「藝邨」は2005年、南投県竹山で始まった芸術と文化と生活が結合した竹の創作会社なのです
こんにちは、台北ナビです。
竹の産地の南投県竹山鎮にある、竹工芸家の葉基祥氏の会社「藝邨」&サロン、住宅に伺いました。台湾で工芸家の看板を掲げる人は、20人ほどしかいませんが、葉さんはその内の一人なのです。
緑の芝生が美しい庭の片隅には、幾種類もの竹が植わっています。作品の材料に使用するものもあり、清々しい緑が気持ちいですね。ドアを開けて入ると、竹の芸術品が次から次へと目に入ってきました。竹というものを知り尽くして、その美しさを十分に発揮している芸術家がここにいました。
藝邨について
葉さんが運営するtek- siāとは、藝邨が2009年に設立した竹工芸の創作チームの名前です。tek- siā は、竹舍を意味し、tekの竹の発音は、同時に [得]や [德]の発音と同じ。tek- siā(竹舍)は、アジア人の生活空間の基本原点であり、人と人の交流の場所でもあり、竹デザインを世界へ発信する基地でもあるのです。
地球の温暖化によって、天然材質を使用する工芸品は、時代の波にのっていなければなりませんが、そういう意味でも、竹は台湾では最も特色ある天然材質で、工芸文化に大いに貢献できる素材だと言えます。
台湾特有の竹文化は、伝統工芸の卓越した技術を用いることによって、素朴ながらも時代の波に流されない独自の美しさを表現してきました。
「藝邨」は、この竹山の土地に根付いた台湾を代表する伝統工芸の拠点とも言えます。
工芸家・葉基祥さん
葉基祥さんは、竹山の出身で、実家は1969年から竹産業に携わっていました。当時400軒ほどあった竹山の竹を生業とする一家の一人として、学校から帰ったら自然と竹カゴを編む父母たちの手伝いをしていました。竹はいつも身近にあり、竹とともに生活をしていたのです。
当時竹山高校に進んだ葉さんは、地元の竹産業も教科の中に組まれていた美術工芸科で、竹を使った作品の制作なども手掛けました。休みを利用して、台中で竹製品を造るバイトもしました。当時の竹山は、どこに行っても竹があり、まさに竹と人が共存する世界でしたが、現在の竹山高校には、美術工芸科はあっても竹工芸は教えないので、地元の特色が無くなっています。これも時代の流れですね。
やがて高校を卒業した葉さんは、兵役に付きましたが、当時一番過酷な地といわれていた馬祖島に配属となります。ここで約2年の歳月を過ごし、退役後はバーテンダーとして2ヶ月働きましたが、毎日遅い仕事時間で体を壊し、結局竹山に戻って、また竹をいじり始めました。しかし、竹製品を作る仕事は1日12時間働いても一ヶ月4000元にしかならず、葉さんは、工場で働くことに未来が見えず、竹を創作の道具として生きていこうと決心したのです。
葉さんが、兵役から戻ったときには竹山の竹産業も衰退期に入っていて、多くの工場が中国大陸へ移転したり、閉業を余儀なくされていました。竹山の状況を見た葉さんは、竹工芸の価値を高めることの重要さをあらためて認識しました。
そのためには、竹工芸を教える先生になるのでもなく、芸術家にならなければいけないということを悟ります。竹山の竹工芸は衰退していない、職人が衰退したのだと葉さんは語りました。
さらに竹自体の生産も1970年代からすると、大幅に減ってきていました。当時竹製品の80%は台湾でしたが、現在は中国大陸が70%、台湾は15%くらいだそうです。量が少なくなった理由の一つは、昔竹林だったところが、今はビンロウの木に変わってしまったということがあります。現在南投県はビンロウの生産が一番多いところで、実が成れば即収入につながります。さらに台湾で育ちやすい孟宗竹は、成長の早さから4,5年で切ると筍ができ、その繰り返しで環境保護には最適の植物なのですが、竹を刈る人が少なくなったというのもあります。今はもう昔に戻れないので、少なくなった量から高い価値を見出すには?という理由からも竹の芸術品に行き着いたのです。
