【台湾イベント】2/1~6/30 台史博「跨・1624:世界島台灣」特別展を開催!

日本やオランダからの文物も。貴重な展示の数々に出合い、深く考えさせられた「台南400」関連イベントです!

国立歴史民俗博物館からの「南蛮人来朝図屏風」の展示。<br>画像提供:國立臺灣歷史博物館

国立歴史民俗博物館からの「南蛮人来朝図屏風」の展示。
画像提供:國立臺灣歷史博物館

こんにちは、台北ナビです。

特別展「跨・1624:世界島台灣(跨ぐ・1624:世界の島台湾)」が、台南市の國立台灣歷史博物館(略称:台史博)で2月1日から6月30日まで開催されています。

1624年当時の台湾の玄関口「台南」で、今回、国内外の20か所近くから貸し出された100点余りの文物を展示。日本やオランダからの文物の展示もあり、日本の国立歴史民俗博物館からは「南蛮人来朝図屏風」など20点、神戸市立博物館からは「長崎唐館交易図巻」などの8点が貸し出され、展示されています。

今回ナビは、その初日に大潜入。その魅力的な展示を皆さんにレポートします!

台史博へのアクセス

駅を出て左側に進むとバス乗り場があります。

駅を出て左側に進むとバス乗り場があります。

3月3日まではこちらの無料のシャトルバスが出ています。一時間に一本程度です。

3月3日まではこちらの無料のシャトルバスが出ています。一時間に一本程度です。

路線バスも利用できますが、一時間に一本程度なので、時間をよく確認してくださいね。

路線バスも利用できますが、一時間に一本程度なので、時間をよく確認してくださいね。

今回、ナビは台鉄「永康」駅から博物館へ向かいました。

今回、ナビは台鉄「永康」駅から博物館へ向かいました。

まず、博物館への行き方ですが、台鉄「永康」駅で下車し、バスまたはタクシーで15分ほどです。3月3日までは台鉄「永康」駅から無料のシャトルバスが出ていますが、シャトルバスも一般の路線バスも一時間に一本ほどです。

台鉄「台南」駅からは18番バスに乗れば博物館は終点で、1時間ほどで到着します。
台南市の博物館ということで、台南市中心部にあるような小規模の博物館を想像していたのですが、到着してそのスケールにびっくり。面積が20ヘクタールもある公園の中にあります。
ソーラーパネルが目を引きます。

ソーラーパネルが目を引きます。

広い公園です。

広い公園です。

まず、目に入ってくるのが1350枚のソーラーパネルの発電装置です。とにかく広いので、バスやタクシーを降りてからチケット売り場のある入り口に着くまで10分ほどみておいた方がいいと思います。

休日には子連れやペットの散歩などでも訪れる人が多い人気のリクリエーション施設なんだそうですよ。
こちらが博物館全体の地図です。

こちらが博物館全体の地図です。

こんなに広くて展示スペースも多い博物館はさぞ入館料が高いのでは?と思ったのですが、特別展も常設展も見られて100元と聞いて驚き!

常設展の日本語の個人用音声ガイドは150元で借りることができます。
こちらから

こちらから

階段を上に上がると

階段を上に上がると

チケット売り場が見えてきます

チケット売り場が見えてきます

特別展の案内が所々にあってワクワクします。

特別展の案内が所々にあってワクワクします。

音声ガイド付きの二人のチケットもあります。

音声ガイド付きの二人のチケットもあります。

入り口近くにカフェがあります。

入り口近くにカフェがあります。

早速、中に入ってみましょう~。

立体的に見える展示にワクワク

上(4階)から見た常設展です!

上(4階)から見た常設展です!

