八拾捌茶輪番所  

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伝統的な日本家屋で日本統治時代の香りただよう萬華406号広場、本願寺台湾別院跡にたたずむ輪番所で、まったりほっこりお茶を楽しみませんか?

こんにちは。台北ナビです。
賑やかながら、すこしごちゃっとした感のある西門町近くに、広々とした空間を持つ萬華406広場があるのを、ご存知ですか?台北の繁華街の中でも、以前の様子を残しながら存在する西門町には、若者に人気のお店が林立していますが、そんな繁華街直ぐ近くに、突然、日本の京都のお寺にあるような立派な鐘楼が現れた!
まさに、そんな感覚に陥ってしまいそうな一角があります。本日は日本時代の雰囲気を色濃く残す、萬華406号広場にある、八拾捌茶の喫茶スペース「輪番所」をご紹介します。

台北に西本願寺?

建物が密集し、台北の渋谷的存在の繁華街西門町に、日本の寺院と同じ鐘楼?まるで建物ごとワープ(死語?)してきてしまったようなこの一角は、戦前日本統治時代にあった、本願寺台湾別院の跡地で、台湾でも、通称「西本願寺」と呼ばれています。ナビは、かなり長く台湾に住んでいますが、台湾での西本願寺の存在は、この八拾捌茶の「輪番所」ができてから、初めて知りました。 
どどーーんと下がった梵鐘

どどーーんと下がった梵鐘


明治29年(1896年)に布教を目的として作られた本願寺は、戦後廃止され、その後火災で殆どの建物が焼失してしまったそうです。ところが、最近になって、台北市の開発がどんどん進み、日本統治時代から残されている木造の建物などを保護して残していこうという動きが盛んになり、台北市内の色々な場所で、日本家屋が改築され、文化的活動に利用されるようになりました。

ここ輪番所も、台北市文化局による「老房子文化運動」により、西本願寺の住職の住宅だった輪番所も元の姿を残し復元する形で、今の姿に甦り、地元の人々や観光客に、くつろぎのスペースを提供しているのです。地価の高い台北の繁華街で、この空間の取り方はとても贅沢。なるほど、市のプロジェクトならではですね。

古きよき雰囲気と新しさの同居


この一角、萬華406公園広場には、西本願寺の本堂基壇部分、御廟所の台座部分、輪番所、樹心会館、鐘楼、参道を含む、台北市の建築古跡郡です。市が乗り出して積極的に復元を行ったおかげで、日本時代の趣が残る台湾古跡に、モダンなタッチも加わって、なかなか良い感じの広場に生まれ変わっています。
ナビたちはちょっと早く到着したので、輪番所に入る前に、少し広場内を散策してみる事にしました。


盛り土をして、ちょっとした高さの有る鐘楼は、いい大人のナビもついつい登ってみたくなります。梵鐘は後に復元したので当時のものではありませんが、なかなかいい味を出していると思います。この鐘楼と樹心会館は、市定古跡に認定されており、新年などに鐘突きイベントなども行われるそうです。

レンガ造りの樹心会館は、当時の総督・児玉源太郎氏から贈呈された額に書かれた「樹心佛地」から命名されたそうで、大部分が焼失していたため、杉やヒノキの原木で修復がなされ、いまの姿になっているそうです。窓の造りが特別で、「比重錘窗」とよばれる重りを使用し開閉する西洋式の上下開きになっていて、開き具合の調節が自由自在になっているそうです。写真はありませんが、入るチャンスがあったら窓枠もみてみてください。


参道は、痛みが激しく石が無くなっていた部分を同素材の石を使って張りなおしてあります。参道に沿って、本堂跡基壇にむかうと、そこはステージのように基壇部分が復元されており、様々なイベントのステージに利用されるそうです。和と台湾、そして昔と今が程よく融合して、素敵な広場ではありませんか!ナビ、ちょっと感動しました。

いよいよ輪番所へ

輪番所は、西本願寺の住職の宿舎を復元したもので、和小屋の構造と、竹を編んで土を塗りこんだ壁で作られた日本建築です。外観がとても懐かしく、大正時代に建てられて、昭和の終りに建て替えられた日本のナビの祖母の家とそっくりなのに驚きを隠せませんでした。屋根瓦以外は、壁や梁などの痛みが激しかったそうで、なるべく以前の状態に近いように原木などの素材で復元がなされたそうです。
お店は13時からなのですが、ナビたちは取材のため、少し早めに中に入れて頂きました。中に入って、まずは天井が高いのにビックリ。そして、天然の樹の香りがただよって、とても心地よい空間です。
入って正面には、茶葉を販売するカウンターと左手には、ドリンクバーのような造りの、お茶を用意するカウンターがあり、とても機能的です。その横に、椅子とテーブルの席が置かれています。天井が高いので、圧迫感が全く無く、話し声も反響が少なくて、あまり気になりません。西門町を歩いて疲れた時に寄って一服するのもいいかもしれません。

