国立故宮博物院「大觀-北宋書画・汝窯・宋版図書特展」

創立80周年を記念し、故宮が最も世界に誇るという「北宋時代」のコレクションを一挙に大公開した「大觀特別展」に行ってきました。

◆ この日は特別展の初日ということもあり、台湾の団体客の姿もたくさん見かけました。「北宋時代のコレクションをこれだけ見られるのはもうそうはない」そうです。

◆ この日は特別展の初日ということもあり、台湾の団体客の姿もたくさん見かけました。「北宋時代のコレクションをこれだけ見られるのはもうそうはない」そうです。

こんにちは、台北ナビです。2006年12月25日から始まった「大觀-北宋書画・汝窯・宋版図書特展」に行ってまいりました。この日は特別展の初日ということもあってか、平日だというのにたくさんの人だかり。80周年を記念し、故宮が最も世界に誇るコレクションという「北宋時代の書画、汝窯、図書」を一同に集めたのがこの「大觀特別展」。北宋時代を代表する国宝級の名品がこれだけたくさん一度に鑑賞できるのは、もうそうは巡ってこないということですから、これはもう絶対要チェックです!!

中国美術史上における北宋時代(960~1127年)

宋朝は唐末から五大十国の分裂割拠を統一し「文治主義」を標榜した王朝で、農業や手工業の発展を背景に経済的な繁栄を誇りました。唐代には貴族層が権力を握っていたのとは対照的に、宋朝は科挙制度を本格的に取り入れることによって新興階級を政治に取り込み、中央集権制を徹底。これによって身分にとらわれない自由な雰囲気が生まれ、それまでの芸術とは一線を画する新しい文化が生まれたというわけです。

そして特筆すべきことは、朝廷に初めて朝廷直営のロイヤル・アカデミー「翰林院」が置かれたこと。組織的な独立機構として芸術家に地位を与えたのは宋が初めてで、これが現在の「故宮」の前身となります。

北宋書画

◆ 「鑑賞印」が押されているのが分かるでしょうか?上部に押されているのは皇帝のものが多く、自ら鑑賞したという証拠。

◆ 「鑑賞印」が押されているのが分かるでしょうか?上部に押されているのは皇帝のものが多く、自ら鑑賞したという証拠。

◆ 「徽宗帝と北宋書画の新局面」というビデオコーナーがありました。時間の許す方はご覧になってはいかがでしょうか?

◆ 「徽宗帝と北宋書画の新局面」というビデオコーナーがありました。時間の許す方はご覧になってはいかがでしょうか?

宋代は、従来主流であった人物画に代わって山水画が確立しました。唐末から五代十国時代まで約一世紀近く分裂や動乱が続き、地域的な分断が長かったために、山水画の分野でも地方独自の画風が生まれることになりました。

では、代表的な書画をご紹介しましょう。

※期間限定でしか公開されない限定書画約70点のうち約20点が、
前半(A:2006/12/25~2007/02/07)
と後半(B:2007/02/08~03/25)に分けて展示されます。

谿山行旅圖
A:2006/12/25~2007/02/07

平民画家、范寛の作品。しっかりとした自然観察に基づいて出身地・陝西地方の乾いた岩肌の巨大な峰を真っ正面から描いています。観る者を圧倒する画面構成「高遠山水様式」と山や岩などの質感や量感を点皴によって克明に表現する写実的なところが特徴で、後の北宋後期の宮廷画家達にも多大な影響を与えました。

北宋山水画の三大流派(陝西派)に数えられ、「谿山行旅圖」は古くから范寛画として名高い作品でしたが、ロバを追う人物右の木の葉の間に小さく「范寛」の落款が900年以上経った近年になって発見されたそうです。時間があればじっくり探してみてくださいネ。

早春図
A:2006/12/25~2007/02/07

宮廷画家、郭熙の作品。李成と范寛の画様式を統合し、理想的な山水画を確立したと言われています。「早春図」では、ひとつの画面の中に、三遠(高遠・平遠・深遠)を取り入れて遠近感を表現し、「前濃後淡」の手法を用いてみごとな奥行表現を実現しました。早春の息吹が感じられるこの作品は「五代・北宋大様式山水画の頂点に位する大作」と高く評価されています。

万壑松風図
A:2006/12/25~2007/02/07

北宋末期~南宋初期の画家、李唐の作品。「斧劈皴」という技法を用いて斧で削り取ったかのように描かれた絶壁は、岩肌の硬さが余すことなく表現されています。12世紀に入って絵画と詩を結び合わせた手法が絵画に導入されるようになり、作風に変化が生まれるようになりました。この「万壑松風」では上記二幅のような叙述的な人物や建築物の点景がなく、深山、雲、松林、瀑布、急流を用いて、詩歌にしばしば現れる「谷間の松の梢を鳴らす風」という題材を表現しています。