4階立ての博物館の1階は児童ホール、円形劇場、列車を模した上映スペース、イベントスペースなどです。

今回「跨・1624:世界島台灣」が行われている4階の特別展の展示場までエレベーターで上がって、下を見下ろすと、なにやら建物や船、廟のお祭りに参加する人々のなどの立体的な展示が見えてきます。その精巧な作りに近づいてゆっくり見てみたい!とワクワク。
展示に工夫があって、一日楽しめる博物館です。

展示に工夫があって、一日楽しめる博物館です。

これは、2階の常設展示場で、台湾の歴史が立体的な模型や映像で紹介されているんです。天井が高くなっているため3階はありませんが、その分広々としていて、とっても開放感があります。

今度はゆっくり時間をとって常設展を見るぞ!と決めたナビでした。それでは、今回の特別展へと参りましょう。
4階に到着しました~。

4階に到着しました~。

こちらが今回の特別展の入り口です。

こちらが今回の特別展の入り口です。

イントロダクション~「海の道」<br>画像提供:國立臺灣歷史博物館

イントロダクション~「海の道」
画像提供:國立臺灣歷史博物館

研究員の石文誠さんが詳しく解説してくださいました。

研究員の石文誠さんが詳しく解説してくださいました。

今回、特別展を案内して下さったのは台史博の石文誠さん。特別展の展示スペースはワンフロア全てと廊下部分を使って500坪もあるそうです。

まず、入口に見えてくるのがトルコのAI芸術チーム「Ouchh」による海をテーマにしたマルチメディアの作品。海の「島(dao)」と「道(dao)」の音をかけて、台湾が世界を繋ぐルートであるということ、台湾を中心に置いて「海の道」という考えから台湾の役割、価値について考えるというイントロダクションです。

台湾と世界とのつながり

次の展示は、島とネットワーク。

当時東アジア貿易で盛えていた台湾は、ただの参与者ではなく、東西各地からの異なる海上勢力を引き付け、台湾はしのぎを削る場となりました。

1624年にオランダが台湾(台南)に来た記録である17世紀の書籍「荷蘭聯合東印度公司的起源與發展(東インド会社の起源と発展)」が展示されていて、こちらにはインタラクティブな展示があります。
実際に本を手に取ることはできませんが、パネルを操作して近くで見ることができます。

実際に本を手に取ることはできませんが、パネルを操作して近くで見ることができます。

書籍の一部をデジタル化し、パネルで操作できるというもの。実際に本を手に取ることはできませんが、これならよく見ることができますね!

このように今回の特別展では、工夫された展示がたくさんあります。それでは、早速、このエリアの展示の一部をご紹介していきましょう。
1620年代「台江内海」の地図をよく見てみると、日本人の居住地域もありました。

1620年代「台江内海」の地図をよく見てみると、日本人の居住地域もありました。

こちらは、1620年代の台南の潟湖「台江内海」の地図です。一番上にある「Sangley」って何の意味だと思いますか。実はこれは台湾語の音から来ていると思われ、「生意人」貿易に従事する商人の意味で、スペイン人が貿易に従事する漢人の商人をこう呼んでいたんだそうです。

一枚の地図ですが、漢人、原住民、外国人などの居住地が分かれていることなども分かって、とても興味深かったです。人的ネットワークが台湾の世界性を作り、世界の中で台湾が重要な役割を果たしてきたことがよく分かる展示でした。
当時の世界にいる気分で楽しんでください!

当時の世界にいる気分で楽しんでください!

展示室内には、AIで生成された人物などもあるので、まるで自分が当時の世界にいるかのようです~!展示をよく見ると、キャプションの近くにQRコードが。これが注目を集めていたAR「海怪濾鏡」。QRコードをスキャンするとインスタグラムのフレームと連結し、博物館オリジナルフレームで写真を撮ることができるんです!フレームは3種類あるので、展示をよく見て探してみてくださいね~。
展示内にあるQRコード

展示内にあるQRコード

このようにかざすと

このようにかざすと

フレームが出てきます。

フレームが出てきます。

日本からの展示

「長崎唐館交易図巻」國立臺灣歷史博物館提供

「長崎唐館交易図巻」國立臺灣歷史博物館提供

日本の神戸市立博物館からの「長崎唐館交易図巻」は、777cmある巻物なので、展示ケースの幅の制限で、現在全部は公開できていないそうですが、約300年前に中国船が日本の港に停泊して荷物を降ろしている前半の様子が見られます。
こちらが前半部分です。じっくり鑑賞してみてください!

