低迷とされていた台湾テレビ業界に追い風が吹いてきた!?
写真提供:金鐘奨
こんにちは、台北ナビです。
今年も行ってきました、金鐘奨(ゴールデン・ベル・アワード)!台湾のテレビ・ラジオ番組、およびその作品に携わる個人・団体を対象に贈られるこのアワードに、今年はテレビだけで1995の応募作品があったそうです。その中からノミネートされた191の個人・作品から、この日、約40の受賞が決まりました。ラジオ番組の授賞式は別日のため、今年もテレビ賞に限定してのリポートをお送りします!
絢爛豪華!スターが一堂に会すレッドカーペッド
まずは眼福、レッドカーペッド!授賞式のうち、関係者以外の人が間近に参加ゲストを見られる唯一の瞬間だけあって、会場の国父紀念館には開始数時間前からたくさんのファンの姿が見られました。今台湾の若者に一番人気が高いのは誰なのか、そんなトレンドの一面を測れる場でもあります。
メディアは、レッドカーペッドの中央、フォトセッションスペースでゲストを激写するカメラ班と、国父記念館の入り口でゲストのコメントを取る記者班の二手に分かれます。役に立たない裏話をご紹介しますと、例年ゲストが登場する順番が記載されたリストがメディアに配布され、それによってトイレタイムなど、ある程度の予定が立てられるのですが、今年はなぜかそのリストが配布されず、記者スペースにいたナビは結局2時間の長丁場、トイレに行けませんでした(笑)。
長編ドラマ「日據時代的十種生存法則」から張寗(チャン・ニン)、蔭山征彦、吳政迪(ウー・ジェンディー)、林宏杰監督
脚本賞、監督賞、作品賞、主演男優賞、助演女優賞、助演男優賞の6部門にノミネートされた長編ドラマ「
日據時代的十種生存法則」。
張寗、吳政迪、林宏杰監督と一緒に登場したのは、台湾を中心に活躍する日本人俳優の
蔭山征彦!日本統治時代の正義感に燃える警官役を好演し、助演男優賞に堂々ノミネートされました。「緊張していますね」と記者に問われた彼は、「いつもこんな感じです。初めて金鐘奨に来られてとても嬉しい」と言葉少なながらも流暢な中国語で喜びを語りました。劇中では、中国語だけでなく客家語の長台詞にも挑戦しています。
王淨(ワン・ジン)
「
你的孩子不是你的孩子(子供はあなたの所有物じゃない)」の中の一話「
茉莉的最後一天(モリー最後の日)」で助演女優賞ノミネートの
王淨。
新世代の女優として今最も注目を浴びる彼女は、映画「返校」などで人気急上昇!ふわふわとした質感の淡いピンク色のドレスが、フレッシュな彼女にぴったり。
徐麗雯(シュー・リーウェン)と謝瓊煖(シエ・チオンヌアン)
長編ドラマ作品賞、主演男優賞など5部門にノミネートされている「
菜頭梗的滋味」からは、主演女優賞の
徐麗雯と助演女優賞の
謝瓊煖が登場。
謝瓊煖は名母親役で知られ、劇中では実年齢よりずっと老けて見えるのですが、ドレスアップするとちょっと役柄と結びつかないくらい美魔女じゃないですか!金鐘奨常連の実力派ですが、それでも前の晩はなかなか眠りにつけなかったとのこと。「でも今年は曾沛慈(ツェン・ペイツー)が受賞コメントを言うんだわと思ったら、安心して寝られたの」と笑いを取るあたり、ベテランならではの余裕を感じさせます。
ミニドラマ「無法辯護」のキャストと製作陣
ミニドラマ「
無法辯護」のキャストと製作陣。
中央にいる主演男優賞ノミネートの
潘親御(パン・チンユー)、どこかで見覚えがあると思ったら「囧男孩(Orzボーイズ!)」の少年ではないですか! 大きくなったね、うそつき2号。
バイクの先導で登場したのは元5566の王少偉(サム・ワン)。「台灣第一等」でライフスタイル番組の司会賞ノミネート。デビュー18年目にして金鐘奨は初ノミネートだそうですが、その人気は不動のようで大きな歓声が上がりました。
バイクの先導で登場したのは元5566の
王少偉(サム・ワン)。
「
台灣第一等」でライフスタイル番組の司会賞ノミネート。デビュー18年目にして金鐘奨は初ノミネートだそうですが、その人気は不動のようで大きな歓声が上がりました。
お笑いコンビ浩角翔起の阿翔(陳秉立)(左)と浩子(謝炘昊)(右)、ロックミュージシャン亂彈阿翔(陳泰翔)
