はにわきみこの「きてみて台湾最南端」-第1回「40歳の60日間ホームステイ」

第1回「40歳の60日間ホームステイ」

第1回「40歳の60日間ホームステイ」

-名前:はにわきみこ-年齢:42才-コメント:代表作「たまらない女(便秘解消体験談)」「へこまない女(離婚や落ち込みからの脱出法)」など。「へこまない女」は「不服輸的女人」として台湾で翻訳。ほか「日本一やさしいフリーのための確定申告ガイド(情報センター出版局」がロングセラー。2004年6月初めて台北を訪れ中国茶の魅力にハマり、以後6回にわたって台北へ。2007年3月1日~4月30日屏東県主催の「日籍当代作家駐屏東県作計画」のメンバーに選ばれ、ホームステイと屏東観光地めぐりを体験。-(現在フリーライター)-

はじめました、はにわです!

 台北ナビをごらんのみなさま、はじめまして!

  2004年6月にはじめて台湾を訪れて以来、台湾高山茶のおいしさに開眼、年に2回は台湾に旅行するようになったライター、はにわきみこと申します。

  台北ナビの情報を熟読し、台北市街のバス路線図や鉄道時刻表が読めるようになった私は、「バックパッカー魂が燃えるような台湾旅行をしてみたい」と思うようになっていました。そんな折、つかんだビッグチャンスが「台湾最南端の屏東県(ぴんとんけん)で2ヶ月間ホームステイ」という滞在型旅行だったのです。これから数回にわたって、屏東県でのおもしろ体験、有名無名の観光スポット、おいしいモノをご紹介していきます。

  台湾新幹線の開通や、高雄でのMRT開業、さらに、2007年秋からは、日本人旅行者が台湾で車の運転ができるようになりました。知ればきっと訪ねたくなる、そんな南台湾の魅力をお伝えしていきたいと思います。

はにわきみこはこんな人「人物紹介」

★ はにわ きみこ
★ 「はにわや」  http://haniwa.chips.jp/
★ 「我愛屏東」  http://d.hatena.ne.jp/pingtung/
★ 1966年9月19日生まれ。フリーライター。日本旅行作家協会会員。
★ 代表作は「たまらない女(便秘解消体験談)」「へこまない女(離婚や落ち込みからの脱出法)」など体験エッセイ。「へこまない女」は、「不服輸的女人」として台湾で翻訳されている。ほか「日本一やさしいフリーのための確定申告ガイド(情報センター出版局」がロングセラー。
★ 2004年6月、初めて台北を訪れ中国茶の魅力にハマり、以後6回にわたって台北へ旅行。
★ 2007年3月1日~4月30日、屏東県主催の「日籍当代作家駐屏東県作計画」のメンバーに選ばれ、ホームステイと屏東観光地めぐりを体験。

県政府の大胆プロジェクト「日籍当代作家駐屏東県計画」

 ところでなぜ、60日間も台湾最南端の「屏東県」で暮らすことになったのでしょう。実は、これ、屏東県が「日本人に屏東県の良さを知って欲しい。知って、旅行に訪れてほしい。ここはロングステイにも最適な土地なのですっ!」という熱烈ラブコールから始まったプロジェクトなのです。多くの日本人にとって、「台湾」といえば「台北」ですよね?「最南端って、高雄のことでしょ」とか、「台湾南部って、台南のことよね」と思っている人は、とっても多いのです。実際の位置関係は、地図をご覧ください。台湾の最南端は、高雄市街から車で3時間もかかる「鵝鑾鼻(がらんぴ)岬」。そしてそこは、屏東県(ぴんとんけん)なのです!
墾丁には白砂のビーチが。

墾丁には白砂のビーチが。

透明な海では一年中シュノーケリングが可能。

透明な海では一年中シュノーケリングが可能。

台湾の地図。クリックすると拡大します。

台湾の地図。クリックすると拡大します。

 もちろん、私自身も最初は「ぴんとんけん?それってどこ?」状態。台北旅行の時に、書店で地図を買ってはじめて「これか!」と思ったほど、マイナーな存在に感じていました。しかし、実際は屏東県の南、白砂ビーチがある「墾丁(カンティン)」は、超メジャーな観光地。台湾国内では、知らない人はいない人気のリゾート地なのです!そこで、屏東県政府は台湾内部でも類を見ない、大胆なプロジェクトを展開することに。

  「日本人作家を10人集めて、2ヶ月間ホームステイしてもらおう。そして彼らの目で見た屏東県、という作品を集めて1冊の本を作ろう!」というわけです。(実際は、1名が不参加となり9名での実践となりました)
 
カラー印刷でこの価格、日本ではありえない!