こちらが前半部分です。じっくり鑑賞してみてください!

後半には、中国の商人が暮らした唐館内部の建築や生活風景が描かれているそうです。また、展示室の真ん中に置かれている大きな屏風は、国立歴史民俗博物館からの「南蛮人来朝図屏風」で、17世紀日本に来航したポルトガル人の南蛮船の屏風絵。
「南蛮人来朝図屏風」は、展示室の真ん中に置かれています。<br>画像提供:國立臺灣歷史博物館

「南蛮人来朝図屏風」は、展示室の真ん中に置かれています。
画像提供:國立臺灣歷史博物館

絵の中に椅子がありますが、この椅子、明代の椅子で現在オークションで高額なんだそうですよ!

絵の中に椅子がありますが、この椅子、明代の椅子で現在オークションで高額なんだそうですよ!

貿易品荷揚げなどの様子がよくわかります。

細部までじっくり鑑賞してみてくださいね!
國立臺灣歷史博物館所蔵の葛飾北斎が描いた中国地図(中國鳥瞰圖)。右下の方に台湾があります。

國立臺灣歷史博物館所蔵の葛飾北斎が描いた中国地図(中國鳥瞰圖)。右下の方に台湾があります。

海域の物質文化交流

17世紀の台湾では、貿易で物が行き交う中、それを取り入れ、地元住民の文化の一部して台湾独特の文化を発展させていきました。

原住民の生活の中の外来文化として、例えば、スペインの銀のコインを達悟族(タオ族)が装飾品や銀兜に加工しているものなどがあり、それらが展示されています。
原住民が外来の物を加工した装飾品などの展示

原住民が外来の物を加工した装飾品などの展示

いろいろなスタイルの「南蛮漆器」

いろいろなスタイルの「南蛮漆器」

次のエリアは、このような貿易を通して発展した独特な文化についての展示です。

ヨーロッパを風靡した「南蛮漆器」は、来日したポルトガル人やスペイン人からの発注を受けて作られたもので、輸出されていた漆器です。中国風のものやイスラム風のものなどもありました。

海域の物質文化交流

展示室内の最後には、現在の台湾の「海の道」についての展示があります。

台湾人と海の関係を歴史から見ると、戒厳令の時代には軍事管制により庶民が海と触れ合うことが制限された時代があったこと、現在では海運業や遠洋漁業で世界で重要な地位を占めていることなどが映像や展示を通じて紹介されています。

跨ぐ・1624 ~ 現在と過去との対話

インタラクティブな展示<br>画像提供:國立臺灣歷史博物館

インタラクティブな展示
画像提供:國立臺灣歷史博物館

「今年は台南400年(オランダ人が台湾に上陸、貿易拠点「ゼーランディア城」を建設してから400年)という年で「台南400」関連イベントが台南各地で行われていますが、特別展の名前は「1624」ですよね。台南400年との違いは?」という質問に、石文誠さんは「跨」という字がついていますよね。これは「越える」ということです。つまり、ただ400年という年であるだけではなく、それを越えることです」と説明してくれました。
画像提供:國立臺灣歷史博物館 画像提供:國立臺灣歷史博物館 画像提供:國立臺灣歷史博物館

