閉店・移転、情報の修正などの報告

独自の技術を確立させたら、値段が6倍に!竹産業の未来を考えるヒントがここにあり!


こんにちは、台北ナビです。
南投県竹山鎮を取材中のナビ。車で走っていると、至るところに竹林があり、そこかしこに竹細工や民芸品、観光体験工場などの看板が出ていて、竹とともに歩んできた街だということがわかります。ただ、残念ながら大量生産に頼る工場はどんどん中国大陸へ移転してしまっており、竹山で頑張って工房を開いたり、小規模な工場を経営されている方々は、竹山の良質な竹でしか作れない作品や、高品質の商品を消費者に提供しようと奮闘されているのです。
見ただけで温厚そうな劉さん

見ただけで温厚そうな劉さん


ナビがお邪魔した劉昭明さんもそのひとり。従来にはない、新しい燻製方法を独自に編み出し、竹の新しい可能性を追求している竹工芸家です。約束の時間に工房を訪れるとそこは民家。しかも留守のようです。ちょっと嫌な予感がしますが、恐る恐る連絡先の電話にかけてみます。「あのー、今日取材のお約束をしてるんですが…、お宅の前にいるんですが…」と切り出すと、劉さん曰く「そこは自宅だよー、工房は別の場所だよー、迎えに行ってあげるから待っててー」と元気な声。ホッとしました。

まるで工場のような工房へお邪魔しまーす


工房は自宅から車で5分ほど。以前は自宅兼工房だったのですが、使用する材料の量が増えたのと、設備が大々的になったので別の場所に工房を設けたのだとか。一歩敷地に入ると、はやくもちょっと焦げ臭いような匂いが鼻をつきます。劉さんが手掛けている竹製品は、劉さん独自の燻製方法が施されているんです。

まずは工房、というより工場のような屋内をひとまわり。うず高く積み上げられている竹は、色とりどり。聞くと、切り出した竹を乾燥させただけのもの、燻製処理を施したけど、まだ表面を洗っていないもの、燻製処理が終わってこれから加工されるのを待っているものによって色合いが違うのだとか。こちらのコールタールに浸したような真っ黒な竹は、先日燻製処理が終わって外に出したばかり。まだ最後の洗浄処理をしていないので真っ黒です。燻製室の内部などは後で見せてもらうことにして、まずは劉さんからお話しを伺いましょう。
やはりオフィスの中は

やはりオフィスの中は

竹だらけ

竹だらけ

働く女性の姿とはかくも美しき。。。

働く女性の姿とはかくも美しき。。。


工房の一角にはガラス張りのキレイなオフィス兼応接室が。
ここでは、奥様が壁にかける竹細工の作業中。お仕事の手を休めて美味しいコーヒーを淹れてくれました。
精巧な細工が少しずつ出来ていきます

精巧な細工が少しずつ出来ていきます

劉さんは先日、日本から帰ってきたばかり。新潟県で開催されていた「大地の芸術祭トリエンナーレ」を参観してきたのだとか。実はたびたび日本を訪れて、竹の加工や作品づくりの参考に余年がないそうです。

もともと劉さんは、20年ほど前にヒノキを主体とする木材加工や彫刻を手掛ける職人の世界に入りました。その後、腕の良さを買われて数々の作品展で入賞するなど、少しずつ名声を挙げていったのですが、10年ほど前に転機が訪れます。
燻製処理を施すとあめ色の竹に変身!

燻製処理を施すとあめ色の竹に変身!

こちらは屋内装飾に使われるもの

こちらは屋内装飾に使われるもの

訪れた転機


台北の世界貿易センターで行われた展示会で、劉さんが手がけた家具を出品していたところ、3人の女子大生から「木を無駄にしてる!」と批判されたのです。当時、劉さんの作品に使われていた木材は、すべて政府の農業委員会林業試験所から購入したもので、決して無駄に木材を浪費していたわけではないのですが、この一言に劉さんは大きなショックを受けました。その後、悶々とした気持ちを抱えながらも木材加工や竹の加工に従事していましたが、ずっとこの言葉が気に掛かり、伝統産業の転換や自身の仕事の転換を思案し続けていたそうです。

転機は2年前に訪れました。日本からもたらされた情報をもとに、燻製によって竹を美しく加工する技術の試行錯誤を重ねた劉さんは、ついに独自の燻製方法を確立し、飴色に光る竹の美しさを引き出すことに成功したのです。
あめ色の竹を使うとお馴染みの商品でも印象がガラリと変わります