カラー印刷でこの価格、日本ではありえない!

四ッ谷で行われた写真展。

四ッ谷で行われた写真展。

堂々完成、書籍「フォルモサの真珠」

堂々完成、書籍「フォルモサの真珠」

 さて、その結果がどうなったかといえば・・

  2007年3月1日から、4月30日までの60日間ホームステイ体験をまとめた本は、同年11月、完成しました。タイトルは「フォルモサの真珠」。日本語、中国語の2カ国語表示で、屏東県文化処から発売されています。(オールカラー240頁・絵はがき12葉付・250元)

  また、プロジェクトに参加した日本人作家9名は、2007年12月に、東京四ッ谷にて「MY PINGTUNG」=南台湾・屏東で暮らした9人のまなざし展=」を開催、好評を博しました。

相方は日本語の先生、先進的な「日英語学苑」

 そんなこんなで、60日間を台湾・屏東県で過ごすことになったワタクシ、はにわきみこ。40歳という年齢は、ホームステイ、というにはトウが立っているよなあ、と心配していました。

 事前に送られてきたメールで、私のホストファミリーは、日本語教師で27歳、工場を経営しているお父さんとお母さん、軍隊に入っているお兄さん、中学生の妹さんとの5人家族だ、ということは分かりました。だけど、27歳本人の性別が書いてない。

  そう、台湾の人の名前は、漢字を見ただけでは性別が分からない。ミスなの?ミスターなの?さらには、発音が分からないから、英文で問い合わせしたくても、名前が呼べない!これは、非常に困るところです。(ちなみに、私の名前「君子」は、台湾では男の名前で、発音はジェンツー。文化の壁はお互いさまですね)

  ドキドキの初対面で、ホストファミリーは女性であることが判明!日本語名では「香(かおり)」、職場では香先生と呼ばれています。彼女は、英語と日本語を教えている幼稚園で、日本語教師をしている人だったのです。
 
地下~4Fまでが幼稚園、5Fは園長先生の自宅フロア

地下~4Fまでが幼稚園、5Fは園長先生の自宅フロア

楽しい料理「ワッフルづくり」は、日本語での授業

楽しい料理「ワッフルづくり」は、日本語での授業

香先生の職場「千葉英日語学苑」

香先生の職場「千葉英日語学苑」



 心配していた言葉のカベはかる~くクリア。香先生は大の日本ファンで、朝早くから夜遅くまでビシバシ働くキャリアウーマンでした。そこで、観光ツアーの設定がない日は、彼女と一緒に幼稚園へ行くことに。それにしても 「職場に私を連れて行っても大丈夫なの?」すると、幼稚園の経営者は、今回のプロジェクトで、日本語通訳を担当してくれている人だったんです。なるほど~。

バイクに乗って毎日出勤!

香先生のご両親。タンデムでラブラブ通勤

香先生のご両親。タンデムでラブラブ通勤

 それにしても、香先生の勤務スケジュールを聞いてびっくり。かなりハードなんです。通常勤務は 8時30分~19時、金曜日は残業があって20時30分まで。土曜日も8時30分から12時までお仕事で、土曜休みは月に2回。さらに、4月からは朝7時30分に出勤!

  とてもじゃないけど、私の相手をしている時間はありません。「台湾の女性はよく働くのね」と聞いてみたら「私の職場は特に拘束時間が長いの。小さな子どもが相手だし、子どもを送り迎えする親よりも、長い労働時間になってしまう」。なるほど、これは職業柄の悩みでした。

  香先生の通勤の足は、スクーター。こちらのスクーターは、2人乗りの125ccが主流です。このときはまだ免許の問題で自分で運転できませんでした。車の運転も上手な香先生の後ろに二人乗り。片道15分の通勤時間も、あっという間でした。大都市と違って渋滞があまりないのもありがたい限りです。
台湾のバイクにはジュースを入れるポケットが!

台湾のバイクにはジュースを入れるポケットが!

