王爺、王船祭、送王船ってなに?船を燃やして邪気退散の燒船祭(焼船祭)へ
こんにちは、台北ナビです。
台湾文化に触れる旅なら、伝統的なお祭りを体験してみませんか?信仰心の篤い台湾の人々、お祭りもド派手ににぎにぎしく開催されます。台湾各地では1年を通して各種祭事が行われていて、中でも冬のランタンフェスティバル(燈會)はあまりにも有名です。しかし、ほかにもた~くさんのお祭りがあるんですよ。
本日は、3年に1度しか開催されないレアなお祭り、
「2024屏東迎王」の1つ
「南州迎王祭典」の一部にナビも参戦。その模様をお伝えします。
▼2024屏東迎王https://www.amazing-pingtung.com/ptyw
迎王祭とは?
「迎王祭(読み方:yíngwáng jì/インワンジー)」と呼ばれるこのお祭り、「王様を迎えるお祭り」って意味なの??
屏東迎王の到来を告げるのぼり
「王」とは
王爺(読み方:wángyé/ワンイエ)と呼ばれる道教の神様のこと。疫病神である王爺は、道教最高神である玉皇大帝から悪霊退治の命を受け地上にやってきました。一方、その昔中国大陸から台湾に渡ってきた人々は蔓延する疫病に苦しみ、王爺に祈りを捧げる儀式を執り行ったとか。これが台湾での迎王祭の始まりと言われています。
現在でも悪霊を追い払い、平安をもたらすとして重要な伝統行事として、王爺信仰の篤い台湾南部の屏東・台南・嘉義・澎湖などを中心に開催されています。
中でも屏東迎王は、東港・小琉球・南州の3地域で開催されることで知られ、祭りともなれば、町外で暮らしている人も故郷へ帰って参加する大切な行事なんだとか。そんな屏東迎王が最もにぎわうのは、台湾の迎王祭の始まりともされる東港東隆宮での祭り「東港迎王平安祭典」です。こちらは下記のレポートをご覧いただくとして、本日は南州溪州代天宮府で行われた「南州迎王」の模様をご紹介したいと思います。
2024南洲迎王はいつ?
溪洲代天府前に安置された王船
3年に1度、丑・辰・未・戌年の旧暦の秋に開催される迎王祭。日程から神様にお伺いを立てるほか2つの屏東迎王とは異なり、南州では旧暦10月13日~18日に固定されています。
2024年南洲迎王は11/13(水)~18(月)。6日間に渡り、盛大に行われました。
2024南洲迎王の体験レポート
【11/13(水)】
一連の行事の始まりは王爺を迎え入れる(請水/請王)ところから。内陸の南洲ですが、かつては同一統括地域であったお隣、林邊の崎峰村の海岸で王爺をお迎えします。地上の住まい(代天府)に安置する前には火を焚いて儀式(過火)も。
王爺がまつられる溪洲代天府
南洲迎王は東港や小琉球と違い、新しい王爺を迎えて元いた王爺を送り出す(迎新王送舊王)スタイル。2024年にやってきた王爺は次の祭りまで3年間代天府にまつられます。
【11/14(木)~16(土)】
その後3日間に渡り、神輿に担がれた王爺は村中を練り歩き(遶境)、悪霊退治。屏東迎王で唯一、3エリア(南州・林邊・崁頂)を跨いでくまなく巡回するのです。
人々は家の前に立派な祭壇を準備し、お供え物を捧げて王爺に祈りを捧げます。家族の分だけ用意した紙の人形(紙人)は身代わり。線香と一緒に束ねられ、王爺が通る時には手に取り、胸の前で歳の数だけ払い落して厄払いをします。
【11/17(日)】
王船キターー!!!
最終日前日には祭りの
代表者(大千歳)らの
参拝(王船祭典法會・祈安法會)と王爺&王船の盛大な
練り歩き(遶境)が行われます。2024年の大千歳は姓が「秦」の秦家。代天府の神様、朱府千歲から選ばれた42年ぶりの担当で、
祭りのトップ(大總理)ほか重要な役を担います。着飾った彼らが王爺を先導、とりわけ
船が道行く様子(陸上行船)は圧巻です。
町中に爆竹が鳴り響き、楽団が音を鳴らし、王爺を乗せる王船や王爺が人々の前を通り過ぎます。船を引く人々、その後ろをぞろぞろ続く人々、沿道から王爺に祈りを捧げる人々……いろんな人のいろんな想いが入り乱れ、熱気を帯びて行きます。
宗教文化に詳しい李奕興老師によると、王爺が通り過ぎる時に「幹●●(F**K you!に相当する台湾語)×××(縁を切りたい人名など)」と、唱えると効果抜群だとか。なんとも心穏やかではありません。が、悪霊を追い払う祈りの場ですから、こちらもそれ相応の心意気が必要なのでしょう。なお、上記の台湾語は非常に危険なワードですので、心の中で叫ぶに留めておきましょう。
神輿が通り過ぎた後には道端の人々にキャンディーが配られて福のおすそ分け
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奉仕で忙しい時もササっと食べられる雑炊風ごはん(湯飯)は、屏東迎王でよく食べられます
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道行く人々を見ていると、馬グッズを身に着けた人がちらほら……あれは?
