台湾人の、お茶ビジネスの登竜門といわれる老舗の茶道教室「陸羽茶藝中心」にいって来ました
こんにちは。台北ナビです。
茶所台湾に来たら、やっぱり中国茶!観光客にお茶の手ほどきをしてくれるところは沢山あるけれど、地元の方たちは、ご家庭や独学以外では、いったいどこで中国茶のお勉強をしているのでしょうか。「陸羽茶藝中心」は、地元台湾で中国茶のお仕事を志す人々が、基本から茶について学ぼうと集まってくる、言ってみれば私立のティーアカデミーです。内装が変わったとの噂を聞きつけ、早速お邪魔してきました。
場所は、「博愛特区」と呼ばれるエリアで、総統府の直ぐ傍です。MRT「西門町」駅からも歩いてすぐ。衡陽路と博愛路の交差点にある、彰化銀行の隣です。1階は天仁名茶の売り場、2階は天仁のレストラン「喫茶趣」、そして更に3階が陸羽茶藝中心となっています。
茶道と茶藝
よく色々な人が疑問に思っているこの2つの違いを陸羽の老師に直撃質問してみました。中華文化の中で、お茶を上手に入れることは藝術(芸術)なのです。ですから、藝茶+藝術で茶藝。芸当の芸ではありません(笑)。これが日本に行くと、茶道、茶の道、ということになるのです。
日本の茶道は仏教を通じて伝わり広がったというバックグラウンドがあるだけに、茶も精神修養のための様相が強かったようです。でも、飲料としてのお茶に求めるものは、万国共通。お茶を飲むのは、渇きを癒し、疲れを和らげ、精神的にホッとするため、というのはどこでも、いつの時代でも同じようです。
お茶アカデミー、陸羽茶藝中心
台湾は、中国文化圏では有数の茶所で、狭い国土ながら、作られるお茶の品質とバリエーションは驚くべきもの。ですから、台湾で世界に誇れる烏龍茶は、台湾人にとって一番自慢の農産物。
ですから、今でも街のお茶屋さんに入ると、「うちの品揃えは台湾茶のみ」というところは多いのです。が、陸羽茶藝中心は、中国茶道を教え、広める場所だという考え方から、日本の抹茶や中国大陸のお茶も販売しています。カリキュラムにある「茶の認識」では、国をこえて、様々なお茶を学ぶので、福建の岩茶や蘇州の碧螺春など、他ではあまり扱っていない種類も多く置いてあります。遠く中国まで旅行しなくても、陸羽に来れば、台湾で大陸のお茶が手に入ります。
福建省政和の白茶 マグや急須にポンッと便利
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カメオのブローチを彷彿とさせるメダリオン状に固められていてキュート♪
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茶器茶道具なら陸羽
売り場には、茶器がずらりと並びます。陸羽茶藝中心は、以前から茶器の開発を盛んに行ってきました。美しいお点前動作は、使いやすい茶道具から生まれます。液だれのしない、持ってバランスの良い茶器は、以前はとても少なく、容量に対して注ぎ口がとても小さく、液だれはあたりまえのものが多かったものです。でも、陸羽では、普通のご家庭で、排水機能付きの茶盤などがなくても、テーブルで普通にお茶を入れることが出来、しかも中国茶壺(急須)のテイストを損なわない外観を保ちつつ、注ぎだしがスムーズで液だれなしの茶器を開発してきました。
人気の青絵のセット。これは竹。蘭や菊、蓮などもあります。
磁器も陶器もデザイン豊富で、しかも使いやすそう。
どれも、渋めで飽きの来ないデザインといえると思います。茶器選びの決め手は、使いやすさに次ぐ使いやすさ。普段使いができてなんぼなのです。女の子が好きな白磁に手描きの模様の入ったものは陸羽には少ないですが、使いこなすほどにますます愛着が沸き、自分で育ててゆけるマイ茶壺(急須)に出会えることでしょう。
可憐な桐の花がモチーフ。
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涼しげで清らかな流れを連想させます。
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茶器ひとつひとつにテーマがあります
卵を立てたような縦長の茶壺
陸羽で開発・販売するそれぞれの茶壺(急須)やセットには、由来や意味がこめられています。
ナビは、普段茶器を選ぶときには、まずは見た目からはいるのですが、陸羽で茶器を買う時は、デザインもさることながら、由来の面白さで選ぶことも多いのです。色々な意味合いの、様々な形の茶壺があるので、これが茶壺?!と驚くような形のものもあります。茶壺は丸いものだという既成概念を打ち破るような奇抜なものもありますので、チャレンジしてみるのも楽しいかもしれません。形は様々でも、そこは陸羽の茶壺。意外にも持ちやすく、注ぎやすいものばかりです。
陸羽の茶器の代表作、星座壺シリーズのなかから、自分の星座の茶壺を記念に買う人も多いそうです。大きさや形が異なり、始めはビックリするようなデザインでも、あら不思議。持ちやすく、注ぎやすい!ちなみにナビは獅子座で、獅子座壺を持ってます。また、干支茶壺もデザインされています。今年は午年。午年壺は、ちょっとお尻が犀っぽくて可愛いお馬さんです。
