初のエッセイ発表 北村豊晴監督インタビュー 

初のエッセイを発表した北村豊晴監督。執筆裏話からドラマ撮影、おすすめスポットまでじっくり聞いてきました!


こんにちは、台北ナビです。

映画やドラマの監督、俳優などとして大活躍している北村豊晴監督
2017年9月末に行われた金鐘奨では監督賞にノミネートされるなど、近年はさらなる飛躍を見せています。

その北村監督が今度はなんと本を出版したと聞き、ナビは2010年以来、7年ぶりにインタビューを実施。

本の執筆からドラマの撮影、おすすめのお店やスポットまで、たっぷり2時間にわたってお話をうかがってきました。
インタビューは北村監督がご両親と営む料理店「北村家 くるみ小料理屋」で行いました インタビューは北村監督がご両親と営む料理店「北村家 くるみ小料理屋」で行いました

インタビューは北村監督がご両親と営む料理店「北村家 くるみ小料理屋」で行いました

台湾滞在最初の10年をつづった自伝的エッセイ

現在43歳の北村監督の台湾在住歴は20年に上ります。北村監督が11月に出版したエッセイ「騎摩托車戴安全帽那一年:1997我成為最台日本人」は1997年から2007年までの北村監督自身の人生を紹介する作品で、台湾に来るまでの経緯、監督として本格に活躍し始めるまでの苦労や紆余曲折などが恋愛の話なども交えて赤裸々につづられています。北村監督にとって初の書籍です。
――どういった経緯で書籍を出版することになったんですか?

2013年か2014年にさかのぼるんですが、太田出版(※1)の編集長と初めて会った時に「本を書きたくて」とノリで言ったら「書きなよ」という話になり、書くことになりました。何を書こうか考えた時に、台湾での出来事は面白いことも多くあったので、これを書くことにしたんですが、実際書いてみたら時間がものすごくかかることが分かって「大変やな」と。ぼくがそのまま打っているので、小学生の日記みたいで。それで編集の人に直してもらったんですが、直されたものは、内容は分かりやすいけど、出版社のみんなの反応は「元のほうがおもしろかったよね」って。それで、「オリジナルで行こうよ」ということになりました。調子がいいときは1カ月続けて1週間に1回くらい原稿を送れていたんですが、それがまた止まって催促の連絡が来たり。「(作家の仕事は)こういうものなんや」と思いました。(電話に)出たくもないし、ラインも既読にもしないし(笑)。すごく気を長く持ってもらっての3年でした。途中で実は「こんなの誰が見るのか」と思ったこともあって、テンションが下がることもあったりしながら今に至ります。

自分のちょっと恥ずかしい話とかが多くて、これを見たからといって自分の評価が上がることはないので、迷ったときもあって。自分の子供も見るわけだし、恋愛の話もあるし、書いていいのかというのもいろいろありました。でも最終的には「本ってそういうものでもいいんじゃないか」と。個人的なことを書いて受け入れられなかったら受け入れられないし、受け入れてくれるんだったら受け入れてもらいたいし。本当に自分のいままでの10年間を書いたという感じです。
※1:同書の出版元

――本の中では苦労話も多く書かれていますが、そんな中でも周りの人との縁をつなげて活躍の幅を広げているという点が特に印象に残りました。北村監督が縁をつなぐ上で意識していることは何ですか?

好きだと思う人は積極的に(縁を)つなげていきたいと思いますね。実はこう見えても好き嫌いがはっきりしていて、どれだけ立派な仕事をしている人でも嫌いになったら(自分から)すっと離れていきます。味方をちょっとずつ増やし、できるだけ「あいつ嫌いや」と思われない。すごい人だけど敵もたくさんいる、という人もけっこういますよね。あんなの辛いなと思って。味方もいっぱいいるけど派閥があるとかもなりたくないです。楽しく、とがらない、ぶつからないというのをずっとやっています。意識的ではないかもしれません。自分が生きていくために自然とそんなふうになっていったんでしょうね。初期のころなんて貧乏で、何にも無いということがよくありました。生きていくために、攻撃しない。そんなこというと卑怯な人間ですね(笑)。

――執筆中、大変だったことはありますか?

