客家(ハッカ)精神のよりどころ義民廟のある街で、100年以上続く老舗の数々を訪ね、農園レストランでは客家料理に舌づつみ♪
こんにちは、台北ナビです。台湾には様々な民族が住んでいて、それぞれに特色のある文化を持っていますが、今回は新幹線の新竹駅からタクシーで、10数分で行ける客家(ハッカ)人の町、新竹県の新埔鎮を訪ねて、その土地と文化を探索してきました。
新幹線を降りて、まず向かったのは4番出口。ここをでると新竹市内行きのシャトルバスやタクシー乗り場があります。新埔へは新竹市内とは逆の方向へ。地図上の直線距離では新幹線駅から6kmくらい北東にあります。 ナビの事前調査では「新埔で有名なもの」というと「柿餅(干し柿)と義民廟」ということだったのですが、一緒に行った台湾の友人に、「先に新埔の街で、100年以上の歴史のあるお店を散策しよう!」と言われ、まずは街のメインストリート中正路へ。
駅1階の4番出口から出ます。
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ここが新埔鎮のメインストリート
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古い町並みと百年老店
中正路にあった雑貨屋さん。いい味だしてます。
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ちょっと裏道の成功路にて。こどもたち登校中かな?
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■錦興豆腐店
新埔鎮中正路362号 Tel:(03) 589-5190
豆腐作りの型が壁に掛けてあります。
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一見、臭豆腐かな?と思ったら違いました。
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これが豆腐乳(トーフールー)。お粥とかに合うんですよね
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豆干や豆腐から作るベジタリアン用食品も売ってます。
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最初に入ったのは、中正路の新埔国民小学校のすぐ隣にあるのは手作りのおトーフ屋さん。お店の前には「豆腐乳(豆腐の漬物)」にする豆腐が乾してありました。ベジタリアン用の鶏肉(素鶏)もおトーフから作るんですね。新鮮な豆乳は、いつも朝ごはん屋さんで飲むのとは全然違って、砂糖も入ってないのに濃厚で甘みあり、とてもおいしかったです。地元の人がひっきりなしに買いに来ていました。
■ 義順百年伝統手工製氷廠
新埔鎮成功路99号 Tel:(03) 588-2143
さて、どんなアイスかな~?
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これがアイスの金型。手作りと工場生産の見分け方は、棒の向きだそうです。
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アイスはどれも1本12元です。 壁には有名人の写真・・・あ、ワンリーホン!
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ラオバン、ちょっとでいいですぅ。
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中正路を一本裏に入った成功路に、これもまた100年の歴史を持つ手作りアイスキャンディのお店が。ナビはキンカンのアイスをいただいたのですが、ここでイケメンのラオバン(ご主人)がなんとキンカンソースをかけてくれたではありませんか。客家料理では蒸したトリ肉にキンカンソースをつけるのは知っていましたが、アイスキャンディに? ・・・味はけっこうさっぱりして、思いのほかおいしかったです。
「このソースはチキンナゲットにもすごく合うんだよ~」というご主人の声に、思わず小瓶(50元)のを買ってしまったナビ。ダイエットにもいいかしら?帰ったらさっそく試してみましょう。
■ 民俗手藝紙糊店
新埔鎮中正路640号 Tel:(03) 588-3307
最後に回ったのは、なんと紙糊(ズーフー)店。紙糊店とはもともとお葬式や供養の際に、死んだ人のために燃やす紙で作られた供物を作るお店です。現在の台湾ではほとんど消えてしまいつつある産業のようで、ナビも本物を目にするのは生まれて初めて。でもこちらではその技術を生かして民俗工芸品として色々なものを創り出しているそうです。お廟のお祭りなどに使われる豪華な神像や精巧な細工物も展示してありました。とっても現代的でかわいい獅子舞は台北101の台湾製品のセレクトショップでも売っているのだとか。
中も明るい感じです
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紙細工でできた「三国志」の一場面。中国らしさが出てますねー。
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さて、ナビのイメージにあった干し柿の里は旱坑という地区らしいのですが、乾している風景が見られるのはやはり秋。日本の吊るし柿とはまた違って、丸い網に広げられた柿が農家の庭に何段にも並んでいる風景も美しそうですね。でも柿餅(干し柿)ならいつでも食べられるし・・・と思っていたら、最近新しく柿の皮を使った染物が人気になっているのだとか。
裏庭に染め上がった布が乾してありました。
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工房で働くお母さんたち。
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農家の婦人たちが捨ててしまう柿の皮の廃物利用で始めたのだそうです。丘の上にある「新埔柿染坊」というところで、製品を買ったり、自分で染めたりする体験ができます。
地道な30分ほどの作業が終わると・・・ジャジャーン!ナビの傑作ができあがりました。
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キャンバス地でできたコースター(50元)やバッグ(200元)でも体験できます。
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「慶脚(カンキャ)」というのは客家語で、しっかりもの、働き者のことを意味するそう。知らずに選んだ図案ですが、なんとなく叱咤(しった)されている気がするのは、ナマケもののナビの気のせい? 新埔の柿餅は170年もの古い歴史があるそうですが、手作業なので年々後継者が少なくなっているそう。でもそこからまた新しい産業を生み出そうとするところに、客家の女性たちのバイタリティを感じました。
■ 新埔柿染坊