犬だって一緒に乗ってます

犬だって一緒に乗ってます

 さて、千葉日英語学苑(通称は「幼稚園」)に一歩足を踏み入れると、子ども達は、英語か日本語しか使ってはいけない、という決まりです。面白いと思ったのは、子どもたちの名前。全員が、台湾での本名の他に、日本語名と、英語名を持っています。

  「英語も日本語も、ネイティブの先生がいます。その国の文化を含めて言葉を学ぶので、その国の名前もつけています」とは、学苑長の葉(よう)先生。

  「この年頃ならば、母国語以外に、同時に数カ国語(英語や日本語、さらに最近はスペイン語も追加)を学習することは難しくないんです」とのこと。実際、葉先生の2人のお子さんもアメリカや日本に留学しています。幼い頃から始める語学学習の素晴らしさが実証されていました。 
子ども達には、英語名、日本語名が。私は「Doris」という英語名をつけてもらいました。

子ども達には、英語名、日本語名が。私は「Doris」という英語名をつけてもらいました。

学苑長の葉先生は、私と同世代の40代半ば。

学苑長の葉先生は、私と同世代の40代半ば。

子ども達と「折り紙」実践!

子ども達と「折り紙」実践!

日本語授業に乱入!なぜかスター扱い?

スパ設備も立派!

スパ設備も立派!

 聞けば、大都市の台北でも「幼稚園のうちから英語と日本語の両方を教えるところは少数派」だそうです。都会とは言えない屏東で、ハイレベルな教育を受けられるこの学校、なかなか先進的な幼稚園であることは間違いありません。(実際、生徒さん達はみなセレブなご家庭のお子さんです)

  それにしても、幼い頃から「英語を学ぶ」という国際感覚は分かるのですが、なぜ、「日本語」が人気なんでしょう。実際、屏東の大学や高校には、日本語クラスを持つ教室が珍しくありません。学苑長の葉先生も、大学で社会人むけ日本語クラスを担当しています。

  「日本語教室を見学してみませんか?」というお誘いに乗って、いくつかの授業を見学しまました。設備にうっとりしたのは、郊外にある「大仁科技大学 http://www.tajen.edu.tw/ 」。観光ビジネス科があり、学生寮の中に研修用のホテルルームがあるんです。う~ん、ここに留学してみたい!
これが学生寮!

これが学生寮!

外観はまるで
ホテル

外観はまるで ホテル

 楽しかったのは、活気があって元気ハツラツ、 「屏営高級中学」。市街地にある私立高校です。ホストファミリー、イヴァンの娘さんが、この高校の日本語クラスに通っているため、訪問が実現しました。葉先生が通訳についてくれて、私も1時間授業をさせてもらいました。

  ちなみに、イヴァンは英語名で、本名は陳さんという女性です。イヴァンはかつて千葉英日語学苑で教師をしており、娘と息子は、その学苑の卒業生。娘のゆりちゃんは日本語堪能で、2007年の6月からはアメリカへ交換留学に。いやホント、幼い頃からの語学って、重要ですね。授業では、自己紹介とそれに対する質疑応答であっというまに時間が経ってしまいました。
「独身ですか?(ハイ)」
「今、恋人はいますか?(ハイ、一応。帰国後にフラれてしまわないか、心配ですが)」
「離婚したって言っていましたけど原因は?(インド旅行に出て詐欺師にだまされたからです。詳しくは、「不服輸的女人」を読んでね)」
「日本で離婚はめずらしいですか(最近は多いかな~)」
授業の後に記念撮影(ほとんど珍獣扱い)

授業の後に記念撮影(ほとんど珍獣扱い)

調理実習。しっかり味見をさせてもらいました。

調理実習。しっかり味見をさせてもらいました。

高校の朝礼風景

高校の朝礼風景

 私がバツイチであること、それでも好きなコト(執筆の仕事や、旅行、今回のホームステイなど)をしていること、が女学生にツボにヒットしたようです。

  というか、屏東に暮らしていると、ナマの日本人はそうそう見かけません。テレビやインターネットを通じて、「日本の歌やドラマ」は、台湾の若者にとても人気があるんです。それを字幕なしで楽しみたい、あるいは、いずれ日本に行ってみたい。それがモチベーションとなって、若者は日本語を勉強しているといいます。そんな「日本」からやってきた「日本人」が新鮮だったんでしょうね。(学生さんのブログにも登場してしまいました)

  もちろん、大人向けの日本語教育も盛んです。「地球村」という語学学校が駅前にあり、ホストファミリー「エンカさん」もここで日本語を習っていました。日本語レッスンを受ける人たちと私たちも、誘われてあちこち遊びに出かけました。はるか台湾の地で、私にとっての母国語がスラスラ通じてしまうのは、不思議な感覚です。こちらとしても「こういう言葉は台湾ではなんて表現したらいいの?」と質問できるので、お互い、バッチリ語学学習ができる関係というわけなのです。

