台湾の温泉で日帰りはしご湯しよう!<金山編>

海水温泉に黄金の湯……地元の人に交じって無料の公共浴場を満喫

こんにちは、台北ナビです。

日本と同様、環太平洋火山帯にある台湾では各地で温泉が湧き出ます。温泉ホテルに宿泊して一つの温泉にゆったりと浸かるのもいいですが、短い期間しか台湾に滞在できない旅行で、少しでもたくさんの温泉を楽しみたいという方もいらっしゃるのではないでしょうか。そこで今回は、日帰りの温泉施設がたくさんある新北市の金山温泉ではしご湯をしてみました。その魅力をご紹介します。

金山温泉とは……

金山温泉があるのは新北市の北側。北海岸と呼ばれる地区にあり、東シナ海に面していて、背後には陽明山がそびえています。日本統治時代から湯治場として栄え、現在でも毎週末になると多くの行楽客が訪れます。

ナビは台北市内からスクーターにまたがり、陽明山を越えて約1時間ちょっとで到着しました。

台北駅からは国光客運の高速バス1815番バスで約2時間。少し時間がかかりますが、かなりの高頻度で出ていて便利です。ナビでは野柳地質公園の入園券と金山にある旧金山総督温泉の入浴券がセットになった1815番バスの一日乗車券を販売しているので、ぜひ有効活用してくださいね。
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無料の公共浴場を楽しもう

さて、この金山温泉の最大のポイントは、無料で入湯できる公共浴場が5ヵ所設置されていること。台湾には全国20ヵ所に「公共浴場」があるのですが、金山地区の密度は台湾一なんだとか。金山の人たちは温泉と共に暮らしているといっても過言ではありません。

ただ、気をつけていただきたいのは、公共浴場のうち1ヵ所が24時間利用可能となっている以外は、早朝と夕方~夜にかけてのみ利用が可能なこと。

基本的には地元の人たちの利用を想定しているので、ナビのような行楽客は地元の人のお邪魔をしないように心がけたいものですね。
それと、石鹸、シャンプー、タオル、水などは全て持参してください。鍵付きのロッカーなどはないので、貴重品の管理はしっかりと。スーツケースやキャリーケースを置ける場所もないので、荷物は必要最低限にしておいたほうがいいでしょう。

ちなみに、金山出身の友人の話を聞くと、中学生までは自宅でお風呂に入らず、公共浴場でお風呂に入っていたそう。混雑する時間帯は朝の7時台と夕食前の16時台なんだとか。

実際に公共浴場にトライ!

【金包里公共浴室】

レストランやお店が建ち並ぶ金山老街から一番近い場所にある公共浴場です。日本統治時代からある由緒正しい公共浴場で、金山の公共浴場としては内湯の規模が一番大きいものでした。

番台があってスタッフが常駐していますが、無料なのでお金を払う必要はありません。「湯船に浸かる前に体を洗うのよ」と注意事項を言われるくらいです。

脱衣所、洗い場、内湯がしっかりと分かれていて、公共浴場の中ではかなり清潔な方。どこの公共浴場も共通ですが、洗い場にある蛇口から出るのは水だけ。かけ湯、流し湯は温泉のお湯を使いましょう。
近年改修されて公民館のような趣きですが、日本統治時代からあるれっきとした公共浴場です

近年改修されて公民館のような趣きですが、日本統治時代からあるれっきとした公共浴場です

風呂は3つあり、「低温」「中温」「高温」と分かれていたのですが、驚いたのは中温と高温の温度計がそれぞれ47℃と55℃を指し示していたこと!!湧き出るお湯は温度調節をしておらず、源泉そのままなんだとか。壁には45℃以上のお湯には入らないように注意書きがありました。

冷水を加えたり、お湯が冷めるのを待ったりしてもいいようですが、地元の人たちは低温に浸かって温泉を楽しんでいました。低温の内湯には温度計がついておらず、何度かは不明。ただ、温度は日や時間帯によって変わりそうです。

泉質は中国語で含鐵酸性氯化物硫酸鹽泉と表示がありました。日本語だと鉄分を含むナトリウム-硫酸塩泉でしょうか。pHは2.1前後で公共浴場の中では一番強い酸性です。鉄分が入っているということですが、実際に見た感じだと変色はしておらず透明でした。

鏡のついた化粧台もあり、コンセントもあったので持参のドライヤーで髪の毛を乾かすことが可能です。

住所:新北市金山区大同里温泉路9号
開放時間:6月1日~10月31日 5:00~9:00 17:00~21:00
11月1日~5月31日 5:00~9:00 16:00~20:00
1815バス「金山」から徒歩5分