えーっとこの面子はわかりやすく説明できる自信がなくすみません。まず両端の二人がお笑いコンビ
浩角翔起の
阿翔と
浩子。「
綜藝新時代」で教養リアリティージャンルの司会者賞にノミネートされています。
そして真ん中のいぶし銀はロックミュージシャン
亂彈阿翔。金曲奨でも受賞多数の彼が、今回はバラエティー番組「
台灣金頌」で浩子とともに司会者賞にノミネートです。
つまり、浩子はダブルノミネートで、コンビの相棒と「台灣金頌」の相棒は偶然同じ「阿翔」(笑)。亂彈阿翔は長年第一線で活躍する音楽人、浩角翔起はイケメン枠のお笑いタレントといった感じで、台湾のお茶の間でとっても人気があるので、ぜひお見知り置きを!
賈靜雯(アリッサ・チア)
「
我們與惡的距離(悪との距離)」で主演女優賞ノミネート大本命の
賈靜雯。もともと正統派の美人ですが、人間のってるときは内側からオーラみたいのが出るんですね、きっと。匂い立つような魅力、画面の向こうからも伝わってきませんか?
林哲熹(リン・ジェーシー)
ナビ個人的に今年イチ押しゴリ押しが「
我們與惡的距離」で助演男優賞ノミネートの
林哲熹!
でも時間がおして、記者スペースに寄ってくれなかったのが残念でした。
吳慷仁(ウー・カンレン)
我が心の
吳慷仁!今年は「
我們與惡的距離」の主演男優賞ノミネートです。撮影中の作品の役作りのために8キロ痩せて、日焼けをした坊主姿はまるで中華民国建国の父とされる孫文?周囲から「国父、国父」と声がかかる中、「うちへようこそ」(会場が国父紀念館だったので)と切り返して笑いを取っていました。
盛り上がったレッドカーペットの様子をまだまだ紹介したい!!というわけで、写真で見てみましょう♪
大きなリボンから胸元とお腹がのぞかせた張寗(チャン・ニン)は、劇中の清楚なイメージからは考えられないセクシーさ!緊張で2キロ痩せてしまい、衣装がちょっとゆるくなってしまったとか。
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謝瓊煖が『視聴者を泣かせる母』なら、『国民の母』といわれるのが王琄(ワン・シュエン)(右)。主演女優賞にノミネート。
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聴覚障害を持ちながらも各界で活躍する人々を紹介する番組「聽聽看」の製作陣。陳濂僑の美ボディーとモデルウォークに圧倒されます。
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長編ドラマ「無塵之地」のキャストと製作陣。撮影賞、美術デザイン賞、編集賞にノミネートされています。
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一際黄色い歓声を浴びたのは、韓国からのプレゼンターゲスト、チョン・ヘイン。今回は、劉以豪と共にプレゼンターを務めます。
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韓国映画のリメイクで主演するなど、近年韓国に縁がある劉以豪(リウ・イーハオ)は、韓国語も勉強中とのこと。
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ミニドラマ「夏之橘」で主演男優賞、助演男優賞にノミネートの藍葦華(ラン・ウェイホア)と蔡明修(ツァイ・ミンシウ)。DV夫の役を演じた藍葦華は、2015年から毎年ノミネートされている実力派。ぱっと見は怖そうですが、プライベートは子煩悩の家庭人だそうですよ。
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台湾エンタメファンにはおなじみの小鬼こと黃鴻升。かわいらしいイメージのあった彼も今やクールガイになっていてビックリ!!
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張軒睿(デレク・チャン)はいつもながらスタイル抜群!
