台湾にハマるきっかけとなった『台北のMちゃん』(読者より)

台湾の優しい人々との出会いが私の旅の一番の思い出

もわ~っ。
初めて訪れる台湾。まだ5月だっていうのに、すっかり夏日和。
だけど、その包み込まれるような温かさがとても心地いい。その時は、まさか自分がこんなに台湾に夢中になるとは考えてもみなかったけれど…。
初めて台湾に行くことになったキッカケは、ひょんなことでした。
オランダから日本に行く際の飛行機の経由地が台湾だったのです。「台湾は行ったことがないし、せっかくだから数日滞在してみようかなぁ」と思って立ち寄ったのが、この初台湾旅行。「ひとり旅だし、ほんの数日だし、遠出せずに街をウロウロしてよっ」と、ほとんど何も台湾のことを調べることなく出発の日となりました。

さて、台北の空港に着きました。
まずは台湾のお金を手に入れないと。
だけど私の経験では、空港より市内の方が為替レートがいいことがほとんどでした。なのでその国の通貨を持っていない所に行くと、私は大抵、空港での両替はとりあえず少しだけにし、残りの必要な分は市内で両替するようにしていました。そんなわけで、この時も空港ではとりあえず数千円分だけ両替することにしました。ともあれ、台湾のお金を手に入れ、いよいよ楽しい旅の始まりです!
空港のバスチケット売り場

空港のバスチケット売り場

「台北の街にはどうやって出ればいいのかな?」
と思い空港のインフォメーションセンターで尋ねてみると、あっちにバス乗り場があるとのこと。指差される方に行ってみると、確かにバス会社のカウンターがいくつか並んでいました。少し遠巻きにカウンターを見てみると、いろいろな行き先と値段が張り出されています。そしていくつかのカウンターに、『台北行き』がありました。でも、同じ『台北行き』でも表示されている金額が微妙に違う!まぁ、日本円にして100円も違わないくらいなんだけど、
「どうせなら安い方が嬉しい!」
…と思ったのが間違いだったのでしょうか。
私はいくつかあるバス会社の中で、一番安い表示のあるカウンターに行き台北行きのバスチケットを購入。指差された方向へ移動し、台北行きらしきバスへ乗車!
よし、これで台北の街まで出れるぞっ!私は道中、初の台湾にドキドキワクワクしながら窓の外を眺めていました。

しばらくすると、ある場所で乗客がぞろぞろと降り始めました。
あれ?あれれ?
あっという間に7、8人いた私以外の全乗客が降りて行ってしまいました。
う~ん、外はまだあんまり街って感じじゃないんだけどなぁ。運転手さんがバスにひとり残る私を見て「ここだよ、降りな」のようなジェスチャー。「台北の街ですか?」と念のため確認すると、「おぉ、そうだ」と言わんばかりに大きく頷く。そう言われては降りないわけにもいかないので、数少ない知っている単語の中国語で「謝謝!」と言ってバスを後にしました。

さぁ、もう夕方だし、まずはホテルを決めようと辺りを改めて見回してみました…が、どう見てもホテルらしきものはありません。さっきバスから降りた人たちの姿も、もうどこにも見えません。尋ねる人もいないし、しばらくその場で途方に暮れていると、少し先の建物から出てくる人影を発見!英語で近辺のホテルを尋ねましたが、彼女は少し驚いた顔をして、
「え?ホテルですか?この辺りには…多分ないですよ。」
な、ない??ガーン…。ショックを受けながら、私は再度確認してみました。
「そうなんですか?…あの~、ここって台北の街ですよね?」
「えぇ、一応、台北の街ですけど、街のはずれですよ。」
そう応えて、彼女は続けました。
「ホテルを探してるなら、台北駅の方に行けばいいと思いますよ。」
あぁ、そっか。
街の中心なら『台北の街』ではなく、『台北駅』を目指せばよかったんだ。
もしかして、あの少し高い料金のバスたちは台北駅行きだったのかな?
失敗~っ!!
目指すべきだった台北駅・・・

目指すべきだった台北駅・・・

台北の街中の大きな雑居ビルはバスを降りた時には見当たらず・・・

台北の街中の大きな雑居ビルはバスを降りた時には見当たらず・・・

そんなこんなを考えてると彼女は更に続けました。
「車で来ているから台北駅まで送ってあげるよ!」
会ったばかりの人なのに申し訳ないなぁとは思ったのですが、お言葉に甘えて台北駅まで車に乗せて行ってもらうことにしてしまいました。
車の中で彼女は自己紹介を始めました。
名前はMちゃん。
台北にある日本の会社に勤めているのだと名刺をくれました。
「でも日本語は、『ありがとう』と『ごめんなさい』くらいしかわからないの。」
と言って笑っていました。
そして、以前友達が泊まったことがあるというホテルまで連れて行ってくれることになったのですが、ホテルに到着後、Mちゃんも受付まで一緒に来てくれたのです。
シングルルームに宿泊したかったのですが、あいにく満室。ダブルルームしか空室はない様子。
値段を聞いてみると、めちゃくちゃ高いわけではないけれど、安くもない。
Mちゃん達が連れてきてくれたし、ダブルルームでいいかなぁと思っていると、Mちゃんがホテルの人と交渉し、シングルルームの値段でダブルルームに宿泊させてもらえるようになりました。