【豊漁公共浴室】

金包里公共浴室から歩いて約10分の場所にあります。旧金山総督温泉の斜め向かいです。コンクリート平屋建ての建物で、一見すると公衆トイレのような佇まいなのですが、公衆トイレはこの浴場の左後方に別の建物としてあり、言ってしまえば公共浴場よりも立派です(失礼!)。
公衆トイレのようですがちゃんとした公共浴場です

公衆トイレのようですがちゃんとした公共浴場です

中に入ると16畳ほどはあるかと思う大きな浴室が広がっています。掘りごたつのようなレイアウトで、中央がくぼんでいて風呂になっていて、周りを取り囲むように脱衣所と洗い場があります。しっかりと清掃作業が行われているようで、こちらも比較的清潔でした。

この日の温度は43.8℃。泉質は中国語で氯化物硫酸鹽泉、日本語はナトリウム-硫酸塩泉でしょうか。pHは5.6。先ほどの金里包公共浴室では鉄分が含まれていましたが、こちらでは鉄分がなく、pHも弱酸性。ほんのわずか距離が離れているだけなのに泉質が違うのがおもしろいですね。

住所:新北市金山区豊漁里民生路190号向かい
開放時間:6月1日~10月31日 5:00~9:00 17:00~21:00
11月1日~5月31日 5:00~9:00 16:00~20:00
1815バス「金山郵局」から徒歩11分


【南屏公共浴室】

磺港漁港に面した非常にこぢんまりとした浴場で、金山区の公共浴場としては最も小さいものでした。風呂は4人も浸かれば満員になってしまうほど。洗い場も1人分のみです。

泉質は氯化物硫酸鹽泉なのでナトリウム-硫酸塩泉。pHは5.4。温度は41.8℃でした。一見すると豊漁公共浴場と似ているのですが、浴場にはほのかな硫黄臭が漂い、明らかに違った雰囲気でした。
ちょっとだけ奥まっていて知る人ぞ知る隠れ家のイメージ

ちょっとだけ奥まっていて知る人ぞ知る隠れ家のイメージ

因みに、漁港が目と鼻の先にあるためか、ナビが訪れた際には東南アジア出身と思われる若い漁師さん3人が仲良く入浴していました。入浴文化は台湾でもあまり浸透している習慣ではありませんが、こうやって現地の入浴文化を楽しんでいる様子をみるとほほえましく思えました。

そして、さらにビックリしたのが、ナビより後に入ってきたおじさま。服を脱ぎ、掛け湯をし、体を洗ったら、体を拭いて、服を着て帰ってしまったんです。風呂が混雑していたわけでは決してなかったのですが、滞在時間は多分5分未満。なんとも贅沢な温泉の使い方です。

こちらは24時間開放なのと、風呂が非常に小さいので熱気がこもってしまい、あまり綺麗な環境とはいえないですが、今回訪れた公共浴場の中で一番ディープな光景が見られた場所でもありました。

住所:新北市金山区磺港里磺港路36号となり
開放時間:24時間
1815バス「磺港路」から徒歩11分


足湯は24時間楽しめます

足湯は24時間楽しめます

【磺港公共浴室】

磺港漁港に程近い場所で、2019年にリニューアル工事が終わったばかりの新しい浴場です。外には足湯もあり、こちらは24時間利用可能です。泉質は中国語で含鐵氯化物碳酸氫鹽硫酸鹽泉。日本語では鉄分を含むナトリウム-炭酸水素塩・硫酸塩泉といったところでしょうか。pHは5.8。

金山区役所の担当者さんに話を聞いたところ、元々は台湾によくある炭酸水素ナトリウム泉だったらしいのですが、リニューアル工事の際に新たな源泉を掘り当てたところ、茶褐色のお湯が湧出。はじめは泥が混じったものと思っていたのですが、実はそれはお湯の中に含まれる鉄分が酸化したものだと分かったのだとか。兵庫県の有馬温泉の赤湯と同様のことが起きているとして話題になりました。
「金湯」と「銀湯」の2つのバルブがあるのがわかりますか?

「金湯」と「銀湯」の2つのバルブがあるのがわかりますか?

この縁の部分がポカポカしていて寝そべるだけでも温かいんです

この縁の部分がポカポカしていて寝そべるだけでも温かいんです

そしてこちらの凄いところは、2つの源泉からお湯を引き入れていて、一つは金色のため金湯、一つは無色透明のため銀湯と呼ばれていて、その日の湧出状況によってお湯の配分が変わるんだそう。

ただ、残念なことにナビが訪れた際にはバルブの故障で風呂は開放休止中。足湯についてもこの日に限ってスキニーのパンツをはいていたのであえなく断念。ベンチが床暖房のようにホカホカしていたので、寝そべって温かさを楽しみました。

住所:新北市金山区磺港大橋そば
開放時間:6月1日~10月31日 5:00~9:00 17:00~21:00
11月1日~5月31日 5:00~9:00 16:00~20:00
1815バス「磺港路」から徒歩3分