新埔鎮旱坑里4隣忠孝路120号 Tel:(03) 588-0783
山の農園で客家料理と擂茶(レイチャ)
着いたのは山の中腹にある小さな農園。
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テーブルとイスはオーナーの趣味で、なぜかパイワン族の彫刻。
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客家語では山間の開けた土地を「湖(フー)」、それより小さい土地を「窩(ウォー)」というそうです。
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遊歩道の上り口にも花が。4月~5月は桐(きり)の花で山々が最も美しくなる季節です。
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お昼は、新埔の中心地から約6kmほど、山の方にある照門休閒農業区というところの農園レストランでいただくことになりました。この附近はもともと農家が自分たちの農地を美しく整備したのが評判になり、果物狩りや昆虫採集などができる観光レクレーション地として人気になったのだそうです。なるほど山道沿いにある農家の庭にも必ずといっていいほど小池があり、草木がきれいに植えられていました。登山遊歩道などもあるので、サイクリングや山歩きにぴったりの感じです。
客家湯圓(クージャータンユェン)
白玉やニラ、しいたけなどの入った客家の名物スープ。
タケノコと豚肉の炒め煮やわらかいタケノコに煮汁がしみこんでおいしかったです。
清蒸魚(チンジェンユー)
新鮮な蒸し魚に豆のソースがかけてあります。
菜脯蛋(ツァイポータン)
おなじみの干し大根入りの玉子焼き。そぼくな一品です。
サツマイモの入ったご飯におかずを載せたら、ハシがとまりません・・・でした。
最初に客家湯圓が登場したあと、
客家小炒(クージャーシャオツァオ)、
梅干扣肉(メイカンコーロー)など定番の客家料理が続きます。あのアイスキャンディにかけたキンカンソースも
蒸した地鶏と一緒に出てきました。どれも白ご飯にぴったりで、ナビもついご飯のお替りを。
食後には客家名物の擂茶(レイチャ)にも挑戦。ゴリゴリと30分は交代ですり続け、油分が出てきたら五穀粉をいれて更にひとこすり。最後に熱い緑茶をかけていただきます。ナビは初めてでしたが、こんなに香ばしいものだったんですね。静かな山中で鳥の声をききながら、すごく落ち着いた気分になれました。
■ 陳家休閒農場
新埔鎮照門里九芎湖24号 Tel:(03) 589-0035
元もとの水系を利用して無数の水生植物が植えられています。
おいしい料理をいただいたあとは、近くにある「埤塘窩」という生態保護区になっている池へ。休日には多くの家族連れが訪れるそうですが、平日はとっても静かで、ゆっくり自然観察ができそう。昔、蝶王国と言われた台湾をとりもどすべく、いろいろな蝶の好みの植物を植えたり、カブト虫の好む木をたくさん植林したりして、昆虫愛好家にとっても人気がある場所だそうです。
カブトムシや蝶、水鳥の楽園になっています。
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毒のある葉っぱを食べているこの幼虫もキレイな蝶になるそうです。
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客家精神のよりどころ義民廟
さて、山の自然を楽しんだあと、一行は客家の守り神とも言われている義民廟へ向かいました。照門地区からは新埔の中正路を逆方向に戻り、さらに新幹線の高架下をくぐって枋寮というところに出ます。
どっしりとおちついた感じの廟です。
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入り口の戸の裏には門神が。
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一見したところ、普通の台湾のお廟とそんなに変わりはないのですが、よく見ると通常はご本尊などがいっぱい並んでいる中央に、何の像も置かれていません。それはこの廟が、一人の神様を祭るのではなく、多くの普通の人々を祭っているためなのです。
中はこんな感じです。
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額の文字はもう分からなくなっていますが、柱の彫刻などがきれいです。
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義民廟の由来
清の乾隆皇帝の時代に台湾の中南部で起きた反乱が勢いを増し、北部の新竹附近まで攻め上ってきたところ、この地域の客家村落の住民が義勇軍を組織し、官軍と合流して大決戦の末これを鎮圧しました。しかし、その戦場には倒れた数百人の義勇兵の屍が累々と横たわっていました。彼らを自分たちの村に帰して葬るために牛車に載せて引いてきたところ、この場所で一歩も動かなくなったそうです。そして占いの結果、ここに廟を建てて奉ることになり、その忠義をたたえて皇帝から「褒忠」という勅(みことのり)を与えられたのだそうです。
「勅奉褒忠義民位」と書かれています。
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現在の馬総統からの額も。
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義民廟の祭礼は旧暦の7月17,18,20日の3日間で、新竹、中攊、竹東及び新竹市で順番に大きなお祭りが催されます。2年がかりで大きく肥らされ、供物となって飾られたブタの姿は奇観ともいわれます。
毎年の神猪コンテスト優勝者とその巨大ブタの写真も飾られていました。
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牌楼といわれる大きな門は義民廟のシンボル
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外に出て、きれいな門を眺めていると、ナビ友から意外な情報が。最近、この門の前でコスプレをして写真をとるのが愛好家に流行っているのだとか。格闘ゲームのコスプレだそうですが、ストリートファイターとか???でもこんな伝統的なところでポーズしまくっている姿を想像すると、とっても面白くなりました。
最後にナビ一行が訪ねたのは、義民廟のすぐ左にある一軒の占い師さんのお宅。でも本当の目的は、客家の民謡「山歌(サンコー)」の名手である徐木珍さんの弾き語りを聞くこと。自作の曲を弾きつつ、とってもいい声で歌ってくれました。
あっという間に過ぎていった時間でしたが、今まで深く知ることのなかった客家の人たちの文化や生活に触れることができて、とても面白かったです。古い伝統を守りつつ、しっかりと現代に生きている姿に、今度は干し柿の頃、自転車にのってゆっくりまわってみたいな~と思いながら、ナビは帰りの新幹線に乗りこんだのでした。