地理的に美しい山にぐるりと囲まれた台北。あの陽明山だけでなく南の山では有名な文山包種茶が採れる坪林・石碇の山があります。まだまだ知られていないスポットをご紹介していきます!
許家麵線,太陽の光にそうめんが輝いています。
こんにちは台北ナビです。
今日は台湾リピーターさんにオススメな「坪林・石碇一日トリップ」に行ってきました。坪林・石碇とは、台北市を囲む新北市の南東に位置する地域で、日本人にも馴染み深い文山包種茶の一大産地でもあります。
また台北市近郊の水源である翡翠水庫(ダム)を擁し、手付かずの自然と昔ながらの生活様式に触れられるスポットです。それではレポートいきましょう!
石碇老街の真ん中にかかる橋、下には透明度抜群の川が流れています。休日は子供連れでにぎわいます。
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坪林の豊かな里山、のどかな風景が続いています。 写真提供:新北市政府觀光旅遊局
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祖父と孫で守る土地-ストイックな茶農家「世芳茶園」で製茶講座
左:孫の蔡威徳さん、右)祖父の陳世義さん 茶園に対する熱い思いをお話してくださいました
ナビが先ずやってきたのは坪林地域です。ここ一帯は冒頭でも触れた台北市に水道水を供給するライフラインである翡翠ダムがあり、生態環境が厳しく管理されている地域です。大規模な開発が禁止されているので、地域の人々は自然と共存した産業で暮らしています。
今回訪れた「世芳茶園」は坪林の自然を守り、台湾でも珍しい有機認証を獲得した茶園です。今回はオーナーの陳世義さんと孫の蔡威徳さんが茶園を案内してくれました。陳さんの農園は有機認証を得るために18年もの年月を費やして畑を育んできたそうです。厳しい審査と根気が必要なため当初一緒に有機栽培を試みた同業の農園は次々と諦めていったそうです。 「世芳茶園」はその努力が実り、今では製品にオーガニック認証のマークが堂々と貼られています。
カマキリも遊びにきました。
写真提供:新北市政府觀光旅遊局
ナビが訪れた時は冬茶の収穫を終えたばかりで来年の茶摘みシーズンに向けて茶樹と土を「冬眠」させていました。植わっているのは金萱(台茶12号)という品種の茶樹で、このひとつの品種から白茶、緑茶、文山包種茶、金萱茶、東方美人、紅茶を作るんだそうです。
一つの茶樹から一つのお茶しか作れないと思っている方が多いのですが、実は発酵の程度と摘み取りの季節で何茶を作るのか決まってきます。そしてこんなに多くの種類のお茶を生み出す陳さんは熟練の茶農家であり、製茶師である証拠だと思いました。
お茶への熱い思いが伝わります
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ピンとした元気な茶葉をつみます
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写真提供:新北市政府觀光旅遊局
工房に移って包種茶製造の説明を受けます。茶摘みのシーズンは3月末ごろから始まり、製茶のシーズンに入ると陳さんはおよそ1ヶ月不眠不休で番に当たります。
特に気を遣うのが、発酵過程の茶葉の攪拌だそうです。大きなざるのようなものに茶葉を置いて手元で返して茶葉全体をかき混ぜるのです。茶脈から水分を飛ばすと同時に酵素の働きを促して、香りと味わいを引き出すそうです。
続いて殺青といって茶葉を炒めて引き出した香りを熱によって留める作業と揉捻機という機械で茶葉を揉みます。味と形状を整える工程です。最期は乾燥機にかけて包種茶は完成。
これを1ヶ月続けるのは本当に骨が折れる作業だと思います。繁忙期は1日3回の茶摘みが行われ、さらに製茶に適した茶葉が採れるのも限られた時期のみのため大変な忙しさです。
最後に陳さんの奥様が丹念に作られたお茶でおもてなしをしてくれました。
中でも驚いたのが白茶。枯らし(萎凋)工程に5日も費やし作られる白茶は1煎目2煎目と味と香りがどんどんと開いていき、茶葉のやさしい味わいが口に広がります。飲んだあとに口に感じる香り、回香(ホイシャン)が豊かに口に残るのです。
感動の味に思わずナビは一袋1,000元の白茶をお買い上げ!大事に淹れて味わいたいと思います。
実は、台北市内のカルフールでも「世芳茶園」のお茶を手にできます。
「醜醜茶」というちょっと怖いネーミングですが、有機マークもついて美味しく安心安全の茶葉です。ぜひぜひチェックしてみてください。
「世芳茶園」
住所:新北市坪林区粗窟里金瓜寮渓16-4
電話:02-26656104
営業時間:事前にご連絡ください https://organic-shifantea.com/
お茶が入ったタピオカ作りに挑戦してみよう!「金瓜3號」
写真提供:新北市政府觀光旅遊局
続いて訪れたのは、「金瓜3號」というお店。陳さんの孫に当たる蔡さんが茶園をお手伝いする傍ら開いていて、お茶を使ったワークショップやDIY体験ができるんです。ここでは、包種茶パウダーの入ったタピオカ作りを教えてもらいました。
私たちがよく目にするタピオカは黒く、主に黒糖とキャッサバのでんぷんを材料に作られていますが、今日使う粉は包種茶パウダー、さつま芋でんぷん、砂糖です。これを水で溶いて、パール大に丸めるという至ってシンプルな工程です。
タピオカをおしゃれに試食
ナビもはじめてのタピオカ作りに挑戦しました。
ひたすらに小さくちぎって丸める、丸める、丸める……15分かけてやっとバット2枚分丸めました。厨房でこれらをボイルしたら完成!どんなお味になるのでしょう?