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ナビM的この日一番格好いいなと思ったのが溫昇豪(ウェン・シェンハオ)!
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2019年は未来を変えるターニングポイント?
量産はされるものの良質な作品は極めて少なく、長らく低迷ぎみだった台湾ドラマ。2019年はそんなダウントレンドを覆す秀作が次々に放送され、台湾ドラマ製作陣の底力を見せつけました。中でも、14ノミネートを記録したのが「我們與惡的距離」と「你的孩子不是你的孩子」の2作品。これは金鐘奨史上最多ノミネートだそうで、両作品ともそれだけ突出して優れた作品であることがうかがえます。
そんな例年より大きく注目を浴びた今年の金鐘奨の幕は、3年連続でメイン司会を務める黃子佼(ミッキー・ホアン)の登場により切って落とされました。黃子佼が最初に口にしたのは、「今年の金鐘奨は三金合一」という言葉。「三金合一」とはしばしば台湾の金馬、中国の金鶏、香港の金像の受賞者が一堂に介すことを指しますが、今回の三金は金鐘奨、金馬奨、金曲奨のことです。そう、金曲や金馬で受賞歴のある音楽人や映画人が、今年はジャンルを超えて例年より多く参加しました。
そして、今年はメイン司会に加え、各賞目ごとにサブ司会者を立てるという初めての試みにも挑戦。金曲奨受賞歴のある亂彈阿翔、弟子の黃路梓茵(Lulu)、ノミネート番組で相棒を務める吳姍儒(サンディー・ウー)らが交代で司会のパートナーを担当しました。
写真提供:金鐘奨
宇宙服を着た黃子佼が、8メートルのワイヤーに吊られてステージ上方から降臨。60年代のテレビフレームの中に降り立つ姿は、月面着陸がモチーフ?テレビのフレームは、やがてスマホのフレームに代わり、テレビ番組を視聴するデバイスが変化し続けていることも表現します。
この授賞式もネットでライブ配信していることから、現代の変化に適応する意欲が見受けられます。
感動を誘う黃小琥(タイガー・ホワン)の哀愁ある歌声。
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周興哲(エリック・チョウ)は、緊張のせいか歌声が若干不安定でハラハラするシーンも。
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写真提供:金鐘奨 |
アワードを盛り上げた最初のゲストは黃小琥。
「我是電視人、所以我驕傲(私はテレビ人、だから誇りに思う)」と題して、「出頭天」、「洋蔥」を切々と歌い上げました。制作現場の裏側にいるスタッフにフォーカスした映像がバックスクリーンに映し出されると、ゲストたちに思わず涙が……。監督や俳優たちからスタッフへの「ありがとう」のビデオメッセージも泣かせます。普段は表舞台に出ない人にスポットライトを当てるのも忘れない、台湾らしい公平さを感じられるのはこんなときです。
そしてもう一人のパフォーマンスゲストは、今をときめくバラード王子・周興哲。「是熱情 我們創意無限奔放」と題し、「別讓我走遠」(林宥嘉/我們與惡的距離)、「晚點開竅」(文慧如/20之後)など各ノミネート作品の主題歌を含めたメドレーをピアノで弾き語りしました。
若手の女性司会者として、立ち位置がかぶる黃路梓茵と吳姍儒。笑顔で「プライベートでは仲がいい」と言いつつ、あえて牽制し合う様子で笑いを取ります。
写真提供:金鐘奨
そんなこんなで例年以上に盛り上がったアワードですが、実は本来の放送時間を一時間近くオーバー。
名司会・黃子佼を以てしてもコントロール不可能なほど盛り上がった側面も確かにありますが、その後黃子佼自身の口から「リハーサルの時から全然時間足りないと思っていたよ」という発言が(笑)。どうやら進行の問題というより、物理的な時間配分に無理があったようで、これもまたある意味、台湾らしさが出たといえそうです。
阿翔のフリースタイルな進行ぶりに、的確なツッコミでリードする黃子佼。中でもおかしかったのは「いつも黒髪ストレートだけど、今日はカールしてない?」……あ、ほんとだ!
