料理研究家小河知惠子(オガワチエコ)・おうちで本格台湾料理『第二回目・擔仔麵(担仔麺)』

干しエビの香り漂う『擔仔麵(ダンザイミェン)』をご家庭で!

こんにちは、料理研究家の小河知惠子(オガワチエコ)です。

日本人はエビが大好きなのですが、その割にエビのだしや調味料を使った料理って少ないですよね。
そこで、連載第二回目となりました今回、ご紹介するのは、干しエビの香り漂う『擔仔麵(ダンザイミェン)』。

麺にエビや豚骨でダシを取ったスープをかけ、肉燥(ロウザオ)と呼ばれる台湾肉そぼろやエビ、うずらの卵などをのせた料理で、日本では担仔麺(新字体)の表記が用いられることが多いです。
前回ご紹介した滷肉飯(魯肉飯)とともに、擔仔麵(担仔麺)もまた広く親しまれ、台湾を訪れたら必ず食べるであろう料理です。

麺には、台湾では一般的な油麺(ヨウメン)や春雨、ビーフンなどが使われます。油麺は、かんすいの入っていない黄色い麺なのですが、日本では手に入れるのが難しいので、ここでは手軽に使える春雨バージョンをレシピにしました。もし油麺が入手できたら、同じレシピで春雨を油麺に変えてみてくださいね。

擔仔麵(担仔麺)との出会い

私が初めて擔仔麵(担仔麺)に出会ったのは、友人らと訪れた台湾で、ふらりと現地の食堂に入った時でした。

メニューに擔仔麵(担仔麺)があったので注文。しかし、出されたものを見て、全員が思わず声を上げてしまいました。

小っちゃっ!

思っていたよりもサイズがずっと小さかったんです。

日本では小さな麺料理ってなかなか見ないですし(某親子丼チェーンの小うどんくらい?)、ガイドブックでは、牛肉麺と同じようなサイズ感で紹介されていたので、てっきりラーメンどんぶりくらいのものが出てくると思いこんでいました。
ですが実際は、このサイズで正解。擔仔麵(担仔麺)というのはほかのおかずと一緒に食べるものであって、いくつか頼んで擔仔麵(担仔麺)で〆る、くらいでちょうどいい。それだけでお腹いっぱいにする料理ではなかったんですね。

実際に、私たちも牡蠣と揚げパンの炒め物やたけのこサラダ等と一緒に頼んで、ちょうどいいくらいでした。

擔仔麵(担仔麺)のレシピ

高級な海鮮料理屋さんで目にすることも多い、小ぶりで上品なイメージの擔仔麵(担仔麺)ですが、食べるとエビの香りがなんとも美味しい! もっと食べたい! 

そんな欲求を満たすのには、自分で作るのが一番。家で作れば量は自分の好みで、いくらでも食べられるわけですから。

それでは作り方をご説明しましょう。

まずは材料から!

・肉燥の材料
豚バラ肉……150g
豚肩ロース……300g(150g切り分けてトッピングにする)
エビ……6尾
豆腐乳(トウフウルウ)……小さじ1
干し椎茸……2枚
玉ねぎ……1/4個
干し海老……20g
サラダ油……大さじ2
酒……120ml
干し海老と干し椎茸の戻し汁……2.5カップ
鶏がらスープの素……小さじ2
砂糖……小さじ2
醤油……大さじ2
ごま油……小さじ1/2
うずらの卵……6個

・スープの材料
豚とエビを茹でたスープ……3.5カップ
鶏がらスープの素……小さじ2

・麺
春雨など……適量

・トッピングの材料
ネギ……10cm
もやし……150g
ニラ……少し
パクチー……あれば適量

擔仔麵(担仔麺)の作り方

① 干し椎茸を一晩水に浸けます。干し海老は少量の水で30分くらい戻す。戻し汁は後で使うので捨てずにとっておいてください。

② 豚肩ロースの脂身の少ない部分を150gくらい切り取ります。底の部分をつなげたまま切り、火が通りやすいようにしておきます。

③ エビの背わたを取り除きます。

④ 豚バラ肉と②で使わなかった脂身の多いほうの肩ロースを適当な大きさに切ります。その後、フードプロセッサーに入れ、粗めにひいてください。

日本のひき肉は細かすぎてあまり食感が出ないので、自分でひいたほうが台湾風になり、美味しいですよ。

⑤ 鍋でお湯を沸かし、ネギと②を入れ、10分くらい茹でます。茹で上がったら冷水にさらして冷やします。

茹で汁は捨てないようにしてください。

⑥ ⑤の茹で汁を使ってエビを茹でます。

茹で過ぎると固くなるので火が通ったらすぐに取り出してください。ここでも茹で汁は捨てないように。

⑦ 玉ねぎを粗みじんに切ります。干し海老、柄をとった干し椎茸も同じ大きさに切ります。

エビと椎茸の戻し汁も、まだ捨てないでください。

⑧ 豆腐乳(ドウフールウ)をスプーンで崩しておきます。

豆腐乳というのは、豆腐に麹をつけて発酵させたもの。粕漬けのような風味と塩分があり、調味料としてこれを入れるとコクが出て美味しくなります。ネット通販でも購入可能。桃園や松山の空港でも売っているので、旅の最後に買ってもいいですね。なければ入れなくても大丈夫です。


