茗心坊

ミンシンファン

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仕入れた最高の茶葉を、自ら確立した焙煎技術「高密度烘焙」で、さらなる高みへと仕上げる職人技。地元の通な顧客を虜にしています。

こんにちは、台北ナビです。
茶に並々ならぬこだわりを持つ茶行(お茶屋さん)のオーナーには数多くお会いしましたが、自らここまで色々突き詰めるご店主は、正直初めてです。あらゆるお茶の味や香りに対し、研究を重ね、独自に中国茶の極みを目指す林貴松さんの「茗心坊茶業」をご紹介します。

交通の便が最高


 

「茗心坊」は、MRT「大安」駅の、信義路をはさんで斜め向かいにあり、バスも多く走っているし、とても便利です。
信義路に面したお店は、看板に木が使われているので、ご近所とよく馴染み、あまり目立ってはいません。が、ガラスのドアを通して中が垣間見えるので、「なんだろう、きれいなお店」、と興味をそそられる造り。
主張が強すぎず、とても感じの良い外観です。

東日本大震災の被害の復興のために


お店に入って、あるポスターが目に留まりました。3月11日に起きた「東日本大震災」の被災者のために、台湾茶を買った人からの収益を募金に回す、という活動を、「茗心坊茶業」独自で行ってくださっていたそうです。
ここにも、日本を思ってくださる暖かい心が…。我々日本人の痛みを、自分のことのように気の毒に思ってくださる、一番身近な隣国台湾の人情味にはいくら感謝しても足りないくらいです。本当に、ありがとうございました。

店内を拝見

さっそく中に入ると、オーナーの林貴松さんが迎えてくださいました。まずは一杯、と出してくださった烏龍茶が非常に美味しく、印象的でした。まずは、店内を拝見。派手なインテリアはなく、機能を重視した棚や間仕切りを兼ねたディスプレイテーブル、林さんがお茶を入れてお客さんが試飲をする泡茶机など、必要なものがきちんと共存しています。

プーアール茶プレミアム収蔵品

 
以前はお教室を開いていたそうで、その時の教材や茶器が教材専用の棚に入っています。今はもうやっていないそうですが、林さんが教える中国茶教室なんて、贅沢ですね。ナビも参加してみたかったです。
お店の奥の棚には、珍しいパッケージのプーアール茶が陳列されています。年代と産地などは書いてあるものの、お値段が書いてありません。いまやプーアール茶ブーム再到来で、値が上がっていると聞きます。
興味をそそられてお聞きしてみたら、なんと、それらは林さんのコレクションで、非売品なのだそう。以前仕入れた良い品で、殆ど売れてしまって残り少なくなり、いまや希少価値が高くなってしまったので、もう売らずに自分でとっておくことにしたのだとか。

もちろん買えるプ-アール茶もあります

値のつけられない希少なものばかりではなく、買って帰れるものもあります。良いものを買って、自分で陳放(ねかせ)に挑戦しようと言う方は、「餅(円盤状)」や「磚(レンガ状)」とよばれる固形プーアール茶がお勧めです。比較的新しい製造年のものを手に入れて、冷暗所に置いて寝かせ、後の変化を楽しみましょう。
70年代レンガ型 5600元

70年代レンガ型 5600元

90年代レンガ型 1800元

90年代レンガ型 1800元

プーアールティーバッグ
30パック 300元

プーアールティーバッグ 30パック 300元


プーアール茶によくある固形茶(緊圧茶)は、自分で突き崩さないと飲むことができません。そこで、もっと手軽に楽しめる、プーアール散茶があります。固形茶に比べると、寝かせによる変化が早いので、比較的新しい製造年のものでも、まろやかな味わいを楽しめます。
餅を買うには量が多すぎると思う人、砕くのが面倒な人、せっかちで何年も寝かせをするのが待ちきれない人は、質の良いプーアール散茶をためしてみましょう。
70年代寥福散茶 2000元

