「孫飛虎搶親」-台湾での舞台稽古日記

一青妙です~北芸大での稽古は、エキサイティング!でした~

こんにちは、一青妙です。
私はこれまで日本の舞台にしか出演をしたことがなかったのですが、この度台湾の舞台「孫飛虎搶親」に出演する機会を得ました(2012年4月6~9日台北•国家戯劇院、4月14~15日高雄•大東文化芸術センターにて上演)。台湾で稽古から本番までの約1ヵ月半、ショートステイすることになったため、芝居の事はもちろん、その間の生活ことについてもご紹介したいと思います!!

参加した舞台は台湾と中国の中台交流の一貫として、中国国家話劇院、台湾国立台北芸術大学、国立中正文化センターの共同制作。台湾の演劇界の草分け的存在であった姚一葦(1922~1997)が1965年に書いた作品「孫飛虎搶親」を上演しました。

台湾の国立大学が中国と舞台を通じ両岸交流を行なう初の試みとあって、いろいろな面で注目を浴びてきましたが、そもそも何故私がこの舞台に参加することになったのかと疑問に思われる方もいらっしゃると思うので、説明しますね。

きっかけは…

2011年12月、東京にて日本演出者協会主催の国際演劇交流セミナー<中国特集>中国第一級演出家の呉暁江氏によるワークショップに参加しましました。 呉暁江は中国に於けるイプセン研究の大家(イプセン:ノルウェーの劇作家。
近代演劇の創始者。代表作に「人形の家」「ペールギュント」などがあり、中国においては女性解放運動に大きな影響を与え、話劇の形成にも影響を与えた)であり、ワークショップでもイプセンの「人形の家」を課題に、「翻案」を加えたシーンを参加者が持ち寄り試演と稽古とディスカッションで作業をシェアするという内容でした。
呉さんは北京語しか話せないので、日本語から中国語に通訳する日本人、中国語から日本語に通訳する中国人留学生と2名の通訳者が演者の間に立ち、様々な意見交換をしました。そこで私は呉さんの演劇に対する並々ならぬ熱い情熱と芝居に対する的確な演出に惚れ込んでしまい、なんとか一緒にお仕事ができないかとお願いしたのです。 
演出家•呉暁江氏と

演出家•呉暁江氏と

妙:「我真的很想跟您一起工作!」(本気で一緒にお仕事がしたいです!)
呉:「剛好,四月我在台湾有演出,你如果真的想在台湾演出,可以來參加甄選.」(ちょうど良い、4月に台湾で舞台をやるんだ。本当に台湾でやりたいならオーディションに参加しなさい) 

こんな感じのやりとりがあった後、私はまず1月に台湾に渡りオーディションを受けることにしました。
オーディションと言っても日本のオーディションと違い、呉さんと台湾国立台北芸術大学のプロデューサーとお会いしましたが、話題は芝居の内容や現地入りした場合の宿、稽古スケジュールなどの雑談のみ。呉さんが日本で既に私の演技を見ていたからだと思いますが、気を遣ってお化粧して洋服もちょっぴりいつもより綺麗目にしたのに、全く関係なかった感じでした!
話を聞いたところ、今回の舞台、4人の役者が中心となり物語を進めていくが、この4役は、中国から2名、台湾から2名になることがこの企画が持ち上がった2年前から決まっているとのこと。他については、一人何役も兼ねるような役しかないと言われました。
日本に戻り、色々と考えた末、故郷である台湾で舞台をやることは私の夢でもあったので、どんな役でもやりたいと決心し、参加することになったのです。
3月5日、演出家の呉さん、男性の主役2名、呉樾と石展が中国から台湾にやってきて、台湾側の女性主役2名、謝俊慧と林鈺玲による記者会見が開かれました。
翌日の6日より台湾国立台北芸術大学(北芸大)にて稽古が始まりました。稽古場が北芸大となったのは主催である以外に、中国からきた皆さんがここのゲストハウスを宿としていること、参加する他の役者さんが皆北芸大の大学生か大学院生であり、便利だということで決まったとか。

稽古場である台湾国立台北芸術大学(北芸大)到着!

MRT「関渡」駅

MRT「関渡」駅

 北芸大は台北の北、北投温泉よりさらに先の淡水に近い「関渡」にあり、台北市内から約1時間かかるので、毎日通う私にとってはとってもとっても遠く感じました。
しかし、高台にある緑豊かなキャンパスは、東京の大学に通った私にとっては羨ましい限りの最高の環境に感じました。いつの間にか毎日通うのが楽しみになり、いつも早めに出かけては、色々な所を探索していました。
到着しました

到着しました

斜面に広がる広大なキャンパス

斜面に広がる広大なキャンパス

〜about北芸大〜

バス停も芸術的

バス停も芸術的

北芸大は日本の東京芸術大学(藝大)に匹敵する台湾に於ける芸術の最高峰学府。
1982年に音楽、美術、演劇の3学科を有する「国立芸術学院」として台北市内に設立されました。
翌年には新たに舞踊科が設立され、1991年に現在の関渡にキャンパスを移し、1993年には台湾で唯一校内にコンサートホール、演劇ホール、ダンスホールを持つ大学となり、2001年に国立台北芸術大学(北芸大)となります。
2002年にキャンパス内に関渡美術館が設立。
2010年に映像学科、2011年に動画学科が新たに増設され、全ての芸術が大学で学べるようになりました。 
入口