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ミニドラマ「魂囚西門」の主演女優賞ノミネートの謝盈萱(シエ・インシュエン)。ノミネート者も、司会やプレゼンターを兼任するのが面白いなあと毎度感じます。黃子佼は彼女のものまねをしているつもりなのでしょうか?若干迷走気味ですが、プレスルームでは大受けでした。
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写真提供:金鐘奨 |
例年以上に注目されたドラマ部門「你的孩子不是你的孩子」が圧勝
ドラマ賞は、戲劇節目(長編ドラマ)と迷你劇集(ミニドラマ=全放映時間が600分未満)の二つに大別されます。監督、俳優、作品賞はそれぞれ別の賞が設けられるのですが、撮影・編集・美術デザイン・照明などテクニカル部門については、「ドラマ」「非ドラマ」の区別のみ。ドラマ長編とミニの区別はなくなり、同じ土俵の上での戦いとなります。
今年の注目作は、なんといっても長編ドラマ「我們與惡的距離」とミニドラマ「你的孩子不是你的孩子」の2作品。放送時から高視聴率を記録し、話題をさらいました。美術デザイン賞、編集賞はオムニバス『你的孩子不是你的孩子』の「貓的孩子(猫の子)」 、音響効果賞は「最後一次溫柔」、照明賞は「靈佔」、撮影賞は「憤怒的菩薩」が受賞。
音響効果賞を除く、4つのテクニカル部門にノミネートされていた「我們與惡的距離」は、テクニカルすべての受賞を逃すというまさかの結果になりました。
ミニドラマ新人賞受賞の梁湘華。
ミニドラマ新人賞は、「你的孩子不是你的孩子」から3人がノミネートされていましたが、最終的に最優秀を受賞したのは「
最美的風景」の
梁湘華(リャン・シャンホワ)でした。
同じく
ミニドラマの助演男優賞は、「
奇蹟的女兒」の
黃鐙輝(ホアン・ダンホイ)。プレゼンターの楊小黎から「南港の劉德華(アンディ・ラウ)」と紹介された助演男優賞受賞の黃鐙輝。やけにウケてるなと思ったら、この渾名、自称だそうです(笑)。メディアにも愛されているようで、プレスルームは大歓迎ムード。本人はまったく想定していなかったようで、なかなか言葉が出てこない様子にこちらまでついもらい泣き。
続いて
助演女優賞は去年の主演女優賞に続き、今年も受賞を果たした「
3天2夜」の
陸弈靜「你的孩子不是你的孩子-貓的孩子」でノミネートされ、「返校」「愛情白皮書(あすなろ白書~Brave to Love~)」(2019年台視バージョン)などでも人気急上昇中の王淨は惜しくも受賞を逃しました。
黃鐙輝(ホアン・ダンホイ)
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去年の主演女優賞に続き、今年も受賞を果たした「3天2夜」の陸弈靜。
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主演女優賞受賞の鍾欣凌は、涙でぐちゃぐちゃの顔をしていても、そこはかとなくコミカル感が漂い愛らしさ全開!「スタイリストさんが「ダイエットの必要はない。あなたはぽっちゃりしたままで美しいんだから」って言ったから、本当にダイエットしていません!」というコメントに全力で同意します。
そして
脚本賞は「
夏之橘」の
靳家驊(ジン・ジアホワ)、
ミニドラマ賞は「
奇蹟的女兒」、
テレビシネマ賞は「
你的孩子不是你的孩子-貓的孩子」が受賞。
主演男優賞は「
公視人生劇展第一響槍」の
吳朋奉、
主演女優賞は「
你的孩子不是你的孩子」の
鍾欣凌、
監督賞は
陳慧翎(チェン・フイリン)と
余慧君(ユー・ホイジュン)が受賞。你的孩子不是你的孩子-貓的孩子(~猫の子~子供はあなたの所有物じゃない)」が圧倒的強さを見せました。
「你的孩子不是你的孩子」は、親と子どもの関係をテーマにした5つの物語のオムニバスで、それぞれ学歴社会や親の期待によって、押し潰される子、ゆがんでいく家族が描かれたもの。動画配信サービスNetflixで、世界同時配信された初めての台湾ドラマでもあります。「下一站,幸福(秋のコンチェルト)」でも知られる本作の陳慧翎監督は、実は3年前、ガン発症により撮影は一時ストップ。当時「最後に撮るならどんな作品にするか」と考えた末、生まれたのが本作だそうです。幸い監督は病を克服し今に至りますが、作品に込められた渾身のメッセージは多くの人の心を揺さぶりました。
