順益台湾原住民博物館

Shung Ye Museum of Formosan Aborigines

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「台湾原住民」の世界が一目瞭然!台湾をもっと知りたくなるかも!

こんにちは台北ナビです。

今日は「順益台湾原住民博物館」にやってきました。故宮博物院に近い場所に立地し、台北市の2階建てバスを使っても気軽に足を運べる博物館で、台湾各地で長年に渡って独特な生活や文化を守る台湾原住民の真の姿を垣間見ることができます。

台湾原住民を知っていますか?

約30年近く前に撮影された写真。被写体となった人や、その人の家族がここに来て、当時を懐かしむこともあるんだとか。

約30年近く前に撮影された写真。被写体となった人や、その人の家族がここに来て、当時を懐かしむこともあるんだとか。

台湾原住民とは、漢民族が中国大陸から台湾に移り住む前から台湾に住んでいた先住民のこと。日本統治時代には「高砂族」とよばれていたこともありますが、現在は呼称を「台湾原住民」とすることが法律で決められています。政府に認定されている台湾原住民は16族あり(2017年6月現在)、台湾の総人口の約2%にあたる約50万人が暮らしています。

一方で、諸事情により現在のところまだ認定されていない先住民もおり、かれらは「平埔族」と呼ばれています。いずれもオーストロネシア語族に属し、言葉をはじめ、文化やその生活にフィリピンやインドネシア、太平洋の島々などに暮らす人々との類似性が指摘されています。
「順益台湾原住民博物館」は1994年に開館しました。台湾で初めてオープンした私立の原住民博物館でもあります。同館は台湾で三菱自動車を代理販売している「順益汽車」のオーナーで、台湾原住民に造詣が深い林清富氏が20年近い時間をかけて集めたコレクションを「社会より得たものは社会に還元すべき」とのポリシーのもとに設立され、現在2200点の文物・資料を収蔵しているそうです。
台湾原住民はもともと文字を持たない人々でしたが、台湾原住民関連資料などの収蔵、展示、研究を行う同館では、さまざまな教育活動を通じて文字がなかった時代の歴史の掘り起こしながら、台湾の多様な文化を内外に紹介しています。

博物館のユニークな外観は、原住民の家屋をモチーフにしたもの。台北市立博物館も手がけた建築士の高而潘氏が手がけたそう。

また、入口のひさしには「原住民現代アートの巨匠」と呼ばれるパイワン族出身アーティスト、パワワロン・サクリュウ氏の作品が飾られていて、台湾原住民文化で「最高の栄誉」の象徴とされる羽毛が刻まれているんですよ。

1階<人と自然環境>

暖色系の色が付いている場所が政府認定の「台湾原住民」、灰色に塗られているのが「平埔族」の居住・活動範囲。

暖色系の色が付いている場所が政府認定の「台湾原住民」、灰色に塗られているのが「平埔族」の居住・活動範囲。


台湾原住民が居住する地域の自然環境の概要を紹介しています。大まかな種族の解説や分布、地理環境、台湾原住民はどこから来たのかなどを地図や映像を通じて理解できます。

また、奥にはタオ族の伝統的木造漁船「チヌリクラン」、狩りと占いをテーマにした「石板彫刻」が飾られ、台湾原住民の世界を間近に感じられます。

館内では絶えず原住民音楽が流れていますが、しっかりと台湾原住民の音楽を聞けるコーナーも設置されており、視覚と聴覚で文化の多様性が解ります。
黒潮を果敢に越えた木造漁船の「チヌリクラン」

黒潮を果敢に越えた木造漁船の「チヌリクラン」

原住民のアーティストが順益台湾原住民博物館のために制作した石板彫刻

原住民のアーティストが順益台湾原住民博物館のために制作した石板彫刻

聞きたい音楽のCDケースに貼られているバーコードを読み取り機にかざすだけで音楽再生が可能

聞きたい音楽のCDケースに貼られているバーコードを読み取り機にかざすだけで音楽再生が可能

2階<生活と道具>

竹などの木材を使った工芸品

竹などの木材を使った工芸品

土器は民族や用途によってさまざまな形があります

土器は民族や用途によってさまざまな形があります

ツォウ族の集会所は高床式

ツォウ族の集会所は高床式

タオ族の伝統家屋、ツォウ族の男子集会所、アミ族のいろり、パイワン族のスレート家屋、土器、楽器、漁猟、農業など、各部族の工芸品や日常生活と社会の関わりを紹介、展示しています。
風雨からの影響を最小限にするため半地下式に作られたタオ族の住居。女性は山で畑仕事、男性は海で漁をして暮らしている様子が再現されています。

