大原扁理の台湾読書日記⑥ 『おかえり台湾』

カルチャー感度がずば抜けた友達が台湾を案内してくれたような、お得な旅気分を味わえる本

こんにちは。大原扁理です。

以前、TBSラジオのカルチャーキュレーション番組『アフター6ジャンクション』を聴いていたときのこと。ものすごい熱量で台湾愛を語りまくる、語彙力と表現力がただごとではない女性のトークにあっとういう間に引き込まれていました。調べたら、どうやら台湾本を何冊も出版されているらしい。それが台湾大好き声優・池澤春菜さんとの出会いでした。今回は、そんな池澤春菜さんの台湾本を紹介します! 
 

声優と芥川賞作家、文化のプロの視点で見える台湾とは?

さて、台湾本はたくさん出されている池澤さん。なかでも、ちょっと変わった趣向の本『おかえり台湾』をピックアップしてみました。こちらは池澤さんと、盟友であり芥川賞作家でもある高山羽根子さんの二人旅に密着した本。タイトルと、副題「食べて、見て、知って、感じる 一歩ふみ込む二度目の台湾案内」からもうかがえるとおり、初めての台湾というよりは、リピーター向けの内容になっています。
旅先でアートや伝統文化に触れたとき、ああもっと詳しい人がいれば……と思ったこと、誰でも一度はありますよね。実は池澤さん、声優でありながら高級評茶員と中級茶藝師の資格を持ち、高山さんは芥川賞作家であると同時に美大出身で美術評もされているとか。いわばその道のプロである二人が、茶藝館やアートスポットを案内してくれるのです!とはいってもご高説を賜るのではなく、あくまでプロの雑談を聞きながら、くらいのカジュアルさなので、素人にも親しみやすいのがうれしいところ。

台湾の懐にふみ込む力がハンパない

注目は、台湾愛ほとばしる池澤さんが「ふみ込む!」と言ったときの、ふみ込み度合い。茶器の絵付けや台湾菓子作りなど、一般公開されている体験モノはもちろんですが、池澤さん行きつけの名店では老闆に頼んでキッチン内部まで入ってレシピを伝授してもらったり、知り合いのツテを頼って台湾アニメ映画『幸福路のチー』の宋欣穎(ソン・シンイン)監督との鼎談も。いやわかります、あの熱量で「好きなんです!教えてください!!」と言われたら、誰でも嬉しくなって胸襟を開いてしまうでしょう。 
個人的には、台湾カルチャーの「中の人」のリアルな声がわかる、ギャラリーや独立系書店の方々の話が面白かった。社会の情勢とともに刻一刻と移り変わる表現と、それを支える台湾の人々がいま何を考えているのかが見えてくるようで。
どんなに台湾好きでも、個人ではなかなかたどり着けない場所もある。なので、ここはご両人の爆裂好奇心を遠慮なく拝借しようじゃありませんか! 

渡航回数60回の台湾猛者に引きずり回される幸福(笑)

そして台湾旅行で絶対に外せないのが美食!いや美食なんてほかの旅行雑誌にもたくさん載ってるし~、と思われるでしょう。台湾ではトラベルライターをしていた私ですが、知らないお店がたくさん……(汗)。というのも、「おや?そのあたりは観光地ではないですよ?」という、ガイドブックではカバーできない店がいっぱい出てくるんです。 
池澤さん、台湾に行く度に自分でリサーチし、足を運び、実食し、その成果を個人的にノートにまとめ続けているのだそうで……。つまり渡航回数60回分のデータの中から厳選されたお店が紹介されているということなのです!もう胃袋と知的好奇心が満腹すぎてはちきれそう。 
さらにこの本、出発時の空港のようすから、旅行中のトラブル、帰国後の振り返り雑談やおみやげ紹介にまで密着しているので、まさにご両人といっしょに旅したような贅沢気分が味わえるのです。持つべきものは、台湾愛ほとばしる、カルチャーに詳しい友人ですな~。いやよく考えたらそんな友人はいないんですが(笑)、そんな友人のような役割を果たしてくれるありがた~い本、なのです。 

今回紹介した本】 

『おかえり台湾』著・池澤春菜、高山羽根子(インプレス)1680円+税 2020年5月21日出版 

・池澤春菜さんのTwitter:https://twitter.com/haluna7 

・高山羽根子さんのTwitter:https://twitter.com/HighMt_HNK 

画像提供:株式会社インプレス

上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。

記事登録日:2021-11-11

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