『よい子の殺人犯』(原題:最乖巧的殺人犯)主演の黃河(ホアン・ハー)にインタビュー

台湾の若手注目俳優はオタクな一面あり?聡明で誠実な人柄に引き込まれました

こんにちは、台北ナビです。

この秋、『よい子の殺⼈犯』(原題:最乖巧的殺人犯)のDVDが日本発売されるにあたり、ナビは『よい子の殺⼈犯』で主演した黃河(ホアン・ハー)さんにインタビューさせていただく機会をゲット!

取材当時は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で警戒レベル3級のため、オンライン・インタビューに応えてくれました!それが功を奏し、とてもリラックスした彼の姿を見せてくれましたよ。

監督の莊景燊(ジャン・ジンシェン)さんのインタビューは以下よりご覧ください。

アニメオタク青年のリアルに迫る

Ⓒ2019 ANZE PICTURES Co. , Ltd. ALL RIGHTS RESERVED

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よい子の殺⼈犯』は社会とうまく折り合いがつけられないアニメオタクの青年が、失恋や家族の死によって抑圧された感情を爆発させる、やるせなさが滲む作品です。この作品の主人公・阿南を演じた⻩河さんは、『紅⾐⼩⼥孩』で2015年台北電影節の主演男優賞を受賞するなど、今最も活躍が期待される俳優の一人です。本作では惜しくも⾦⾺奨の主演男優賞ノミネートを逃しましたが、繊細な⻘年が追い込まれていく演技は高い評価を受けました。

黄河さんからのメッセージ動画も届いていますよ!
それでは、黄河さんのインタビューをご紹介しましょう。

阿南は、もう一人の自分でもある

−−今回、見事なオタクぶりを披露してくださいましたが、今回の阿南という役をどのように捉え、どのように役作りをしましたか?

黃河:『よい子の殺人犯』は脚本がすでに完璧だったので、事前に監督と十分に話し合ってから、どう表現するかの方向性を決めました。この阿南という人間は、恥ずかしがり屋で、少し天然で、かわいい面がある一方、愛し愛されたいと願い、そのための努力を惜しまず、また庇護欲が強い人間だと解釈しています。そうしたキャラを定めた後に、もし自分が彼のような性格だったら、このせりふをどう言うか、どうするかと考えつつ、脚本から一人の人間に膨らませました。 

−−具体的に参考にしたキャラクターはありますか?

黃河:確かに監督からは、わかりやすく個性が突出した演技をしてほしいという要求はありましたが、特定の何かをモデルにはしていません。阿南は、緊張しやすく人とどう接していいかわからない自信がない人物です。ですので、忙しく手を動かしたり、足をすり合わせたりすることで、彼の緊張や恥ずかしがっている心境を表現しました。一旦明確に性格を定めてしまえば、そこから演技を広げていくのはそれほど難しくなかったです。こういう人間ならどうするかと考えながら、その役を探して当てる方法が自分には合っていると思います。
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−−演じるのが一番大変だったシーンは?

黃河:【ネタバレあり】あえて言うなら進行面ですね。阿南の叔父とその恋人を刺すラストシーンです。陰鬱な気持ちを高めた上で、カメラワークからナイフの持ち方や流血、さらにCGなどポスプロの技術的な要求まで意識した上で、撮影に臨まなければならなかったからです。でも撮影前に監督や共演者、スタッフのみんなとリハーサルをして、自分がどう動けばいいのかわかっていたので、実はそれほど大変ではなかったかも。

−−では、ラストシーンの本番は一発で決まりましたか?

黃河:2階から1階に降りてやり合うシーンまでのロングテイクでしたが、何度もリハーサルをしたおかげで、本番は2、3回で済みました。でも一度演じると、血で汚れた衣装や床の血をすべてきれいにしなければならないので、あのシーンを撮影するのにたっぷり1日かかりました。

−−撮影後、役から抜け出すのは大変じゃなかったですか?

黃河:少し変わっているかもしれませんが、役柄に入り込んだり、離れたりという経験がないんです。衣装を着てアクションがかかるとその役になりますが、撮影が終わって、演じていた役がすることをせず、行くような場所に行かなければ、役と自分の気持ちを切り離して、黄河という私自身の生活に戻ることができます。言い換えれば、どの役も自分の一部分を表現しているようなもので、阿南のシャイさやかわいくて単純な面は自分の一面だと思います。ですから、その役を理解して演じた後は、撮影後もその個性が自分に残っている気がします。ちょっと精神分裂みたいですが、撮影中はもう一人の自分と向き合っているような感覚ですね。

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 −−監督との撮影で、一番印象深かったことは何ですか?

黃河:【ネタバレあり】病院でおじいさんがアパートから落ちたことを知ったシーンです。阿南の気持ちはどん底に落ち込んで本来はとてもつらくて悲しいシーンなのに、何度か試し撮りをした後、監督から大声で楽しそうに笑えと言われたんです。当時はなぜそんな指示をされるのかわからなくて、好奇心から監督に理由を尋ねたところ「阿南がつらいことは観客も知っている。でも何かが足りない。だから、気持ちとは真逆の表現をしてみてほしい」と言われました。後からそのシーンを見たら、阿南が何かを決意した、変化が生じたように見えたので、やっと監督の意図がわかりました。それが監督の指導で一番印象に残ったことですね。

子どものころから、日本の漫画やアニメが大好き

−−カラオケを歌ったり、日本語を話したりするシーンでの発音がとてもきれいでした。元々日本語を勉強されていたのですか?