ホントに?やった~!
私はまたMちゃんに「謝謝!」と言い宿泊の手続きを始めました。
ほぼ手続きが終わり、あとは最後にクレジットカードで、宿泊代金の支払いをするだけとなったのですが、カードが読み取れません。手持ちの現金が少なかったので1泊分のみその場で支払い、残りは翌日ということになりました。

無事このホテルに泊まれることになり、隣で見守ってくれていたMちゃんは
「じゃ、行くね。」と言いました。
そして、「これ、使って」と言って、何かを私の手に握らせました。
私は何をくれたのだろう?と、自分の手のひらを見てみました。
すると、なんとそれは台湾のお金だったのです。
「困ったことがあったらいつでも、会社でもいいから電話してね。」
と言い立ち去ろうとするMちゃん。
え~っと、お礼をするのは私の方だし、むしろお金を渡すとしたら私の方なのでは??

混乱している私にMちゃんは言いました。
「さっき現金でホテル代払っちゃったから、あんまりお金持ってないでしょ?」
私は、私をホテルまで連れてきてくれて、部屋の値段交渉までしてくれて、
それだけでも本当に『ありがとう』でいっぱいなのに、ここまでしてくれるなんて、感謝を通り越してむしろ驚きました。
とてもありがたいけれど、そこまで甘えるわけにはいきません。
私は、「ありがと。でも、そんなに使う予定ないから平気だよ。」と言いお金を返そうとすると、「でも、心配だから。」と受け取ってくれようとしません。
ほんの数十分前に知り合ったばかりの人のことをこんなに気遣ってくれるなんて、私は本当に感動しました。
こんな心優しい人が実在するんだなぁ、と嬉しくなりました。
だからと言って、やっぱりお金までいただく訳にはいきません。
私は、「本当に大丈夫。親切にしてくれて本当に本当にありがとう。
心から感謝してます。」と言いお金を返そうとしました。

それでもMちゃんは、頑として受け取ってくれません。
そして、「私、あなたが台湾に来てくれて、本当に嬉しいの。お友達として受け取って。」と言うのです。
私は、本当にびっくりしました。
会ったばかりなのに、どうしてここまで親切にしてくれるのだろう?と。そして、『お友達』と言ってくれたことにとても喜びを感じました。

私は、Mちゃんがそこまで言ってくれるので、
「じゃ、借りてもいい?明日銀行で両替したら返すから。明日か明後日かに会えないかな?」と聞くと、「明後日会社が終わってからなら大丈夫だよ。一緒に夕食でも食べに行こうか?」とMちゃん。
私が「是非!」と答えると、「じゃ、仕事終わって6時頃かな?ホテルに電話するね。」と言うので、「うん、待ってる!」と言いました。
するとMちゃんは、「そうそう、それは明後日会っても本当に返さなくていいからね。バーイ!」
と言うが早いか歩きだすのが早いか、手を振りながらホテルの外へ駆け出して行ってしまいました。

私は持っていた大きな荷物を放って追いかけるわけにもいかず、お礼もそこそこに、この日はMちゃんと別れてしまいました。

ホテルの部屋で、Mちゃんの『思いやり』がつまったお金をお財布に入れようと思ってひろげました。そこで私はまたびっくりしてしまいました。
お札が小さくたたまれていたので気付かなかったのですが、それはなんと、日本円にして4,000円くらいの金額だったのです!私はこんな大金だと思わなかったので本当に驚きました。これは『友達』だったら尚更、絶対に返さないと、と思いました。
歩きながら101を眺める

歩きながら101を眺める


次の日、私は予定通りひとりで街をプラプラし、その途中、無事、銀行で両替も済ませました。ちゃんと滞在中に必要そうな現金も用意できたし、ひと安心です。
そしてその次の日、Mちゃんと約束の日も、朝から街をプラプラしていました。
安くてかわいい小物を見て回ったり、安くて美味しい物を買い食いしたり、
歩いて行ける観光地を回ったりして楽しんでいるうちに夕方になってしまったので、ホテルに戻りMちゃんからの電話を待つことにしました。
しばらくホテルの部屋でのんびりしていると、フロント経由でMちゃんから電話がかかってきました。
歴史を感じる林田桶店

