公開に先駆け、台湾文化センターで試写会とトークショーが行われました
こんにちは、台北ナビです。
台湾をテーマにしたエッセイを数多く出されている一青妙さんが、妹で歌手として活躍中の一青窈さんと両親との想い出を綴ったエッセイ「私の箱子」と「ママ、ごはんまだ?」が、心温まる家族ドラマとなってスクリーンに登場!
その魅力をたっぷりとお伝えします。
家族をつないだのは、日本人の母が一生懸命覚えた台湾料理
(画像提供:太秦株式会社)
ストーリーは、家族で暮らした懐かしい家を取り壊すところから始まります。
久しぶりに足を踏み入れた我が家で見つけたのは、亡き母が綴ったレシピ帳。
そこには、台湾人の父のもとに嫁いだ母が、親戚のおばさんに一つひとつ教わりながら覚えた台湾料理の作り方がびっしりと書かれていました。
目の前に浮かんでくる、台所に立った母の後ろ姿…。
そこから、昔の想い出が次々とよみがえってきます。
母に連れられて歩いた、台湾の市場の喧騒。
まだ赤ん坊だった窈ちゃんと両親と一緒に過ごした台湾の家。
日本に引っ越してから、母が作ってくれたお弁当の想い出。
なかなか手に入らなかった豚足のこと……
数々の小さな出来事の中心にはいつも、母が大きな鍋や包丁を使って豪快に作る台湾料理がありました。
(画像提供:太秦株式会社)
どのエピソードも、ごく普通の家庭のささやかな日常を切り取った何気ない出来事なのですが、その一つひとつに優しい母の愛情を感じます。
それは、心を込めて作る料理のシーンが醸し出しているのかもしれません。
この料理がまた、とにかくおいしそうなんです!
ちまき、豚足煮、きゅうりの和え物、おかゆなどなど、見ていると、今すぐ台湾に飛んで食べてきたい!と思ってしまうほど。
(画像提供:太秦株式会社)
また、この料理を囲んでみんなで食事をする姿も、見ていて楽しくなってきます。
ナビが特に好きだったのは、妙ちゃんの友人や母の仕事仲間が集まって、山ほどの料理を作ってみんなで食べるシーン。
娘が連れてきたボーイフレンドたちにざっくばらんに話しかける母の姿がなんとも可笑しくて、思わず大笑いしてしまいました。
そんなふうに笑えるシーンがあるかと思えば、母の昔の恋のエピソードなど、ちょっとホロリとする話もあったりして、見終わったときには「ああ、家族ってやっぱりいいなあ」とほのぼのとした気分になりました。
(画像提供:太秦株式会社)
主題歌「空音」を歌うのは、一青窈さん。
美しい歌声に、懐かしい故郷や母を想う優しい気持ちが滲んでいます。
この映画のために書き下ろした歌だそうで、そんなところにも家族の強い絆と愛情が感じられました。
一青妙さんと白羽監督のトークショーも大盛り上がり
東京・虎ノ門の台湾文化センターで行われたトークショー
試写会の後、原作者の一青妙さんと白羽弥仁監督が、この映画の撮影秘話などを語ってくれました。
まずは、映画の中に次々と登場する台湾料理の中で、白羽監督が特に好きな料理について伺ってみると…
大勢のお客様で、会場は満席でした
「私は神戸出身なんですが、台湾料理の店も多いし、よく食べてるんですよ。でも、映画に出てくる瓜仔肉は知らなかったです」
すると一青さんがすかさず、「瓜仔肉! あれ、おいしいですよね。豚ひき肉と、日本の「きゅうりのキューちゃん」みたいなのを刻んで混ぜ合わせたシンプルな料理なんだけど、あれがあるとご飯がどんどん進んじゃう(笑)」
実はナビも、この映画で初めて知りました。お店などにはあまり出てこない、いわゆる家庭料理なんですね。
そういう素朴な台湾料理がいろいろと出てくるのも、この映画の大きな魅力です。
撮影の苦労を楽しそうに語る白羽弥仁監督
ちなみに、このおいしそうな料理の撮影には相当な苦労があったそうで…。
「湯気が難しいんです。せっかくおいしそうな料理ができあがっても、あれこれ準備やセッティングをして、はいOK!ってときには湯気なんて消えちゃってる。だから、料理を置く場所だけ決めて、すべてをセッティングしてから料理を出したりして…」
「それでも、台湾料理は見た目がゴツゴツしてて、色彩も豊かだから、まだ撮りやすいんです。大変だったのは湯豆腐。どうすれば日本の白い豆腐をおいしそうに撮れるのか、だれか教えてほしいくらいですよ」
なるほど、あの見ているだけでお腹が鳴っちゃいそうなほど臨場感あふれる料理の裏には、そんな現場の苦労が隠されていたんですね。
原作者の一青妙さんは、実は役者としてこの映画にも出ているんです!