70年代寥福散茶 2000元

90年代8582青餅(散状)1800元

90年代8582青餅(散状)1800元

90年代散茶 1200元

90年代散茶 1200元

他にも色々あります。

伝統の殻を破った独自の技術、「高密度烘焙」

お店の奥には、3台の烘焙機が置かれています。林さんは、この烘焙機を使って、仕入れた茶葉を自ら烘焙し、仕上げます。中国語の「烘焙(ホンベイ)」は、「焙じ・焙煎(ばいせん)・ロースト」となど日本語訳されますが、中国茶の業界ではもう一つ、保存中の品質劣化を最小限に抑える目的で、「一旦出来上がった茶葉の再乾燥」という意味でも、よく使われます。ですから、茶の味に、焙じ茶的な香ばしさを加えるための「烘焙」と、お茶の味と香りは出来るだけそのままに保ち、茶葉内部の水分を飛ばすための「烘焙」があるのです。
林貴松さんは、この烘焙の度合いを見事に使い分ける名手です。長年細かくデータを取りながら経験を蓄積し、独自に「高密度烘焙」という技術を編み出し、高級茶葉を更なる高みへと引き上げます。それぞれの茶葉の性質、発酵度、状態に応じて、温度と時間を調節しながら「高密度烘焙」を行うことにより、茶の雑臭を飛ばし、香りや甘み、まろやかさを増すと共に、殺菌効果を発揮し、茶葉を本来の健康な状態に戻します。また、刺激性も抑えられるので、飲んでも胃を痛めることがなくなるそうです。
従来の烘焙方法で仕上げられた茶葉は、真空パック状態になっていても、しばらくすると、酸味がでたり、香りが落ちてしまったり、青臭さが強まったりすることがありますが、これは、茶葉の乾燥が不十分で、内部に水分が残っていることが原因です。「高密度烘焙」をすることにより、茶葉の表面・内部・茎部の水分が均一になると、茶葉そのものの保存期間も延び、2年おいても味が変わることはなく、5年以内なら再乾燥にかける必要もない茶葉になるそうです。従来の一般的な電気烘焙の欠点を解決し、茶葉に様々なプラスの効果をもたらす「高密度烘焙」…。凄い技術なのです。
データを細かく取って科学的にアプローチ。円形表に解り易くまとめてあります。
手書きのデータがこんなに。

手書きのデータがこんなに。

データを下に判りやすい説明書。

データを下に判りやすい説明書。

茶葉はブレンドなしで粒揃い

「高密度烘焙」を経た茶葉は、自ずと香りが高まり、甘みも増すため、林貴松さんのお茶は、ブレンドをしません。ブレンドとは、ある茶葉の足りない部分を補う目的で、他の茶葉を混ぜる技術です。例えば、香りが多少足りないあるロットの茶葉に、香りの豊富な別のお茶をまぜて補う、ということで、比較的一般的に行われてることなのですが、ここ茗心坊では、もともと良いお茶を仕入れ、「高密度烘焙」で仕上げるだけで勝負。混じり気の無い、ピュアな味わいが楽しめます。ブレンドしていないので、「茗心坊茶業」の茶葉は、粒や大きさがとてもよく揃っています。そして、砕けた茶葉は売りません。パッケージの底には、砕けた茶葉は全く残っていませんでした。
パッケージから茶葉を出し

パッケージから茶葉を出し

粒が殆ど同じ大きさと形ぞろい

粒が殆ど同じ大きさと形ぞろい

袋底には砕けた茶が全然なし

袋底には砕けた茶が全然なし

それに、NETは実際には少し多めに入れてくださっています。
元の袋に戻してから

元の袋に戻してから

重さを量ると300g強も

重さを量ると300g強も

レーベルは手描きで


林さんのお仕事は、とても丁寧で心がこもっています。茶葉を買うと、レーベルに手描きでお客さんの名前を入れてくださいます。良い記念になりますね。さらに、他のものに押されて中で茶葉が砕けないように、クッション性のあるシートで更に周りをくるみます。半分透けてレーベルがみえるので、まるで和紙で大事に包まれているように見えます。
一般的なメタリックな茶袋のうえに手描きのレーベルを巻いて、クッションシートでくるんだ外見は、決してお金のかかった包装ではないのに、こんなに美しい仕上がり。これなら、贈り物にも最適ですね。
丁度、中国大陸でビジネスを営む常連さんが、お茶を買いに着ていました。取引先に送る茶葉も自分が飲むお茶も、「茗心坊茶業」でしか買わないそうです。品質が高く一定していて、間違いが無いから、と笑顔でおっしゃっていました。