恋愛観についてですね。出会って、付き合ってという細かいことまで書いているので、「子供が見たらどうすんねん」と。その時思ったのが、当時上の子がまだ7歳、下の子が4歳くらいだったので、今のうちだと思いました。たぶん15歳で読んだら「おやじ、キモー」ってなるんで、早いうちに読ませるか、いっそのこと読ませないか。それと、真面目な話、ホウ・シャオシェン(侯孝賢)監督の話とかって実際書いてもいいのかと悩みました。許可も取ってなかったので。実際にホウ監督が見てくれるかは分かりませんが、自分にとってとても記念だったものをそのまま残しておくのか、あるいは味わったことがない人もいるので紹介するのか。これは助手として裏方で見た話なので、あの時は書くか書くまいか迷いました。最終的にホウ監督にも推薦人になっていただきました。

日台の2大映画監督から受けた影響

――先ほどの話にも出ましたが、本の中ではホウ監督や行定勲監督の作品に参加されたエピソードも書かれていますね。両監督と一緒に仕事をした経験が現在の監督業に与えた影響などはありますか?

役者の仕事もしているので、いろいろな現場を見ているのですが、あの2人はとにかく撮り方が別格でしたね。ホウ監督はとにかく、“決める”“芝居”というのをあまり好まない人でした。雨ふらし(人工的に雨を降らせる方法)を使わずとも雨を待つなんてありえない(※2)。もちろん彼もいままでの経験で「降りそうだな」と思っているのかもしれませんが、普通はできません。

行定監督はスタジオのセットの中に限りなくリアルなものを作る。行定監督は「作りこむ」、ホウ監督は「風景を切り取る」。ホウ監督でいうと、真似はできません。あんな巨匠が現場や作り方にこだわって、自分で机を拭いていたりするのに感動してしまいました。「日本の専業主婦はきちんとやっているから」と言ってきちっと布団とかを並べたり。美術さんに頼むのではなく、自分でやっているのを見た時に、「あー」っと思い、これは見習おうと。役者が気持ちよくできるようにという姿勢ですね。

行定さんのような、何回もやって作りこんでという現場は見たことがなくて。「こんなに撮んねや」と。それを基準にすると、「自分もこれの半分でいい」と思って撮影しているんですが、台湾だと多いくらいですね。自分は台湾では「めっちゃ撮る人」と思われているんですが、本当に言いたい。「お前、行定さんと比べたら半分以下やで」って。役者からも「こんなに撮るのか」とよく言われます。行定監督の影響は絶対にありますね。自分の中ではこんな風にやりたいけど、こうしたら悪いとか、みんな疲れるだろうなと思うのではなく、ベストのほうが役者にとってもみんなにとってもいい。妥協して駄作を撮るよりは、駄作というのはおかしいですが、それだったら本当に自分のやりたいことをやって、いいものを作りたいです。現場が苦しかろうが、できた作品が良ければそれでいいということに繋がっていくと思います。そう言いつつも、根が人を見てしまうので、鬼にはなれません。やさしい鬼ですね。(行定監督の)足元にも及びません。

※2:日本で撮影された「珈琲時光」(2003年)に助監督として参加した時のエピソード。ホウ監督は雨を降るシーンを撮影する際、本物の雨にこだわり、1時間半待った末に実際に雨が降り出したという。詳細は同書に掲載。

監督としてのこだわり

――監督業をする上で、特に役者とのやりとりで意識していることはありますか?