また、自身のエッセイが映画になったことについて、一青さんは…
「びっくりしました。「ママ、ごはんまだ?」は断片的なエッセイなので、これが本当に映画になるの?って。でも、監督の脚本で一つのストーリーができあがっていて、すごくいいなと思いました」
すると白羽監督は、
「現在と過去という時系列を入れ替えることで、ストーリーに緊張感をもたせました。また、原作にはなかったり、1行ぐらいしか書かれていないこともあったので、そこは話を膨らませてストーリーを作っていったんです」
たとえば、豚足を売ってくれる愉快なお肉屋さんの話は、「母がどこかから豚足を手に入れてきた」という一青さんのエッセイをもとに想像したフィクションなんだそう。
それもまた、この映画の素敵なアクセントになっているんですね。
「まだ、映画のこと、親戚には話してないんです…」
絶妙な掛け合いに、会場からは笑い声も…
一青妙さん役を演じているのは、数々の映画やドラマで活躍している実力派・木南晴夏さん。
窈さん役は期待の若手女優・藤本泉さん、そして母・かづ枝さんを演技派の河合美智子さんが演じています。
トークショーでは、この配役の話も盛り上がりました。
一青さん 「木南さんは、私の性格をすごくわかってる!と思いました。本当に私っぽくて…(笑)。淡々としたセリフ回しとか、私も本当にああいう感じなんですよ。妹役の藤本さんも、あの愛くるしい感じがすごく妹っぽかったです」
白羽監督 「木南さんは、普段からクールで淡々とした方なんです。そこがいいな、と思いました」
一青さん 「でも、お母さんだけ、最初はちょっと結びつかなかったんです。母は面長なんですが、木南さんは丸いお顔立ちで、雰囲気が違うなあ、と」
白羽監督 「河合さんは演技と普段の様子がそんなに変わらない方で、あっけらかんと明るくて、ちょっとおっちょこちょいで、そういうところが原作のお母さんっぽいと思ったんです。カラッとした人って、日本の女優さんでは意外と難しいんですよ」
一青さん 「そうですね。母は本当にいつも笑ってました。何があってもドンとかまえている。だから実際に映画を見てみたら、台所に立つ河合さんの後ろ姿が、本当のお母さんみたいに見えました」
最近、「ますますお母さんに似てきたね」と言われるそう
そんなふうに、映画を見た一青さんご自身が「本物の家族みたいだった」と話すこの映画。
ご親戚や親しい知人などもたくさん登場しますが、そういう方々の反応はどうだったのでしょう?
「実は…妹以外の身内には、まだ見せていないんです。自分の恥部をさらけ出す気がして…。春風亭昇太さん演じる母の昔の恋人も実在するんですが、その人にも伝えてなくて。もう、一般公開してからのお楽しみって思ってます」
トークショーの会場では、原作エッセイ「私の箱子」「ママ、ごはんまだ?」の販売も行われていて、一青さんが一人ひとりにサインをしてくださっていました。
このエッセイも、一青妙さんらしい淡々とした語り口調の中に家族の愛情がにじみ出ていて、とてもオススメです。
「私の箱子」では、台湾の名家の長男だった父と、そこに嫁いだ日本人の母、台湾と日本を行ったり来たりしながら育った妙さん・窈さん姉妹の暮らしが丹念に綴られています。
特に胸を打たれるのは、原文のまま掲載されている手紙や日記の数々。
まるで、それぞれの当時の思いが浮かび上がってくるようで、一青家のことをとても身近に感じられました。
「ママ、ごはんまだ?」は、料理にまつわる一青家のエピソードを集めた短編集で、ちょっとおっちょこちょいな母の話や「なあんだ、これって遺伝だったんだ」と語る妙さんの話など、思わず微笑んでしまうエピソードが詰まっています。
台湾料理のレシピも載っているので、映画を見て興味をもった方は、ぜひ読んでみてくださいね。
映画「ママ、ごはんまだ?」は、2月11日(土)より角川シネマ新宿をはじめ、全国で公開されます。
また、台湾でも2017年5月の母の日頃に公開される予定だそうなので、在住の方も楽しみにしていてください。
以上、台北ナビでした。
上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。
記事登録日:2017-02-07