池上穀倉藝術館では2022年4月3日まで「傳奇 席德進作品私藏展」を開催中!
こんにちは、台北ナビです。
台湾東部の米どころ「
池上」。台北ナビでも度々ご紹介していますが、おいしいお米を食べたら次のまちへ移動だなんてもったいないんです。お腹がいっぱいになったら是非「池上」を歩いてみてください!
そうすると、池上には至るところにアートスポットが点在していることに気づきます。そして、自転車を漕いでもう少し行動範囲を広げてみると、自然に溶け込むように展示されているインスタレーション作品のパワーに圧倒されるでしょう。
なぜ、米どころ池上でこれまでにアート芸術が根付いているのか……。それは、多くの農民たちは、農閑期になると絵画や書道、読書などの芸術活動をしていたから。つまり農民にとって芸術は暮らしの一部そのものだったというわけなんです。
それでは、ナビが見つけたアートスポットの数々をご紹介したいと思います!
小さすぎず大きすぎない、自転車巡りが楽しいまち
と、アートスポットを紹介する前に、池上アートの旅を楽しむための移動手段についてお話したいと思います。
池上旅行は、台鉄「池上」駅を基点に動く人が多いと思います。駅を出て徒歩1分ほどで池上のメインロード「中山路」に到着。ここには主なレストラン、ショップ、カフェ、民宿の多くが集結しています。池上を代表するリゾートホテル「日暉國際渡假村(パパゴ国際リゾート)」だって自転車に乗って10分強ほどで到着します。
サイクリングが気持ちいい道!
駅周辺なら徒歩散策で十分ですが、「金城武の木」がある「伯朗大道」や「大坡池」へ足をのばすなら自転車で移動することをおすすめします。自転車を貸し出している民宿やホテルも多いですし、電動自転車や6人乗りできる自転車を貸し出している業者もたくさんあります。
アートのまち「池上」を代表する芸術館(美術館)「池上穀倉藝術館」
池上をアートの街へと押し上げた立役者といえば「
台灣好基金會(台湾好基金会)」。池上の地方創生にも一役買い、2014年に立ち上げた「池上藝術村」プロジェクトでは、「アーティスト・イン・レジデンス」を実施。アーティストが池上で長期生活し、作品制作をしています。
それらの作品を展示し、池上の住民がアートに触れられるような場所が欲しいという思いを聞き入れたのは、多力米公司の梁正賢氏。60年の歴史ある穀倉を自腹でリノベーションし、台湾好基金会に経営管理を任せています。
毎回、台北でも見られないような選りすぐりの作品が見られるのですが、現在は台湾の美術界に多大な影響を及ぼした「
席德進(席徳進)」の展覧(後期)を開催しています(~2022年4月3日)。
前期は國立台灣美術館、 國立歷史博物館から借りたものでしたが、今回は「
傳奇-席德進作品私藏展(伝奇-席徳進作品私蔵展)と名付けられ、席徳進と親交のある人々が集めた作品が楽しめます。
席德進「自畫像」、1951、油彩畫布裱於木板、51.5 x 43 cm、蕭珊珊女士收藏
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席德進「珍妮特肖像」、1961、油彩畫布、99.5×72.5cm、私人收藏
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写真では伝わらないかもしれませんが、色の表現が秀逸なんです!! |
一部、席徳進との思い出やエピソードなどが添えられていて、彼の作品を通して彼の人となりや感性が感じられるようになっています。席徳進の作品で人物像が多いのは、これが簡単にお金を稼げるから。そして、気持ちよくお金を払ってもらうために、実物よりも美しく格好良く描いていたんだとか。(実際写真も添えられているので、見比べてみてくださいね)また、エピソードを読むと人の機微を繊細に感じ取るのに、自分の作品として表現する時は大胆で力強い絵や文字になるのも面白いなと感じました。
台北の館前路を描いたものを発見!國立臺灣博物館の建物はずっとあるんですね! 席德進「館前路」、1956、水彩紙本、50.9x39.3cm、私人收藏
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ヨーロッパで発表された「福祿壽」の別名を持つ抽象画。正面には「福祿壽」の三人の神様、その周りには伝統的な民家に見られる窗花(窓格子)が描かれ、さらにその周りには廟でよく見かける字体で書かれた几(かぜがまえ)が表現されています。春節に見るのにぴったりの縁起のいい作品! 席德進「抽象畫(福祿壽)」1964、油彩畫布、73x97cm、私人收藏
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同じ人物画ですが、右の林婉珍氏は描いてもらった時深く悩んでいたそうで、その心の様子も絵が表してくれているように感じます。それに比べて左の華嚴氏の絵は自信満々!心の機微を繊細に感じ取れる席徳進だからこそ、絵のモデルの心も捕らえられたのだろうなぁ……
(左)席德進「女作家華嚴像」、1966、油彩畫布、92.2x73.5cm、華嚴女士收藏
(右)席德進「林婉珍」、1971、油彩畫布、72.8x60.5cm、林婉珍女士收藏
美術への造詣が深くないナビでもぐっと感じるものがある展示でした。次回の展示は池上出身ながら、「アーティスト・イン・レジデンス」の制度を利用して池上で生活しながら創作活動をしている「劉永仁」の展覧が予定されています。彼の作品は「呼吸の概念」を作品の軸に温かいオレンジ色と黒、寒色の色の組み合わせが印象的です。
ナビのお気に入りの一枚。亡くなったその年に描かれた観音山です。写真のように精巧でしょう?