落涙記者会見

 60日というのは長いようでいて、実際にその場に身を置くと、本当にあっという間でした。
というのも、屏東県政府は、「我が県の観光スポットをすべて見て欲しい」とばかりに、平日はメンバー全員を集めてツアーを開催。ツアーがない日も、幼稚園を拠点に市街を散策したり、新しくできた知り合いと遊びに出たり。最終週では、疲れのあまり背中がギックリとしてしまい、中医学の病院で鍼を打ってもらう、というありさま。

  このプロジェクトに参加して、一番印象的だったのは、パワフルな、がんばりやの台湾の女性たちでした。主催者サイドは、文化所長をはじめ、スタッフのほとんどが女性。通訳をしてくれた李小姐(りしゃおじぇ)は、自分で化粧品やサプリメントの会社を経営。40代半ばにして自社ビルの幼稚園を経営する葉先生、そこで働く、ホストファミリーの香先生。そして、仕事も子どもと過ごす時間も大切にする未亡人のイヴァン。一緒に過ごすことで、台湾の女性はみんな「へこまない女」なんだ、と実感したんです。台湾で翻訳されたのは、便秘解消の本「たまらない女」でなく、落ち込みから立ち直るいきさつを書いた「へこまない女」でした。それは何故なのか、とずっと不思議に思っていました。だけど、ようやく納得できたんです。

  パワフルに働いて、つらいことにもぶつかって、でも、毎日元気ハツラツに過ごしたい。そんな熱い女性たちが、南台湾、屏東にはたくさんいたんです。
ほがらかなスタッフ、ホストファミリーの皆さん ほがらかなスタッフ、ホストファミリーの皆さん ほがらかなスタッフ、ホストファミリーの皆さん

ほがらかなスタッフ、ホストファミリーの皆さん

写真展は屏東県へ凱旋!

写真展は屏東県へ凱旋!

 プロジェクト最終日の1日前には、お別れ記者会見が行われました。「日本に帰ってしまったら、もう、みんなとこんな風に過ごすことはないんだ。私はただ、楽しいだけでよかったけれど、私たちが楽しく過ごせるよう、たくさんの人が力を貸してくれていたんだ」と思うと、涙がとまりません。

  鼻は真っ赤、しゃくりあげ全開。このとき恥ずかしいだけならまだしも、新聞に報道されてしまった私。人生は恥の積み重ね…いや、感激したことは恥じゃない!鼻が赤いのが恥ずかしいだけさ!

「日籍作家臨別落淚:我愛屏東」総合報2007/04/30
http://tw.myblog.yahoo.com/nuu-hakka/article?mid=923&prev=924&next=920

  私たちと屏東の間には、確実に強い絆ができていました。

  4月30日のプロジェクト終了後。11月には本が完成、12月には四ッ谷で写真展を開催。

 さらに、2008年5月。この写真展は台湾・屏東県へと場所を移し「九位日本作家的屏東行旅攝影展」として、台湾の人々に楽しんで頂くことになったのです!

  始まったときは、どうなることかと思われたプロジェクトでしたが、濃密な時間を共に過ごした私たちは、台湾での家族と、第二の故郷を手に入れたのでした。
海を渡った写真作品たち。

海を渡った写真作品たち。

記者会見当日にはミニコンサートも。

記者会見当日にはミニコンサートも。

 写真3点とも(photo by Tomohiko.Toratani)

■第2回は、屏東の西海に浮かぶ小さな島「小琉球」のエピソードをお送りします!

上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。

記事登録日:2008-08-04

ページTOPへ▲

関連記事

はにわきみこの「快適!台湾ドライブ旅行」後編

はにわきみこの「快適!台湾ドライブ旅行」後編

台湾東部で感激の茶葉に出会う!

はにわきみこの「快適!台湾ドライブ旅行」前編

はにわきみこの「快適!台湾ドライブ旅行」前編

台湾東部で温泉民宿に感激!

はにわきみこの「老齢の親と一緒に台湾旅行」その3

はにわきみこの「老齢の親と一緒に台湾旅行」その3

台湾南部、ビーチ・温泉・山間部をレンタカーで巡る!

はにわきみこの「老齢の親と一緒に台湾旅行」その2

はにわきみこの「老齢の親と一緒に台湾旅行」その2

第二の故郷・屏東と、高雄市街編

はにわきみこの「老齢の親と一緒に台湾旅行」その1

はにわきみこの「老齢の親と一緒に台湾旅行」その1

台北・お茶と温泉編

その他の記事を見る