どんなかたちの茶壺でも、バランスがよく非常に持ちやすのが特徴。
陸羽の茶器はユニセックス
ギリシャ神話のアテネ神がモチーフ。りりしい茶壺です。
お茶を入れるのは、女性だけ?そんなことはありません。台湾では、企業の社長、警察官、商店のご主人、お爺さんなど、男性も普通に自慢のお茶を自慢の茶器で淹れて振舞います。陸羽の茶器は、いってみればユニセックス。男性が使っても、女性が使っても、使い手の雰囲気で品よく見えるものが揃っています。
工夫の詰まった茶器
また、陸羽ならではの抹茶碗が面白いです。20数年前のことですが、陸羽が主催する「無我茶会」というお茶会で、流派を問わないということから、抹茶をたてた日本人参加者がいたのだそうです。飲みなれない抹茶を振る回れた台湾人参加者は、飲み干せずに、茶席の主に失礼をしてしまった、と強く感じたそうです。
そこで、その後も参加者が安心して抹茶をどんな参加者にも振舞えるよう、陸羽の茶器開発者が一碗を数人に注ぎ分けて飲むという方法と道具を考え出しました。片口碗のような陸羽の抹茶碗、これも、勿論液だれナシです。
右側が茶盅。慣れると持ち易くて便利です。
また、公道杯と呼ばれるお茶を注ぎ分けるピッチャーのような器は、30年ほど前に、なんとか濃さを均一にして楽に注ぎ分けられないかと、コーヒー用ミルクピッチャーをヒントに陸羽が開発したもの。それがいまや、全台湾や中国のみならず世界中で中国茶道具として使用されているのです。そして、陸羽の現在の公道杯のかたちはこれ。呼び名も「茶盅(チャーヂョン)」とし、ハンドルはつけずに、張り出した縁を利用して持つデザインで、茶漉しが内蔵されているので、茶杯に茶葉のカスが入り込まずに、澄み切った状態の綺麗なお茶をいただくことが出来ます。
青空になる銀色の瓢箪。美しいです。
茶器のみならず、茶家具も開発
脅威の収納力と機能を誇る、家具調お茶入れ台、茶車。
茶車は、家具調のお茶を淹れるための台で、下にキャスターが付いていますから、転がして他の場所へも移動可能。
茶葉は茶器、建水やポットなど、いろいろな道具が内蔵できるので、茶箪笥とテーブルと茶盤などの機能を一台にまとめた、移動式のお茶ステーションとでもいいましょうか。
お茶好きの一家に一台、こんな茶車があったらいいですね。
中国茶ドリーム
中国茶マーケットは、中国経済が活性化し始めた時期から、大陸での台湾茶の評価がどんどん上がり、茶産業も熱を帯びてきました。美味しい台湾茶は紛れも無いMIT(メイドイン台湾)、これを海外や観光客に販売することを職業にしたい、と考える人が他業界からも現れ、台湾茶関連業界に参入し始めました。今では、パッケージをもっと魅力的にデザインし、小分け真空パックなど使いやすいように工夫して、様々な形態でお店に並ぶ台湾茶が増えています。台湾人の、自分で商売を立ち上げようという独立精神と、自分の個性を盛り込みたいアレンジ大好きな精神にとっては、台湾茶はとても魅力的な地元特産物なのです。
そんな人々が、知識の基礎力、応用力を身につけるために訪れるのが、陸羽茶藝中心で、度々開かれる初級班には、開講が夜にもかかわらず、毎回多数の参加者があります。
30人以上入れる教室
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茶関係の図書も充実してます。
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独自の資格試験も
「泡茶師資格検定考試」といえば、30年前から陸羽が行ってきた、独自の中国茶検定試験です。45分間以内に、3種類のお茶をあらゆる茶器を使って理想的なお味に淹れる、というものです。この検定試験は人気で、台湾では毎年6月に試験があるものの、その年の試験が終って来年の募集をかけると、すぐに募集人数がいっぱいになってしまうそうです。毎年、3-6月までは、生徒さんが練習にきていて、売り場は賑やかです。
お値段のはる高級茶を手に入れれば、淹れるのは簡単。どんな風に淹れたってある程度は美味しく入るのです。でも、お手頃なそこそこの等級の茶葉でも、ちょっと工夫すれば等級を超えた美味しさで味わうことが出来る、という角度から、茶の色々な特性を学び生かしてゆこうということです。皆さんも、学ぶと奥深い中国茶の世界を、陸羽で学んでみてはいかがでしょうか。
陸羽では、日本人受講希望者人数が20人以上集まれば、午前中の日本人クラスの開講が可能です。以前は日本人のクラスは盛んに開講されていたようですが、最近ではまとまった人数での申し込みが難しくなったのか、ここ数年開講は無かったそうです。
中国語に自信のある方は、比較的頻繁に開講される、夜7時から9時までのクラスで、地元の人々と一緒に受講することも可能です。
台湾で発展を遂げてきた中国茶藝の陸羽は、現在中国大陸でも北京、上海、成都などに拠点を広げ、中国茶文化を広めています。皆さんも、台湾に旅行にいらした際には、陸羽の売り場を覗いてみませんか?30年のノウハウが詰まった、使いやすい茶器が手に入ることでしょう。
以上、台北ナビでした。