旧高雄港駅構内に残る北信号所でポイント切り替え体験

鉄道マニア垂涎の貴重な遺産が見られる場所です

こんにちは、台北ナビです。
高雄市の旧打狗駅故事館(舊打狗驛故事館)にやってきました。ここは日本統治時代に基隆と高雄を結ぶ縦貫鉄道が開通した際、南側の終点、高雄駅(開業当時は打狗駅)だった場所。その後現在の位置に高雄駅が移転してからは「高雄港駅」と改称して、2008年まで使われていました。

現在はかつての操作場に現役を引退した鉄道車両が保存されているほか、高雄LRT(ライトレール)の哈瑪星駅があり、週末になると行楽客で賑わいます。

そんな旧打狗駅故事館では、不定期で「信号所」の建物を公開しており、往年の賑わいの一部に思いを馳せることができます。今回特別に館長の古庭維さんに案内いただき、貴重な鉄道遺産をのぞいてみました。
日本製の蒸気機関車が保存されています

日本製の蒸気機関車が保存されています

ライトレールに乗れますよ~

ライトレールに乗れますよ~

この日は旧打狗駅故事館の建物は改修中でした

この日は旧打狗駅故事館の建物は改修中でした

一大ターミナルの鉄道運行を支えた信号所

戦後に建設された1階部分は鉄筋コンクリート、2階部分は木造という特徴的な建物

信号所とは、ポイントと呼ばれる分岐器や信号設備が備えられ、列車の運行を管理する場所。特に高雄港駅は旅客列車の終着駅であったこと、貨物の一大ターミナルであったこと、一部で単線の線路があったことなどで、大規模かつ多忙な信号所だったそう。

高雄港駅にはかつて、北と南の2カ所に信号所があったのですが、南側は駅の廃止後に取り壊され、建物が残っているのは北側の信号所だけです。1階は職員の休憩室などがありました。

ドキドキしながら心臓部に潜入

ずらりと並ぶレバー

ずらりと並ぶレバー

一般に公開されるのは2階部分で、中に入ると飛び込んでくるのは、たくさんの棒。ポイント切り替えのレバーな訳ですが、これを前後に動かすことでポイントを切り替え、列車の進行方向を変えます。

現在はほとんどがコンピューター制御され、電動で動かされるポイントですが、かつてはこのように手動でした。古館長によると「日本の国鉄で手動タイプは新幹線の開業前後にほとんど見られなくなったのではないか」とのことで、このような施設が2008年まで使われていたのは、非常に珍しいケースだったようです。
後期には電動ポイントも導入されていました。こちらは京三製作所製

後期には電動ポイントも導入されていました。こちらは京三製作所製

構内図。こんなにたくさんのレールとポイントがあったんですね。どのレバーがどのポイントなのか把握するのは一苦労

構内図。こんなにたくさんのレールとポイントがあったんですね。どのレバーがどのポイントなのか把握するのは一苦労

足もとのボタンを踏むと、ロックが外れ、レバーが動きます。ちなみにこのレバーは日本信号製

足もとのボタンを踏むと、ロックが外れ、レバーが動きます。ちなみにこのレバーは日本信号製

旧打狗駅故事館では、使われなくなった一部のポイントを復元し、実際に切り替え操作ができるようになっています。

想像していたことですが、このレバー、とてつもなく、硬くて重いんです。中には比較的扱いやすいものもありますが、ポイント毎に癖があって、全身の力を上手に利用して棒を引いたり押したり。かなりの重労働だったことが分かります。しかも、鉄道の運行は24時間。どの時間も少なくとも2人が常駐して操作を行っていたそう。古館長の話では、最も忙しい駅の一つだった基隆駅では1日に1000回、切り替え操作を行っていたんだとか。

クーラーがない時代はどうやって過酷な労働に耐えていたのでしょう……。しかも脱線や衝突など、一度判断を間違えると大事故に繋がる責任重大な仕事。時刻表を頭に叩き込んで、ダイヤ乱れにも臨機応変に対応しなければいけない簡単にはできない仕事です。
2階からポイントごとに管が伸びていて、外に繋がっています 2階からポイントごとに管が伸びていて、外に繋がっています 2階からポイントごとに管が伸びていて、外に繋がっています

2階からポイントごとに管が伸びていて、外に繋がっています

たくさんあるので複雑に見えますが、構造自体は比較的簡単なんだそう たくさんあるので複雑に見えますが、構造自体は比較的簡単なんだそう

たくさんあるので複雑に見えますが、構造自体は比較的簡単なんだそう

実際にレバーを動かしてみました

レバーを動かすと外のポイントが切り替わります

時が止まったかのような雰囲気が漂います

実はこの信号所は現在も台湾鉄道が所有しているのですが、高雄港駅が廃止されてからほとんど手が加えられていませんでした。そのため、室内は2008年当時の様子がそのまま残されており、まるでここだけ時間が止まっているかのような感覚におそわれます。

現在は高雄市立歴史博物館が管理をしていて、鉄道遺産の保護と補修、復元を行っています。乱雑に置かれたままの書類なども、今後少しずつ整理されることでしょう。
業務日誌もそのまま。これを使って研究論文が書けそうです

業務日誌もそのまま。これを使って研究論文が書けそうです

最後期の時刻表

最後期の時刻表

2003年の貨物列車の時刻表

2003年の貨物列車の時刻表

操作場職員のマニュアル

操作場職員のマニュアル

台鉄駅係員のマニュアルもありました

台鉄駅係員のマニュアルもありました

2008年11月9日、最後の係員だった人の名前が書かれていました

2008年11月9日、最後の係員だった人の名前が書かれていました

カレンダーも2008年当時のまま

カレンダーも2008年当時のまま

単線の運行に欠かせないタブレット閉塞の機械もそのまま残っていました 単線の運行に欠かせないタブレット閉塞の機械もそのまま残っていました

単線の運行に欠かせないタブレット閉塞の機械もそのまま残っていました

ポイントのメンテナンスも欠かせません。定期的に油を差して、正常に作動するようにしています。こんな展示の舞台裏が見られるのも、この特別公開ならではの光景。きちんとレールが動くポイントの数も今後は増やしていきたいそうです。

北信号所の公開に関する情報は旧打狗駅故事館のfacebookページで確認できます。日本では見られない貴重な鉄道遺産が間近に見られるチャンスです。高雄観光の際はぜひ立ち寄ってみてください。

以上台北ナビがお伝えしました。

旧打狗駅故事館
高雄市鼓山一路32号
(07)531-6209
ウェブサイト
facebookページ
関連タグ:鉄道高雄港駅ポイント哈瑪星

上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。

記事登録日:2019-05-07

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