台湾に残る唯一の活字屋。レトロでクールな自分だけの活字印鑑や名刺も作れちゃいます。
こんにちは、台北ナビです。
今となっては、ほとんど目にすることもなくなった活版印刷。しかしながら、台北には今でも活字を生産・販売しているお店があります。台北駅の北側にある「日星鑄字行」は台湾に残るただ1軒の活字屋。お店のある細い路地裏には、機械部品を売るお店などが立ち並び、下町の空気が漂います。狭い店内にところせましと活字が並んだ風景はどこか懐かしさを感じさせてくれます。
オープンから46年
二代目オーナーの張介冠さん
「日星鑄字行」はオープンして今年で46年。現在のオーナーである張介冠さんは2代目で、創業者である父親のあとを継ぎました。
「日星鑄字行」という店名には、「日々繁盛しますように」という意味が込められています。
どうして「日星」でそういう意味になるのでしょうか?それはこの文字に謎が隠されています。「日星」という文字を分解すると、「日日生」=「毎日(日日)商売(生意)」という意味が見えてくるのです。店名にも文字遊びの感覚が取り入れられているんですね。
ナビはてっきりオーナーの名前に由来すると想像していたのですが、 想像をはるかに超えた奥の深い店名でした。
世界で唯一繁体字の活字を販売
プリンターの普及により、衰退の一途をたどる活版印刷。日本にはまだいくつかの活字業者がありますが、台湾に残るのはここだけ。そして、繁体字を鋳造販売しているのは、全世界でもこの 「日星鑄字行」だけなのです。そう考えるととても貴重ですよね。
昔は主に業者を商売相手としていましたが、今は一般のお客さんがとても多いそう。ナビがうかがった日も、次から次へとお客さんが姿をみせていました。日本人のお客さんも多いそうですよ。
ここで売られている活字は、1階にある作業場で、オーナー自ら鋳造しています。なんとほぼ毎日作っているそうですよー!
膨大な数の活字!
お店は一階と地下があり、ところせましと活字が並んでいます。その数なんと数百万個以上!
字体の見本がおいてあります
活字の字体はゴシック体、楷書、明朝体の3種類。それに加えて文字の大きさは7種類あります。
そして、漢字だけではなく、ローマ字、そしてなんとひらがな、片仮名まであるのです!
ひらがなと片仮名は、あいうえお順でなく、いろはにほへとの順で並んでいます。これもノスタルジックですよね。
以前から日本と台湾の印刷業は深いつながりがあり、今でも日本統治時代に使われた字体が残っているのだそう。
人気があるという「愛」の字
こちらの活字の特色は、およそ100年前に上海で作られた楷書の字体をそのまま残していること。毛筆体で書いたような字体が特徴です。
また、活字のデザインも日本と台湾では異なります。張さんによると、日本は花や模様のデザインが特色ですが、台湾はイラストなのだとか。
こういう違いを比べてみるのも面白そうですね。
ほかには無い珍しい活字も発見!
ヘビデザインの活字
「日星鑄字行」では活字デザインのコンテストを毎年開いていて、その入賞作を新たに販売しています。
今年の蛇年にちなんで、ヘビデザインの活字も。原住民風のデザインになっています。
ダブルハピネス(囍)も人気なのだとか
ダブルハピネスは有名な作家さんによるデザイン。結婚するお友達へのプチプレゼントとしても喜ばれそうです。
干支もあります。年賀状に使ったらおしゃれかも。
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その他にもいろいろありますよ~
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自分だけの活字印鑑を作っちゃいましょう♪
では早速自分の欲しい活字を選んでみましょう!
印鑑ケース
とその前に、もちろん活字だけを購入してもOKですが、より便利に使いたい!という人は、印鑑ケース(100元)を購入するのがおすすめ。
1文字(左)16文字(右)
この印鑑ケースには、活字のサイズによって、1文字、4文字、16文字の活字を入れられます。
活字を探すときはお店の人に頼るのがベター
まずは、自分の欲しい文字と大きさを紙に書きます。
それから自分のほしい活字をひたすら探すのみ!
