「台湾人生」酒井監督インタビュー

映画を見て、台湾のことを少しでも好きになってくれればと思います。

2009年6月27日公開映画「台湾人生」

こんにちは、台北ナビ東京特派員のハンドルネーム職業旅人です。
皆さんは、台湾旅行の際困った時に日本語を流暢に話すおじいちゃん、おばあちゃんに助けられた経験ありませんか?
でもどうして日本語が話せるのか?なんていうことを深く考えたことがなかったナビ。いろいろと調べてみると、過去の歴史の中で日本が台湾を統治し、その時代日本語の教育を受けた方達がいたことを学びました。今回、そんな日本語世代といわれる方達にインタビューをされた映画「台湾人生」が、6月27日から東京を皮切りに公開されました。
今回映画を撮られた酒井(酒井充子さん)監督にお忙しい中お時間おいただきインタビューさせていただきました。


台湾映画と一人のおじいさんと出会い
今回どうしてこの映画を撮ろうと思ったのか?そのきっかけを教えてください


酒井監督
最初のきっかけは、ある台湾映画を見て実際「台北」を見たいと思い訪れた時、台湾映画の舞台にもなった九イ分で帰りのバスを待っていた時、近くの家から出てきたおじいちゃんに流暢な日本語で話しかけられました。公学校に通っていた時に自分を可愛がってくれた先生がいたこと、戦後日本に引き上げた後、連絡を取ることができなくなってしまったこと、そして、今でもその先生に会いたいと一気にお話されました。
やがてバスが来て話が途中のような感じでバスに乗った後、ものすごい後悔を感じてしまいました。
「どうしてもっと話を聞いてあげなかったのか?」
そして同時にこんな人がいる台湾というところは、どういうところか知りたいと思い、台湾のことをいろいろと考えました。

その後おじいちゃんに会うことはできましたか?

酒井監督
残念ながら何度か探したのですがお会いすることはできませんでした。映画が出来た後も心残りです。

この出会いの後、もっと多くの方に台湾のことを知ってほしいという思いで映画を作り始めたそうですが・・・。

酒井監督
当時新聞社につとめていましたが、台湾の映画を作りたいという理由で会社をやめ映画の仕事を始めました。当初、ある物語(劇映画)を撮るつもりでエピソードを聞くために、台湾を歩いてまわりました。いろいろな方に会ってお話を聞いていると、あまりに皆さんが日本語で貴重な体験を語ってくれるのを聞いているうちに、ドキュメンタリー映画を作りたいと思ってきたのです。

過去のことを話したくないなんて方もいらっしゃったりしませんでしたか?

酒井監督
いえ、特にその様な方はいらっしゃいませんでした。むしろいろいろと話したいという方ばかりでした。中でも日本時代も国民党時代も何事にも振り回されない楊足妹さんとお会いしたときに、初めてこの映画がちゃんとした形で作れるなと思いました。
揺るがない台湾を見たような気がしました。

映画のタイトルについて
当初映画のタイトルが「逍遥日記」というタイトルだったそうですが、なぜタイトルを変えたんですが?


酒井監督 
逍遥(しょうよう)にはそぞろ歩く、散歩するなどという意味があるのですが、どうしても坪内逍遥さんのイメージが強く、本来の意味がなかなか伝わりませんでした。そこで、登場人物の人生を語ってもらったこともあり、台湾人生というタイトルにしました。

最後にお聞きします監督にとって台湾とは何ですか?

酒井監督
きましたね・・・その質問(笑)愛すべき国、第二の故郷ですね・・・。
行きたいじゃなく帰りたい・・・そんな国です、台湾って。

読者に向けてメッセージをいただけますか?

酒井監督
この映画ですべてを伝えるのは不可能だと思っています。映画を見て台湾のことを少しでも好きになってくれればと思います。肩肘を張らず、自分のおじいちゃんおばあちゃんの話を聞くつもりで気軽に映画館に足を運んでいただければと思いますね。映画を見て再び台湾に行かれた時には、今まで以上に魅力を感じてもらえるかと
思います。

ドキュメンタリー映画と聞くとどうしても難しく考えてしまいがちです。また台湾と日本の歴史をわからないでこの映画を見ると、よくわからないかも知れません。ぜひ簡単な歴史を理解してごらんになっていただくと、より映画を理解してもらえると思います。 
台湾が第二の故郷と語ってくれた酒井監督の映画「台湾人生」
ぜひ映画館に足を運んでご覧ください。

あらすじ


台湾が日本統治下にあった時代に青春期を送った5人の台湾人の今を追う。
★霧に包まれた茶畑で茶摘みに精を出す楊足妹さん(1928年生まれ)。
★故郷の友人たちを訪ねる旅に出る台湾原住民出身の塔立國普家儒漾さん(1928年生まれ)。
★地元の公学校(小学校)の同窓会で、威勢よく校歌を歌う陳清香さん(1926年生まれ)。
★元日本兵でボランティア解説員として台湾の歴史を伝える蕭錦文さん(1926年生まれ)。
★日本人教師への感謝の念を抱き続ける宋定國さん(1925年生まれ)。

舞台を台湾東部の花蓮縣瑞穂郷、台北、高雄、南部のクスクス村、基隆、日本の千葉県鎌ヶ谷市に移しながら、彼らの日々の暮らしの様子を交え、日本統治時代、戦後の国民党独裁時代を経て、現在に至るまでの人生をインタビューで振り返る。


映画「台湾人生」
6月27日から東京東中野にある「ポレポレ東中野」でモーニングショー。8月1日より横浜また函館、札幌、新潟、愛知、大阪、沖縄にて公開予定。

写真提供 太秦

公式サイト
http://www.taiwan-jinsei.com/index.html

酒井監督プロフィール:
酒井充子、1969年生まれ、山口県出身。慶応義塾大学法学部政治学科卒。エンジニアリング会社を経て、1996年、北海道新聞社へ転職。函館報道部にて、幅広いジャンルで取材執筆。最初の来台は1998年。2000年、ドキュメンタリー映画や荻上直子監督の劇映画「かもめ食堂」などの制作、宣伝に関わりました。2001年、小林茂監督のドキュメンタリー映画「わたしの季節」に取材スタッフとして参加。今回、初の監督作品「台湾人生」は、「わたしの季節」のスタッフたちが関わっています。
関連タグ:台湾映画台湾映画監督

上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。

記事登録日:2009-07-13

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