ルカイ族が暮らすのどかな町で文化体験ができます
こんにちは、台北ナビです。
ルカイ族の人々が多く暮らす屏東県北部の霧台郷神山集落に行ってきました。茂林風景管理区に属していて、雄大な大自然に触れられるだけでなく、農業や伝統工芸などの文化体験が楽しめます。高雄からの日帰り旅行も可能で、ちょっとディープな台湾旅行をしてみたいという人にお薦めです。では、さっそく旅に出発しましょう!
高雄から車で約1時間30分
神山集落があるのは、高雄市内から直線距離で約50キロ離れた屏東県内の山の中。タクシーをチャーターするなら台鉄 (台湾鉄道)の「高雄」駅、高鉄(台湾新幹線)の「左営」駅からともに1時間30分で到着します。実際に山道を走るのは30分程度。意外とあっと言う間という感じがします。
公共交通機関なら、まず台湾鉄道などで屏東駅まで行き、そこから1日に3本しか運行されない屏東客運8233に乗り換えて約2時間でたどり着きます。
途中、検査場を通るのですが、ここで入山申請が必要となります。申請用紙に氏名、住所、パスポート番号などを記入します。無料で、しかも5分もかからず申請ができ、却下されることはほぼないのでご安心を。2019年現在、この入山申請の廃止が検討されているようなので、今後は必要なくなるかもしれません。
名勝「神山の滝」
標高約800メートル。はるか下を川が流れています
神山集落の入口に近い坂道を下っていくと、集落の名勝である神山の滝に通じる登山道があります。
霧台の山の中にはたくさんの滝があるのですが、この神山の滝が一番観賞しやすい場所にあるんだとか。ただ、八八水害で元々あった登山道が損傷し、それ以降は切り立った崖に沿うように歩かねばならず、危険があったそう。今年になって新しい登山道が整備されました。アップダウンが大きくないので、体力に自身のない方でも安心です。
案内してくれたサリマロ・ブギリガナさん
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しっかり舗装されていてちょっとしたハイキングに出発
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道中はサリマロ・ブギリガナさんによる解説を聞きながら歩いてきます。もちろんこれはルカイ族の名前。サリマロが家の名前で、ブギリガナがご本人の名前になっていて、いわゆる名字がありません。兄弟でも、独立して別の家で暮らすようになると、別の名前になるんだとか。
ルカイ族の家を立てる時に重要な建材となるスレートについても、強固な「雄」とボロボロになってしまう「雌」があると信じられていることや、プロポーズの時には表面が白く、太く、硬い木を燃やして狼煙をあげる習慣があり、「潔白」「すぐに壊れない」「燃え続ける」という願掛けの意味があるそう。地元の人たちと一緒に歩くと、色々なことが知られるから楽しいですね。
さて、ゆっくり歩いて30分で滝に到着しました。落差約50メートル。滝つぼはエメラルドグリーンに輝き、水しぶきがあたり一面に漂います。
八八水害前は、滝つぼがもっと大きく、岩も転がっていなかったらしいのですが、全て上流から流れてきた岩と土砂で現在の大きさになったんだとか。自然の力の大きさを思い知らされます。
流れる水の美しさに飛び込んで泳いでみたくなりますが、それだけはくれぐれもご遠慮ください。実は、美しさとは裏腹に、地元のルカイ族の間では、「気が悪い場所」とされているんです。
かつてルカイの人たちはこの滝の近くを通って農地や狩りに行っていたそうなのですが、帰ってきた時には、収穫したものの一部を、ここにお供えして通り過ぎたそう。「触らぬものにたたりなし」とはよく言ったもの。だから今でも地元の子供たちはこの付近で遊ばないんだとか。
少々怖い話になってしまいましたが、大自然の中で暮らす原住民だからこそ、その土地を熟知して、上手に付き合ってきたんだろうなと古くから続く生活を垣間見られます。
特産はタロイモ
神山集落の一角にSama食堂というレストランがあります。かつて台北でレストランを経営していたというオーナーが地元に帰ってきて開いたレストランです。ランチとディナーの時間帯以外には、DIY教室を開いていて、原住民が食べるおやつ作りにチャレンジできます。
今日チャレンジするのは「タロイモ餅」。ここでいう「餅」は中国語の意味で、薄くした生地を焼いたり揚げたりしたもののことを言います。では、早速おやつのメインの食材となるタロイモを「収穫」しに行きます。
ん?収穫?……そうなんです。レストランの向かい側が畑になっていて、ちょうどナビが訪れた9月下旬はタロイモの収穫時期。今回は特別にタロイモを収穫するところから始めました。
主要な健在としてスレートが多用されています
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晩夏がタロイモの収穫時期
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収穫完了~
この畑では愛玉も栽培されています。愛玉はつる植物で野生のものは写真左のように樹木に巻きついているのですが、畑ではコンクリート柱が立てられ、そこにまきつくように植えられていました。
さて、レストランに帰って調理の時間です。予め茹でられたタロイモの皮を剥き、黒糖を入れながらすりつぶして、小判型に形成した後、ナッツを振りかけて揚げるというとってもシンプルな工程。
とはいうものの、ヌルヌルしたタロイモをすりつぶすのは結構難しく、臼が動いてしまうなど一苦労。でも、みんなでワイワイ調理するのは思いのほか楽しいものです。
じゃじゃーん!完成~!
