アナタの知らないディープな世界があります
こんにちは、台北ナビです。
今年、ナビが大プッシュしているのが高雄市です。大都市でありながら、台北よりもどことなく時間がゆっくり流れていて、独特の雰囲気を持っています。しかも北東方向から南西方向に細長く、その地域ごとに独自の文化も残っていて、特色ある旅が楽しめます。
そんな高雄市で今回ナビが訪れたのは茂林区。茂林国家風景区に属していて、風光明媚な景色が楽しめるほか、台湾原住民のルカイ族が多く暮らし、茂林だからこその出会いがたくさんあります。今回は、ルカイ族の文化体験ができる旅をご紹介します~。
ルカイ族が多く暮らす茂林区とは……
「茂林のことなら何でも聞いて」と元気いっぱいのイップルー
茂林区は、高鉄(台湾新幹線)「左営」駅や台鉄(台湾鉄道)「高雄」駅から車で約1時間の場所にあります。原住民が住む場所といえば、交通が不便な山深い場所を想像しがちですが、現在集落がある場所の標高は約400メートル。クネクネした山道はそれほど多くなく、快適にアクセスできます。
ナビでは過去にも茂林を訪問していますが、今回も地元の文化や歴史に詳しいイップルーこと羅蘇小萍さんに案内してもらいました。
イップルーさんによると、茂林区には濁口渓という川に沿って大きな集落が3つあり、区役所がある最大の集落である茂林部落のほか、万山部落、多納部落があります。いずれもルカイ族が多く暮らす場所なのですが、おもしろいことに、各部落ごとで話される言葉は全く異なり、意思疎通もできないほどなんだとか。
また、彼らの民族衣装を見ても、同じくルカイ族がたくさん暮らす屏東県霧台が黒を多用しているのに比べ、茂林では黒をベースとしながらも、青や赤のカラフルな色を取り入れ、違った雰囲気や文化を感じられます。
とはいうものの、日本統治時代よりもっと前から、茂林の3つの集落を含め、周辺に暮らすルカイ族との間には交易や人的交流が盛んに行われていたんだそう。
名物は鮮やかな紫色の羽が特徴のルリマダラ
ルリマダラは外側は非常に地味なのですが、
|
|
羽をちょっと開くと内側には美しい紫色がっ!
|
茂林にはルカイ族のほかに有名なものがあります。それは蝶々のルリマダラ(紫斑蝶)。台湾とメキシコでしか見ることのできない珍しい蝶々で、夏は苗栗県竹南などで過ごし、気温が下がってくると茂林や台東で越冬するんだそう。環境の汚染に弱く、農薬を使っている農地の植物を食べるだけで命の危険がでるため、生息地域は本当に限定的なんだとか。
このため、周辺地域の畑では無農薬栽培が行われています。ほかの昆虫や動物による食害がでてしまうことを承知でルリマダラを守る地元の人たち。なかなかできることではありません。
茂林部落にあるビジターセンターではルリマダラへの認識が深められる展示があるほか、向かい側には生態公園があって、冬には実際にルリマダラが観賞できますよ~。ナビが訪れた時にもたくさんのルリマダラが飛んでいたのですが、最多期には前が見えなくなるほどたくさんのルリマダラが飛んで来るんだとか。
ユニークな地形が見られる吊り橋周辺
続いてやってきたのは、茂林部落と多納部落の中間地点にある多納高吊橋と呼ばれる吊り橋。高さ103メートルの主塔が支える全長232メートルは圧巻です。しっかりとした構造なのでスクーターは通行可能。自動車は迂回する必要があるのですが、この迂回路が想像以上に遠く、5分以上時間がかかります。なので地元の人たちはスクーターでこの吊り橋を通るのが好きなんだそう。
現在の橋は戦後に掛け直されたものなのですが、元々は日本統治時代に建設されたものが最初とされています。日本人がルカイ族を統治するために建設されたので、伝統や文化を脅かされることになった地元住民の中には複雑な感情を持っていた人もいたんだとか。
でも、イップルーさんの話によると、2009年に大規模な土砂災害が発生した八八水害の時には、南部や中部で多くの橋が流されてしまった中、この橋は風雨に耐え、山の上の人たちの避難に役立ったというのです。「だから今は感謝しているの」。
結構揺れます
|
|
自動車は谷を降りて下に建設された橋を渡るのですが、これがまた遠いのです
|
さて、難しい話はさておき、ここからは動物にまつわるユニークな地形が観賞できます。
一つは「蛇頭山」。コブラのような頭の大きな蛇が大地に這っているように見える地形です。
そしてもう一つは「龍頭山」。こちらも文字通り龍が首を伸ばして寝転んでいる姿に見えます。
ただ、龍頭山については、元々川の流れは龍の頭の上を通過していたそうなのですが、浸蝕により対岸の斜面が崩落し、道路が寸断される恐れが浮上したため、なんと大胆にも首の部分を爆破して川のルートを短絡する措置を取って川の流れを変えたんだそう。
環境保護の大切さが叫ばれる現在では考えられないことですが、かなり思い切った対応の仕方に笑いを抑えることができませんでした。
かなり頭でっかちですが確かに中央部分が蛇の頭に見えます
|
|
白い川原を水面に見立てて、頭と背中を外に出している龍のように見えますね
|
アワの装飾品作りに挑戦
多納部落にやってきました。ここでは頭目の家の庭先をお借りして、アワを使った装飾品「小米束」作りに挑戦します。