その役者の代表作になってほしいと、いつも思いながら撮っています。常に「自分の作品」と呼べるようにしたいです。1年に1本という遅いペースでやっているんですが、それは全て“作品”にしたいからです。自分の中で気合いをいれないといけないのは撮影の前後です。撮影現場は自分だけ頑張っても仕方ないし、チームワークですが、前後に関しては気合。気を抜かずに、前後が大事と思いながらやっています。現場では役者にとっていままでで一番いい作品にしたいなと思いつつ、それをやるにはどうするかと考えています。いままで以上に頑張ってもらわないといけないので、いつも言うのが「もっと、もっと」。ネタみたいですが、(シーンを撮った後に)「ほんまよかった。でももうちょっといける」みたいな。「じゃあもう一回いこう」と。ネタみたいになってるから、みんな「はい、はい」という反応です。監督業は褒めながら、けなさない。『ショコラ』(※3)以降、常に主役の男の子は金鐘奨(※4)に入賞しているので、自信を持っていいのではないかと思っています。3作品で主演男優賞に4人入賞した実績からいうと、信用がちょっとずつ上がってきたので、そうなると俳優に要求する上でちょっと楽になりますね。
※3:窪之内英策の同名漫画を原作にした台湾ドラマ。長澤まさみ主演で2014年に台湾で放送された。
※4:テレビ番組を対象としたアワード。台湾の「エミー賞」とも言われる。

――『ショコラ』では長澤まさみさん、『戀愛沙塵暴』で桜庭ななみさんなど日本の役者さんともお仕事をされています。日本と台湾、それぞれの俳優を指揮する上で違いはありますか?

ほぼ一緒です。ただ言葉に関しては、中国語で適当なことを言ってもみんな分かってくれますが、日本語で適当なことを言うとあんまり言葉を知らない人、あまり頭が良くない人と思われるので、その分、言う時にしっかりと、きちんと言おうと心がけています。日本語で“なんとなく”ということをやってしまうと、言い訳できない。「日本語のほうがいいでしょ?」と聞かれるんですが、実は逆です。言い終わった時にたまに、中国語を直接日本語に翻訳したみたいな変なことを言っていると気付くことがあって、相手の顔を見て「この人わかってない」と思う時はもう一回言います。日本語の現場はほぼないので、中国語になっている頭で日本語を話そうと思うと、絞り出す感じになってしまいますね。

――では、俳優側が撮影に臨む姿勢という点で、日台で違うことはありますか?

日本の役者はプロ意識がすごいですね。僕はどちらかというとフリースタイルなので、逆に俳優側がしっかりしすぎていると、フリースタイルと“決め決め”がぶつかると合わないというか。「現場でこうしよう、ああしよう」というのが多々あり、脚本を変えるのが日常茶飯事です。(日本人の役者の)セリフが中国語だったので、現場で変えるのは申し訳ないと思いながらも、性格上フリースタイルのほうがいいので。日本での撮影は時間も厳しいし、決め決めでやるみたいなので、もし日本で撮影するとしたら、あんな状況でできるのかなって思いますね。「たぶん出来へんやろ」って。日本はすごく手際よくやっていますが、(自分は)「ごめん。順番変えていい?」とかしょっちゅうあるし。現場の雰囲気で。でも、そっちのほうが絶対いいと思います。決め決めでやると、「決めたからこっち先」とかってなるのが嫌なんです。

日本のいい役者に囲まれて撮影したい

――日本で、日本のスタッフが多い中で仕事をしてみたいと思ったりはしますか?

実は2016年に、『おもてなし』(※5)という作品で、10年ぶりくらいに通訳を担当しました。田中麗奈ちゃんが出ている作品です。彼女とは10年以上の付き合いで、ずっと「一緒に仕事したいね」って言っていたんです。大学院時代の友達が監督を務めることになったので、通訳をやらないか誘われました。(現場では)撮りたくて仕方なくて。でも「通訳はでしゃばったらあかん。通訳は通訳やし」と自分で分かっていたので、もどかしかったです。それがあって、あの時は本当に「撮りたい」と思いました。すごくいい役者さんも来ていて。余貴美子さん、木村多江さん、青木崇高さん。こんな人らと一緒にやりたいなと。日本のいい役者さんがたくさんいる中で仕事したら気持ちいいだろうなと思いました。
※5:関西の観光誘客促進と地域活性化を図るために製作される日台合作映画。台湾のワン・ポーチエが主演、田中麗奈がヒロイン役を務める。

