選大会に劇的な出来事が起きました。日本人と本土の台湾人、原住民による混合チーム「嘉義農林高校」の野球部が甲子園出場を決め、全国大会でなんと決勝戦にまで勝ち進んだのです!

この奇跡の背景には、近藤兵太郎という日本人監督の存在がありました。日本からやってきた鬼コーチによるスパルタ式の練習は、弱小チームをどんどん変えていきます。「KANO」とは、嘉義農林の略称「嘉農」を日本語読みした当時の呼び名。映画はタイトルどおり、近藤兵太郎を中心にしたチームの成長と、栄光の軌跡を描きます。

制作タッグが組まれるまで

右が今回プロデューサーをつとめる魏徳聖監督、左が馬志翔監督

右が今回プロデューサーをつとめる魏徳聖監督、左が馬志翔監督

WBCでの熱戦で日台野球の歴史にスポットが当たり、にわかに注目を集めた嘉義農林高野球部ですが、プロデューサーの魏徳聖は、すでに10年以上前からこの映画の構想を温めていたと言います。
2012年の台湾映画賞を総ナメにした大作「セデック・バレ」に関する膨大な資料を集めている際、魏監督は偶然に嘉義農林野球部の快挙の歴史を知りました。「台湾の野球史にこんな1ページがあったとは!」とすぐに脚本に取りかかりますが、史実確認などに時間がかかり、実に6年の歳月がかかりました。

「セデック・バレ」のプロモーション中、キャストの馬志翔にその脚本を見せたところ、野球経験のある馬志翔は大いに感動したそうです。「一番重要なのは、いい素材を最適の方法で完成させること。馬志翔は優秀な演出家であり、野球の経験がある」。魏監督はそう考え、馬志翔にメガホンを託すことにしました。
今回メガホンを取る馬志翔監督も野球経験者。試合のリアリティに注目

今回メガホンを取る馬志翔監督も野球経験者。試合のリアリティに注目

野球部メンバーには一般オーディションの合格者を起用。「我々が撮るのは、甲子園に出場する野球チームだ。野球の技術がなければ説得力がない」という魏プロデューサーのこだわりから、すべて現役の野球少年が選ばれました。演技未経験の彼らはクランクインの2カ月以上前から演技指導を受けたそうです。指導に当たったのは台湾で活躍する俳優の蔭山征彦さん。
「海角七號」でナレーションをつとめた方です。制作者側も日台混合チームで奮闘していたんですね。

主演に永瀬正敏。日本からの豪華キャストにも注目

もう一つの見どころは日本からの豪華キャスト陣です。監督の近藤兵太郎には、デビュー30年を迎えた永瀬正敏さんが扮しています。1993年に公開された「アジアンビート5 台湾篇 シャドー・オブ・ノクターン」のプロデューサーだった林海象監督の薦めもあったそうですが、「台本や映画の元となった実話、登場する人々に感動し、力を秘めたストーリーだと思った」と出演を決めた永瀬さん。演技一筋のストイックな姿は、野球に人生を賭けた近藤監督となんとなく重なります。
鬼のようなスパルタ指導の一方で、当時は暗黙の格差があった日本人と台湾人に分け隔てなく接したという近藤兵太郎。深みのある野球人を、永瀬さんがどう演じるのか楽しみです。
近藤の妻を演じるのは、こちらも実力派の坂井真紀さん。
永瀬さんとはデビュー作「ユーリ」以来の共演となります。2人の娘を育てながら、野球指導に打ち込む夫を支えた近藤監督の妻。嘉農野球部におにぎりを差し入れていたという話も残っているそうです。栄光を陰で支えた日本人妻の、古風な魅力もまた見どころですね。
そして嘉義農林野球部が活躍した同じ時代、台南にダムを作り英雄となった八田與一技師役には大沢たかおさん。
大沢さんは映画「藁の楯」撮影のため台湾に滞在した際、台湾をすっかり気に入り、また八田技師に強い興味を持ったそうです。今回のキャスティングはなんと大沢さん側から制作サイドに連絡して志願したのだとか!演技派の大沢さんが、日台友好の象徴的人物をどのように表現するのか期待が高まります。
もう一人の日本人キャストは、ロンドンを拠点に活躍するベテラン俳優・伊川東吾さん。馬志翔監督自らが彼の演技にほれ込んでオファーし、近藤の恩師を演じることになりました。国際経験豊富な伊川さんは映画の中はもちろん、撮影現場でもムードメーカーとして貴重な存在だったそうです。
野球ファンのみなさんに向けて特筆すべきは、試合シーンの実況を、文化放送ライオンズナイターでおなじみの斉藤一美アナウンサーが担当していること。長年のラジオ中継で鍛えたテンポと声は、まるで生中継を見ているような臨場感を醸し出してくれることでしょう。