当然といえば当然ですが、タオ族では家の大きさは権力の象徴だったそう。

狩猟で使われていた道具の中には外国から持ち込まれた鉄砲もあります。

台湾原住民の一部は、オランダ人や漢民族など、外部の人と積極的に交易を行っていました。

こちらはアミ族のいろり。母系社会だったこともあり、いろりのすぐそばに女性がおり、そのまわりを男性が囲むようにすわっていたのだとか。

また、ほかの民族では男性が作ることが多いとされている土器も、アミ族では女性が作っていたそうです。
夏は涼しく、冬は暖かく過ごせるというパイワン族のスレート家屋を再現した模型ではアニメーションやプロジェクションマッピングを使い、石材の採集から建築、改修までの様子や暮らしぶりを観察できます。 
伝統的な楽器も展示され、特徴的な音色を楽しめますよ。 伝統的な楽器も展示され、特徴的な音色を楽しめますよ。

伝統的な楽器も展示され、特徴的な音色を楽しめますよ。

原住民のお祝い事に欠かせない粟酒。粟と水と酵母を入れたもので、以前は2~3日置いたものを飲んでいたとか。味はお酒というよりも、乳酸菌飲料に近かったそう。
こんな薄くて脆い貝を、昔の人はどうやってビーズ状に加工できたんでしょう?

こんな薄くて脆い貝を、昔の人はどうやってビーズ状に加工できたんでしょう?

3階<服飾と文化>

注目すべきはタイヤル族の頭目が着用していた衣服。厚めのシャコ貝を円柱状に加工し、縫い付けられています。非常に高い技術が用いられており、かつては再現不可能とも言われた貴重な一品。精巧さに思わず息を呑むほどです。
ボタンが大量に縫い付けられている服もありますが、ボタンは海外から持ち込まれたいわば舶来品。当時は大変珍しいものだったそう。外国の硬貨が縫い付けられているものもありました。鮮やかな赤の糸を使った服もほとんどが外国から輸入されたものを使っているんだそう。

台湾原住民はとってもオシャレなことが伺えますね。
入れ墨を入れるための道具

入れ墨を入れるための道具

胸元に顔が可愛らしく彫られていますが、首を刈ったことのある証拠

胸元に顔が可愛らしく彫られていますが、首を刈ったことのある証拠

身分や所属など、アイデンティティーを示すための入れ墨も原住民を語る上で重要な風習。

入れ墨を入れる場所や模様にもそれぞれ意味がこめられていて、機織りが上手だとか、成人しているかどうか、首狩りに成功したことがあるかなどもわかるんだそう。

パイワン族、ルカイ族、プユマ族の3部族だけにしか見られないトンボ玉。

さまざまな模様に、沢山の違った意味がこめられているそうです。ガラスが存在しない台湾でなぜトンボ玉が作られるようになったのか、詳細はよくわかっていないそうです。 

地下1階<信仰と祭礼>

自然のすべてに精霊が宿っているとする「精霊信仰(アニミズム)」や祖霊崇拝、出草(首狩り)などの台湾原住民の風習を詳しく紹介しています。

また、台湾原住民の考古学遺跡、台湾原住民文化の変遷を年表や写真で解説しています。
また、以前はタオ族などを除いて出草と呼ばれる首狩りの風習があった台湾原住民。

地下1階の奥にはちょっと衝撃的な写真が飾られていますので、心の準備をしてからご覧ください。それも台湾原住民の歴史の一つです。

映像シアターや映像図書館があり、台湾原住民関連のアニメや映像資料を見ることができますよ。

4階<DIY教室>

順益台湾原住民博物館提供

順益台湾原住民博物館提供

順益台湾原住民博物館提供

順益台湾原住民博物館提供

順益台湾原住民博物館では台湾原住民と関係の深い作品を作る有料のDIY教室が随時開かれています。ブレスレットやペンダントなど時期によって違った内容で、大人も楽しめるイベントです。時間に余裕がある方はぜひ楽しんでみてください。

台湾原住民の世界がわかる順益台湾原住民博物館


今回案内をしてくれたのは同館の林威城主任と川島尚子さん。今後も台湾原住民関連の資料収集に尽力する計画だといいます。「台湾原住民は過去に生きていた人たちではない」と林主任。特に今の台湾原住民が作り出しているクリエイティブな作品などの収集に努めるとしています。

時間がなくて台湾各地の集落を回れなくても、ここに来れば、簡単に台湾原住民の全体像が理解できますよ。

以上、台北ナビでした。

記事更新日:2017-07-21

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上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。

スポット登録日:2017-07-21

スポット更新日:2014-09-19

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