席德進「遠眺觀音山」、1981、水彩紙本、56x76 cm、私人收藏
「縱谷大地藝術季-漂鳥197」で設置されたインスタレーション作品
《自然療癒》アーティスト:撒部‧噶照
海岸山脈と中央山脈の間を走る197縣道(県道)は、池上郷から卑南郷を結び、ここを走ると絵画のように美しい田んぼ風景が広がっています。台東の自然と人文の特色が色濃く感じられるここで、2019年から毎年夏に「
縱谷大地藝術季-漂鳥197」が開催されているのはご存じですか?これ、感度の高い台湾人にはかなり話題になっていて、台東旅行の撮影スポットとして大人気なんですよ!
「漂鳥」とはインドの詩人「ラビンドラナート・タゴール」の「迷い鳥たち(Stray Birds)」の中国語名。県道197号が走る渓谷に身を置き、そのピュアさ、美しさ、素朴さを楽しむことは、まるでタゴールの「迷い鳥たち」を読むようだということから名づけられました。
大空の下にあるインスタレーションだから、開放的な気持ちになって写真が撮れちゃいますよ~!
《拾火Kalo’orip》アーティスト:拉飛邵馬 Lafin Sawmah
「縱谷大地藝術季-漂鳥197」により展示されているのは27作品。毎年10作品ほど追加されていきます。東台湾の大自然とアートが融合している様子はきっと心に残るはず!思わず一緒に写真を撮りたくなるような作品が多いので、是非思い出に写真を撮ってみてくださいね。
《供給與需求》アーティスト:紀人豪
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《溯土Revert to Earth》アーティスト:葉海地 Heidi Yip
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撮影した時は全然気づきませんでしたが、「池上-豆之間」というお店の中と外に作品が!! |
《重蛹 The Double cocoon》アーティスト:Roger Rigorth
池上に住む人々が作る作品にも注目
個人的に気に入ったのは、池上の路地裏に佇むように飾られている作品の数々。これらは著名なアマチュアアーティストの「王金生」氏が、廃棄された鉄パイプ、鉄骨、タイル、さまざまな色のガラス瓶などのリサイクル素材を使って創作したものです。
画像提供:台灣好基金會
彼は新北市出身ですがリタイア後、まずは台東の都蘭へ、そして屏東の滿州郷へ。都蘭や滿州郷で営んでいたワークスペースやカフェはその都度大人気に!
ゆっくりと余生を過ごしたいと願っていたのに大忙し!そして奥さんが体調を崩したことで、現在はここ池上で暮らしています。しかし、ここでも是非パブリックスペースに飾る作品を作って欲しいと依頼され、「池上星球(池上の星)」を制作しました。
「池上星球(池上の星)」
ガラス瓶が太陽の光に反射してキラキラ光ります
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中をのぞくと景色がまた異なるのですが、写真に収められず……無念!
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夜になると、ミラーボールのようにも見える「池上星球」
画像提供:台灣好基金會
700個ほどのリサイクルガラス瓶を使って、池上に星を作り出したわけですが、夜になるとキラキラと光ります。
彼が宇宙好きということから「池上星球(池上の星)」と名付けられていますが、春節が近づく時に見ると燈籠(提灯)のようにも見えるのはナビだけ?キラリと光る星であっても、提灯であっても、ここを訪れる人々を温かく照らしてくれることだけは間違いありませんよ~!
「開在池上的花(池上に咲く花)」の作成時は一列になって作っていましたよ~!
画像提供:台灣好基金會
そして、これが大好評だったため、その後毎年新しい作品制作を頼まれてしまう王金生氏。その後の作品は池上のおじいちゃん、おばあちゃん、ちびっこたちと一緒に作っています。
池上農會(農協)の近くには飾られている「
開在池上的花(池上に咲く花)」という作品では、池上の人々や旅行で訪れた人々182人と共に制作。完成した作品を見るだけで、作っている時に聞こえたであろう笑い声や笑顔が想像できて、温かい気持ちになります。
見ていると自然に笑顔になる作品!
「日出日落(日出日没)」
靜修路にあるのは大きな太陽が描かれた作品「
日出日落(日出日没)」。この作品を見た人が、朝日や夕陽を見る時のように、心が癒されリラックスして欲しいという思いを込めて作られました。
台湾語の詩も添えられているので、台湾語が分かる方にはこの詩を読みながら作品を楽しんでみて欲しいのだそうです。
這是日出也日落
似心起落要如何
管伊日出也日落
來到池上心情好これは朝日でもあり夕陽でもある
それはまるで心の浮き沈みのよう
とにかく(あなたの心が)朝日であっても夕陽であっても
池上に来れば気分が良くなる!
ほんと池上に来ると、時間に追われることなく、余裕をもって色んなことを感じられるんですよね。
こんな風に路地裏にひっそりと展示されているんです
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竹が使われていました!
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「樂林星系螢相迎(蛍を歓迎する楽しい銀河系)」
踏切を越えて見つけたのは「
樂林星系螢相迎(蛍を歓迎する楽しい銀河系)」。池上のおばあちゃんたちが鍋蓋で自分の心の中にある小さな宇宙を表現。そして蛍に見立てたビー玉を青い銀河に散りばめているんだとか!
池上の人々は幼い頃から芸術に勤しんでいたというのが見て取れるように、どの鍋蓋も創意工夫がなされていてすごいですよ~!
駐車している車も作品の一部のよう!生活にとけこみすぎているアートだなぁ……