王爺は天に替わってこの世を巡回し、悪霊を退治する(代天巡狩)武将。馬に乗って見張りをしています。祭り初日には本物の馬(王馬)が印章や剣などを背に練り歩きました(王馬先行)。ナビは見ることができませんでしたが、今年はDucati(杜卡迪)と呼ばれる馬が選ばれたとか。そんな神の馬、王馬は近年かわいらしいグッズになって登場し、信者たちに愛されているそうです。
王馬グッズ。お札を模したストラップもいい感じ
ちなみに南州迎王では、ほかに祭りの代表者(先鋒總理)が乗る馬(先鋒馬)も。2024年はEncore(安可)という名の馬が命を受けたそうですよ。
【11/18(月)】
そうして日を跨ぐといよいよ最終日。まだ夜の明けきらぬうちに、迎え入れた時と同じ林邊の浜に王船を運び(遷王船)ます。エリアによっては制限がありますが、南州迎王は老若男女誰もが参加OK(※)!
※妊娠中や家族に不幸があった場合は伝統に則り参加は控えます
そうして舞台を浜へと移すと王爺を送り出す儀式(送王)に。早朝4時15分、王船に火が点されて(燒船)、災厄と共に王爺は天に帰っていきます。身代わりとなる紙人も天へ。皆に幸が降り注ぐことを祈って……!
準備3年、開催6日の屏東迎王
王船のお通り~!
船を燃やす様子から、
別名「燒船祭」「王船祭」とも呼ばれている迎王祭。小さな船を想像していたらびっくりするくらいの大きさでした。物資不足のころには竹と紙で作られていたという王船ですが、現在は木製へと変わり、人は乗らなくとも同等の設備をしつらえています。
王船全体像
神様にお伺いを立てて決まるというその大きさは10mほど。造船には熟練した大工が4ヵ月ほどかけて行ないます。時間がかかれば費用もかかり……そのため、次の祭りの決め事は送王の余韻冷めきらぬうちに(東港の場合は3日後)行なわれるとか。3年に1度の祭典の準備期間は3年!!お祭りに気合が入るのもうなずけます。
プロのカメラマンからカメラ小僧まで多数が出没
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バイクで追いかける人々
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屏東縣王船文化館が2024年12月新オープン!
そうなんです!もう次の迎王祭の準備は水面下で始まっています。次回は3年後、2027年の開催。これから神様の声を聞きながら祭りの全貌は徐々に明らかになっていきます。楽しみ~!今から3年後の秋の予定を空けておきましょう。
しか~し、それまで待てない方に朗報です!
「屏東縣王船文化館」が来たる
2024年12月27日に開館します!ここに来れば、屏東の王爺信仰や迎王祭、王船のことを知ることができるはず。お祭りの予習に出かけてみませんか?
■屏東縣王船文化館住所:屏東縣東港鎮船頭路9號
電話:(08)8331-1680
営業時間:9:00~18:00
休み:月曜日
入場料:120元
アクセス:台鉄「屏東」駅から屏東客運バス(8202/8203/8213/8215)に乗車し、東港バスターミナル(東港轉運站)下車、徒歩約5分
公式ウェブサイト:
https://www.cultural.pthg.gov.tw/kingboat/Default.aspx
【おまけ】2024南洲迎王こぼれ話
門をくぐる王船
2024年は王爺を迎えると台風ウサギ(小兎)が発生。あいにく道路が冠水する中、南州まで王爺をお連れすることに……。台風の進路はじわじわと台湾寄りとなり、屏東方面へ。台湾では巨大台風が来ると会社や学校はお休みになりますが、お祭りはそうはいきません。最終日の送王はどうなるのか!?
……ですが、台湾に上陸するやいなや勢力を弱めて熱帯低気圧に。台風は消滅しました。王爺パワー、すごーい!みなさんも迎王祭に参加して運気アップしませんか?
※ちなみに東港、小琉球でも2024年は迎王爺では、台風が平等にやってきました。しか~し、どちらもちゃんとお祭りが開催できるほど台風の威力が弱まったんです。ほんとに王爺、すごいんです!
以上、3年に1度の王爺のお祭り、「2024屏東迎王・南州迎王祭典」で大いに盛り上がった台北ナビがお伝えしました。
PS:溪洲代天府--南州迎王のフェイスブックからお祭りの記録動画などが拝見できますよ!
▼溪洲代天府-南州迎王Facebookhttps://www.facebook.com/2012nanZhouYingWang
上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。
記事登録日:2024-12-20