お茶の世界を深めたい方必見!日本統治時代の建物でお茶やお花を学べるサロンを訪れて、台湾文化にもっと詳しくなっちゃいましょう!
こんにちは、台北ナビです。
今回は賑やかな西門の喧騒から少し離れたところにある、情緒豊かな茶芸サロンをご紹介したいと思います。みなさんもご存じの通り、台北市内には数多くの茶芸館がありますが、今回ご紹介する「台北書院」はプラスアルファの魅力を持っています。台北の文化財である建物を利用し、華道なども学ぶことができるアカデミックな空間。お茶好きはもちろん、台湾の文化に少しでも興味がある方にはぜひ訪れてほしい場所なんです。それではさっそくご紹介しましょう。
日本統治時代の建物内にあります
「台北書院」があるのは、日本統治時代に建てられた台湾の国家二級古跡「中山堂」という建物です。台北市民の文化交流を目的に、今から約80年前に日本人建築家によって建設されました。当時は国民大会(議会のようなもの)が開かれたり、政治的にも大きな役割を担っていた中山堂ですが、現在も文化交流の場として現役活躍中で、1,2階にある大小ホールは台湾の伝統文化を今に伝える重要な場所になっています。
2011年秋、中山堂の3,4階部分が改装されることになり、まず3階の「台北書院」が9月にオープン、11月には4階のカフェが開店しました。4階の「蔡明亮咖啡走廊」は世界の映画界で活躍する蔡明亮監督プロデュースのアートスペースになっています。
大ホール「中正廳」は今でもほぼ毎日使用されています
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4階には映画監督・蔡明亮がプロデュースするカフェが
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ただの茶芸館ではなく、学ぶところという意味が
講座などが行われる部屋の入り口
3階に新しくオープンした「台北書院」は中国茶を楽しむスペースを中心としていますが、ただの茶芸館ではありません。その昔、「書院」と呼ばれた機関は、講学(学問を教える)、蔵書(書物を所蔵する)といった教育的機能を持っていたと言われています。つまり、「台北書院」という名前には「学ぶところ」という意味が込められているんです。
その名の通り、台北書院では中国文化を代表する茶芸はもちろん、華道や書道、伝統音楽、美術についてのさまざまな講座が開設されています。講座内容は台湾茶や季節のお花とお茶の関係など身近なものを扱った2時間程度の単発講座のほかに、「禅芸術と禅修行」、「老子」「中国美術の時代風景」など、中国に古くから伝わる仏教や道教の哲学思想と、それに関連する芸術を数カ月かけてみっちり学ぶコースもあるそうです。講座の開かれている部屋を見せてもらいましたが、日本人が見たらおそらく一番に浮かぶ印象は「寺子屋」でしょう。畳の部屋に整然と長机が並んでいました。
仏教の「禅」が空間デザインにも反映されています
林谷芳山長
山長(中国古代の院長の呼び方)を務める林谷芳氏は、禅者、音楽家、評論家として茶道と音楽、禅と芸術について長らく研究してきた人物。このため書院全体に大乗仏教の一派である「禅」の思想が多く取り入れられているのだそうです。空間デザインのコンセプトも「禅者が心を落ち着かせて生命を見つめることができる環境」を目指しているのだとか。禅といえば座禅。座禅を組んで心を落ち着かせるイメージで空間づくりをしたと考えればわかりやすいかもしれません。
「禅」というとちょっと敷居が高い感じがしますが、難しく考えなくても大丈夫。実際に行ってみれば、落ち着いた雰囲気に自然と心が浄化されるような気分になります。質素ながら美しく整えられた院内で、厳選されたお茶をいただく。それだけでも十分、書院の思想に触れられると思います。
書院の方に「日本人観光客でも講座を受けられますか?」と聞いたところ、単発の講座であれば可能とのこと。ある程度の人数が集まって、1週間前に予約すれば対応できるということでした。また、1週間に2回開かれている中華花藝という華道の講座も、初級クラスならば受講できるそうです(詳細はウェブサイトかフェイスブックを参照)。自分で活けたお花は持ち帰ることができます。文化講座の内容は毎月変わりますので事前の確認が必要。中山堂の見学と合わせれば、日本語ガイドをつけることもできるそうですので、興味のある方は、問い合わせてみてはいかがでしょうか。
質素だけれど贅沢な空間の使い方が特徴的
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自然と「禅」のこころに近づける静かな雰囲気
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畳座敷の個室を貸し切ることもできます
北側の畳座敷
外のテーブル席も趣があります
茶芸館として使われているのは、中山堂の廊下部分と、北と南にある座敷部屋です。座敷の2部屋は畳敷きで日本人にとってはくつろぎやすいスペース。7、8人から15人くらいまでの人数が揃えば貸切で使用することができるそうです。貸切料金はお茶とお菓子代を含めて4時間4000元。電話かインターネットで予約可能です。もちろん予約なしでお茶を飲むこともできます。
お茶の料金は200元(文山包種茶)からと他の茶芸館と同じくらいですが、廊下のテーブル席は250元、座敷席は350元が最低消費額として設定されています。
