桃園で体感する眷村文化

特色ある2つの軍人村「馬祖新村」と「忠貞新村」を訪ねて

こんにちは、台北ナビです。

眷村と呼ばれる軍人村をご存じでしょうか?実は台湾各地に点在し、一時はその数800を超えていたとも言われています。本日は、台北近郊の桃園市へ、2つの眷村を訪ねてみました。

眷村(軍人村)とは?

第二次世界大戦後の国共内戦(中国で起きた中華民国の国民政府軍と中国共産党の紅軍間の戦い)において、中国大陸での拠点を失った蒋介石率いる国民政府軍は台湾に撤退。軍人や公務員、教師などは彼と共に台湾に移り住み、各地に集落を作りました。それが軍人村、「眷村(ジュンツゥン)」です。

日本統治時代の宿舎を利用したり、あるいは公園などの空き地に簡素な住まいを建てたり、と形はさまざまでしたが、そこでは故郷を想う気持ちから独特な文化が形成されていきました。ふるさとの味を再現した「眷村菜」と呼ばれる料理は、軍人村文化の特徴の1つであると言えるでしょう。

しかし、にぎわいを見せていた眷村も時代の流れと共に衰退していきます。今も住民が暮らす眷村がある一方、失われていく眷村も…。老朽化が目立つ建物は取り壊されて高層マンションへ。世代が代わり村を出て行く者も少なくありません。そんな中、眷村文化を守るべく、政府が中心となって歴史的建築物の保存と活用に力を入れているエリアもあります。
当時をしのぶ生活用品 当時をしのぶ生活用品

当時をしのぶ生活用品

建て替え後、姿を変えた建物 建て替え後、姿を変えた建物

建て替え後、姿を変えた建物

さまざまな道を歩いている各地の眷村。その今を探るべく、桃園市の龍岡エリア(中壢区&平鎮区)にある2つの眷村を歩いてみることにしました。

リノベスポットに大変身!――馬祖新村

かつての住民は姿を消しましたが、住居跡がリノベーションされて歴史とアートを感じられる場所として生まれ変わったのが、「馬祖新村眷村文創園區」です。

1957年に整備された馬祖新村は、馬祖列島に駐留していた軍人たちにあてがわれた住まいでした。何でも、当時の馬祖には軍人やその家族が安心して暮らせる寺廟や居住がなかったため、蒋介石に伴って馬祖視察に訪れた夫人の宋美鈴がそれらの問題を解決しようと関係各所に働きかけて建てられたのだとか。そのため、「馬祖新村」と名付けられています。
ほかの眷村とは異なり、アメリカ式の建築法を取り入れた造りで、建物は放射線状に配置され、3メートルの広い道路脇には草木もたくさん植えられています。当時210戸あったという住宅は、八角亭(あずまや)を中心に軍の階級によって分類されていました。灰色の瓦屋根、赤レンガ、紅白の門、黄緑色の窓枠に小さな庭など、レトロな風景が今なお残されています。
かわいい街並み かわいい街並み

かわいい街並み

建築構造もじっくりと眺めたい 建築構造もじっくりと眺めたい 建築構造もじっくりと眺めたい

建築構造もじっくりと眺めたい

2004年に正式に歴史建築として登録され、2012年には国防部より保存対象の13眷村の1つとして選定されました。その後、リノベーションがスタートし、2019年には「馬祖新村眷村文創園區」として一般開放も開始しています。

歴史とアート、新旧が交錯する場所を目指して

園内にある「眷村故事館 」はかつての暮らしが垣間見られる展示が行なわれています。昔のままの建物内には、往時の暮らしも再現されていてレトロムード。残念ながら解説は中国語ですが、展示物を眺めるだけでも楽しめます。
歴史に触れるなら眷村故事館へ 歴史に触れるなら眷村故事館へ