「茗心坊茶業」の台湾茶

茶どころ台湾には、高品質の台湾茶を扱っている茶行は数多く存在しますが、「茗心坊茶業」の大きな特徴は、仕入れた茶葉を、販売するまでに、オーナー自らが自分の思うとおりに「仕上げる」烘焙技術の高さにあります。
早速、自慢の銘茶を試飲させていただきました。台湾茶で烘焙が特徴といえば、木柵鉄観音ですね。ナビは焙煎茶好きなので、どんなお味なのか、ワクワクです。焙煎香が必要不可欠なお茶ですが、茶行によっては、焙煎が強すぎて焦げ臭がきつく、苦手に思う人もいます。が、「茗心坊茶業」の木柵鉄観音は、必要以上の焙煎は無く、強めの烘焙ながら、茶の本来の味と香りに被り過ぎず、とても良いと思いました。本来のお茶の味を損なうほど重い焙煎は必要ないのですね。大変美味しく、ナビ、個人的にこの鉄観音の購入を決意。
 
もう一種類試飲させていただいたのは、お店一押しの「茗心茶皇」。もちろん「高密度烘焙」で仕上げてあります。大変芳醇な甘みと香りが素晴しかったです。青々した若い感じの高山茶もよいのですが、暫く飲み続けると、激しい空腹感や、体調が悪い時などは、胃が絞れるような刺激を感じることがあります。が、林さんが焙煎したお茶は、驚くほどすっきりとした口当たりと、まろやかながら濃厚な味わいが魅力です。飲んだ後に、不思議とお口の中にスーッと清涼感が漂います。それを林さんに伝えると、「高密度焙煎の効果ですよ」とにっこり。暫くいただき続けても、胃に嫌な刺激を感じません。さすが、「茗心坊茶業」の最高峰、「茗心茶皇」です。大変美味しくいただきました。
手ごろなものから高価なものまで色々ですが、100グラムでなら、高価なものでも購入できそうです。
高山茶系列 
蜜香高山烏龍茶 100g 400元
小梨山 100g 700元 
茗心烏龍 100g 900元
茗心茶皇 100g 1500元

鉄観音系列
正欉鉄観音 100g 600元UP
安渓鉄観音 100g 400元
生態正欉鉄観音 100g 1100元
※ 御値段は2011年8月現在

その他、白毫烏龍 75g 1000元UPなど
また、成分がとても豊富な茶湯なので、茶壺から茶杯の水面に茶のしずくが落ちる時、一瞬数珠上になり水面に浮かびます。林さんはこれを「茶珠」と呼び、成分豊富な証だといいます。ナビも、撮影に挑戦。
撮れました!5つくらいできました。林さんの以前の記録では十数個できたそうで、それには遠く及びませんが、ナビ十分満足。

茶業界に革命をもたらすかもしれない「茶膏」

長年の研究で、烘焙を思い通りにできるようになった林さん。今後の研究開発対象は、「茶膏」です。「茶膏」とは、茶葉から蒸らし出したお茶の液体の水分を飛ばし、固形に近い状態にまで濃縮したもので、飲むときに湯や水を加えて溶かし薄めます。言って見れば、超濃縮エキスですので、大量の茶葉からとれる量は極僅か。
作るのに非常に時間がかかるので、水分を飛ばす段階で、焦げ臭さが出て失敗することもあり、なかなか大変な作業のようです。もう、こうなると「茶膏」はひとつの作品です。が、そこは研究熱心な林さん。つぎつぎと工夫を重ねて「茶膏」練成に成功しています。オーソドックスな長方形やハート型に固めてあるものも。愛嬌がありますね。
プーアール茶「茶膏」と高山茶「茶膏」を飲ませていただきました。保存中は乾いていますが、お湯を指すと簡単に解け、即席茶のできあがり。驚いた事に、味も香りもとても良く、まるで淹れたてみたいです。
興味深い遊び心たっぷりのお手前を披露してくださいました。粘り気の強い「茶膏」を等間隔で茶杯の内壁に付着させ、お湯を静かに注ぐと、なんということでしょう!「茶膏」から琥珀色の線が底にむかって流れ落ちるではありませんか。湯の流れに沿って、斜め下に落ちる琥珀色のラインは、まるでガラス玉のよう。芸術的です。
直接茶壺にいれて乾かした「茶膏」。これなら湯を注いで注ぎだすだけ。必要な回数だけ湯を注いで使用し、あとは蓋を開けて乾燥させ、また次の機会まで保管すればOK。小さい茶壷(急須)ですが、一斤分の茶葉のエキスが詰まっています。一体、何回入れたら使い終わるのでしょう?まるで魔法の茶壺です。これは愉快なお点前ですから、中国茶会や表宴などで話題を呼びそうですし、将来、他に応用範囲が見つかるかもしれない、とてつもない可能性を秘めているかもしれません。「茶膏」、侮れません。
茶膏が予め仕込んであるタイプ

