温泉で有名な烏来には、ディープな原住民集落があるんです
こんにちは、台北ナビです。
今回は、新北市烏来区福山部落で台湾原住民タイヤル族の文化を体験してきました。烏来といえば、玄関口のMRT「新店」駅から車で1時間ほどで到着する弱アルカリ性炭酸泉が沸く温泉街で有名ですが、福山部落はそこから車でさらに約30分山道を登った場所にあります。
烏来は台北の中心部から最も近くに台湾原住民が住む集落がある場所なんだそう。福山部落への訪問には途中の検問所で入山申請が必要ですが、個人情報と連絡先を提出するだけで済むので楽々です。
この日参加した新北市が主催するツアーは、福山部落にある屯鹿、卡拉摸基、大羅蘭、李茂岸の4つの地区をまわりながら、台湾原住民の文化や暮らしを体験するもの。狩猟や織物の極意を学んできました。
タイヤル族ってどんな人たち?福山部落ってどんな場所?
そもそもタイヤル族とはどんな人たちなんでしょうか。原住民族委員会によると、中北部の山間部に多く住み、人口は約8万9000人(2017年4月現在)。以前は狩猟のほか、焼畑農業をしながら暮らしていました。また、高い織物の技術を持つことで知られ、血液や生命力、魔除けの意味を持つ赤色の装飾を好むとされています。
福山部落は、桃園以南に住んでいたタイヤル族が人口増加に伴って烏来に移住してきた際、最初に住み着いた場所といわれており、隣接する桃園や宜蘭のタイヤル族との交流の拠点にもなっていたそう。福山部落の人口は現在約800人。少子高齢化が進んでいますが、近年はタイヤル族の文化や暮らしを前面に打ち出して観光客を誘致し、町おこしを図っています。
伝統文化と人情味あふれる人々が福山の魅力と語る頭目。アワ酒やサツマイモ、焼き魚を添えたおこわ、プラムなどでもてなしてくれたほか、今回の訪問が無事に進むことを天と地、タイヤル族の祖先、親しい人々に対して祈願してくれました。
ちなみに、もてなしてくれた食事がとっても多くて食べ切れなかったのですが、お皿代わりにしていたクワズイモの葉っぱで包み、お持ち帰り用にしてくれました。エコの精神にびっくりです。
狩猟文化体験 わなの作り方を学ぶ
高度な狩りの技術を持つ人気のガイドさんです
狩猟が得意だったタイヤル族。手ほどきしてくれるのは、まさに戦士といったいでたちのヨム・ダナさん。
狩猟の際にはまず、火を起こすことが最重要課題!火があることでヘビや獣に襲われることがなくなり、安全が確保できるほか、火を使う前までは塩とアワで漬けて食べていた肉を、焼いたり蒸して食べられるようになったんだそう。
この状態で獲物を待ちます
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獲物がわなに引っかかると、大きい石で体を押さえ込む仕組み
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続いては石板わなの紹介です。サツマイモやアワで大型のネズミをおびき寄せ、石の重みで逃げられなくさせる仕組みになっています。ヨムさんによると、昔は山にいたネズミはとても巨大で、一家庭3日分の食料になったそう。この日見せてくれたのは小さいわなでしたが、過去に使っていたわなはこれよりも大きく、百発百中で獲物を仕留めていたといいます。
今では使われる機会のなくなった石板わなですが、タイヤルの子供たちには、文化の伝承として、原理や作り方を教えているんだとか。
そして、こちらはイノシシを捕まえるための近代式のわな。今でも使われているそうですよ。大掛かりな装置で、部分的には金具やワイヤーが使われることもありますが、基本的には植物が用いられ、環境に配慮しているとのこと。イノシシの足をつるし上げて仕留める仕組みになっています。
わなはイノシシの通り道に設置しますが、2ヵ月以内に仕留めることができれば上出来だそう。その理由は、イノシシは嗅覚が優れ、人のにおいをかぐと警戒してしまうからだとか。また、重量があり、オスに至っては人間に致命傷を負わせる鋭い牙を持っているので、安全に、そして少ない労力で捕まえるためには、気長にチャンスを待つ必要があるのです。
そのほかにも槍や弓矢などの使い方も学びます。ちなみに、弓矢は10秒以内で発射することが求められるそう。あまり遠くまで飛ばない構造もそうですが、逃げ回る獲物を効率的に捕らえるためには、当然ながらモタモタしていたらだめなんですね。
楽しみだった昼食は大羅蘭地区の食堂でいただきます。食材のほとんどが烏来産。生産量が少ないため、通常は台北の市場に出回ることはなく、ここだけでしか食べられない味がたくさんあります。そして一番の魅力はなんといっても新鮮なこと。川魚や沢エビには泥臭さや生臭さなどのクセがなく、さっと揚げてあるので香ばしいサクサク感が楽しめました。また、旬のタケノコは柔らかくとっても甘かったんです。ぜひぜひ烏来の食材を味わってください。
生臭さはなく、からっと揚がっています
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プリプリの豚肉はたまりません
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お次は織物を学びます。本来は男性が狩猟、女性が織物をするというように性別で仕事が分けられ、男性が織物、女性が狩猟をすることはタブーとされていましたが、現在ではほかの大部分の原住民集落でも同様に、文化の伝承のため制限が取り払われています。
今回体験したのは、平織りのブレスレッド作り。カラフルな糸を織り込んでいきます。ちなみにタイヤル族の織物の配色や模様は基本的に自由で、それだけに織る人のセンスが求められたんだとか。タイヤルの女性は8歳になると織物を学んだとのこと。上手に織れる人は結婚に有利だったというのは有名な話ですね。
以前は頭の中に出来上りの全体像をきちんとイメージして織っていたそうで、織っている最中に気分が変わって別のデザインを組み込むということはしなかったんだとか。
約9センチの長さにできたら完成。簡単にできそうですが、力加減が難しく、力が弱すぎるとスカスカになって線が乱れてしまい、逆に力が強すぎると生地がよれてしまいます。普段裁縫すらしないナビはコツをつかむのに大苦戦。それでも、熟練の講師の方が手伝ってくれてなんとか完成。額に汗をにじませながら織ったブレスレッドはキラキラ光って見えました。
みんなで集合写真。色鮮やかで素敵ですね
新北市では同市の魅力を体験できるツアーを随時実施。情報は新北市観光旅遊網で公開されているので、探してみてください。烏来以外の場所を訪れるツアーも紹介されており、ここから申し込みもできます。
以上、大自然の中で台湾原住民の文化を満喫したナビがお届けしました。
上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。
記事登録日:2017-09-08