⑨ フライパンにサラダ油を入れて、玉ねぎを炒めます。透き通ってきたら干し海老を入れて炒め、干し椎茸を入れます。

⑩ ④のひき肉を加えて、ほぐしながら炒め、豆腐乳を入れます。

⑪ ①の干し海老と干し椎茸の戻し汁と酒を入れ、煮立たせます。

⑫ 鶏がらスープの素と砂糖、ごま油、醤油を入れます。

⑬ 軽く煮てから鍋に移します。

⑭ 火にかけて沸騰したらうずらの卵を入れて蓋をして、20分弱めの中火で煮込みます。

煮込んだうずらの卵でなくても、醤油煮の卵や両面焼いた目玉焼きをのせた担仔麺でもいいですね。

⑮ スープを作ります。⑥の豚とエビの茹で汁に、鶏がらスープの素を加えて温めます。

スープの味はかなり薄めでいいです。肉そぼろの塩気が加わってちょうど良い味になります。

⑯ トッピングを用意します。⑤のかたまり肉を薄くスライスし、⑥のエビは殻をむきます。ニラは適当な大きさに切り、パクチーも細かく刻んでください。

台湾では、台湾セロリのみじん切りを入れますが、日本にはないのでパクチーで代用しましょう。

⑰ 麺を茹でます。今回は春雨を使用。

もう少しボリュームが欲しい時は、日本のうどん(太すぎず細すぎないもの)でも美味しいと思います。かんすいの入った中華麺よりは近くなると思います。

⑱ 麺が茹で上がる直前に、ニラともやしを入れます。

⑲ 湯切りした麺を小さめの器に入れて、もやしとニラをのせます。

⑳ ⑮のスープを注ぎ、⑭の肉そぼろをかけます。

うずらの卵も忘れずに。

㉑ トッピングの豚肉スライス、エビ、香草をのせて出来上がり。

よく混ぜて召し上がってください。味が薄ければ肉そぼろを足して調節してください。

完成しました!擔仔麵(ダンザイミェン)♪

おわんに顔を近づけると、エビの香りがしっかりと漂い、濃厚な味を想像させます。しかし、口に含むと意外にあっさりと優しい味。それでいて、エビの風味が利いてクセになるようなコクも感じられます。

擔仔麵(担仔麺)のスープや肉そぼろを、ツルっとした春雨と一緒にすすれば、エビと豚の旨みが凝縮された味わいが堪能できます。

アレンジいろいろ

擔仔麵(担仔麺)とともに、擔仔麵(担仔麺)の汁なしにあたる『肉燥乾麺(ロウザオガンメン)』と、肉そぼろをご飯にのせた『肉燥飯(ロウザオファン)』の二品を用意してみました。
肉燥乾麺は細めのうどんを使用。中華麺を使うより、こちらのほうが本場の味に近いです。茹で上げた麺に、肉そぼろをかけて、よく混ぜていただきます。

肉燥飯も、炊いたご飯に肉そぼろをかけただけ。滷肉飯に比べ、あっさりした肉そぼろごはんといったところでしょう。

肉燥は、こんな風に色々アレンジできるので作っておくと便利。忙しい時にも大活躍しますよ。

これだけ食べればさすがに満腹、大満足。それでも不思議と飽きの来ない、また食べたくなる味なんです。だからこそ、こんなにも現地に根付いているんでしょうね。
次回もこういった台湾の魅力の詰まったお料理を紹介したいと思います。お楽しみに!

この連載では、日本でも作れる本格台湾料理のレシピを紹介しています。キッチンの環境や食材に違いはありますが、本場の味を再現できるように分量や素材などを研究し、なるべく詳しく解説していこうと思っています。
料理と文:小河知惠子(オガワチエコ)

料理研究家・台湾料理研究家。

雑誌やテレビ、書籍などのレシピ作りや料理コラム等で活躍中。著書に「純愛ごはん」(セブン&アイ出版)、「おにぎらずの本」(泰文堂)、「スティックオープンサンドの本」(講談社)など。 初めての台湾旅行で、食材の豊かさと豪快な調理に魅せられる。 以来、何度も台湾に足を運び、2017年、現地の料理学校で台湾料理を習得。 2歳男児の母。

小河知惠子(オガワチエコ) ツイッター
https://twitter.com/ogawachieco

上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。

記事登録日:2018-02-27

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