サングリアグラスでいただくタピオカはちょっと大人の雰囲気。牛乳もしくは豆乳を入れて試食です。出来立てのタピオカは温かく、もちもちの食感とともに包種茶の爽やかな味が広がります。噛んで楽しむ包種茶のお味はより深くお茶の味を感じることができます。お茶屋さんが新たに提案するお茶の楽しみ方。是非お試しあれ!
蔡さんがこのお店を立ち上げたのには、坪林への注目度を高めたいという思いがあるからです。坪林は茶の生産地として知名度はあるのですが、水質保全のため、インフラを大きく整備することが叶わない土地柄。交通手段が限られ、実際に足を運んでくれる観光客はそんなに多くないんだそう。
しかしそれは逆に手付かずの自然の中で、お茶文化を肌で感じられることでもあるため、坪林の価値をもっと高める取り組みを続けていきたいと夢を語ってくれました。
台湾の茶園は閑散期であれば観光客でもお茶つくりの見学を受け付けています。お茶好きな方、普通の台湾観光に飽きてしまったリピーターの皆さんにオススメのスポットです。 坪林で台湾が世界に誇るお茶産業の現場を肌で感じ、一歩深く学んでみてはいかがでしょうか?
「金瓜3號」
住所:新北市坪林区粗窟里金瓜寮路3号
電話:0911-750-603
営業時間:事前にご連絡ください https://www.facebook.com/pumpkinno3
茶園の程近くにある、旧名家の邸宅跡。100年前に石造りでできたお家はお金持ちしか建てたれなかったそうです。
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日本時代の派出所跡地が近くにあるそう、それくらい昔からの場所なんですね。この日は行けず残念。
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石碇ってどんなところ??
坪林から高速道路で20分ほど移動してやってきた石碇老街。200年ほど前、港があった台北と宜蘭を結ぶ淡蘭古道の通過ポイントとして栄えました。 石碇はかつて水路が発達し、石碇渓を通って当時の水運の大動脈であった景美溪にアクセスできたことから、お茶を中心とした交易を行っていました。そんな歴史を感じる石碇の注目スポットにいってみましょう。
台湾の山で流しそうめん?!「許家麵線」
台北駅から石碇は車で30分程度。トンネルを抜けると喧騒な市街地とはうって変わり、トンビが気持ちよく飛ぶお茶の山が四方を取り囲みます。 石碇は空が澄んでいて、空気が新鮮な場所です。そんな純朴な風景が広がる山の中腹に200年の歴史を誇る許家麵線がありました。200年伝わる台湾式そうめんの製麺所で手延べそうめんを作って来ましたよ~。
最初に麺作りの説明を受けます。朝5時から仕込みを始め、天日干しにかけないといけないため時間との勝負です。 材料は中力小麦粉、塩、水と至ってシンプル。 ナビは麺を延ばすところから体験させてもらいました。2人1組で延ばしていきます。 この棒のしなりは長年麺を延ばしてきたため、こんなに曲がってしまったそう。一本一本は細いのにとてもコシがあることが分かります。
延ばし、払い、弛みの3ステップで麺を長く、細く仕上げていきます。 最期に麺のウェーブと一緒に写真撮影ができます。
許家麵線では流しそうめん体験もできます、こんな立派な流しそうめん装置が3レーンも並び圧巻です。 流しそうめんは3色流れてきます。紅麴とお茶で着色されている色つきそうめんを食べると嬉しくなるのはナビだけでしょうか? 自家製漬け汁はごま油がグッド。煮卵と辣醬も一緒に添えていただきます。童心に返ってそうめん争奪戦!流しそうめんに慣れない台湾人に混じり、麺をゲット!! 頑張って延ばして、勝ち取った?麺の味はまた格別です。
展望席も併設しています、ここからの風景もご馳走。
「許家麵線」はDIY体験あり、流しそうめんありでお子様連れで来るととても楽しいと思います。お二人から体験&流しそうめんを楽しめますよ。
「許家麵線」
住所:新北市石碇区烏塗里四分子3号
電話:02 2663 3004
営業時間:9:00~18:00 https://www.facebook.com/sdnoodles/
健康的な食事とお茶でお腹も心も大満足「無由食茶空間」
姉妹で営まれている「無由食茶空間」
写真提供:新北市政府觀光旅遊局
ナビは山から下りて石碇老街にやってきました。石碇博物館のバスを降りてすぐの橋を渡り石碇小学校を通り過ぎると「無由食茶空間」があります。 姉妹が経営しているこちらのお店はお姉さんが食部門の責任者、妹さんが茶部門の責任者としてお店を運営されています。新鮮なお野菜を使ったランチと今台湾で静かにブームとなっている燻花茶(くんかちゃ)が楽しめるお店です。