“ドッキリ”のような金鐘奨授賞式

――2017年の金鐘賞では、監督作品の『植劇場―戀愛沙塵暴』が7部門9項目ノミネートされ、自身も監督賞候補に名を連ねました。授賞式に参加した感想を教えてください。

実は、役者と作品さえノミネートされれば、自分の賞はいらない、とずっと言っていたんです。でもそれは子供が「自転車乗れないから自転車いらない」というみたいな子供じみた思いで、実はノミネートされた時は本当にうれしくて。「おっしゃー」ってなりました。

はじめのほうは、「(賞は)もらうものじゃないから、楽しむだけ」と思っていたんですが、会場で隣に座ったワン・ミンタイ(王明台)監督からずっと「きょうはお前だよ」とそそのかされてしまい、途中から「ほんまにオレちゃうの?」と思ってかなり緊張し始めていました。さらには、監督賞の発表前にいきなりメイク直しに来られて。しかも、みんな直すとおもったら自分だけだったんです。テレビ局側の人が直しに来たのかと思い、「来たー!」ってドキドキしました。後で、マネージャーが手配したとわかったんですが。

作品賞の発表の瞬間はまず「植劇場」の名前が呼ばれて、そしたら2分の1の確率じゃないですか(※6)。(作品名を続ける前に)間も空けられて。『天黒請閉眼』と呼ばれた瞬間、「違うやんけ」となりました。ああいうのはやっぱり期待しないほうがいいですね。今回はワン・ミンタイにそそのかされました。腹立つわー(笑)。初めのほうはリラックスしていたんですが、実際に会場に入ってあれだけ人がいると欲が出るというか。何にも思ってない人がすごいなと思います。本当に驚いてる人がいるじゃないですか。「うそやー」って。あんな謙虚な人になりたいです(笑)。
※6:長編フィクション作品賞には「植劇場」シリーズから、戀愛沙塵暴、天黒請閉眼の2作品がノミネートされていた。
――受賞の自信はあったんですか?

もともと本当になくて。実は審査員に知り合いが多くて、会場ですれ違う時に「おめでとう」って伝えられているように見えたんです。勝手に。(式中の)時間がある時に聞いたら「それは言えない」と言われたんですが、その顔がすごく笑ってたから、「これオレかいな」って。いろんな偶然が重なって、今回はオレなんやって思い込んでました。なんかみんなでドッキリをしてるみたいな感じでしたね。あとで審査員の友達に「なんであんな顔してんねん」って聞いたら、「入賞おめでとう」だよと。まあ、それはそうですよね。あのメイクといい、まぎらわしい。もうひとつ、マネージャーがLineで「受賞の時、変なこと言ったらあかんよ」って送ってきたので、「ああいうのって裏情報が流れるんや」って。それも「なんであのタイミングで言うんや」ってあとで聞いたら、「わたしも受賞すると思ってたから、いちおう先に言っておいた」っていう。みんながみんな、まぎらわしいことを言ってたんです。

――スピーチは考えていなかったんですか?


授賞式の途中から、(感謝する人の)名前とか、どこで笑いを入れようかとか、ぜったい泣いたらだめだとか考えてました。でもまた持ち越しですね。こういうことがあると常に練習できてるから、レオナルド・ディカプリオとか、ずっと獲れなくて、ついに獲れた時のスピーチって「何回練習してんねん」っていうほどのなめらかさでしたよね。あんな感じになりたいなって思いました。9個入賞なんてそれだけでめでたいから、それで(監督賞)初ノミネートで受賞してしまったら調子に乗るから、これくらいでよかっただろうなと。結局作品は2部門(※7)受賞できたし。やっぱり役者がもらうのがうれしいし、クレジットでいうと、次に一緒に仕事したいな、ちょっと大変な現場であってもいい結果が生まれたらいいかなと役者に思われるほどの監督になれたらそれはそれでうれしいです。
※7:長編ドラマ部門主演女優賞、同新人俳優賞

新人俳優との撮影

――『植劇場』シリーズには新人がたくさん出演していますよね。新人俳優との仕事は大変でしたか?