歴史を感じる林田桶店

安い小物や衣類がいっぱいの四平街

安い小物や衣類がいっぱいの四平街

広々とした台湾大学

広々とした台湾大学

国父紀念館の孫文像

国父紀念館の孫文像

壮大な中正紀念堂

壮大な中正紀念堂

迪化街のたくさん並んだ乾物

迪化街のたくさん並んだ乾物

「ハロー!台北滞在、楽しんでる?今日は何してたの?」
「とっても満喫してるよ!今日はね、街中をプラプラしてたよ。」
「そう、良かった!ところで、昨日とか、士林夜市は行った?」
「うぅん、行ってない。」
「じゃ、今日の夕食は士林夜市でどう?」
「うん!行ってみたいと思ってた!」
「OK!じゃ、7時に台北駅の大きな時刻表の下でいいかな?」
「了解~!7時に台北駅ね。」
「うん、じゃ後でね。」
「後で!」
そうして私達は、台北駅で再会することとなりました。
台北駅の中の高い吹き抜けは圧巻!

台北駅の中の高い吹き抜けは圧巻!

士林夜市のある劍潭駅

士林夜市のある劍潭駅

台北駅に早めに着き、Mちゃんを待つこと約10分。
Mちゃんも約束の時間よりも5分ほど早くやって来ました。
「早いね、待った?」
「うぅん、そんなことないよ。」
なんだか、旧友に会ったような気分になりました。
「じゃ、行こう!」とMちゃん。
「あ、待って。その前にコレ…。本当にありがとう。」
と言って、私は先日お借りしたお金をMちゃんに差し出しました。
実は、こういう時ってどんなタイミングでお返しすればいいものかとても悩んだのですが、ずっと気に病むのもイヤだし、やっぱり会って最初に返してしまおうと決めていたのです。案の定Mちゃんは、「いいよ。」と言って受け取ってくれようとしなかったのですが、
「でも、『友達』でいたいから返したいの。」
と言ったら、私の気持ちもわかってくれたようでした。

「わかった。ありがとう。じゃぁ、これで今日の夕食を食べることにしよう。
残った分はもらうから。夜市なんて安いんだから。いいよね?」
と言うので、
「うん。謝謝!」
と言い、私達は電車で士林夜市へ向かいました。
士林夜市の屋根つき美食広場

士林夜市の屋根つき美食広場

そうして私は、台湾で一番賑やかだと思われる夜市、『士林夜市』を案内してもらい、Mちゃんとのひとときを楽しんだのです。
屋台で、自分ひとりだったらなかなか冒険できなさそうな食べ物も、Mちゃんがどんなものか説明し、いろいろと紹介してくれました。
「いろんな種類食べてみたいでしょ?」と、ふたりでひとつ注文し、半分ずつ食べながら、本当にたくさんの種類のものをお腹いっぱいいただきました。「もう無理っ!」となってから、まだデザートを何種類かいただいて…
このままではお腹がはちきれてしまいそうなので、夜市の小物や衣類のお店を覗きながらお散歩もしました。
とっても美味しいフレッシュジュース

とっても美味しいフレッシュジュース

B級グルメの辛ワンタンと涼麺

B級グルメの辛ワンタンと涼麺

病み付きになる揚臭豆腐

病み付きになる揚臭豆腐

酸味がクセになる大腸麺線

酸味がクセになる大腸麺線

食べ歩きに便利なイカ団子

食べ歩きに便利なイカ団子

やわらかくて美味しい台湾版餅菓子

やわらかくて美味しい台湾版餅菓子

外の士林夜市も人がいっぱい!

外の士林夜市も人がいっぱい!

いろいろ食べて、お散歩もしたら、もう結構な時間になってしまいました。
Mちゃんは明日も仕事なので、そんなに遅くなるわけにもいきません。そろそろ帰ろうか、と私達は駅に向かいました。結局、「夜市は安い」とは言っても、たくさんの種類をお腹いっぱいいただいたので、それなりの値段にはなってしまいました。私は、今日のこと、そして先日のことを心から感謝しました。
そして私達は「再見!」と言い合い、お互いの帰途についたのでした。
また来ると誓った台湾の空港

また来ると誓った台湾の空港

これが私が初めて台湾を訪れ、助けてもらい、友達になった台湾人のお話です。
その後も本当に多くの台湾の方々に親切にしていただくことがあり、台湾にはまだまだ、こんな温かい思いやりが当たり前のように、そこらじゅうに溢れているんだなぁ、と感じることが多々あります。
私はすっかり、そんな台湾と台湾の人々のとりことなってしまいました。台湾の人々の優しさ、人懐っこさは、台湾を代表する大きな魅力のひとつだと思います。
改めてMちゃん、あの時は本当にどうもありがとう!!


上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。

記事登録日:2012-03-07

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