バス停「石碇国小」で降りてください
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石碇老街の中を川が貫いています
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燻花茶とは、茶葉と花弁を幾層にも互いに積み重ねて焙煎を行い、茶葉に花の香りを移す加工方法です。 本日は燻花茶である金木犀佛手茶と、ちょうど店頭で焙煎されていた貴妃茶をいただきました。金木犀佛手茶は花の香りが鼻に広がります、そして飲みこんだあと、口に佛手茶の甘い香りが広がり口と鼻で異なる甘い香りを感じます、天然の花弁を使っているためフレーバーティのようなしつこく香りが残るということは無く、香りの余韻を楽しんだらすっと消えていくという上品なお茶です。
10人以上の予約で包種茶をベースにレモングラス、ローズ、菊をブレンドしてティーバッグをつくるワークショップも体験できます。ナビはローズブレンドにしました。次の日自宅で淹れると花弁からローズの香りとピンクの色素が溶け出して、見た目も香りもロマンチックな気分になりました。
レモングラス、レモンバーム、センジュギク、ローズの4種類の草木と包種茶をブレンドします。
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ナビはローズと包種茶をセレクト
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日替わりランチはこの日はジンジャーポークとチキングリルの2種でした。仕入れによってメニューが替わります。色とりどりのランチプレートとかぼちゃのポタージュが出てきました、サラダのドレッシングにドラゴンフルーツが使われています。 レンコンもローゼル(洛神花)という美容効果のある花と一緒に炊き上げられて、台湾らしさを感じます。メインのチキングリルはちょうどよい焼き加減で、パリッと焼きあがった皮とジューシーなお肉がぺろりとお腹の中に入ってしまいました。 ナビはかねてから台湾の鶏肉料理は絶品だと思っていたのですが、それを再認識させてくれるランチでした。 驚きなのがお値段220元(およそ日本円で800円)でボリュームいっぱいのランチがいただけてしまうのです。お財布にやさしいですよね。
「無由食茶空間」は女子旅にぴったりのスポットです、心身ともに女子力をチャージしたい方におススメのお店です。
「無由食茶空間」
住所:新北市石碇区石碇里石碇西街23号
電話:0921 056 067
営業時間:10:00~17:00 https://www.facebook.com/無由-食茶空間-162102144170017/
石碇を語る上で忘れてはいけない人物が芸術家・楊敏郎先生です。石碇老街から少し離れた山に自宅兼アトリエを構え、先生自ら作品の説明をしてくれます。 ナビのイメージでは芸術家といえばちょっと変わった人なのでは?と構えて行ったのですが、楊先生はとても穏やかで開放的なお人柄で温かく迎え入れてくれました。
8歳のときに彰化県の絵画コンクールで入賞したことがきっかけで芸術の道に進んだ楊先生。 先生の幼少時代は家にお金が無く、中学に入学が決まっていたにも関わらず、学費を工面できずやむなく進学を諦め、働きながら絵を描き続けました。 成人してから賞を取るようになり、上京して肖像画で生活費を捻出したそうです。 人生の酸いも甘いも経験したからこそ、とても人間味のある方なんだと思いました。
先生の作品はどれもドキッとするほど生命力と躍動感に溢れ、臨場感を感じます。 シンプルであるがゆえに、観る者を圧倒します。 また文人画は隠し絵になっていて、山水画の中に14人の仙人が隠れているのですが、分かりますか?
長年のキャリアで膨大な数を製作し続けている楊先生。 今は身近な人からの依頼のみ受け付けているそうですが、石碇のいたるところで先生の作品を見ることができるので街歩きの楽しみにしてくださいね。
にわかサイン会開催~
写真提供:新北市政府觀光旅遊局
「泥畫屋」
住所:新北市石碇区潭邊里外石崁1之6号
電話:02-2663-3777
営業時間:8:00~17:00 http://yang-cementart.blogspot.com/
今日は台北のお隣新北市の2つのエリアを紹介しました。多くのスポットでは日本語に対応していないのですが、台湾リピーターにはオススメのところばかりです。台北市内を少し離れて昔ながらの台湾を肌で感じてみてはいかがですか?
以上、台北ナビがお伝えしました。
上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。
記事登録日:2019-01-24