ディアボロ・ダンス・シアター2013年新作「海洋之心」

台湾の子供たちにはおなじみの遊具が、これまでにない舞台芸術に!ディアボロ・ダンス・シアターには衝撃と感動がいっぱいです!!

こんにちは、台北ナビです。
ここ台湾は旧暦でお正月を祝う国。2013年は新暦の2月10日が旧正月(春節)に当たり、国中がお祝いムードになりました。そんな中、台湾の新旧文化が発信される中正紀念堂で開幕したある公演があります。ナビでもたびたびご紹介しているディアボロ・ダンス・シアター(舞鈴劇場)、中国ゴマを使った全く新しいエンターテイメント集団の新作舞台「海洋之心」です。 現在ナビでもチケット予約を受け付けています!

ディアボロって何?

これは特製の瑠璃製ディアボロ。普通の遊具はプラスティックなどでできています

これは特製の瑠璃製ディアボロ。普通の遊具はプラスティックなどでできています

まずはディアボロ・ダンス・シアターについてご紹介しましょう。「ディアボロ」というのは英語で中国ゴマのこと。砂時計のような形のコマのくびれた部分を、糸でつながれた2本のスティックをすばやく動かして回すしくみで、もともとは遊具です。中国では「空竹(コンジュー)」と呼ばれていますが、台湾ではなぜか広東語での呼び方「扯鈴(チャーリン)」と呼ぶのが一般的。大きな公園に行くと、この「扯鈴(チャーリン)」を実演しながら売っているおじさんもいて、台湾の子供たちには今でもおなじみの遊びです。実際にやってみると、両輪のバランスを取るのに瞬発力と握力がいるので、小さい子供やナビのような鈍くさい大人も悪戦苦闘。ところが台湾の子供たちは小さい頃から慣れ親しんでいるので、小学生でもかなりのテクニックを持っているツワモノも少なくありません。 

ディアボロ・ダンス・シアターはすごいんです!

団員は小学生から30代までと幅広い年齢層で構成されています

団員は小学生から30代までと幅広い年齢層で構成されています

1月には「海洋之心」台湾公演の記者発表会も開かれました

1月には「海洋之心」台湾公演の記者発表会も開かれました

ディアボロ・ダンス・シアターも、もともとは小学校の体育の先生だった劉楽群芸術監督が、子供たちに中国ゴマを教えることからスタートしました。中国ゴマの発表会だけではつまらないと感じた劉監督の豊かな発想で、ダンスやバレエを組み合わせた舞台芸術として肉付けしていき、本格的なステージとして発表したのが2000年前後。その反響は大きく、2年後には海外公演をスタート、2008年には北京オリンピック、2010年には上海万博のオープニングセレモニーで公園を行うなど、いまでは台湾を代表するエンターテイメント集団になりました。日本でも2004年に大阪ビッグエッグ、2005年に愛知万博に登場、今年2013年も札幌雪まつりのオープニングセレモニーで公演を行い、雪上の舞台で華麗な技を披露したそうです。現在は、下は11歳から上は31歳まで、団員も幅広い年齢層で構成され、ますます表現力を増しています。 

まったく新しいエンタテインメント!

団員はみんなディアボロの達人!

団員はみんなディアボロの達人!

彼らが国内外から注目を集めているのは、舞台の素晴らしさはもちろんですが、まずディアボロを主役にしたステージというその発想と構成がこれまでにない新しいエンターテインメントだから。団員達の訓練は並はずれたディアボロの技術を習得するところから始まります。ディアボロの動きが舞台の世界観を作り上げていくというのはこの集団だけの表現方法。初めはディアボロの技術に驚き見惚れている人も、ダンス、歌、パーカッションなど組み合わせることで芸術へと昇華したステージに引き込まれ、じょじょに技術を超越した世界に導かれていきます。この新しい芸術を一度見た人はその衝撃と感動に、あっという間にファンになってしまうんです。ナビももちろん例外ではありません。 
ディアボロに歌、打楽器などを組み合わせて舞台が作られています ディアボロに歌、打楽器などを組み合わせて舞台が作られています ディアボロに歌、打楽器などを組み合わせて舞台が作られています

ディアボロに歌、打楽器などを組み合わせて舞台が作られています

まるで体の一部のように動くディアボロ

まるで体の一部のように動くディアボロ

やはり練習は過酷なようで、団員たちはケガが絶えません

やはり練習は過酷なようで、団員たちはケガが絶えません

最新作は「海の心」がテーマ  

そんなディアボロ・ダンス・シアターが2013年の旧正月から公演をスタートさせたのが、最新作「海洋之心」です。2007年から公演している作品を新たに演出したもので、昨年は中南米公演で披露され、今回は台湾での凱旋公演となります。ナビは今回も劉楽群芸術監督にお話を伺う時間をいただいたので、監督のお話を元にディアボロ・ダンス・シアターの魅力、そして「海洋之心」の見どころをご紹介していきましょう。  