大変で、しかもはじめはすごく拒否反応があって。「オレ無理やから」っていって。「オレはできる人を伸ばすことはできるけど、できへん人は伸ばすことはできない」って言ってたんですが、「いやいや、そんなに決めつけないで。この子たちもできるかもしれないし、伸びるから」と説得されて。初めのほうは「あ~」って思いつつ、でも新人の伸びしろとか、だんだん良くなっていくところなどで言えば、達成感はあるなと感じました。自分が見慣れたというのもあるかもしれませんが、だんだん可愛らしくなってくるし、かっこよく見えてくるし、「いいな」と思い、「新人もアリやな」と。新人は、それはそれでいけるなと思って『逃婚100次』(※8)につながりました。

『逃婚100次』劇中写真(瀚草影視提供)

『逃婚100次』劇中写真(瀚草影視提供)

『逃婚』は自分にとって初の、いわゆるインターネットムービーの形で撮影しました。テレビでも放送されているんですが、気持ち的にはインターネットムービーのつもりでやっていました。

※8:LINE TVやfriDay影音をはじめとする動画配信サイトで2017年10月に配信開始された。主演はエイリアン・ホアン(黄鴻升)、リー・チェンナー(李千娜)ら。

――インターネットムービーとテレビドラマは作る上で違ったりするんですか?

インターネットのお客さんはせっかちというか、嫌いだったら「はい、終わり」っていう。非道で、情の無い審査員たちが見てる、面白くなかったらすぐ切られると思いながら作りました。インターネットの番組って種類が多いので、あれだけの数の中で、しかも対決する相手って台湾だけじゃなく、韓国だったり、日本、アメリカもですよね。アメリカのネット配信の作品なんてめっちゃ面白いし、しかも予算でいえば映画くらいかかってる。そんなのといっしょに戦わないといけないので、自分の中で気合を入れて臨みました。客を飽きさせない。編集の時も、「はい、おもろない」って思うとばっさり。

中から見る台湾のドラマ業界の変化

――2017年は『通霊少女』や『お花畑から来た少年』(花甲男孩轉大人)などのヒット作が生まれ、「台湾ドラマが復活の兆し」などという報道も見られました。ドラマ業界の内側にいる立場としてそういう空気は感じることはありますか?

今まではトレンディードラマか郷土劇の2つだけがドラマという感じでした。撮影時間も短いし、作り込んでいなかったというのがあって。『花甲』というよりも、『植劇場』全般、それに『通霊少女』や「職人劇」と呼ばれる、例えば『麻酔風暴』のような作品が出てくると、質の良さが強調されて、なおかつ芝居ができる人たちが重宝されるようになってきたと感じます。これまではアイドルがちやほやされていたのが、今は芝居の上手さが評価されるようになってきて、いい作品をとると視聴率も出るようになりました。そう考えると「こりゃ~いい兆しやで」というね。

(制作側が)カメラとかにこだわっても、多くの視聴者はカメラの良さとかカメラワークとかに着目したりはしませんが、やっぱり見る人が見たらわかるし、こだわって撮った作品にはきちんとした評価がされるから、いい世の中になりましたね。お金も時間もかけて、思いも込めているのに視聴率が低かったらさみしいし、やっぱりいろんな人に見てもらって、いろんな人に評価してもらいたいという気持ちがあります。