歴史に触れるなら眷村故事館へ

当時の住民が軍隊時代に着用していた服 当時の住民が軍隊時代に着用していた服

当時の住民が軍隊時代に着用していた服

昔の食卓風景。家族みんなでにぎやかな食卓を囲んだのでしょう…

昔の食卓風景。家族みんなでにぎやかな食卓を囲んだのでしょう…

懐かしい暮らしの欠片が今も… 懐かしい暮らしの欠片が今も… 懐かしい暮らしの欠片が今も…

懐かしい暮らしの欠片が今も…

昔懐かしい玩具 昔懐かしい玩具

昔懐かしい玩具

当時の暮らしの場をそのまま保存 当時の暮らしの場をそのまま保存 当時の暮らしの場をそのまま保存

当時の暮らしの場をそのまま保存

桃園光影

桃園光影

また、かつての集会所的役割の活動センターは、映画の楽しめる「桃園光影」として生まれ変わりました。台湾内外のさまざまな映画を観賞したり、映画に関する展示に触れることができます。

ほかにも、週末を中心にカフェや服飾グッズの店、書店などの営業も。さらに月1で、台湾人アーティストやクリエイターによる週末マーケットが開催されています。平日は人影も少なく、時代から取り残されたような淋しい雰囲気を醸し出していますが、フォトスポットとしては最高!写真好き、レトロ好きならきっと楽しめます。しかし、よりにぎやかな街並みを歩きたいなら、断然スケジュールをチェックして向かうことをオススメします!
ショップの営業は週末が中心。雨降りの平日に訪れたナビはちょっと失敗しちゃったカナ… ショップの営業は週末が中心。雨降りの平日に訪れたナビはちょっと失敗しちゃったカナ… ショップの営業は週末が中心。雨降りの平日に訪れたナビはちょっと失敗しちゃったカナ…

ショップの営業は週末が中心。雨降りの平日に訪れたナビはちょっと失敗しちゃったカナ…

「馬祖新村眷村文創園區」の新たな歴史は始まったばかり。現在も修繕中の場所が多々ありますが、今後さらに多彩なショップも入居予定というから楽しみですね!これからの動向にも要チェックです。
◆アクセス◆
台鉄「中壢火車站」下車、桃園客運バス5098、5008、112南、115甲、または中壢客運バス112北に乗車し、「馬祖新村站」バス停下車。

馬祖新村眷村文創園區→https://www.facebook.com/ArtMatsuVillage/
馬村市集(週末マーケット)→https://www.facebook.com/MaTsuNewVillageMarket/

眷村スタート地点の1つ――忠貞新村

青空に映えるだろう青天白日満地紅旗。残念ながら今回は大雨…涙

青空に映えるだろう青天白日満地紅旗。残念ながら今回は大雨…涙

「忠貞新村」は、雲南やタイ、ミャンマーの国境付近から撤退した軍人(泰緬孤軍)やその家族が多く暮らす眷村でした。集落ができ始めたのは国民党政府が台湾に移った後 の1954年前後、最初期に建設された眷村の1つであると言われています(※)。草木の生い茂る荒地に政府が建設した住宅は、狭く質素なものでしたが、彼らは身を寄せ合って暮らしていました。決して裕福とは言えない暮らし向きだったそうですが、路地に国旗(青天白日満地紅旗)を掲げ、共に頑張って生計を立ててきたそうです。

※台北の四四南村をはじめ、ほかエリアにも最初の眷村という声が
街角のポスターにも故郷を懐かしむ気持ちが…

街角のポスターにも故郷を懐かしむ気持ちが…

別名「雲南村」と呼ばれるほど、集落には雲南の言葉が響き、異国情緒が漂っていたという「忠貞新村」。彼の地の食文化も持ち込まれて発展してきました。しかし、にぎわいを見せていた「忠貞新村」はもうすでにありません。2004年、老朽化のために取り壊され、数百戸あったという住居は消え、住民たちは新天地を求めて移転を余儀なくされました。現在、跡地には「雲南文化公園」ができ、周辺住民の憩いの場となっています。

とりわけ毎年国慶日(10月10日:中華民国建国記念日)には、空を埋め尽くすほどの国旗がはためき圧巻です。

雲南の味が楽しめる忠貞市場

国旗屋は台湾の青天白日満地紅旗がいっぱい!

