日本では見られない涙と笑いが交じり合うイベントの数々、青春の1ページをのぞいちゃおう!
こんにちは、台北ナビです。
台湾は6月が卒業の季節。花束を持ったり、サインがびっしり書き込まれた制服姿の卒業生らしき生徒を多く見かけます。中でも高校の卒業式は、進路が決まった卒業生120人くらいが集まり、約1ヵ月かけて準備します。
ただ、その卒業式には日本と違った点がたくさん。学校ごとに独自色が打ち出されているところもあります。今回は6月1日に行われた台北市立第一女子高級中學(以後、北一女)、國立台湾師範大學附属高級中學(以後、師大附中)、台北市立中山女子高級中學(以後、中山女高)、5日に行われた台北市立景美女子高級中學(以後、景美女中)の卒業式の様子だけでなく、名物になっている卒業前の恒例行事を紹介します。
暑気払い&うさ晴らし!大人も童心に返る水風船合戦
水風船大戦の前に、まずは願かけ。上へ投げ「(入試で)高得点をあげられるように」、横へ投げ「はるか遠くにある志望校でも合格までたどり着けるように」と祈りを込めます。
|
|
来賓(左)と卒業生(右)のバトル! 来賓の中には逃げ惑う間に転んでいた方もいました。
|
1988年開校の台北市立内湖高級中學が毎年5月に行っている恒例行事が「水球大戰」と呼ばれる水風船合戦。初代校長の発案で、7月に控える一発勝負の大学入試(当時)のストレス解消と暑気払いを目的に、第1期生が3年生の頃から行われています。映画「我的少女時代(邦題: 私の少女時代)」にも同じような場面が出てきたので、印象に残っている方もいるのでは!?
その後、当時台北市長だった陳水扁元総統をはじめ、著名な方がゲストとして参加したことで話題になり、注目を集める行事になりました。しかし、近年は水不足のニュースが頻繁に伝えられていることから、ゲストは呼ばず、控えめに行っています。
水風船大戦開始! 早速担任の先生が標的になり、逃げ回っていましたが、その時の流れ弾が近くへ着弾し、カメラが少し濡れてしまいました。
この行事の最大の魅力は、卒業生だけでなく、来賓や担任の先生といった大人たちも一緒に水風船を豪快にぶつけ合うこと。卒業生に混じって水風船をぶつけ合う大人たちの表情は、みんな子供そのもの。特に今年は、卒業生VS来賓のバトルも展開され、青春時代に戻った感じになっていました。
夏の空に舞う紙ふぶき、バスケの強豪校の名物行事
最初に3年生の各クラスが用意した垂れ幕を下ろしながら紙ふぶきを撒きます。
男子高校バスケの強豪校・台北市立松山高級中學で、1期生の卒業時から行われている行事なのが校内に降り注ぐ「紙ふぶき」。もともと学校非公式でしたが、今では、学校公認となり、メディアも取材に訪れるまでの行事になりました。
紙ふぶきに使用するのは、主に不要になった教科書、テストの答案用紙、授業で使ったプリント。およそ1ヵ月前から勉強の苦い思い出にハサミを入れながら紙ふぶきを作り、それを空から舞わせるのは爽快感があることでしょう。
今年は卒業式の前日の5月31日の昼休みに行われましたが、開始前には準備万端の3年生だけでなく、授業を終えた在校生らも集まり、その様子を見守りました。最初は各クラスが作成した垂れ幕を下ろしながら紙ふぶきを撒き、全クラス終了後、用意した紙ふぶきを一気に撒きます。上からどんどん降ってくるので、撮影中も1分足らずでナビの足元は紙ふぶきで積雪。3年分の思いを込め、10分以上かけて撒くので、その量は靴の甲の部分が隠れるくらいありましたが、本物の雪と違い、靴が冷たくならないのが唯一の救いでした。
垂れ幕を下ろしたら、一斉に用意した紙ふぶきを撒きます。
終盤に入り、カラフルな紙ふぶきも登場!