画像提供:國立臺灣歷史博物館

ナビは最初、どういうことかすぐにはピンと来なかったのですが、石文誠さんが展示を見ながら語ってくれることを聞いていくうちに、それがよく分かるようになりました。今回は、これまで台湾で展示されたことのないオランダや日本からの展示など貴重な文物が集まっていますが、単に400年前の台湾と世界の繋がりを紹介しているだけではなく、台湾が世界と繋がった1624という年を契機として、2024年のこの節目にどのように台南400年を見るのか、一定の時間や空間の制限を越えた思考で歴史を見直し、そしてそれを未来へと繋げていくものであると思います。
オランダ人宣教師がに洗礼を施している場面を描いた油絵。「尤紐士牧師為蕭壠社人宣講及施洗圖」<br>画像提供:Zebregs&Röell氏

オランダ人宣教師がに洗礼を施している場面を描いた油絵。「尤紐士牧師為蕭壠社人宣講及施洗圖」
画像提供:Zebregs&Röell氏

今回、台湾で初めて展示されたオランダからの大型の油絵は、オランダ人宣教師が原住民・西拉雅族(シラヤ族)の人々に洗礼を施している場面を描いたものですが、この絵を表面的に見れば、これは当時のオランダ人と原住民との交流の絵で、宣教師の布教は成功したと思うでしょう。しかし、これはオランダの宣教師側から見た光景で、実は原住民の風習と衝突するものがあったと言います。

廊下部分にある最後の展示「歷史教室」

とても考えさせられる展示なので、最後まで是非じっくり見てくださいね!

とても考えさせられる展示なので、最後まで是非じっくり見てくださいね!

最後の展示「歷史教室」は私たちに語りかけます。

台湾総督府が1936年に石門古戦場に建てた碑「西郷都督遺績記念碑」が1945年以降、日本による植民地統治が終了し、中華民国統治になってから「澄清海宇還我河山」に書き換えられ、2016年に屏東県政府により文字が削除され、2020年にまた「西郷都督遺績記念碑」に戻されたという経緯が、ハンドルを回すと写真がくるくると変わる展示方法で紹介されています。
一体誰の記念碑であるのか、と展示は問いかけています。

一体誰の記念碑であるのか、と展示は問いかけています。

どのように歴史に再度向き合うのか、特定の主観によって記録される歴史を問い直すことを皆さんに展示を通して考えてほしい、という研究者の情熱が伝わってきました。
歴史教室の展示も工夫されています。

歴史教室の展示も工夫されています。

所々に学習コーナーの問いかけがあり、展示を見て考えさせられます。

所々に学習コーナーの問いかけがあり、展示を見て考えさせられます。

アジアの地図を回転させた展示には「角度を変えれば違う世界が見える」というメッセージがありました。今回は、17世紀の台湾の歴史をこれまでと異なった視点、台湾を思考の中心としていて、一面の見方だけではなく、多面的に学び、未来を造っていくことの大切さが表されている、とても考えさせられる展示だと思いました。

特別展だけでなく、常設展の展示もとても工夫されているので、皆さんも是非ゆっくり時間をとって、博物館内をまわってみてくださいね!

以上、台北ナビ(湯山千里)がお伝えしました。

【「跨・1624:世界島台灣(跨ぐ・1624:世界の島台湾)」】

1階のミュージアムショップでは、今回の特別展のグッズやカタログも販売されています。展示を見てから是非立ち寄ってみてくださいね~。

1階のミュージアムショップでは、今回の特別展のグッズやカタログも販売されています。展示を見てから是非立ち寄ってみてくださいね~。

展示期間:2024年2月1日~6月30日
展示場所:國立臺灣歷史博物館 展示教育ビル4F 第1、2特別展示室および4F廊下
住所:臺南市安南區長和路一段250號
電話番号:(06)356-8889
開館時間: 9:00~17:00(最後入場16:30)
休館日:月曜日
チケット:100元、優待チケット50元
公式サイト:https://www.nmth.gov.tw/exhibition?uid=127&pid=609(中国語)
https://www.nmth.gov.tw/jp/exhibition?uid=127&pid=612(日本語)


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上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。

記事登録日:2024-02-27

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