また、葉さんは竹の商品は、竹の芸術品と違うからということを強調していました。竹と聞くと、今でも台湾人の中では、チープなイメージが浮かぶ人もいるそうです。
竹という材料と竹を扱う技術は昔も今も変わらない、竹に対するアイデアで、芸術品は出来上がるのです。
葉基祥さんの経歴
1987年から、竹の彫刻活動を始めました。
2005 「篁山藝友美術會」理事長・「藝邨精品企業有限公司」社長
2007 「台灣工藝之家」認定
2008~2011 Yiiブランドデザイン工藝師
2008~2010 竹工藝製品開発コンペ審査委員
2009 「台灣工藝之家發展協會」理事
2010 「台灣工藝之家」南投県審査委員
こちらは完成品
近くで見ると、その精巧さに息をのみます
個展・作品発表会歴:
1991 『葉基祥竹雕個展』首展於南投縣立文化中心竹藝博物館,作品獲竹藝博物館典藏
2000 〝 台加文化交流協會〞 カナダにて作品発表、台中港區藝術中心『葉基祥竹與陶刻個展』
2001 屏東佛光園美術館『葉基祥竹雕個展』、台北工藝設計中心『葉基祥竹雕展』
2005 2005南投國際竹文化節展覽
2007 國立傳統藝術中心「臺灣竹藝大展」展覧、2007臺灣文化節-台灣工藝カナダ巡回展
2008 總統府藝廊~鋒之戀特展
2009 第48回国際ミラノ家具展、日本東京國際家居設計生活展(InteriorLifestyle)、パリ国際家庭用品展
2010 第49回・イタリアミラノ家具展
2010 台灣工藝デザイン・フランスパリ家庭用品展、總統府藝廊展覽「發現台灣工藝新象」
2011 ドイツフランフフルト生活用品展、第50回イタリアミラノ家具展、藝術百相-臺灣工藝美學展
賞歴:
2005 國立台灣工藝研究所主催「地方工藝特色禮品」優選
2006 國立台灣工藝研究所主催「地方工藝特色禮品」優選
2008 上海民族民俗民間文化博覽會,作品「人間」獲傳播獎
作品を見ていきましょう
まずは竹に直接彫られた精巧な彫刻をご覧ください。
芸術品というものはこういうものかというのがよくわかります。
茶葉をすくう匙なども竹です。
この薄さとカーブ、見事ですね。
竹の節のところは、茶漉しを置く道具として利用。
葉さんが制作した茶器セットです。
茶壺から茶葉をかき出すものと茶葉を茶壺に入れる時の匙が一組で、「竹」の文字をかたどっています。
茶葉入れや茶台、茶杯敷き等は言うまでもなく、すべて竹。
茶杯敷きは、水分が付き安いものですが、長持ちするように燻しをかけています。
巨竹といい、名前の通り竹の種類では一番大きく、これはマダガスカル島から運んできたもので、根っこの部分に特色があります。
作りかけの作品ですが、竹の切り口が見えるように透明の板を置いて、刺身など日本料理を飾る台となるそうです。
すべて竹で作った椅子です。
一見か弱そうですが、人の体に合ってしなり、座り心地抜群。
決して折れることはなく、竹の丈夫さがよくわかります。
現在6人の弟子を抱えていて、サロンには、お弟子さんたちの作品も多く見られました。
こちらは透明の樹脂を竹の穴に流し込み、上に茶杯などを並べて、茶席で使うようになっています。
陶器の茶杯の手で持つ部分に竹が編まれています
竹の彫刻
1987年から、竹の彫刻を始めた葉さんが「彫刻」にこだわるのは、それが芸術品として扱われるからだといいます。竹カゴは、生活用品としての域を出ないので、葉さんは関わりません。また、造りたいものが十分発揮できるのも彫刻だと言います。
葉さんに竹の美しさって何ですか?と聞くと、竹の頭、幹、肉、葉など竹のすべてが美だという答えが返ってきました。竹のあらゆる部分を最大限に発揮させ、美しい芸術品として高めているのは、葉さんの力量と竹に対する思いなのです。
以上、台北ナビがおとどけしました。