映画を見たらぜひロケ地の台湾南部へ

阿里山鉄道の起点・北門駅

阿里山鉄道の起点・北門駅

見どころの多い本作ですが、ナビ的ポイントとして加えたいのは、やはり物語の舞台となった場所、台湾南部の嘉義市です。日本統治時代には阿里山の林業で栄えたところで、世界3大森林鉄道の阿里山鉄道の起点・北門駅も有名な観光スポット。今も日本時代の建物が多く残るノスタルジックな街は、現在では気鋭の作家が作り出すアートと融合し、新しい魅力あふれる場所となっています。

残念ながら1931年当時の街を再現したオープンセットは強度不足で取り壊しになってしまいましたが、嘉義農林高校は現在嘉義大学となり、今も野球部が練習に励んでいます。さらに南へ1時間半ほど車を走らせれば、八田與一技師が生涯をかけて造り上げた烏山頭水庫(ダム)もあります。台北以外の都市を旅したいと思っている方は、ぜひこの機会にロケ地・台南を訪れてみてはいかがでしょうか。

※阿里山鉄道の運行状況は台湾鐵路管理局の公式サイトでご確認ください。

台湾プロ野球観戦もおすすめです


さらにおすすめしたいのは、映画の後の野球観戦。台湾のプロ野球を生で観戦してみると、元プロ選手の日本人コーチが指導していたり、観客席からジェット風船が飛ばされたりと、プレーだけでなく文化的にも日本野球と通じるものを感じさせてくれます。「KANO」を観た後には、そうした光景がひと際感慨深く映るのではないでしょうか。球場フードもなかなかですし、素朴な野外球場の雰囲気も一見の価値アリですよ!

すべての日本人と台湾人に見てほしい作品です

映画のイメージ画は国宝級の看板絵師、簡錫欽さんが手がけました

映画のイメージ画は国宝級の看板絵師、簡錫欽さんが手がけました

魏プロデューサーは言います。「この映画で伝えたいことの一つが、台湾野球の歴史は『KANO』から始まったのだということ」。映画「KANO」が台湾野球の原点をどのように伝えてくれるのか、WBCで野球人気の復活した台湾にどんな影響を与えるのか、ナビは今から楽しみでなりません。
台湾が好きな方、野球ファンはもちろん、すべての日本人と台湾人に知ってほしいストーリーがここにあります。台湾では2014年2月27日公開(日本では2015年、夏の甲子園に合わせて公開予定)。ぜひ劇場に足を運んで、日台の絆を感じてください。

以上、公開日が待ちきれない台北ナビがお届けしました。
「勝ちたいと思うな、負けられないと思え」は近藤兵太郎の言葉です

「勝ちたいと思うな、負けられないと思え」は近藤兵太郎の言葉です

「KANO」
プロデューサー・脚本:魏徳聖(ウェイ・ダーシェン)
プロデューサー:黄志明(ジミー・ホアン)
監督:馬志翔(マー・ジーシャン)
【キャスト】
永瀬正敏
大沢たかお
坂井真紀
伊川東吾 ほか

2012年11月7日クランクイン、台中、嘉義、台南、高雄で撮影、2013年3月末にクランクアップ。
2014年2月27日台湾公開。
日本では2015年夏に公開予定。

※写真提供:果子電影(台湾)

上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。

記事登録日:2013-11-07

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