天目釉茶事特展

窓から柔らかい日差しが差し込んで、窓の格子の影が美しく映し出されています。その窓に沿って作ってあるディスプレイ棚には、天目釉特展のため、色々な天目茶碗が飾られています。茶碗に興味のあるナビは、吸い寄せられるように窓際へ。とても綺麗な模様に焼けている天目です。しかも、丁寧な解説が添えられているではありませんか。
聞いてみたら、これらは日本製で、様々な代表的な天目釉が明らかに表現できているものばかり。これなら、素人のナビが見てもはっきりわかり、勉強になります。
客席にあたる場所は、椅子に座れるテーブル席と畳の広間の大きく2つに分かれています。
台湾の方には、畳で正座はキツイだろうと思いきや、なんと畳の席が大盛況だそうで、意外でした。折角日本家屋でお茶を飲むのなら、断然畳の間で、というのが台北っ子の考えだそうです。日本人なのに、断然椅子派のナビには、ちょっと驚きでした。
入り口の棚に、素敵なパッケージや茶缶が並んでいました。自分用にも、贈り物によよさそうです。
また、色々なお茶やお菓子も注文できるとのこと。とても楽しみです。
今日は、お店の日本語が堪能な店員さん、張文静さんがお茶を淹れてくださるとのこと。清潔感のある水色の制服が凛として好印象です。沢山あるお茶メニューの中から阿里山烏龍と2種類選んでみました。先ずは、阿里山烏龍茶を試飲することに。
とても品のあるお方です

とても品のあるお方です

ワイルドに碗泡

茶農家などを訪れると、とってもワイルドな方法で試茶をするのですが、その時の方法がこの「碗泡」。泡は泡茶(お茶を入れる)の泡で、ぶくぶく泡を立てるわけではありません(笑)。
先ずは清潔なお碗をお湯で温め、お湯を棄てたら、茶葉を直接お碗に投入。お碗といっても、どんぶり大のもので、結構しっかり大きいものです。お碗が温まっているので、茶葉から香りがたってきます。お碗を手で持って、直接香りを楽しみます。うーーん、贅沢なアロマを吸い込んで豊かな気分になってきました。
器に湯を注ぎ

器に湯を注ぎ

ゆっくりと温め

ゆっくりと温め

香りを聞きます

香りを聞きます

お碗の内壁に沿って円を描くようにお湯を注ぎ、茶葉を蒸らします。茶葉が開いてきたら、磁器のレンゲでやさしくお茶を攪拌します。レンゲを持ち上げて香りを嗅ぎ、門香杯と同じように香りを楽しみます。そして、一杯すくって茶杯に移し、ゆっくりいただきます。
茶壺などがない環境で、茶農家の方がお客さんにお茶を試してもらう時に使う昔ながらの方法なのですが、このようなおしゃれ空間で、綺麗な茶器を使って行う碗泡もなかなかオツなものだなと思いました。さらりとした淹れあがりになるので、すっきりした味わいと香りを楽しむことが出来る淹れ方だと思いました。

優雅に蓋碗

次に、別のお茶を蓋碗で淹れていただきました。次にナビが選んだのは、「含笑烏龍」です。というのも、この八拾捌茶は焙煎や薫花(花の香り付け)を自社で行っている数少ないお茶屋さんときいていたので、試飲にはぜひ自家製焙煎か自家製薫花茶をいただきたかったのです。
メニューをみていたら、日本では存在を知らないけれども、台湾人なら皆知っている「含笑花」(ハンシャオホア)を使って薫花した四季春に興味を持ちました。含笑花は、マグノリアの一種で台湾ではとても普遍的。大人しい花名にそぐわず南国系なとても良い芳香を放つので、印象が強かったのですが、これをお茶とどのように融合させてあるのか興味津々でした。

お花の香りを存分に楽しみたいと思い、散熱性の高い蓋碗に入れていただく事に。畳と木のお部屋に、白磁の茶器がよく映えてとてもいい感じです。張さんは、日本語がとても上手。お茶の説明をしながら、手際よく蓋碗でお茶を淹れてくださいます。留学経験はないそうで、ナビとカメラマンは更にビックリ。語学って、努力とセンスなんですねえ。
お茶のメニューはとても豊富で、台湾産のお茶ばかりを緑茶から烏龍茶、紅茶まで幅広く取り揃えてあります。(文山包種茶、凍頂茶、高山、東方美人、鉄観音等)。淹れ方によって、使う茶葉量が違うので、お値段も違ってきます。淹れ方のバリエーションとしては、碗泡、蓋碗、茶壺(急須)から選びます。また、茶葉によっては、単杯(一杯ずつ)で注文するものもあります。
また、特筆すべきは、八拾捌茶の薫花茶の種類の豊富さと珍しさです。植物名は聞いたことはあるし、かいだこともあるけれど、お茶に薫花されているというのは初めてと言うものばかりです。例えば、含笑花、柚花、晩香玉、樹蘭、竹、台湾シナモン、コーヒーなどがそうで、どれも台湾に伝統的にある植物ばかりです。
リピートして、一つ残らず制覇しようと誓ったナビでした。