国旗屋は台湾の青天白日満地紅旗がいっぱい!

国慶日に「雲南文化公園」に旗を掲げているのは、公園の隣で飲食店を営む張老旺さん。 毎年自費で行なっているそうです。張さんの店はその名も「国旗屋」。こちらは常に国旗で飾られていてちょっとした名所となっています。

食べられるのは「米干(ミーガン)」と呼ばれるお米でできた麺で、ここで暮らす彼らと共に海を渡ってきた料理の1つです。この一帯にはほかにも「米干」を出す店が数多くあります。
至る所に「米干」の看板 至る所に「米干」の看板

至る所に「米干」の看板

これぞ眷村菜を出す店!という雰囲気の「忠貞眷村口」には米干も

これぞ眷村菜を出す店!という雰囲気の「忠貞眷村口」には米干も

忠貞市場内にある屋台「阿鐵妹」は乾燥牛肉のほか、雲南の特色料理が

忠貞市場内にある屋台「阿鐵妹」は乾燥牛肉のほか、雲南の特色料理が

スタイリッシュな「阿含thai」は現代風のモダンなタイ風カフェ

スタイリッシュな「阿含thai」は現代風のモダンなタイ風カフェ

「米干」を食べるなら、オススメは「忠貞誠」。1991年創業と歴史はありますが、きれいに改装された店内は、清潔でレトロモダンな雰囲気が漂います。周辺にいくつも「米干」の店はあれど「週1で通っちゃう!」という地元民もいるほど人気店なのだとか。今回は時間がなくて「米干」にありつけなかったナビ…(何やってるんだ!?)次回は絶対食べるゾ―!
お洒落な忠貞誠

お洒落な忠貞誠

笑顔の素敵なおかみさん

笑顔の素敵なおかみさん

そんな「忠貞誠」が位置しているのは、「忠貞市場」の中ほどです。ここはかつての「忠貞新村」のほか、隣接していた2つの眷村、「中正新村」や「貿易七村」とも隣り合わせとなり、住民の台所としてにぎわっていました。周辺の眷村で暮らす人々の食材から衣類や靴などの日用品まで何でも揃う市場で、特に雲南・タイ・ミャンマーの食材や料理が豊富だったとか。眷村が消失した今も市場は健在で、往時のにぎわいを見せています。わざわざ遠方から雲南・タイ・ミャンマー料理を食べにやってくる人もいるそうですよ。
暮らしに欠かせない品々が並ぶ市場 暮らしに欠かせない品々が並ぶ市場 暮らしに欠かせない品々が並ぶ市場

暮らしに欠かせない品々が並ぶ市場

時刻はすでにお昼過ぎ。買い物をする人の姿はまばら 時刻はすでにお昼過ぎ。買い物をする人の姿はまばら 時刻はすでにお昼過ぎ。買い物をする人の姿はまばら

時刻はすでにお昼過ぎ。買い物をする人の姿はまばら

売り物のように座るネコ

売り物のように座るネコ

バイクもお店に大変身!

バイクもお店に大変身!

◆アクセス◆
台鉄「中壢火車站」下車、桃園無料バスL210(東勢紅)、L211(東勢藍)に乗車し、「忠貞市場」下車。

国旗屋
桃園市中壢區龍平路215号
平日5:00~19:00、休日10:00~20:00

忠貞誠
桃園市中壢區前龍町38号
6:00~14:00(月曜休み)

台湾レトロな風景が広がる2つの眷村を歩いてみませんか?

以上、台北ナビでした。

上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。

記事登録日:2019-10-25

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