入口

お世話になる大学バス

お世話になる大学バス

台北からの交通手段:
MRTで関渡下車。関渡駅からは学校のシャトルバス(一時間に2~3本、関係者以外は一律10元)またはR35の公共バスを使うと、約10分で校内の中心まで連れて行ってくれます。
バスを使っても良いのですが、お天気の良い日はゆっくりと駅から約20分かけてキャンパスに向かうと、丁度良い運動になります。
キャンパスは入り口近くから登って行くと順に公園、音楽、演劇学科、カフェテリア、関渡美術館、学生食堂、図書館、美術、映像、動画学科と続き、学生寮、プール、テニスコート、屋外劇場(荒山劇場)と広がっていて、お洒落な映像学科の学生やスウェットで足早に歩く演劇学科の学生など、学科ごとに特徴のある人を眺めているだけでも楽しめます。
 公園には摩訶不思議なオブジェが点在していて、アートを感じます。
出会えた水牛! 

出会えた水牛! 

それからなんと水牛が放牧されているので、運が良いとゴロッところがっている彼らに会うことができるかも!

休日になると、台北市内や近隣の家族連れがハイキングに訪れ、ものすごい人。普段高くて学生に遠慮されがちな火鍋で有名な「魯旦」も賑わっています。
休日の大学はちょっとしたレジャー施設に様変わりしていたので驚きました
週末は家族連れも憩います

週末は家族連れも憩います

魯旦レストラン

魯旦レストラン

寮について

台湾全土から学生が集まってくる大学に寮は必須。一年生は希望すれば優先的に寮に入れるけれども、高学年の希望者は抽選ということで、倍率が高く、なかなか入れないそう。
今回は共演した大学一年生の女の子の寮を特別に見せて貰えました!
女子寮です

女子寮です

おしゃれな宿舎 

おしゃれな宿舎 

雰囲気あるでしょ!

雰囲気あるでしょ!

寮は学科別ではなく、4人一部屋。彼女の部屋には舞踏科の女の子がいました。トイレ、シャワーは各部屋についていて、洗濯場、テレビは各フロアに、キッチンは共用で1Fにあります。
台中出身の尹ちゃん

台中出身の尹ちゃん

片側に2人ずつ

片側に2人ずつ

靴箱の上は宅配メニュー

靴箱の上は宅配メニュー

舞踊科のトゥシューズ 

舞踊科のトゥシューズ 

寮の出入り口には寮母さんがいて、出入りを厳しくチェック。
専用のカードがないと扉は開かないのでセキュリティもバッチリです!
シャワールーム

シャワールーム

ランドリールーム

ランドリールーム

ぎっしり物が詰まった冷蔵庫

ぎっしり物が詰まった冷蔵庫

名前が書かれた食料 

名前が書かれた食料 

共用キッチン

共用キッチン

台湾人必須の大同電鍋!

台湾人必須の大同電鍋!

キッチンには食事の時間が近づくと学生たちが集まり、各自思い思いに料理を作っていました。

←貼ってあった紙。

良—く読んで下さい!日本語の『の』が使われています。
消えた鍋は見つかったのだろうか?? 

演劇学科について

本科は4年制で1クラス約40人。大学院は1クラス約8人。

今の台湾の演劇界のリーダーの多くは、今年開校30周年を迎える北芸大出身者であり、これからも毎年多くの優秀な人材が輩出され続けるでしょう。9月入学の台湾では、3月末から4月初旬にかけたこの時期に試験が実施され、合格者の発表も行なわれていました。

なんと、今回共演した大学院生の授業を傍聴させてもらえました!
面接会場!

面接会場!

指導教官はプロの役者さん

指導教官はプロの役者さん

中国語に翻訳された台本

中国語に翻訳された台本

この日は男女ペアで外国の翻訳劇のワンシーンを教官の前で披露するところ。

授業時間は1組2時間。みっちりと教官と討論し、演技指導をしてもらっている彼らの姿を見て、なんて贅沢な授業環境なのだろうと思いました。
演技する2人

演技する2人

かなり真剣です

かなり真剣です

準備する次の組

準備する次の組

演技授業のほか、ヨガの授業や演劇理論など様々なクラスがあり、学期末ごとにグループで芝居を作り発表もしないといけないので、皆結構忙しい毎日を送っています。
だからか、殆どの人が大学内の宿舎に住むことを希望し、朝から晩まで大学で過ごす人も多いとか。宿舎の抽選に漏れた人も、大学からほど近い場所に家を借りて住んでいるそうですよ。
ちなみにに学生の交通手段はほぼ100%スクーター。学内の至る所にスクーター置き場があり、どこも一杯です。私もこの稽古期間中、何度も出演者のスクーターに乗り、駅まで送って貰っていました!

北芸大の大まかな紹介をさせて頂きましたが、大学生は元気一杯でお化粧をしている人は皆無。人懐っこく、日本の大学生より大分素朴で子供っぽく感じられました。
台湾の観光地はもう殆ど見てしまったという方や台湾の芸大を覗いてみたい人には面白い場所ですよ。晴れた日中は遠くに見える台北101を眺め、夜は大学内にある劇場やコンサートホールで芸術鑑賞してみては!? 
これから約1ヵ月の舞台稽古が始まります。
次回は稽古についてリポートして行きたいと思います!!

上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。

記事登録日:2012-04-26

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