この装飾品。黒米祭の際に男性が意中の女性に送るもので、人気の女性が暮らす家の軒先にはたくさんの装飾品が飾られていたといいます。
作り方はいたってシンプル。
アワの束とワラ、カラフルな糸の3つだけです。だからこそ、心をこめて美しく作ることが求められます。
ポイントは、カラフルな糸を隙間なくきつく縛ること。ある程度アワに巻きつけたら、上から別の糸を巻きつけて色を変えるのですが、隙間があると、下に巻きつけている別の色が見えてしまうので見栄えが悪くなってしまいますよ~。
ビーズを使ったブレスレット作りにも挑戦しよう
続いてはビーズを使ってブレスレット作りに挑戦です。ご存知の方も多いと思いますが、原住民は男女問わずとってもお洒落。身分や能力の高さを表現しているのですが、頭から足までありとあらゆる装飾具を身につけて美しさを競い合います。
今回のブレスレット作りで主役となるビーズですが、元々原住民は貝殻を加工したビーズを使っていました。海まで非常に遠い茂林で貝殻のビーズがあったことにも驚きですが、そもそも貝殻を使ったビーズは現在の技術をもってしても加工が困難とされ、かつての人たちがどうやって作っていたのか謎のベールに包まれています。
こちらの作り方も非常に単純。すでに見本が用意されているので、それに従って3本の糸にビーズを通していくのですが、指先を使った細かい作業は意外と集中力を必要とします。
ただ、茂林の女性たちにとってみると、ブレスレットを作る技術は身につけなければいけないものの基本中の基本。別の部落から嫁いで来た女性も結婚後に必死になって覚えたんだそう。
もちろん今では状況が変わっていますが、地元の高齢者にとっては認知症の予防に繋がるとして伝統文化が上手に活用されているようです。
メインストリートの一角にある原住民レストランで昼食と行きましょう。薪で起こした火を使ってスレートの上で調理するなんとも豪快な料理が人気です。
原住民料理というと、場所によってはシンプルな味付けでエグみや生臭さが残っていることがありますが、こちらは原住民料理を食べなれていない人でも抵抗なく食べられる味付け。かといって台湾料理とは違う中国料理とは違った味が楽しめるので、多納部落まで来たらぜひ味わってもらいたいです。
滿香樂餐飲店
高雄市茂林區多納里48號
0988-756-899
原住民集落に来たらやっぱり食べたい香ばしさ満点のイノシシ肉の焼肉
|
|
ゴロゴロ鶏肉が入った薬膳スープ
|
災害で見つかった唯一の副産物!?石と金属が混じった「龍紋石」のペンダント作り
おちゃめな馬楽さん
さて、滿香樂餐飲店でお腹がいっぱいになったら隣にある伝統的なスレート家屋の復元からスレートを加工した装飾品の販売まで手がける馬楽さんの工房でまたまたDIY体験です。
こちらで挑戦するのは「龍紋石」という金属成分が混ざった石を磨いてペンダント作り。
ちなみに、この龍紋石というのは、台湾でも全土で数箇所しか採取できない特殊な石なんだとか。かつては茂林でも採取はできなかったそうなのですが、2009年に起きた八八水害による大規模な土砂災害後、地中深くに眠っていた龍紋石が地上に露出して、その存在が明らかになったとのこと。
工房の中にはルカイ族の住居を年代別に再現した模型もあります
細かいことにはあまりこだわらない馬楽さん。どんな金属成分が含まれているか聞くと「うーん。色々だねっ!」とはぐらかされてしまったのですが、シルバーに輝く石があるかと思えば、少し灰色になっていたり、大理石のように白かったり、はたまた少しオレンジを帯びた石もあり、2つとして同じものはありません。
大体30分くらい磨いたら、研磨機で総仕上げ
|
|
そしてできたのがこちら!
|
せっせと作っている間も、イップルーさんや馬楽さんが楽しくおしゃべりしたり、歌を歌ったりととっても賑やか。そしてイップルーさんは針金とお花でルカイ族の冠を作って楽しませてくれました。
これで誰もがルカイ族の王子様とお姫様~
今でもお祭りの時にはみんながかぶるという花冠。かなりビビットな色なのでこれをかぶって歩くのはちょっと勇気がいるのですが、ここはルカイ族の集落。出歩けばみんなが笑顔で「似合ってるよ!」って声をかけてくれました。
千葉の某有名テーマパークのネズミの耳のように、集落にいる間の恥は掻き捨て。逆にみんながルカイ族の文化を通じて歓迎してくれて、触れ合えるって素敵なことですよね。
原住民集落への旅は、都市にない人々の生活や伝統文化に触れられ、学びや気付きの多い、充実度の高さが魅力です。日本人はおろか、台湾人観光客の数も決して多くなく、それだけにあなただけの特別な体験ができることでしょう。そしてなによりも集落に住む人々の温かさや優しさをひしひしと感じられ、初めて訪れる場所でも自分の故郷に帰ってきたような感覚が味わえます。
あなたも茂林で楽しみながらルカイ族への認識を深めてみませんか?
以上、台北ナビがお伝えしました。
上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。
記事登録日:2019-11-20