監督賞を受賞した陳慧翎と余慧君。陳慧翎監督は、激励の意を込め、劇中の「持ちこたえろ」というセリフをみんなで叫ぼうと提案。本作に友情出演した吳慷仁もステージに上げ、会場中を巻き込んでの大合唱は印象的でした。
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主演男優賞の吳朋奉が受賞。吳朋奉はこのときプレゼンターを務めていたのですが、自らが受賞するという嬉しい結果に。
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鄭有傑(チェン・ヨウジエ)監督と莫子儀(モー・ズーイー)
写真提供:金鐘奨
ミニドラマ賞とテレビシネマ賞のプレゼンター、
鄭有傑監督と
莫子儀は、昨年受賞を逃したことを自虐ネタに。「今年はドラマ出演もした」という監督に、莫子儀は「僕は去年受賞できなかったから、今年は声がかからなかった。5回ノミネートされても受賞できない役者のために機会を譲ってほしい」と悲しそうな顔を見せました。
ネタじゃなくて、もしかして本音?シャレになってない気がするのですが……(汗)。
怒涛の6部門受賞!「我們與惡的距離」旋風が席巻
新人賞の梁舒涵(リヤン・シューハン)のお父さんは、なんとバックステージに控えるカメラマンの一人でした!プレスルームは異様に盛り上がり、親子ショットの撮影にわきました。
長編ドラマの新人賞は「
女兵日記」の
梁舒涵が受賞。彼女のお父さんは、なんとバックステージに控えるカメラマンの一人でした!プレスルームは異様に盛り上がり、親子ショットの撮影にわきました。
曾沛慈
助演女優賞は「
我們與惡的距離」の
曾沛慈。元々歌手としての人気も高い人ですが、今回の役柄を通して女優としても確実に脱皮した感があります。繊細な感情表現が非常に際立っていました。
夫婦役のカップル受賞
助演男優賞は、同じく「
我們與惡的距離」から林哲熹と洪都拉斯(ホンジュラス)、溫昇豪の3人がノミネートされていましたが、最終的に賞を射止めたのは
溫昇豪。「日據時代的十種生存法則」で初の日本人俳優ノミネートとなった蔭山征彦は、残念ながら受賞を逃しました。
主演女優賞も同作の
賈靜雯が受賞しました。予想通り誰もが納得したのではないでしょうか?息子を失った心の穴を、仕事とお酒で埋めるメディア管理職の役は、真に迫っていました。
娘さんがお祝いに駆けつけた主演男優賞の龍哥こと龍劭華。記者の一人ひとりと目を合わせてくれる気配りにびっくり。そんなことされたら惚れちゃいます。
主演男優賞には、同作から吳慷仁、また溫昇豪が「雙城故事」でダブルノミネートされていましたが、今回は「
菜頭梗的滋味」の
龍劭華(ロン・シャオホワ)に座を譲りました。娘さんがお祝いに駆けつけた龍哥こと龍劭華。記者の一人ひとりと目を合わせてくれる気配りにびっくり。そんなことされたら惚れちゃいます。
主演男優賞は逃したものの、「我們與惡的距離」旋風は止まらず、監督賞と脚本賞にそれぞれ林君陽(リン・ジュンヤン)と呂蒔媛(リュー・シーユエン)、さらに長編ドラマ賞も受賞を果たしました。
2012年の「我可能不會愛你(イタズラな恋愛白書)」7部門受賞の記録を塗り替えることはできませんでしたが、堂々6部門受賞を果たし、今年最多受賞作品となりました。
男女助演賞の二人。姉弟役受賞ツーショットは叶わず……。
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賈靜雯
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「我們與惡的距離」は、無差別殺人で家族を失った遺族、社会的に抹殺される加害者家族、厳しい批判にさらされる犯人の弁護士など、一つの事件が異なる立場の人間に与えた波紋を描いた作品です。2014年に台湾を震撼させた実際の事件の犯人をモチーフにしたことでも大きな反響を呼びましたが、それ以上にドラマとしての完成度が非常に高かったことが今回の受賞につながりました。日本でも衛星チャンネルですでに放送されていますので、機会があったらぜひともご覧いただきたい、これまでの台湾ドラマのイメージを覆すパワーを秘めた作品です。