自分で茶葉を持ち込むことも可能。その場合は「茶水費」として、お湯代150元を支払うことになります。
座敷といっても椅子席なので足は楽です
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お茶の値段は一般的な茶芸館と同じくらいです
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プロの「茶人」がお茶を淹れてくれます
お茶はそれぞれの席で、茶人とよばれる茶芸のプロが淹れてくれます。テーブルコーディネートやさりげない部屋の調度品なども、茶人のセレクトによるものだそうです。
今回ナビたち取材陣を担当してくれた茶人は鐘さん。高山茶と白毫烏龍茶(東方美人茶)を流れるような手つきで淹れてくれました。どちらも香り高く甘みがあって美味しかったです。雑味がなく、口当たりがいいのはお茶の質もありますが、茶人の腕でもあるのでしょう。
特に白毫烏龍茶は新芽の季節だということで、スッキリしているのに甘みがあって、何杯淹れても風味がありました。
茶葉の香りを楽しみます
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茶人に淹れてもらうとさらに美味しい
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お茶うけも独特です。オリーブを甘く煮たものや、ウイグル地区のものだという大きな乾燥ナツメ、緑豆のケーキなど、どれもあまり見たことのないものでしたが、美味でお茶にピッタリ。
各地からおいしいお菓子を探してきているそうで、60元から100元というお手頃価格も魅力です。
台湾の茶文化に興味がある方には、一度は訪れていただきたい台北書院。さまざまな文化講座が開かれていることはすでに書きましたが、こうした文化講座の一環として、季節ごとに大規模なお茶会を開催しています。中山堂の小ホール「光復廳」を舞台に、春夏秋冬の1年4回、季節によって違うお茶を提供し、さらにお茶を楽しみながら伝統楽器による演奏、お芝居などを鑑賞するという催しです。今回、ナビは夏の会として開催された「茶與樂的對話」(茶と音楽の対話)に参加してきました。
会場は中山堂の小ホールです
これが普段の光復廳
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茶会の会場に生まれ変わりました
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茶会会場である光復廳には、床に簡単な座卓を置いて茶を入れるスペースと座席が作ってありました。関係者席と思われるテーブル席を含めて茶人の数は15人ほど、1つの座卓に4~5人ずつ座ったお客さんは70~80人といったところ。ご夫婦やカップルでの参加も多いのか男女比は同じくらいで、少し年配の方が多かったです。お茶を入れる茶人の方たちは臺北書院はもちろん、台北市内や台中の茶芸館で働いている人もいるそうです。茶人はそれぞれが自分の気に入っている茶器を持ち寄り、茶をふるまいます。ナビにお茶を入れてくれた女性は、著名な陶芸家から高価な茶器を借りてきたそうです。
やがて山長の林谷芳氏が登場して、あいさつを兼ねて会の次第や主旨の説明が始まりました。最初は緊張して聞いていたナビでしたが、意外にも笑いがたくさん起こる和やかなもので、お客さんはみんな慣れた様子。ナビと同席だったカップルも茶会が開かれるたびに参加しているそうで、林山長のお話も毎回楽しみにしているということでした。
夏のお茶としてふるまわれたのは中国を代表する緑茶の龍井茶と、台湾を代表する凍頂烏龍茶でした。それぞれのお茶からストーリーを展開し、「龍井茶の部」と「凍頂烏龍茶の部」に分かれて楽器の演奏や京劇のワンシーンなどが繰り広げられて行きます。笛や琵琶、二胡の演奏者たちは、林山長が集めた「忘樂小集」という演奏団体で、台北でも有数の演奏家たちが集まった豪華なメンバーなのだそうです。
林山長のお茶や芸術にまつわる話、音楽と芝居を交互に繰り返し、その流れに合わせて茶人がお茶を淹れていきます。観客はお茶とステージを同時に味わい、五感をフル稼働させて楽しみます。独特の世界観の中、龍井茶も凍頂烏龍茶も特別な味わいで心に沁みていくようでした。ナビとしてはこんなに立派な茶器でお茶をいただくのも初めてのことで、空間と器の印象を含めて、とても贅沢な味がしました。
台湾の茶会というものに初めて参加したナビですが、中国茶が音楽などと同じ文化であり芸術なのだということを肌で感じられた、貴重な時間でした。参加費は1回1000元とちょっと値が張りますが、それだけの価値はあると思います。特に台湾文化に興味のある方は、ただ単に京劇のステージを見たり、茶芸館に行ったりするのとは違う趣を味わえると思いますよ。ただし一つだけ注意が。夏場の会場はかなり冷房が効いていますので、寒さ対策はしっかりしないとちょっと辛いです。
中国茶好きには、この台北書院は本当におすすめ。今後中国茶をもっと楽しむためのヒントがたくさん詰まっている空間だと思います。台湾とは切っても切り離せない茶文化について、必ず新しい発見があるはずです。時間が合ったら各種講座や茶会にも、ぜひぜひ参加してみてください!
以上、台北ナビがお届けしました。