黃河:(日本語で)ゼンゼン。子どものころから、アニメや漫画などの日本文化が好きだったので、それらを通して覚えた日本語は幾つかあります。また数年前、たまたま日台合作の映画『南風』に出演する機会に恵まれたので、当時日本語のせりふを練習しました。それでも今回のカラオケシーンは長い時間をかけて歌詞を覚えて練習しました。自分のように、何か好きなことであれば、どんな方法を尽くしても覚えられるんだと思います。

−−ある程度日本語の基礎があったということですね。


黃河:いや、基礎といえるかどうか(笑)。そういえば昔、東京に行った時に、街中で会社員風の男性が近づいてきて、地図を片手に日本語を話されたので、「スミマセン、ワカラナイ」と答えたことがあります。私が日本語を話しそうに見えたのでしょうね(笑)。
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−−日本の漫画やアニメで好きなものを教えてください。

黃河:子どものころは『ドラゴンボール』が好きでした。ほかに『新世紀エヴァンゲリオン』、『SLAM DUNK』、『幽☆遊☆白書』は素晴らしいですね。『ポケットモンスター』や『ちびまる子ちゃん』、『ドラえもん』も見ていました。あとは『パプリカ』、『パーフェクトブルー』など今敏監督のアニメや、大友克洋先生の『AKIRA』も好きです。『シン・エヴァンゲリオン劇場版』は、台湾ではまだ上映されていないので見ていません。

−−フィギュアを買うことはありますか?

黃河:もしもっとお金があって、大きな部屋に住んでいたらたくさん買うと思います。でも今は1、2個くらいです。あ、ちょっと持ってきますね。(離席してまもなく、フィギュアを持ち帰り)AKIRAの「帰って来た健康優良不良少年!」のフィギュアです。これは見るべきアニメです。 あと『AKIRA』のコミックは日本語版、中国語版、国際版の3バージョン買いました。

−−劇中、阿南が10万台湾ドル(約40万円)でフィギュアを買うシーンがありますが、もし今10万台湾ドルを渡されたら何を買いたいですか?

黃河:バイクかカメラですね。バイクならHondaのレーシングバイクが欲しいけど、10万じゃ買えないから、カメラかな。写真を撮るのが好きなんです。

リアルな台湾の生き生きしたエネルギーを感じられる場所

Ⓒ巴萬

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−−では、台湾の映える観光スポットを教えていただけますか?

黃河:個人的にお薦めなのは萬華です。萬華は古い時代の雰囲気が比較的完全な形で保存されていて、歴史の痕跡がたくさん残っているエリアだからです。観光に適した場所もたくさんあるので、昔の台北がどんな感じだったか日本の皆さんにも体験していただけると思います。具体的には、大きくて伝統的な廟である龍山寺でお参りしたり、近くの有名な華西街夜市をぶらぶらするのもいいです。また剝皮寮は歴史的建造物が保存されたエリアで、台湾文化の特色が残されています。美しくにぎやかな場所ではないけれど、萬華はリアルな台湾の生き生きしたエネルギーを感じていただけると思います。 侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督の映画で、何度もロケ地になった場所でもあるんですよ。

−−ではお好きな食べ物は何ですか?

黃河:お寿司(笑)。台湾なら揚げた臭豆腐ですね。個人的には士林夜市の酸辣涼麵のお店の臭豆腐が好きです。お店の名前? 台湾の軽食店の名前って伝えにくいですね(笑)。ほかに麺線や肉圓、粽も大好きです。板橋の府中駅の廟の隣にある屋台の臭豆腐専門店もおいしいですよ。隣にちょうど肉圓のお店もあるので、そこに行ったら両方食べます。有名な阿宗麺線もおいしいですよね。それから通化街夜市の入り口の手前、路地にあるお店の猪血糕もおいしいですよ。
初めてということもあり、始まる前は少し不安だったオンライン・インタビュー。実際には、むしろリラックスした状態で応えていただけたようで、話題にのぼったグッズを見せてくれるなど、サービス精神旺盛な一面も見せてくれました(画像をお届けできなくてごめんなさい!)

このどこからどう見てもイケてる黄河さんが、劇中ではその片鱗すら見い出すことができません。ぜひ『よい子の殺⼈犯』での見事なカメレオンぶりをご覧ください!

以上、台北ナビ(二瓶里美)でした。

「よい子の殺人犯」商品情報

【発売日】
2021年9月3日(金)

【価格】
4,180円(本体価格+税10%)

【特典】
映像特典
・王真琳 (ワン・チェンリン) オンラインインタビュー
・莊景燊 (ジャン・ジンシェン)監督メッセージ
・黃河 (ホアン・ハー)メッセージ
・アニメ「最強のボビッター」テーマ曲カラオケ
・台湾版オリジナル劇場予告編
・オリジナルブックレット

※商品の仕様は変更となる可能性がございます
※レンタル同日リリース

発売元:株式会社ディメンション
発売協力:株式会社ピカンテサーカス、アジアンパラダイス
販売元:株式会社ハピネット・メディアマーケティング

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上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。

記事登録日:2021-09-02

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