劉楽群芸術監督

劉楽群芸術監督

今回のテーマ「海洋之心」は読んで字のごとく海をテーマにしたステージ。海の中をイメージした音楽や海の生物を思わせる衣装などでさざめく水の中の世界を表現していきます。暗闇の中で光る特製の琉璃製ディアボロは、何個も集まって波のようにさざめいたり、また時にはしずくのように空中を伝ったり、まさに水のように形を変えていきます。
「海に着想を得たのは、台湾が四方を海に囲まれた島だからです。表現する世界は海ですが、キーワードは『看見(見る)』。海の心という美しいモチーフを“見る”ことで、そこに未来の夢、この国の希望というものをみんなで一緒に見よう、という思いが込められています」と劉監督。ここでの「看見(見る)」は、目に見えないものを見るという意味に近いようです。ただ、もう一つの意味もあります。「そもそも“見る”をテーマにしたのには、私たちのこの舞台をもっと多くの人に“見て”もらいたいという気持ちが強かったからなんです。私たちの芸術はまだ、有名人のコンサートやテレビドラマほど気軽に多くの人に見てもらえるものではない。でもこの新しい文化をもっと多くの人たちに知ってもらいたい、見てもらいたいと思っています」 
海の中にいるようです 海の中にいるようです

海の中にいるようです

多くのアイディアと技術が集結しています

音楽担当の楊琇雲さん

音楽担当の楊琇雲さん


ディアボロ・ダンス・シアターの舞台は、基本的には劉監督の着想を元にしていますが、演出に使われるさまざまな技術をすり合わせていく過程で、ストーリーや表現方法が決められていくそうです。もっとも重要な演出となる音楽を担当する作曲家の楊琇雲さんは、毎回劉監督から与えられたテーマに沿った曲を生み出し、その曲に合わせて劉監督もまた想像力を広げ、演者の動きやディアボロの使い方が決められていくのだそうです。 今回は楊さんにも話を聞くことができました。
 2008年に彼らの舞台を見て感動し、音楽担当として参加することになったという楊さんは、今回の舞台ですべての音楽を担当しています。テーマをもらって彼女が曲を書いてからスタジオを借りて録音。音づくりだけでも毎回3~4ヶ月かけて準備しているのだそうです。 
音と映像、照明などのアイディアから新たなストーリーが生まれることも

音と映像、照明などのアイディアから新たなストーリーが生まれることも

ディアボロ以外にも見どころがたくさん  

ディアボロを巧みに操り、海を再現した場面のほかにも、さまざまな趣向がこらされています。人魚のように美しい女性が歌うシーンもその一つ。
歌声に聞き惚れていたナビですが、よく聞いていると不思議な感覚に。歌詞が中国語でないのはもちろん、何語か見当もつかないのです。後で音楽担当の楊さんに確かめたところ、なんとこれは何語でもなく、楊さんが曲に合わせてつけた記号のようなオリジナル言語だということがわかりました。「この曲もテーマは『看見』ですよ」と楊さん。歌手は今回オーディションで選ばれた2人が日によって交代で歌っているそうです。劉監督は「歌詞を一から作ったのだから、彼女は大変だったろうと思いますよ」と笑います。「私たちの舞台は、言葉の通じない外国人の方が見ても楽しめるのが特徴。ある人が一枚の絵画を見た時のようだ、と言ってくれたことがありますが、絵のように言葉がなくても見た人が何か感じてくれたらいいと思っています。
中南米での公演でもみなさん素晴らしい反応でしたし、先日日本で公演を行った時も、言葉は通じなくても、観客の方たちが楽しんでくれているのが見てとれました。それから、以前の歌パートは録音でしたが、舞台は現場のライブ感が一番大事なので、今では歌もライブでお送りしています」。 歌手には有名人の起用も検討したといいますが、さまざまな面で折り合いがつかず断念。厳正なオーディションを繰り返し、現在の2人に決まりました。
歌とディアボロの共演が美しい 歌とディアボロの共演が美しい

歌とディアボロの共演が美しい

オーディションは情熱を重視

気合いの入った演奏

気合いの入った演奏

情熱がほとばしります

情熱がほとばしります

公演前に念入りに打ち合わせをするお二人

公演前に念入りに打ち合わせをするお二人

オーディションといえば、今回打楽器を演奏している演者もオーディションで選ばれたメンバーです。ディアボロ・シアターのオーディションでは妥協を許さない劉監督をはじめとするスタッフのこだわりがあります。「一番大切なのは何よりも情熱とやる気」というもの。打楽器のオーディションでは、最初の一回を打っただけで帰ってもらった人もいるというからその厳しさが伺えます。今回の打楽器パートは、和太鼓の一種「桶胴(おけどう)太鼓」を使ったものだということですが、選ばれた2人による「情熱とやる気」という言葉がピッタリの、力のこもった演奏には引き込まれました。

コミカルな2人組にも注目!