お茶うけ

八拾捌茶は、開店が13時からなので、ランチは出していませんが、お腹がすいたお客様には、マントウや豆乾など、軽く摘まんで少しお腹にたまるようなものをだしています。マントウは、木柵出身者なら誰もが知っている、老舗の手作りマントウだそうです。たしかに、大小が微妙に様々で一口サイズ。自然な甘みがほっとします。
豆乾は、3種類の違った豆乾とエリンギが同じ大きさに切って煮込んであります。お茶うけにも、マントウのおかずにもなる程よい塩味です。同じ色に煮込んではありますが、4種類はいっているので、全く飽きません。和菓子は、日本のものを出していますが、ない時とある時があります。今日は、マカロンがありましたが、これもオーナーのご友人が手作りしたものだそう。大量生ものではなく、少量で手作りの安全でおいしい物をだしているそうです。だから、内容は一定しません。和菓子の他にも台湾の菓子やドライフルーツなどもありますが、やはりなんといってもお茶がメイン。

焙煎と薫花を自家で行う

お話ししていくうちに、お茶カウンターで開店準備をしていた方が、焙煎師さんだということがわかり、お話をお聞きすることに。周杏羽さんは、八拾捌茶のバイヤーを勤めるかたで、大の食品通。お店のメニューにあるお茶うけなども、すべて周さんが集め採用しているそうです。もとはIT業界で働いていた周さんは、忙しすぎてご家族と過ごす時間もなく、疲れ果ててしまったときに出会った香りの世界がきっかけで、嗅覚を使った訓練をなさり、焙煎師にまでなってしまった凄いお方。それにしても、お茶に携わる人々の中で、IT産業ご出身の方がおおいのに驚かされます。とても忙しく自分の時間と生活をある程度犠牲にしてお仕事をこなす方々が、一変して時間の流れがまったくちがう茶業界に転身するなんて、やはりお茶は癒しを人々に与えているんですね。
焙煎を得意とするお茶屋さんはありますが、薫花まで自分でこなすところはあまりきいたことがありません。八拾捌茶は、周さん自らが花や最近では果物を使ってお茶に香り付けをしているそうで、ナビはこちらに興味津々。台湾産の安全な茶に安全な花や果物で香り付けし、他には無いMIT(made in Taiwan)商品を作り世界に紹介したいと考えているそうで、凄く素敵なアイデアに共感・感動を覚えました。八拾捌茶のメニューのなかには、他には無い薫花茶が多く載っています。
先ほど味わった含笑花烏龍や、竹の香りをつけたものもあるので、何回も通って制覇したいものです。
周さんとお話ししていくうちに、台湾のフルーツで薫花したフルーツ薫花茶を造っていることがわかり、試飲させていただく事に。カメラマンは迷わずマンゴー烏龍を選びました。果肉を頬張らず、どうやってマンゴーらしさを茶に移しているのか、期待大です。
果物の皮を剥いて茶葉に香りを吸わせるのに、大変時間がかかるので、凄く大変な作業だそうですが、お話を聞いていくうちに、台湾産の茶を台湾産の花や果物で香り付けすることにより、台湾を世界中の人々に知ってもらいたいと想う、周さんの故郷を愛する気持ちの強さが判り、更に感動。台湾は小さいし、世界的にまだ有名ではないけれど、地球の裏の人々にも、フルーツ薫花茶を通じて台湾にある果物の香りを届けることが出来たら、こんなに凄いことは無い、と子供のようにキラキラした目で語る周さんは、とってもステキでした。
台北市のプロジェクトによって蘇った、日本統治時代の仏教寺院跡がこんな素敵スポットになるなんて、当時の総督も誰も予測だにしなかったことでしょう。また、外国で、こんなに日本文化を好きでいてくれる国は他にないと思うのです。
日本では、どんどん取り壊され、忘れ去られていきそうな日本の一般的な住居建築物をこんなに大事に保護してくれているなんて、ちょっと感動です。ナビはますます台湾が好きになりました。台湾在住の方も、旅行でいらっしゃる方も、是非外国からみた日本を、西本願寺広場で、輪番所で感じてみてはいかがでしょう。
以上、台北ナビでした。

記事登録日:2015-03-31

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上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。

スポット登録日:2015-03-31

スポット更新日:2015-03-31

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