台湾ドラマでは主役はこれまで美少年、美少女だけだったのが、これからはもっと違う、顔はイマイチでも実力派、個性派が出てくるじゃないかと思います。日本はすでにもう「男前がなんや」とそういう世界になっていますよね。やっぱりみんなそんなふうになっていくんじゃないかと。これからは実力派の人をどんどん使っていきたいです。

次回作は「サスペンスホラー」に初挑戦

――次回作の予定を教えてください。

1月に初の試みとして、サスペンスホラーを撮ります。短い80分くらいの作品、テレビ映画といわれるものです。実はいまTVBS(※9)に所属しているんですが、一度もコラボしたことがなくて、今回初です。実はホラーとか見たことがないので、自分の中では童貞がAVを撮るみたいな感じで、それはそれで違った作品ができるんじゃないかと思っています。言ってみれば、想像で作るみたいな。
※9:台湾のケーブルテレビ局

――サスペンスホラーというのはTVBS側からの提案なんですか?

そうそう。台湾にはいろんな制作会社がありますが、ぼくにサスペンスホラーを撮らせようと思うのはここだけですね。「コメディー撮れる人間は、逆も撮れるのよ」と本当は言いたいんですが、でもまだ偉そうには言わないでおこうと思います(笑)。まだ完成していないので。完成した後には言おうかなと。「なんでこんなもの撮れるんですか」と聞かれたら、「コメディー撮れる人間は、人の裏も表も知ってるから笑いがあるわけで~」と言いたいけどまだ言えない。全然怖くなかったら嫌ですね(笑)。今は、前半はコメディーっぽくやってみんなに油断させてから、後半に「おおー」みたいな風にしようと考えています。サスペンスホラーは絶対できないと思われているので、それを覆したいです。1月に撮影をして、2月後半の放送が決まっています。

――来年挑戦したいことはありますか?

いままでは年に1本撮るというスタンスだったのですが、来年は休まないでおこうと。ひとつドラマの予定があって、これはまたコメディーです。それとVRもやりたいなぁと。やったことがないものにすごく興味があって、来年は自分を追い込もうと考えています。撮って撮って撮りまくる。休まない。

――VRといえば、ツァイ・ミンリャン(蔡明亮)監督の作品が金馬映画祭(取材日前後に開催中)で上映されますね。

見に行く予定です。ぼくはツァイ監督にあこがれつつ、逆方向に歩いていっている人間なので、今回は参考に見たいなと。

――ツァイ監督と交流は持たれてるんですか?

会えば話はします。でもどちらかいうと、僕の中では先生。知り合いたいとか、しゃべりたいとかそういうのではなくて、その場にいるのを見て、「あー、耳たぶもでかいなー」と思ったりするような存在です。(耳たぶは)ぼくもでかいけど、あの人も大きくて、「幸せやろなー」と思いながら。丸刈りですしね。本当に尊敬しています。

おすすめの観光スポット、店

ご両親と一緒に

ご両親と一緒に

「北村家」店内に飾られているご両親の似顔絵

「北村家」店内に飾られているご両親の似顔絵



母校の台北芸術大学の中にある「ダビンチ」(達文士義大利咖啡餐廳)という店です。

そこから眺める景色がよくて。バイキングがあって、学生の時は「きょうの贅沢」みたいな感じで楽しんでました。

ひとりで座りながらなごんでいると贅沢感があるんです。おいしいし、値段も安いし。窓際に座ってほしいです。
最近行くのは、日本人の友人が経営しているお店が多いですね。そこを順番に回るみたいな。


――好きな台湾料理のお店はありますか?