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もう一つのアクセントとなっているのが、映画「ファインディング・ニモ」を思わせるカクレクマノミに扮した2人組。舞台のコメディー部門担当の彼らは、ディアボロの技は超一流でも、わざと失敗したりおどけたりしながら観客を沸かせます。冬休みで見に来ている子供たちにはこの2人が大人気でした。ナビも笑いながら見ていましたが、リハーサルを見せてもらっていたので、このコミカルなシーンを作るのに、どれほど真剣な練習が積まれているかを思うと感動しました。
劉監督は言います。「たった1分のシーンに1時間かけることもあります。音楽と演者の動き、またディアボロの呼吸を合わせるために何度も何度もすり合わせ、調整を行います。毎日これを続けているので、私たちの舞台は常に変わるし、生きているんです」
子供たちに大人気の2人でした

子供たちに大人気の2人でした

楽屋で休む姿も役のイメージどおり

楽屋で休む姿も役のイメージどおり

今回の会場ならではの工夫も  

今回の公演は中正記念堂の中正演藝廳で5月5日まで、毎週末開催されています。台湾観光に来た外国人なら誰でも一度は訪れるこの会場は、歴史も古く、アクセスの良さや知名度は申し分ありませんが、正直言ってディアボロ・ダンス・シアターがパフォーマンスをするには、やや手狭な印象。ディアボロが空中へ大きく投げ出されたり、演者同士を行きかったりするアクロバットなシーンには、もっと天井が高くて広いステージがベストという気がします。
そのことを監督に尋ねると、意外な答えが返ってきました。「確かに空間は大きくありませんが、この会場ならではの演出を考えました。壁や幕を大きなスクリーンと捉えて、映像を流し、音楽と映像、演者の動きをリンクさせることで独特の効果をもたらしています。私たちのステージは個々の技術や動きもさることながら、全体の呼吸を合わせるのがもっとも重要なので、練習場所にもいつも苦労します。広いお店を借りたり、倉庫を借りたりしていましたが、今回はこの会場を半年間借りて、実際のステージを練習場所にしました。たとえ会場に充分な広さや高さがなくても、手を抜かずに工夫すれば生かせますよ」。 
音楽と映像はあらかじめ構成したものを、6台のコンピュータを使って完全オートメーション化。ボタン一つで50分の舞台に使われる音響と映像が1秒の狂いもなく流れるようになっているのだとか。そのアイディアと実行力には脱帽です。 
ディアボロの動きを引き立てる光の使い方にも注目

ディアボロの動きを引き立てる光の使い方にも注目

打楽器奏者の動きに合わせて映像も動きます

打楽器奏者の動きに合わせて映像も動きます

熱帯魚のような映像が海の中のイメージを強めます

熱帯魚のような映像が海の中のイメージを強めます

3月の公演から衣装が変わります  

美しい衣装とメイクですがこちらは3月で見おさめ 美しい衣装とメイクですがこちらは3月で見おさめ

美しい衣装とメイクですがこちらは3月で見おさめ

最後に忘れてはならないのが、舞台を彩る演者のメイクと衣装。創設時には自分たちでお化けのように描いていたのが、現在は専門のメイキャップスタッフが半日かけて施しているというメイクは、スパンコールやラメを使い、近くで見ても美しいアクセサリーのよう。海のイメージに合わせて青が効果的に使われていました。衣装も幻想的で美しいものですが、ここで耳寄りな情報が。
昨年の中南米公演から使用している現在の衣装は、3月16日の公演から一新されるそうです。しかも新たな衣装を担当するのは、林璟如さんという台湾ではかなり有名な衣装デザイナー。欧米などでも人気のある台湾の現代舞踏集団「雲門舞集」の衣装担当として知られている人です。衣装に合わせてメイクもリニューアルするということですので、ぜひその目で確かめてみてください。 

情熱あふれる舞台は必見です!

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情熱的なスタッフと若くてやる気に満ちた演者が作り出す「海の心」は、美しく幻想的なだけでなく、見ているこちらまで熱くなるような情熱にあふれていました。
ディアボロに宿ったそのパッションを感じるだけでも、一見の価値あり。台湾の新たな魅力の一つとして、心に刻まれること間違いなしです。
 以上、台北ナビがお届けしました。


上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。

記事登録日:2013-02-19

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