ただ、自分で探すのは至難のわざなので、お店の人に言って探してもらうほうがずっと楽チンです。ナビがずっと探しても見つからなかった字を、オーナーはあっという間に見つけだしてくれました。
どうしても自分で選びたい!という方には、注意点がいくつかあります。
通路が狭いため、お店に入ったら荷物はカウンターに預けましょう
1. 自分の買う文字だけ取る。1度取った活字は元に戻さない
これはお客さんが間違った場所に戻してしまうのを避けるため。もしも間違った場所に戻されると、あとからそれを発見するのは至難のわざで、万が一間違った文字で活版を作ってしまうと、大損害になってしまうのです。たかが1字でも、されど1字。
注意書きが貼ってあります
2. 勝手に活字を試し押ししない
1度インクをつけてしまうと、もう売り物にならなくなってしまいます。だから、試し押しは厳禁。どのように見えるかは買ってみてのお楽しみ~。
日本語でも
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鉛は有害なので、触った後は手を洗いましょう
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お店側もお客さん側も気持ちよく買い物ができるように、ルールを守って買い物をしましょう!
選んだ文字は、お店の人にどのように並べるか伝えて、印鑑ケースに入れ込んでもらいます。
2つずつ活字を入れたところ
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これをパチっと合わせます
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完成!
ナビは4文字で自分の名前の印鑑を作りました!
料金表
活字は文字の大きさと種類によって価格が異なります。
ナビは明朝体をチョイスし、1文字20元、4文字で80元でした。印鑑ケースをあわせると180元です。この安さでオリジナル印鑑が作れるなんて素敵~♪
印鑑のほかにももうひとつ興味をそそられる商品があります。
それがこの、名刺製作キット(600元、活字は別途購入)。
なんと、活字で自分の名刺が作れてしまうのです!
名刺製作キット
土台は紙製
これはオーナーとデザイナーの共同で開発されたもので、当初は木板を使うアイディアだったのですが、リーズナブルに提供できるよう、厚紙を土台に採用することにしたのだとか。
丁寧に作り方が書かれた説明書付き
作り方はいたって簡単。活字を台紙にはめこんでいくだけ。張さんによると、小学3年生でもできるのだとか。
実際に張さんに名刺を作ってもらいました。
まずは付属の名刺用紙を土台にセットします
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付属の用紙にもこだわりあり。押し痕がくっきり残る高級紙を使用
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次に活字にインクをつけます。1文字ずつ付けられるので、カラフルな名刺を作ることもできるのです
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フタを閉めて、力強く押します
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完成!
レトロな活字名刺は目立つこと間違いなし!
実際に、これを使って相手の前で名刺を印刷して渡している営業さんもいるのだとか!
押し痕もくっきり
ちなみにこれは初回製作バージョンで、今後改良を加えていくそうで、値段も変更になる可能性があります。
その他にもいろいろな商品が売ってあります。
日本の印刷業界と深いつながり
オーナーは日本の印刷業界とも交流があり、いろいろな話をしてくれました。その中で見せてくれたのが「秀英体」の本。
こちらが秀英体の本
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その活字を鋳造する際に必要となる型も見せてくれました
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これが、ガイドのときにお客さんが作ったもの。
団体客向けにはガイドも行っています。印刷技術の歴史から、活字の製作方法、実際に活字を並べてインクをつけて印刷することもでき、内容は盛りだくさん!2時間半から3時間のガイドになっています。
ただ、このガイドは20人から30人の団体向けで、一般客だと申し込めません。残念。
ガイドではこの機械を使って活版印刷を体験することができます。以前はこれで名刺を制作していたそう。
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この機械を用いて作られたポストカード。活字のデザインがおしゃれですよね~。注文でこういうものを作ってもらえるのか聞いてみたところ、今は組版技術のあるデザイナーがいないため、できないのだそう。しかし、今後人材育成の課程を開く予定だそうで、その後に期待です!
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こちらは、 「日星鑄字行」が誠品書店の依頼で作製したオリジナル活字。誠品25周年の記念品です。
店内には感謝状や新聞記事も貼られていて、「日星鑄字行」の功績をうかがい知ることができます。
台北に活字を売るお店があるなんて思ってもいなかったナビ。また、実際に活字というものに触れたのも初めてで、その字体の温もりにすっかり心奪われてしまいました。今度うかがった際には、家族や友人の名前入り活字印鑑を作ろうと考えているナビなのでした。
以上、台北ナビでした。