あめ色の竹を使うとお馴染みの商品でも印象がガラリと変わります

ハンドバッグもこの通り。劉さんのオリジナル作品です

ハンドバッグもこの通り。劉さんのオリジナル作品です

右が通常の竹細工、左が劉さんの煤竹を用いたもの

右が通常の竹細工、左が劉さんの煤竹を用いたもの

竹の箸も趣がちょっと変わります

竹の箸も趣がちょっと変わります

ナビも先日、台北でお邪魔したデザインメーカーも同じような色合いの懐中電灯やデスクライトを作っていましたよーと言うと、あれあれ?まさしく同じ商品じゃないですか!ナビが取材した商品の加工を担っているのが、偶然にもこちらの劉さんだったのです。そういえば、デザイナーの方も「自然の材料である竹を細かく加工する技術は、長年竹の加工に従事してきた職人さんしか出来ない」と言っていました。確かに、2つとして同じものが存在しない竹を加工するのに機械を使うことは不可能で、人間の目と手と経験によるしかないのだそうです。
ここから、人間の手による

ここから、人間の手による

精巧な加工工程へ進みます

精巧な加工工程へ進みます


劉さんが常々参考にしているのは日本の京都にある竹材料メーカー。レストランの装飾などに竹が使われる機会の多い日本の方が、竹加工については一日の長があるとか。常にカタログを取り寄せては、それらを参考にして勉強しているそうです。
茶さじさけでもこんなにたくさん

茶さじさけでもこんなにたくさん

煤竹を使って

煤竹を使って

新しい境地の作品が生まれています

新しい境地の作品が生まれています

応接室の棚には、劉さんが手がけた作品がズラリ。どれもが、劉さん考案の「煤竹」を用いた作品になっています。竹を乾燥させた淡い黄色もいいけれど、煤竹の色合いの方が深みがありますね。こうした作品の製作や材料供給などにより、現在では劉さんの「煤竹」はかなり広がりを見せています。友人の職人さんが手がけた茶器のカタログを見せてもらいました。この職人さんも、従来の伝統を打ち破り、今までにないデザインの茶道具を次々と世に出しているとか。確かにモダンなデザインですね。

工場(?)見学へ~


お話しはこれくらいにして、工房をもう一度見せていただきましょう。
劉さんプロデュースの「煤竹」を生み出す中心となるのがこちらの燻製室。燻製室の扉を開けると、燻製処置が終わり、引き出されるのを待つばかりの竹が積まれています。
燻製期間は、その時の天候や竹の大きさなどにもよりますが、長いと10日あまり!
ここで火を絶やさずに・・・

ここで火を絶やさずに・・・

燃やす木材はなんでもOKだそう

燃やす木材はなんでもOKだそう

裏にあるボイラーの火を絶やすことなく燻製を施すそうです。燻製が終わった竹は、しばらく熱をとった後、最後の加工段階である洗浄処理にまわされます。洗浄される前の竹はまさに真っ黒。これはこれで美しさがありますね。

洗浄は2段階。黒くなった竹をまずソーダ水で洗浄します。何日間も燻製が施された竹の表面は、分厚い煤で覆われています。この煤を効率的に落とさなくては、生産の手間もかかるし、竹の美しさを引き出すことが出来ません。そこでソーダ水での洗浄ということになるのですが、なんとこれも劉さん独自の試行錯誤によるもの。第一段階の洗浄で煤を落とされた竹は、第2段階で真水によって洗われることで、美しい飴色を醸しだすのです。
第一段階のソーダ水から

第一段階のソーダ水から

第二段階の真水へ

第二段階の真水へ

数年前、火事になりかけたので天井には焦げ跡が

数年前、火事になりかけたので天井には焦げ跡が


劉さんによると、10年前には400軒程度あった工房が、現在ではその十分の一程度にまで減少してしまっているそう。しかし、残った若い職人さんたちが、新たな技術を導入したり、試行錯誤によって様々なデザインの竹を生み出すなど、むしろ意欲的に竹産業の振興に取り組んでいるように感じました。日本でもだんだんと減少しつつあるこうした「職人魂」、ナビも応援していきたいと思います。

以上、台北ナビがお伝えしました。

記事登録日:2012-08-27

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上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。

スポット登録日:2012-08-27

スポット更新日:2012-08-31

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