茶膏が予め仕込んであるタイプ

使用後は、そのまま乾燥させればOK

使用後は、そのまま乾燥させればOK

企画時のデッサンが

企画時のデッサンが

実物になって

実物になって

目の前に!

目の前に!

茶葉の診断

このように、茶葉に通じている林さんですから、お客さんの家にある茶葉の診断もしてくださるそうです。青臭さが強い、酸味がある、他の臭いがついてしまったなど、プーアール茶でも台湾茶でも、お茶に生じた問題に相談にも乗ってもらえるそうです。お茶作りには、とても手間がかかっていますから、無駄にはできません。林さん、頼りになりますね。

無料の一杯で、心温まる台湾情緒

いろいろなお話を聞きながら、お店の中からガラスのドア越しに、道行く人が度々立ち止まる様子が見えます。これは、お店の前にお茶を入れた大きな容器をおいて、道行く人に毎日無料で提供しているためです。
烘焙時に出来た茶の砕けた部分で、毎日淹れて無料で振舞うのだそうです。砕けても、元が高品質のお茶ですから、とても美味しいお茶がはいります。興味をそそられて、初めて試しに飲んでみるひとや、毎日飲みに来る「常連さん」もいるのだとか。中には、持参したマイ水筒などにいれてお持ち帰りする人もいます。
お茶所台湾では、以前、このように大きな容器にお茶を入れて、店の前や道端の休憩所などに置いておき、道行く人だれにでも振舞う習慣があったそうです。台湾の、昔ながらの善良な親切心溢れる習慣ですね。信義路は、いまや台北でも指折りの繁栄地域ですが、お茶がきっかけで、このような一昔前の情緒あふれる人々のふれあいが、いまでも存在します。

「茶浴」でリラックス

棚に、「茶浴」という商品があります。お茶にこんな使い方があったなんて、目から鱗の発見です。茶の自然な香りに包まれて、入浴タイムにリラックス。飲むだけでなく、香りで癒されることができますね。蒸気と共に吸い込むお茶の香りで、極上のバスタイムを愉しみましょう。4パック入り300元、2パック入り130元があります。
300元也

300元也

2つ入りエコノミーパックは130元

2つ入りエコノミーパックは130元

使い方は、日本ならお風呂を沸かすので、湯船に浮かべてもOK。台湾では、シャワー率が高いので、先ずシャワーでよく体の汚れを落とした後、茶浴パックに少量の湯を含ませ、中の茶エキスを軽く搾り出しながら、体中を清め、最後にはシャワーで流さず、色の濃いタオルで水分を軽くふき取るだけで、湯上り後、体中からお茶の良い香りが漂います。夜使用すると、朝まで良い香りに包まれて良く眠れるそうです。日本人の観光客に人気の商品だそうですよ。
お茶に対して並々ならぬ探究心をもつご店主の、お茶人生の結晶ともいえる店内を拝見し、一押しのお茶を試飲させていただき、とても良い経験をしました。あらゆるお茶の味や香りに対し、五感と科学の両方からアプローチを続ける林さん。こんなに好きな事に邁進する人生って、ステキですね。皆さんも、是非訪れてみて、林さんの茶哲学に触れてみてください。
以上、台北ナビでした。


記事更新日:2011-09-14

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上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。

スポット登録日:2003-12-01

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