北宋汝窯

◆ ファッションショーをイメージして作られたという斬新な展示コーナー。全世界でも70点しかないと言われる北宋の汝窯がここに24点が一度に大公開されています。 ◆ ファッションショーをイメージして作られたという斬新な展示コーナー。全世界でも70点しかないと言われる北宋の汝窯がここに24点が一度に大公開されています。 ◆ ファッションショーをイメージして作られたという斬新な展示コーナー。全世界でも70点しかないと言われる北宋の汝窯がここに24点が一度に大公開されています。

◆ ファッションショーをイメージして作られたという斬新な展示コーナー。全世界でも70点しかないと言われる北宋の汝窯がここに24点が一度に大公開されています。

汝窯(じょよう)の磁器はその温潤なスカイブルーと細かく入った貫入(ヒビ)、うっすらとピンクがかった輝きが特徴で、青磁の最高級品とされています。

第8代皇帝・徽宗の命を受け“宮廷御用達”の窯として河南省に窯を開いたものの、わずか19年後に北宋が滅び、世界でも現存する作品はわずか70点ほど。そのうちの21点が故宮博物院に所蔵されており、世界一の所蔵量を誇っています。今回の特別展では、なんとこの21点すべてが展示されているということですから、陶磁器ファン必見です。

北宋汝窯青瓷蓮花式碗

この作品の特筆すべき点は、その繊細さ。底にあるゴマ粒大の点以外全体に釉薬がかかっていたり、花びらがだんだん薄くなっていく、その丁寧で精緻な仕上がりに思わず感嘆の声が上がってしまいます。このデザインの汝窯の器は世界でもこの作品だけということですから、じっくり鑑賞してください。

北宋汝窯青瓷奉華紙槌瓶

当時の宮廷でもてはやされていたイスラム圏のガラス細工を模倣したのでは、と推測されているこのシルエットの美しい瓶の底には、「奉華(徽宗の子、高宗の妃・劉夫人の堂名)」と汝窯を愛してやまなかったという清の乾隆帝が刻ませた詩文が入っています。歴代の権力者たちに愛された名品だということが分かりますね。

北宋汝窯青瓷奉華碟

清らかなコバルトブルーに錫と鉛の合金の縁取りが、美しいコントラストを生みだしているこの作品は、南宋時代に宮廷で使用されていた証とされる「奉華」の2文字が刻まれています。すばらしい色が出ています。
こちらは中国大陸から借り受けているものだそう。このほか、日本の東洋陶磁美術館などからも借りているのだそうです。

宋版図書

◆ こちらは宋版図書のコーナー。説明はすべてスライドで映し出されるという現代的な展示方法が採用されています。正確で美しい北宋の書体が楽しめます。

◆ こちらは宋版図書のコーナー。説明はすべてスライドで映し出されるという現代的な展示方法が採用されています。正確で美しい北宋の書体が楽しめます。

唐代から始まった木版印刷は、宋代に入って製紙や印刷技術の改良により著しく発展しました。

校訂は慎重で誤植も少なく、字体も端麗かつ優雅で芸術性が高いのが特徴です。今回の特別展では、北宋時代の作品で現存するものが世界でも20部に満たないため、北宋のスタイルを受け継いだ南宋時代の図書が展示されています。

爾雅

秦(B.C.221~B.C.209)から前漢(B.C.202~7)にかけて編纂されたものと推測されている中国最古の辞典。南宋(1127~1279)初期に印刷された中で現存する世界唯一の「爾雅」です。

菩薩櫻珞本業經

仏教を厚く信仰していた宋の時代には、仏教経典を印刷することが功徳の一種とみなされ数多くの経典が製作されました。それまでの「開寶藏」や「契丹藏」といった大藏經が巻物形式だったのに変わり、本書では初めて蛇腹(じゃばら)折り形式を採用。その後、経典には蛇腹折り形式が定着することになり、この形式を定着させた記念碑的な存在となっています。

宜和奉使高麗圖經

外交官が高麗に赴任した際に記した報告書で、高麗に関する最古の記録書。当時の高麗人の服装や文化、習慣が詳しく記されている文献的価値も非常に高い作品です。
展示期間  12/25~2007年3/25 まで

上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。

記事登録日:2009-03-27

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