たった一つだけナビ的に残念だったのは、本作で統合失調症という難役に挑戦した林哲熹が助演男優賞を逃したこと。台湾の最大掲示板でも「今年受賞を逃して残念だったのは誰?」というスレッドが立ち、そこを埋め尽くしたのは二つの名前でした。一つは林哲熹、もう一つは應思聰(イン・スーツォン)。後者は林哲熹が演じた役名です。下馬評も高く、レッドカーペットの記者スペースでも、「林哲熹が来る」とスタッフから告げられた時は、「林哲熹!林哲熹!」というコールが記者の間で起きたほど。ナビの経験ではそんなことは初めてで、その反響の大きさから、受賞はほぼ決まりだと思っていただけに、普段は大好きな溫昇豪の受賞にも複雑な気持ちを拭えませんでした。ナビ個人的な意見を言わせてもらえば、「我們與惡的距離」における役どころの重要性も演技も、林哲熹より勝っていたとは考えづらいです。思い起こせば、かつて「犀利人妻(結婚って、幸せですか)」の瑞凡役で溫昇豪が主演男優賞を逃したときも、今回と同じように非常に落胆したことがあります。視聴者の思いと審査員の判断は、往々にして異なるものですね。残念すぎますが、今後の活躍に期待します。
監督賞の林君陽。これから要注目の若き才能です。
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脚本賞の呂蒔媛。
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バラエティー、リアリティー番組も花盛り!2019年はターニングポイントの年?
通常、受賞者はすぐバックステージを訪れ、プレス向けのフォトセッション、コメントをするのですが、黃子佼はアワードの進行をすべて終えてから最後にプレスルームへ。お疲れ様でした。
他ジャンルの主な賞は
番組賞と
司会者賞です。
バラエティー番組賞は、歌手オーディション番組「
聲林之王」が受賞。蕭敬騰(ジャム・シャオ)と林宥嘉(ヨガ・リン)、二人の人気歌手を講師に迎えたこの番組は、海外からの参加者もいるほど人気が高く、受賞時にはプレスルームからも歓声があがりました。
バラエティーの司会者賞は、「
超級同學會」で
黃子佼と
卜學亮(ブー・シュエリヤン)が受賞。
黃子佼は、さらに教養リアリティー番組「
一呼百應」の
司会者賞と
番組賞のトリプル受賞という快挙です。ノミネートされている人にもアワードのメイン司会者をさせてしまうのが、やはり恒例台湾あるある!(笑)
昨年ノミネートのみで涙をのんだ卜學亮は、18年ぶりの受賞に。
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黃子佼とともに、「一呼百應」の司会者賞を受賞した吳姍儒。同じジャンルでノミネートされていた吳宗憲(ジャッキー・ウー)を父に持つだけあって、頭の回転の速さは父親譲り。受賞後、バックステージでの囲み取材では、少しでも記者の質問が途切れると「もう聞きたいことはない?じゃあ帰るわ」とテキパキとした仕切りぶりを見せ、笑いを取っていました。
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李霈瑜(パティー・リー)
ライフスタイルジャンルは、
番組賞、
司会者賞ともに世界中の海をめぐるスキューバダイビングの番組「
水下三十米」が受賞。
大霈こと
李霈瑜は、英語、広東語も操る才女ですが、爽やかで嫌味のないキャラクターで愛されています。なんと3日間でスキューバダイビングのライセンスを取り、すぐに撮影に入ったのだとか。海のことを知らない彼女を厳しく指導したのがプロデューサーの李景白。彼の教えがあり、今や「大海の子」と自分で言うほど、海が好きになったようです。台湾はもちろん世界中の美しい海を見られる番組でなので、海好きは要チェック!
