夜の九份観光ツアー

　昼間降っていた雨もあがり、観光客たちは、狭い石段を上り下りしている。両側から漏れて来る店舗の光が、人々の足元を照らしている。石段の最上階に小学校があると聞いた。そこまで昇って行くと、ぱらぱら観光客が石段に腰を下ろしている。風が出て来たようだ。体から吹き出した汗が、徐々に引いて行く。石段を降り際、一本の横道へと入ってみた。そこを抜けて行くと、目の前に視界が広がった。オレンジ色の明かりを堪えている民家と、その先、遥か下に見えるのは港でろうか。ここは夜の九份。見下ろした黒いシルエットの木の頂から、名も知らない鳥が一声啼いた。