「茂園」が大好きで。老舗で、何を食べてもおいしいです。注文はおまかせが多いですね。母が好きなのはカボチャのビーフン。鶏も魚もおいしいし、外れなし。ただ、いつもお客さんがいっぱいいるので、予約は必須です。(住所:台北市長安東路二段185号)

「東門餃子館」の焼き餃子(鍋貼)

「東門餃子館」の焼き餃子(鍋貼)

いまは「東門餃子館」がいちばん多いかもしれません。酸菜白肉鍋、鍋貼が好きで。なんでも揃っていて、炒め物も鍋も食べられるしで。値段も良心的ですしね。高い鍋屋も行ったけど、最終的にここが落ち着くなって思いました。新しい店の情報を聞いたら絶対に行くことにしているんですが、特に父はあまり高い店ってぴんとこないみたいです。
父は「趙時機台南擔仔麺」がお気に入りです。麺屋なんですが、しじみの漬けたものとかエビとか、本当にすごいです。小菜もたくさんあって。(住所:台北市通安街83号)

――近年、台湾には日本人観光客が増えています。おすすめの観光地はありますか?


「大佳河浜公園」です。7歳の娘が自転車に乗れるようになったばかりで、充実感いっぱいの時なので、娘の付き添いでよく行っています。すごく夕焼けがきれいなので、いま一番好きですね。ゆくゆくは子供を連れてキャンプに行きたいです。台北にいるので、できるだけ自然が豊かで、広いところに行きたいと思っています。
――いままで日本人の友人にプレゼントして喜ばれたおみやげはありますか?

パイナップルケーキだと、「サニーヒルズ」(微熱山丘)です。サニーヒルズはやっぱり喜ばれますね。

人気のパイナップルケーキ店「サニーヒルズ」 人気のパイナップルケーキ店「サニーヒルズ」 人気のパイナップルケーキ店「サニーヒルズ」

人気のパイナップルケーキ店「サニーヒルズ」

あとは、赤い色の看板とパッケージが特徴のプーアール茶のお店「王徳傳」。ティーバッグ入りで売っているので、けっこう喜ばれます。
「赤」が特徴の「王徳傳」 「赤」が特徴の「王徳傳」 「赤」が特徴の「王徳傳」

「赤」が特徴の「王徳傳」

記者の質問に対してあけすけに答えてくれた北村監督。前回のインタビュー記事を改めてお見せすると「同じ服着てくればよかった」と“面白さ”に貪欲な姿勢ものぞかせていました。記事中ではカットしてしまったのですが、インタビューの途中には北村監督のお母さんが登場し、元気いっぱいにお話を聞かせてくれました。

本については、今作に含まれなかった2008年以降にも面白いエピソードが多々あるとのこと。「5000部売れたら続編を書こう。そのかわり3年待ってね」と次回作にも意欲を見せていました。


今後の北村監督の活躍に期待しましょう。

以上、ナビでした。
ナビが持参している本を見て、自らサインをしてくださった北村監督。その親切さにナビは感激してしまいました。 ナビが持参している本を見て、自らサインをしてくださった北村監督。その親切さにナビは感激してしまいました。 エッセイの帯を北村家に持っていくと、ハイボールをサービスしてもらえます。

エッセイの帯を北村家に持っていくと、ハイボールをサービスしてもらえます。

ナビが持参している本を見て、自らサインをしてくださった北村監督。その親切さにナビは感激してしまいました。

上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。

記事登録日:2018-01-29

ページTOPへ▲

関連記事

第52回金鐘奨授賞式レポート 人気スター集結でより華やかに

第52回金鐘奨授賞式レポート 人気スター集結でより華やかに

毎年恒例のテレビアワード「金鐘奨」。今年は例年より華やかさがアップ!ナビは今回も会場に潜入してきました。

台湾で活躍する日本人⑩『北村豊晴』インタビュー

台湾で活躍する日本人⑩『北村豊晴』インタビュー

中国語と映画制作を学んで俳優デビュー。コツコツと実績を積み、今夏には初監督を務めた映画「愛你一萬年」(ヴィック・チョウ主演)の公開も決定!

北村家 くるみ小料理屋

北村家 くるみ小料理屋

台湾ではなかなか触れることができない味、それは日本の家庭料理の味。恋しくなったらココに来ます

その他の記事を見る