薛紀綱(シュエ・ジーガン)
児童番組の司会者賞は、台湾原住民の文化を紹介する「
Kakudan時光機」のLan-paoこと
薛紀綱が受賞。
「kakudan」とは、パイワン族語で文化や慣習を表す言葉だそうです。Lan-pao自身は漢民族ですが、この日はルカイ族の伝統的な衣装を着て、台湾原住民へのリスペクトを示しました。
71歳の娘、張小燕の受賞に、94歳になる母が登壇。かくしゃくとした様子に「まるで姉妹みたい」と会場は感心しきり。
写真提供:金鐘奨
また特別賞の「
終身成就獎」も重要な賞の一つです。テレビ界に大きな貢献をした人に対して与えられる「終身成就獎」は、バラエティー番組の司会者としておなじみ
張小燕(ジャン・シャオイエン)に贈られました。彼女は名子役としての子供時代から今日まで台湾芸能界で長く活躍している人で、金鐘賞をはじめその受賞歴は数えきれないほど。ストレートな物言いと包容力のあるキャラクターで、多くの著名人に母のように慕われています。芸能人をゲストに迎える番組を長く担当していたので、日本でいえば黒柳徹子のような立ち位置といった感じでしょうか。
彼女が登壇すると、ノミネート者をはじめ会場全員が立ち上がりました。ほかにこんなことはありませんから、それだけ彼女に対するリスペクトが感じられますね。S.H.E.のELLA、盧廣仲(クラウド・ルー)、aMEI(張惠妹)、陶喆(デビッド・タオ)、香港の俳優エリック・ツァン(曾志偉)など名だたる 著名人からのビデオメッセージに広い交友関係がうかがえます。
受賞コメントでは、12歳の初舞台の思い出から、失業の危機、低迷期、そして還暦を過ぎて奇跡の復活を果たしたことなど、決して順調満帆ではなかった半生が語られました。笑いを取りつつ、ほろっと泣かせる聴かせどころもあり、人を引きつける話術はさすが。「テレビ(番組)を作ることが大好き。テレビの前で見てくれる視聴者の方、皆さんのお茶の間に迎えてくれてありがとう。一緒に笑ったり泣いたり、皆さんの人生のそれぞれの時代に寄り添える人でありたい」と、テレビ人らしい言葉でしめました。
これまでも公視のドラマは定評があり、多くの秀作を世に送り出してきましたが、今年は111がノミネートされ、テレビ局の最多ノミネート数の記録を塗り替えました。「我們與惡的距離」、「你的孩子不是你的孩子-貓的孩子」も公視の作品です。
また、近年資金不足に苦しんでいた台湾テレビ界ですが、ドラマに関しては配信サービスの急速な普及によって、新しい希望の光が示されました。「我們與惡的距離」は、米ケーブルテレビ放送局HBOの傘下HBOアジアによる共同制作ドラマで、すでにシーズン2の撮影も決定しています。「你的孩子不是你的孩子-貓的孩子」、「雙城故事」は、Netflixで世界中に配信されました。奇しくも昨年、鄭有傑監督が言った「台湾には優秀なスタッフと才能ある俳優がいます。みんなが頑張り続ければ必ず成し遂げられるはずです」という言葉のとおりになりつつあるのではないでしょうか。配信サービスによって視聴者が世界中に広がり、その分国外の投資も見込めるようになったことは、大きなターニングポイントといえるでしょう。もちろん資金さえあればいい作品が作れるわけではありませんが、資金がなければ現場の人間が疲弊しやがて潰れてしまいます。公視の成功モデルを他局でも踏襲・アップデートしていくことで、台湾テレビ界全体がもう一度盛り上がるのではないか、そんな明るい未来を感じさせられる今年のアワードでした。昨年の今頃は「応援したい」という気持ちだったのですが、今年は「今後が楽しみ」という気持ちでいっぱいです。
以上、台北ナビ(二階堂 里美)でした。
上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。
記事登録日:2019-11-28