【台湾本】大原扁理の台湾読書日記⑲『台湾 和製マジョリカタイルの記憶』

台湾の古民家でよく見かけるレトロかわいいタイル。日本との深~いつながりとは!?

こんにちは、大原扁理です。

台湾の街なかを歩いていて、古い建築の壁などに、レトロなタイルを見かけたことがある方は多いんじゃないでしょうか。あまりにもかわいいので、私もつい立ち止まって眺めたり、写真を撮ったりしてしまいます。
日本では見たことのないデザインだから、さすが台湾と思っていたのですが。なんとその多くは日本で作られ、台湾に輸入されたものだったって知ってましたか?(私も最近知ってビックリしました……!)

今回は、そんな台湾タイルの歴史に迫る本、『台湾 和製マジョリカタイルの記憶』をご紹介します!

日本統治時代に生産されたタイルが、台湾で爆発的に大ヒット

この本では、タイルという文化の起源を、約2000年前から遡るわけですが、そこから紹介するととんでもなく長くなってしまうので、19世紀まで早送りします(笑)。
明治維新以降、西洋文化の影響をふんだんに受けてきた日本。このとき、西洋の近代建築とともに、タイルという装飾文化も流入してきます。20世紀に入ると、淡陶など日本の企業が、和製彩色タイルを自社で大量生産できるようになりました。

やがて日本のタイル企業は、国外にも輸出するべく、海外の文化や風土に合わせたデザインを作り始めます。
タイルの特徴としては、安価、色鮮やか、清掃がカンタン、風雨や日光に強い、運搬しやすい、耐久性もバッチリ、デザインが豊富でアレンジ無限……などなど、数々の長所がありました。その結果、台湾では富の象徴として、こうしたタイルで家の外装を飾るのが大流行した、というわけなんですね~。

カタログとしても楽しめる!全頁フルカラーでタイルを紹介

【台湾本】大原扁理の台湾読書日記⑲『台湾 和製マジョリカタイルの記憶』 台湾和製マジョリカタイルの記憶 マジョリカタイル 台湾本 台湾良書 ブックレビュー 読書大原扁理 【台湾本】大原扁理の台湾読書日記⑲『台湾 和製マジョリカタイルの記憶』 台湾和製マジョリカタイルの記憶 マジョリカタイル 台湾本 台湾良書 ブックレビュー 読書大原扁理
さてさて、ごく簡単にタイルの近代史をまとめてみましたが、歴史は苦手という方も楽しめちゃうのがこの本のいいところ。

というのも、この本には、膨大な和製マジョリカタイルの写真が全頁フルカラー掲載されているのです!しかもデザインや用途ごとにまとまっていて、とっても見やすい!
よく見かけるのは正方形のものだと思いますが、中には長方形のものや、剪黏という立体的な一点モノも。また、国によってタイルのデザインや用途が異なることから、その国が建築装飾に何を求めているのかが見えてくるようで興味深いです。
歴史文化研究者の著者・康鍩錫さんは、なんと20年以上、台湾をはじめ世界中のマジョリカタイルを収集・記録・保存し続けている、タイルの専門家でもあります。その数なんと2000種類以上。そんな長年の取材の成果が一冊にまとまっているのだから、こんなにお得な本はありません!

和製マジョリカタイルタイルを一挙に見られるスポットを紹介

和製マジョリカタイルを見学できる日台のスポットをひとつずつご紹介します。
まず日本では、この本の中でも紹介されている、京都のカフェ「さらさ西陣」。ここは、和製マジョリカタイルをインテリアに使った古い銭湯をリノベしたお店で、カフェとして現役営業中です。

壁一面に張り巡らされたタイルを眺めながら、コーヒー片手に素敵な時間が過ごせそうです。
そして台湾では、中南部の嘉義に「台湾花磚博物館」があります。

こちらは台湾の古民家をリノベした博物館で、実物のタイルとその歴史、制作工程などがびっしり展示されています。小さな博物館なのでサクッと見られますし、嘉義に行かれた際はぜひ旅程に組み込んでみては。

都市開発で消えていく運命にある和製マジョリカタイル

20世紀のはじめ~太平洋戦争勃発までの、ごく限られた時期に日本で生産されたマジョリカタイルが、日本ではなく台湾に多く残っているというのは驚きですよね。
こうしたタイルは、もちろん台湾の街なかでも見かけることはあるのですが、古い建築はどんどん少なくなっています。とくに台北では、地震対策のために老朽化した建築を建て替える都市再開発が進行中。古い建物は急速にその姿を消しつつあります。恐らく近いうちに、和製マジョリカタイルは街から消えることになるでしょう。

興味のある方はぜひ『台湾 和製マジョリカタイルの記憶』を読んで、今のうちにタイル探索を楽しんでみてはいかがでしょうか。

以上、台北ナビこと大原扁理がお届けしました。

【今回紹介した本】
『台湾 和製マジョリカタイルの記憶』康鍩錫・著、大洞敦史・訳(TWO VIRGINS)2200円+税 2023年10月24日発売

トゥーヴァージンズ『台湾 和製マジョリカタイルの記憶』作品ページ:
https://www.twovirgins.jp/book/taiwanmajolicatiles/

大洞さんブログ「素描南風」
https://nan-feng.blogspot.com/

画像提供:TWO VIRGINS

上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。

記事登録日:2024-08-28

ページTOPへ▲

その他の記事を見る