|
|
残りの紙ふぶきも「これでもか!」という感じで一気に撒きます
|
自分たちの卒業式は自分たちでつくる! 名物・高校のオリジナル卒業式
オールドタイムの台湾の再現(北一女)
台湾の高校の卒業式は、どの学校もテーマを用意し、自主制作したストーリーになぞって動画を作成し、舞台で寸劇を行いながら、卒業証書授与式、表彰式、在校生送辞、卒業生答辞といった儀式を行います。そのため、式は3時間以上かかることも。また、来賓や保護者の予定を考慮して、午後か夜に行う学校もあるのが特徴です。
以下、ナビが訪問した学校ごとに紹介していきます。
ストーリー重視の名門女子高の卒業式
お別れの儀式になっているエアロビクス。卒業生たちも一緒に体を動かします。
1日8:20から卒業式を行った、総統府の斜め向かいにある北一女。台湾を代表する高校の一つです。台北の街を歩いていると、深緑の制服の女子高生を見かけると思いますが、彼女たちはこの学校の生徒です。
優秀な人材を文学方面にも多数輩出している学校だけあって、卒業式もストーリー重視の傾向にあり、3年前には来賓として訪れていた馬英九総統(当時)も、その輪に加わったことがあります。
ちなみに、今年用意したストーリーは、このような感じです。
卒業式を翌日に控え、受験勉強に余念がない3年生の阿恵。勉強に明け暮れる孫を心配したおばあちゃんが、あれこれおせっかいを焼きますが、阿恵は他のクラスメイトと違い、進学先が決まらないストレスからつい厳しく当たってしまいます。その時、床に落ちた家に代々伝わる蝶のブローチが光り、阿恵は別世界へ放り出されます。目が覚めた阿恵がいたのは、1961年の台北。阿恵は、ほどなく春嬌という18歳の高校生と知り合い、彼女とともに街を散策しますが、そこに待ち受けているのは……
また、北一女では、2時間目と3時間目の間に行い、学期ごとに更新される「課間操」と呼ばれるダンスがありますが、卒業式では3年分のダンスを行うのがお別れの儀式になっています。
アートと自由な校風が魅力の卒業式
メリーゴーラウンドの再現。電飾も無駄なくしっかり決まっています。
|
|
不要になった教科書、プリント類などを使って作っていますが、それを感じさせないくらい精巧に作られています。
|
1日14:00は師大附中。5月19、20日に日本武道館でコンサートを行った五月天(Mayday/メイデイ)メンバーのうちボーカル・阿信ら4人の母校で、彼ら以外にも、芸能方面に多くの卒業生を輩出しています。台湾の各高校で行われるオリジナル卒業式を最初に行ったと言われ、中でも会場につながる通路に作られた作品の独創性と質、製作に携わる人数(毎年200人以上)は、他の追随を許さないところがあります。
この辺りの細かさは、他校の追随を許しません
|
|
占い師の再現もバッチリ!
|
過去には、スターウォーズ、アバターといった映画の世界を再現してみせたこともありますが、今年は「童心に返る」がテーマ。子供の頃に遊んだおもちゃ、憧れたサーカス団の倉庫、夜の花園といったものを再現し、おもちゃ箱を学校、そこから飛び出たおもちゃを自分たちに見立て、自らの意思で飛び出し、外の世界に触れ、さらに成長し発展していく自分たちの未来の姿を投影させました。
卒業式は、序盤に行われる卒業証書授与式が個性的。クラスごとに代表者が舞台へ行き、卒業証書を受け取りますが、ここで校長イジリを行うのが恒例になっています。
クラスごとに行う卒業証書授与式。校長イジリが名物になっていますが、この光景は初めてです。女性の校長ならでは、でしょうか?
|
|
卒業式の会場までをレッドカーペットと儀仗(ぎじょう)隊が待ち構えます。ただ、掲げている模造の銃にスイカやヤシの実をかけて去っていくいたずらずきな卒業生の姿もあります。
|
卒業生の担任の先生たちが送辞として、5年前は「江南Style」、2年前は妖怪ウォッチの「ようかい体操第一」の替え歌とダンスの動画を披露しただけでなく、舞台でダンスを披露したこともありました。
戦前の経験に父兄への一礼の伝統女子校の卒業式
中山女高の同窓会名誉会長の郭林碧蓮さんは1923年(大正12年)12月21日生まれの94歳。今も会社の会長として出勤しています。
1日17:30は中山女高。昨年創立120周年を迎えた伝統校で蔡英文総統をはじめ多くの卒業生を輩出しています。卒業式には、日本統治時代に「台北州立台北第三高等女学校」と呼ばれていた時代の卒業生の方が訪れ、祝辞の中で自身の経験を話すのが恒例になっています。
こちらも他校同様、寸劇を挟みながら進んでいきますが、卒業生が披露するダンスと卒業生が自ら製作し、投票によって選ばれた卒業歌をライブで披露するときが一番盛り上がり、大きな歓声が上がります。
お別れの儀式は、担任の先生と会場にいる父兄に一礼。深々と一礼し、感謝の気持ちを表しました。
卒業式のハイライト、後方に座る保護者、家族への一礼。見ているこちらもジーンときます。
謝辞の涙に心打たれる卒業式
卒業生の校内巡礼。誘導するのは在校生の儀仗(ぎじょう)隊です。
5日9:00は景美女中。北一女、中山女高とともに台北市3大公立女子高と呼ばれ、黄色の制服がトレードマーク。その制服からついた別名が「太陽神(アポローン)の娘」。過去に安室奈美恵とコラボした歌手の蔡依林(Jolin Tsai)は、この学校の卒業生で、高校時代から歌唱力の高さを発揮していたそうです。
お別れの儀式は、クラスごとに行う成績優秀者などの表彰の際、当該クラスの生徒がステージに集まり、担任の先生に謝辞を述べるところ。謝辞を述べている時に、いろいろなことを思い出して涙を流している卒業生の姿が多く見られました。
このようなオリジナル卒業式を行うようになった背景にあるのは、受験制度の影響。早い人で3月か4月に進学先が決まるため、6月の卒業式までの時間を「ダラダラ遊ばないように」という配慮と、3年間の学習成果の発表の場を設ける意味合いからです。
2014年に高校進学の際の制度が変更になったことから、それに歩調を合わせる形で、大学受験の制度も変更が予想され、各校の関係者から「もしかしたら(このような形は、今年が)最後かもしれない」という話を何度か聞きました。数年後、この光景は変わってくるかもしれません。
以上、台北ナビでした。
上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。
記事登録日:2018-07-04