赤レンガと瓦屋根で台湾の古い家屋をイメージさせます

赤レンガと瓦屋根で台湾の古い家屋をイメージさせます

【社寮公共浴室】

日本家屋を思わせる瓦葺の屋根に、赤レンガのタイルを貼り付けた壁が印象的な浴場です。磺港公共浴室に程近いですが、住宅地の中にひっそりと佇む、隠れ家的な存在の浴場でした。こちらもかなり清潔でしたよ。

こちらがほかの浴場と違ったのは、一つ一つ風呂が1人分に区切られていること。男湯は一度に4人までしか入ることができない設計です。利用する際には自分でバルブを開けてお湯をためて入浴します。

泉質は含鐵氯化物硫酸鹽泉で鉄分を含むナトリウム-硫酸塩泉。pHは5.4で弱酸性。こちらも鉄分が含まれている関係で金色のお湯が楽しめます。
一人分の浴槽が4つ並んでいます<br>(無人の際に撮影しました)

一人分の浴槽が4つ並んでいます
(無人の際に撮影しました)

ナビが訪れた日はお湯の出が悪かったのか、溜まるまでに時間がかかり、温度もどうやらぬるめ。でも、プライベート感が強く、個人的には一番気に入りました。はしご湯の最後だったので、正直疲れてしまい、しばらくぼーっとしていたのですが、はじめに先客がいたのをのぞいて、その後は貸切状態。ゆっくりと温泉を楽しめました。

湯上りには次の人のために栓を抜いておきましょう。

住所:磺港里磺清路108巷突き当たり
開放時間:6月1日~10月31日 5:00~9:00 17:00~21:00
11月1日~5月31日 5:00~9:00 16:00~20:00
1815バス「社寮」から徒歩2分

まだまだある日帰り温泉施設

さて、金山の温泉施設は公共浴場だけではありません。民間で運営されている温泉施設も幾つかあるのでご紹介します。これらはお昼の時間帯も営業しているので、時間を気にせず温泉を楽しめます。
【旧金山総督温泉】

日本統治時代に台湾総督府の公費によって建設されたという入浴施設です。裸で入浴する露天大浴場と水着を着用するSPA温泉があるほか、2人以上で利用できる個室風呂もあります。大浴場の料金は300元です。
日本統治時代から残るという浴場

日本統治時代から残るという浴場

個室風呂は清潔で豪華

個室風呂は清潔で豪華

泉質については、海水成分が入り、若干の硫黄を含んでいるそう。pHは7.4なので中性温泉です。筋肉痛や関節痛に効果があるとされ、新陳代謝の促進、生理機能の促進のほか、美肌効果もあるんだとか。

カフェレストランも併設されているので休憩・食事も可能。公共浴場と比べてゆったりしているので、思い思いの時間を過ごせます。

住所:新北市金山区民生路196号
電話:(02)2408-2628
営業時間:9:00~24:00(土・日曜日、祝日は8:30~)
1815バス「金山郵局」から徒歩11分


【金泉浴池】

金包里公共浴室から直ぐの場所で50年前から営まれる個人経営の老舗浴場です。大浴場はなく、全て1~5人向けの個人風呂になっています。かなり昭和テイストの漂う浴室で、友人が暮らす古民家の浴室を借りに来たような印象です。

温泉はpH7の中性で、鉄、ナトリウム、カリウムなどが含まれています。こちらの温泉にも鉄分が含まれているため、お湯が金色になっています。金包里公共浴室と目と鼻の距離なのに違った泉質のお湯が湧き出るのは不思議です。
台湾の古~い民家にありそうな浴槽。超レトロで趣があります 台湾の古~い民家にありそうな浴槽。超レトロで趣があります

台湾の古~い民家にありそうな浴槽。超レトロで趣があります

ちなみに、台湾のこういった温泉施設では、安全面への配慮からお一人様での利用ができない場所が多いのですが、こちらはお一人様歓迎。とはいえ、万が一のことを考えて体調が優れない時の利用はご注意を。

一人での利用はなんと格安の100元。ただ、40分の時間制限があるので、入室したら直ぐにお湯をためて下さいね。

住所:新北市金山区温泉路2巷2号
電話:(02)2498-2175
営業時間:8:00~22:00
1815バス「金山」から徒歩4分

金山のはしご湯の旅を終えて気付いたのは、台湾では日本統治時代の終了と共に廃れてしまった裸の付き合いの入浴文化が、ここでは今でもしっかりと根付いているということ。さらに、海外から台湾に働きに来た人の間でも、この習慣が広まっているということです。

台北からのアクセスも簡単なので、ちょっと違ったディープな旅行をしてみたいとお考えの方に、ぜひとも訪れてもらいたい場所だなぁと思いましたよ。

以上、台北ナビがお伝えしました!

上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。

記事登録日:2020-04-10

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