そして完成したのがこちら!とってもいびつな形になりましたが、手作りっていう感じがしていいですよね?
お味はというと、外がカリカリ、中はちょっぴりネバネバの食感が楽しく、ナッツの香ばしさとタロイモの素朴な甘さが絶妙にマッチして美味!そして、おやつという触れ込みでしたが、コロッケ感覚でおかずにしてもいいかなと思いました。
ちなみにこの日は、Sama食堂で夕食もいただきました。山の幸をふんだんに使った原住民料理で、台湾で普段から食べられる台湾料理をはじめとする中華料理とは全く違う味わいが堪能できますよ~。
ルカイ族に伝わる伝統工芸品「トンボ玉」
さて、ルカイ族を語る上でとても大切な装飾品があります。それはガラスを加工して作るトンボ玉。映画「海角七號(海角七号 君想う、国境の南)」の中にも登場したので、ご存知の方も多いのではないでしょうか?トンボ玉の模様にはそれぞれ意味があり、お守りのような役割を持っています。
今回は、神山集落のお姫様で、神山地区の伝統工芸発展で活躍する趙燕芬さんにご指導いただきながら、ブレスレット作りに挑戦しました。
この日準備されたのは5種類のトンボ玉。左から「勇士」「気品」「愛情」「守護」「財力」などの意味があるそう。ただ、集落ごとに意味が違うこともあるんだとか
基本的には縄にビーズを通していく簡単な作業なのですが、ふと気付いたことがあります。このトンボ玉、今でこそガスバーナーを使って強い火力で加工するのですが、近代化される前の台湾で、どうやってガラスを加工する火力を起こしていたのかということ。現代の科学では解明できない技術をかつて原住民がもっていたと考えると、原住民の底力を感じずにはいられません。
お手本で先生が作ってくれた財力運向上のブレスレットと重ねて着けてもお洒落。とっても素敵なお土産ができました。後は素敵な人との出会いを待つだけ!
ちなみに、神山集落は月の集落という別名を持っています。これはルカイ族の伝説で、元々空には太陽が2つあったものの、その後、熱すぎるからという理由でその一つが月になったというものがあり、神山集落は、月が休むために腰を下ろした場所といわれています。
この伝説にあやかり、近年ではオリジナルグッズの開発にも力を注いでいるそう。ちなみに、これらの商品は集落の女性たちが丹精こめて手縫いしたもので、縫い目を見ると、温もりが感じられるデザインになっています。町興しにも繋がるクリエイティブ商品、数量限定ですので、ぜひ記念に買ってみてはいかがでしょうか?
エコに一役買う箸入れ。ペンケースにもなります
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カラフルな月のキーホルダー
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神山集落に来たら必ず食べたいものがあります。それは愛玉。ここの名物の愛玉には、餅状のアワが入っているのが特徴で、愛玉のスルスル食感とアワのモチモチ食感の両極端な食感が味わえるんです。そしてシロップには金柑を使用。程よい甘酸っぱさが口いっぱいに広がり爽快感抜群。ぜひ立ち寄ってみてくださいね。
宿泊するなら……スレート作りのコテージで
神山集落は日帰り旅行にピッタリなのですが、宿泊も可能です。2018年オープンした宿泊施設「霧光雲台」は、1部屋ごとが独立したスレート作りのコテージになっていて超スペシャル。
クーラーが完備されていますが、海抜が高いため、夏でも窓を開けて寝れば暑さを感じることもないんだとか。虫のさえずりを聞きながら眠るだなんてロマンチックじゃありませんか?
有料ですが高鉄「左営」駅からの送迎もあるので、上手に利用すれば神山へのアクセスも楽々!貴重な宿泊体験ができること間違いなしです!
文化体験ができる原住民集落を訪れる旅は、原住民の生活を、歴史を、伝統に触れ合え、身近に感じられる素敵なチャンス。地元の人たちとの交流を通じて、神山集落のことやルカイ族のことが好きになること請け合いです。
ぜひ山に登って、あなたが見たことがない台湾に出合いに来てください。以上、台北ナビでした。
集落ガイド、手作り体験、クッキング体験などが神山ワンデイトリップに関するお問い合わせは、
神山社區發展協會までどうぞ。