日本統治時代から残るルネッサンス様式の建物と、古代生物の生息と進化に迫る展示が見られます
こんにちは、台北ナビです。
二二八和平公園の向かい側に、荘厳な出で立ちの建物があるのにはお気づきですか?外からは中の様子がうかがい知れないので、知らない方も多いかもしれないのですが、これ、二二八和平公園内にある国立台湾博物館の分館の一つ、「古生物館」(旧称:土銀展示館)なんです。
古代生物に関する展示があってお子様連れの家族旅行にピッタリなほか、日本統治時代に建てられた建物自体もじっくりと眺める価値のある博物館です。台北駅から至近距離にあり、帰国日にもふらっと立ち寄れる手軽さが嬉しいです。では、早速見ていきましょう。
正面に聳え立つ8本の柱が目を引く建物。元々は1933年に建設された勧業銀行台北支店の建物です。勧業銀行というと、現在のみずほ銀行の前身。ナビの世代だと第一勧業銀行といったほうがしっくり来る方もいるかもしれません。
建物はルネッサンス様式で、台湾でよく見かける赤レンガのバロック式に比べると一見シンプルな造りですが、じっくり眺めると、粋なデザインや装飾が散見され、美しさすら感じられます。また、1923年の関東大震災後に設計されたので、当時の最新技術が取り入れられているという特徴があります。
勧銀時代の様子。非常にオープンな場所だったことが分かります。窓口には着物を着た女性のほか、中国風の服を着ている人がいるのが見えます
日本の敗戦後、台湾全土にあった勧業銀行の建物はそのほとんどが土地銀行に引き継がれ、台北支店は本店として活用されました。1970年ごろには手狭になったとして高層ビルへの建て替えが検討されましたが、日本統治時代の貴重な遺産であるとして保存運動が展開され、建て替えは白紙撤回。国立台湾博物館に管理が委託され、修復を経て2010年から土銀展示館となりました。
ちなみに、現在は台北市の市定古蹟として登録されています。
窓格子にも物語が。当時は木製の格子を使うことが一般的でしたが、ここは銀行と言うことで鉄製です
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柱の上にライオンの顔らしき装飾があるのが分かりますか?そして、レリーフも飾られていました。誰に見せると言うわけではなさそうですが、華麗さが感じられます
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残されているのは建物だけではありません。勧銀時代の金庫が今でも残されていて、中は日本統治時代に関する展示空間になっています。重圧な金庫の扉は戦前の国末金庫製。日本でも残っていないと言われる代物です。その重さからドアの枠がゆがんでしまい、現在ではしっかりと閉じることはできなくなってしまったそうですが、広辞苑よりも厚い扉は動かすことができます。
2層構造になっている金庫の内部は鉄の壁でコーティングされ、金庫破りが壁を壊して侵入するのを防いでいたそう。一部塗装がはげているのは、当時のままの状態を残すためだとか。ちなみに、当時は金庫内だけクーラーが備え付けられてなかったそうで、その理由はダクトができるとそこから侵入者が忍び込む恐れがあったからだとか。
鉄でコーティングされた壁
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棚がそのまま残されています
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現在は売店になっているところは元機械室で金庫の換気をする大型換気扇がありました
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戦後期のものですが米製クーラーのモーターもありました
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さて、続いては2階に足を運びます。こちらは戦後この建物を引き継いだ台湾土地銀行の資料室になっています。土地銀行は主に農地改革を円滑に進めるために設立され、勧銀と同様、不動産銀行としての役割を担っていました。
緑色のカバーが美しいアンティークランプが置かれた銀行員のデスク。台湾では「銀行灯」と呼ばれています
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超貴重な手動式のタイガー計算機が残っていました
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【3階】古蹟修復室
3階には2008年から約2年がかりで行われた修復に関する資料が置かれた古蹟修復室があります。修復では日本から左官職人が招かれ、細心の注意が払われながら、当時の様子を再現する取り組みがなされました。
外壁に飾られていた鷹のレリーフ
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こちらは鳳凰のレリーフ
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当時ハイカラな設備だった消火栓
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軽量化と施工のしやすさを追求した隔壁
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さて、参観記念に通帳を作りましょう。台湾の金融機関には独立型の記帳機があるのですが、その形をした機械で参観記録が印字できます。曜日を変えて別の日に参観すれば別の位置に印字ができるので、上手く調節すれば7カ所全てに参観記録を印字できますよ。
【1~2階】 古生物大展-生命的史詩與演化共舞
土銀展示館の展示は建物や歴史にまつわるものだけではありません。古代に生きていた生物に関する展示もあります。
これまで地球上の生物は幾度となく繁栄と衰退を繰り返してきました。その中には、短い期間で絶滅してしまった生物も少なくありません。一方で、自然の大きな力に翻弄されながらも、力強く耐え続け、進化を続けた生物もいます。そんな地球と生物の不思議な関係と歴史が分かる展示です。
たくさんの標本や模型が展示されているので、お子様にはきっと喜ばれるはずです。
そして、ナビ的に興味を引かれたのは、台湾に生息する生き物の剥製展示と、台湾にかつて生息していた動物の紹介。
元々海の底だった台湾は、ユーラシアプレートとフィリピン海プレートの活動により隆起し、標高の高い場所にも関わらず海洋生物の化石が見つかっています。また、氷河期には台湾と中国大陸が地続きとなり、多くの生き物たちがユーラシア大陸から台湾へ渡ってきました。その後温暖化で海水面が上昇し、海底に残った陸上生物の骨や化石が、現代になって地引き網漁の網に引っかかり、発見される事例も非常に多くあります。
そこから分かるのは、台湾にはかつて、象やトラなど現在からは想像もつかないような多様な生物がいたことです。今でこそ島国ですが、遠い昔に中国大陸とつながり、たくさんの往来があったのはおもしろいですよね。
日本統治時代に建設された建物とそこに残る記憶、古代の生物と豊富な生態系を持つ台湾のつながりが分かる博物館です。土銀展示館のチケットは向かい側の国立台湾博物館と共通で、一緒に参観できます。悪天候の時にも利用できるので、ぜひ足を運んでみてください。
以上台北ナビがお伝えしました!