台湾の文献の中でしか残っていないと思われていた原住民族の伝統技術があります。それがタイヤル族系(以前はセデック族も統合されていました)の手織り布。
最近になって、その最高技術puniriが復興されたと聞き、作者を訪ねました。セデック族の血を引くseta(張鳳英)さん。最後の織り手といわれたお祖母さん張玉英さんの技術を引き継いでいたのです。
昔から原住民の女子は織物ができないと一人前の女性として認められず、死んでからも虹の橋をわたって祖先のところに行けないと言われていたそうです。初めて見ましたが、手も足もフルに使っての作業はとっても大変そう。
これは苧麻(カラムシ)という植物から作る糸。後ろは機械つむぎで、手前の丸い玉は手でつむいだものに草木染めで着色したものだそうです。
セデック族にとって菱形は祖先の眼という意味を持つ神聖な模様。色や織り方で他の部落の人間と区別したり、身分の高さを表したりするんだそうです。
こちらはpungapaとよばれる織り。平織りの上に更に一層を織り込んで分厚くしたもので、そういえばセデック族の服装の赤い縞の部分ですね。
setaさんのコレクションを見せてもらいました。これは日本時代、普段の農作業などの時に着た上着。あれ?黒っぽい部分が日本柄? 聞いてみると、当時は栽培した農作物を日本人と交換して布を手に入れて服を作っていたそうです。
こちらも草木染の糸で織られた未婚女性の服装一式。いちごのような深い赤で、台湾でよく見かける、おめでたい赤色とはちょっと違いました。ナビ個人的にはこっちの方が好みですね~。
さて、最高級のpuniriに戻りましょう。赤い地の部分に模様が浮き出るように織られているのが見えますか?
織られる形すべてが象徴的で、この直線は虹の橋。また一つ一つの小さな菱形のふくらみが多いほど、たくさん祖先の眼をあびるということで、身につける人にとっては身が引き締まり、見る人にはその人の高い身分を示したそうです。
手織りは大変な作業ですが、このすばらしい伝統の技を残すために、これからはできるだけ広く技術を教えて行きたいと話すsetaさんでした。