2011アジア・アート・ビエンナーレ製作現場レポート

一昨年に続いて参加した製作現場。台湾&アジアの現代美術のおもしろさを体験してきました。10月1日から公開です!

こんにちは。台北ナビです。現代アートといえば分かりにくいと思われがちですが、台中の国立台湾美術館で開かれている第3回アジア・アートビエンナーレでは、知れば知るほどおもしろい現代アートがいっぱい。今回もボランティアとして日本人アーティストのお手伝いをしてきました! 

事前の美術館は大変!

 
 オープニングまで約3週間という頃、今回のボランティアの作業が始まりました。
最初はニュージーランドのアーティスト、ティファニー・シンさんの作品の準備。折り紙の容器を900個も作ります。「ゆっくりでいいから正確にていねいに作ってください。」との注意!みんな心を落ち着けて黙々と作業します。
1週間近くに及ぶ作業に肩こり気味のナビ。でもトップクラスの現代アート作品に参加できると思うと楽しみです。
作品のタイトルは「ニュートンと爆弾」

作品のタイトルは「ニュートンと爆弾」



吊るされた容器には香料、顔料、さまざまな穀物や折り紙の花などが入っていて、落下すると鮮やかな色や香りを放つ、という作品なんですねー。
万有引力を発見したニュートン、人為的に落とされるバクダン。色彩豊かなアートです。

このころ美術館の外には美術品輸送会社のトラックが次々と到着。普段は閉まっている美術館の搬入口から、どんどん作品の木箱が運び込まれていました。
各展示室に置かれ、じっと待つ木箱。スケジュールに従って慎重に箱明けが始まります。
写真をとりながら輸送中の破損などはないか、ていねいに調べます。専門のアートハンドラー(取り扱い員)により取り付けられていきます。
いったい中にはどんなアート作品が?

いったい中にはどんなアート作品が?

緊張の一瞬。無事でした。

緊張の一瞬。無事でした。

キュレーターのアリス・黄(ホワン)さん

キュレーターのアリス・黄(ホワン)さん

今回のビエンナーレを企画した美術館キュレーターのアリス・黄さん。
テーマについて教えてもらいました。「このMには、Meditation(瞑想)とMediation(斡旋、調停)の2つの意味があります。日本人大前研一氏の提起によるアジア経済と社会のM型化という言葉がありますが、今回のビエンナーレでは、それからさらに広がって、私たちをとりまく混沌、衝突、そしてお互いの認知、調停などの思想を、数多くの絵画、映像、インスタレーション、ワークショップなどを通じて見たり感じたりしてもらえたらと思っています。」
9月30日のオープンセレモニーには17名/組のアーティストが来台

9月30日のオープンセレモニーには17名/組のアーティストが来台

21の国と地域から、40名/組のアーティストの作品が参加。東南アジアから中央アジア、アメリカ在住のアジア人アーティストの作品など、アジアン・アートといっても本当に多岐にわたっていて、どれも本当に個性的。見ごたえのある展覧会になっています。 

会田誠さんの巨大提灯(ちょうちん)

会田誠さん(右)と日本のギャラリーの方

会田誠さん(右)と日本のギャラリーの方



開幕まで10日あまりの頃、日本人アーティストの会田誠さんと大巻伸嗣さんが台中に到着。美術館での製作が始まりました。ナビはまず、会田さんの場所のお手伝いに。
この作品は、台湾で原形となる大きな提灯を作り、その上に日本から持ってきた紙を1枚づつ張って仕上げていく、という台湾と日本の共同作業から成り立っています。 
鳥かごに入ってるみたいですね。

鳥かごに入ってるみたいですね。


提灯製作は、台湾のランタンフェスティバルで活躍するランタン職人の張嘉巖さん。滑車に吊るしながら、高さ 約5mにもなる巨大提灯を作っていきます。日本には有名な浅草雷門の大提灯がありますが、張さんによると、これほど大きい提灯は台湾でも初めてでしょうとのこと。
日本と台湾では提灯の製造方法も異なるため、今回全てが初めての試み。注文と異なっているところや、意見の食い違いなど多くの課題を乗り越えつつ出来上がっていきました。
巨大な提灯が上がりました!

巨大な提灯が上がりました!

先生、こんな張り方でいいんですかぁ~? 先生、こんな張り方でいいんですかぁ~?

先生、こんな張り方でいいんですかぁ~?

提灯が出来上がると、今度は甲骨文字や様々な書体の漢字、ひらがなや英語で書かれた赤い「心」を1枚1枚、ていねいに張っていく作業です。ボランティアとアートハンドラーさんが数人で数日間かかりました。
文字なので全部向きがあるのですが、よく見ると間違って張ってしまったものも。先生、ごめんなさい!(ナビ) すると、おおらかな先生は、「ま、いいです。正面は僕がやりますから。」
足りなくなりそうなので、会田先生は黙々と赤紙作り

足りなくなりそうなので、会田先生は黙々と赤紙作り

見学の幼稚園児。「あ~、ニンジンランタンだ~」(違います) 「イチゴだ~」(違いますって)

見学の幼稚園児。「あ~、ニンジンランタンだ~」(違います) 「イチゴだ~」(違いますって)

完成です! 夜の暗い館内にひときわ輝く「ハート」♪

完成です! 夜の暗い館内にひときわ輝く「ハート」♪


会田さんによると、多くの心が向かう居酒屋の赤提灯と、心臓も表しているのだそう。
中のライトの点滅が心臓の鼓動と同じサイクルで、じっと見つめていると、暖か~いものが感じられました。
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大巻伸嗣さんの静謐(せいひつ)な空間

ナビたちが提灯張りに没頭していた頃、大巻さんの製作現場では重大なことが起こっていました。木箱を開けてみると、壁に取り付けるアクリルでできた作品の一部が損傷。さらに台湾で特注した床に敷く白いフェルトが正確なラインでカッティングされていなかったのです。どうしましょう。
150枚以上もあるのに、もう一度カットし直すことに。作品製作に入る前の段階で大幅に遅れが出てしまい、美術館のコーディネーターも気が気でない様子。ハンドラーさんやボランティアたちを大量に投入して、なんとか最低限の勢作日数は確保できるようになりましたが、この時点で先生も助手の人もかなりエネルギーを消耗しています。
それでも最適のデザインを模索する先生

それでも最適のデザインを模索する先生

床の製作に入る大巻先生(中央)と助手のお二人。頑張ってください~。

床の製作に入る大巻先生(中央)と助手のお二人。頑張ってください~。

この広い空間全体が作品なんです。

この広い空間全体が作品なんです。

大巻さんの作品は、絶滅したり、絶滅危惧種になってしまった植物をモチーフに、真っ白い部屋の中に、これまた白い水晶の粉を使って床一面に絵を描いてゆくもの。正確さに加えて、とっても根気と重労働が必要なのです。でも出来上がった空間は、それはそれは美しいもの。静かに消えていく生き物が結晶となって降り積もっているかのようです。
床一面の模様が見えますか?

床一面の模様が見えますか?

ボランティアはていねいに型から粉を払い落とす作業。

ボランティアはていねいに型から粉を払い落とす作業。

連日の作業もあと少しで完成という頃、先生がお手伝いをしたボランティアに一つづつ花を描く作業をさせてくれました。
床の模様を壊しちゃったら大変と、皆は戦々恐々でしたが、こんな素晴らしい作品の中に自分が描いたものがあるというのはとってもウレシイ~。ナビ感激です!
これがナビの描いた菊。閉幕の時まで無事でありますように。

これがナビの描いた菊。閉幕の時まで無事でありますように。

開幕式ではボランティアと一緒に笑顔の大巻先生(右)

開幕式ではボランティアと一緒に笑顔の大巻先生(右)

大巻さんのこの「クリスタリゼーション」という作品は、写真のプロでも撮影が難しいそうですので、ぜひ現場で本物を味わってくださいね。
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作家とタイトル、そして作品をひもといてみましょう。



 まだまだたくさんある今回の展示作品、少しだけナビが解説しますね。
これは美術館の外に展示された香港の曾建華さんの作品。テーマは「多重再現客家/台湾/東方」。
遠目には客家の花柄模様ですが、よくみると台湾に関する様々な言葉でできています。「どの文化も身分も何一つ絶対なものはなく、ただ多くの解釈があるだけだ」ということを表しているのだそう。 
アメリカのマイケル・ラコウィッツさんの作品は、新聞紙やカンヅメのラベルなどを使って作った古美術品。
アメリカ軍のバグダッド侵攻のどさくさに、イラク国家博物館から持ち去られた古代の発掘品を再現しています。「隠れた敵はいるはずではなかった」というタイトルも意味シンです。 
 

台湾の農夫兼芸術家・林銓居さんの作品はなんと田んぼ!美術館の芝生に突如出現した田んぼには苗が植えられ、期間中成長するのが見られそうです。
タイトルは「持地基金会」。「持地」とは古代仏教典に出てくる清浄な台地の守護神・持地菩薩のことで、人間の無理な開発によって傷められた大地と人間の関係の修復なのでしょうか。
この他にも、千体の招き猫や、巨大なクッションがあったり。作品集も出版されていますので、その解説を読めばさらにおもしろく観ることができます。 
最後まで頑張ったボランティアのみんな、お疲れさま~。 最後まで頑張ったボランティアのみんな、お疲れさま~。

最後まで頑張ったボランティアのみんな、お疲れさま~。

いかがでしたか?ナビたちボランティアも一生懸命協力した第3回アジア・アート・ビエンナーレは、
2011年10月1日より、2012年の1月1日まで開催。
ぜひ台中に見に来て下さいね。
以上、台北ナビのリポートでした。

基本情報

国立台湾美術館
住所: 403台中市西区五権西路一段2号
電話番号:04-23723552
開館時間 火~金 9:00~17:00 土・日9:00~18:00 休館日: 月曜日
入場無料
美術館Webサイト:
「ビエンナーレ2011」Webサイト:
 行き方・交通

■新幹線台中駅よりシャトルバス:台中公園行きに乗り、「国立台湾美術館」で下車。存中街を約500m歩く。タクシー:約15分   200元
■台中駅より バス:仁友客運59、89路線、台中客運71路線、統聯客運75路線  「美術館」または「文化中心」バス停で下車
タクシー:約10分  150元 
 

上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。

記事登録日:2011-10-07

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