王錦珍茶荘

WangJinJen Tea王錦珍茶莊

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台北でも、もっとも古い歴史を持つ大稲埕エリアに、60年の歴史を持つお茶屋さんを発見!

こんにちは、台北ナビです。
民生西路をひたすら西に進み、迪化街を越えると、突き当たりに大稲埕碼頭が見えてきます。今日ご紹介するのは、この大稲埕碼頭のすぐ傍、創業60年あまりの歴史を持つお茶屋さん、王錦珍茶荘です。

店構えは新しいけれど

乾物屋さんが立ち並ぶ迪化街までは足を運んだことがあっても、それより西には行ったことがない人も多いかもしれません。王錦珍茶荘からは、大稲埕埠頭が、道を挟んですぐ見えるので、お店を探すにはよい目印になります。さすがに、この辺りまで来ると、観光客っぽい人はみかけません。どっぷりディープな界隈といえるでしょう。
そんなどっぷり地元なご近所ですが、王錦珍茶荘は最近1階の店舗をリニューアルしたばかりで、ぽっかりとここだけがきれいなので、目立っています。新しく見えるので、どこかから引っ越してきたのではと思ってしまいますが、実はこの王錦珍茶荘は、すでに60年もの歴史を持つ老舗。自家焙煎の鉄観音は、どこまでも香り高く、先々代からの変わらぬお茶への静かな情熱が伝わってくるお店です。

長い付き合いの台湾人顧客が殆ど

すっきりきれいな店内ですが、間口が奥行きに対して狭めで、天井が高いところから、以前からの建物の感じが伝わってきます。「鰻の寝床」のような奥行きの、手前が店舗になっています。すっきり直線的な棚に、茶器や茶葉が並べられ、買い物がしやすい雰囲気。観光スポットから離れていることもあり、観光客はそれほど多くはなく、お茶を買いに来るお客様のほとんどが地元の方だそうです。

初代老板である王明徳氏が、1948年に大陸から台湾に移民し、茶行を開きました。1952年に、今の場所に移ったそうで、次に息子さんの王敏超氏が継ぎ、今は3代目にあたるお孫さんの王煒捷(おういしょう)さんがお店の経営を任されています。お店に到着すると、王さん若夫婦が笑顔で迎えてくださいました。 

この辺りの歴史

大稲埕碼頭がもうすぐそこにある立地で、地域的に近代的発展からは若干取り残されている感がある界隈ですが、初期の台北では、埠頭近くに貿易会社が林立し、最も栄えた場所だったそうです。王錦珍茶荘も、その時期に成功した老店の一つです。
この界隈がその活気を失った後も、王錦珍茶荘は目立たずとも黙々と商売を続け、台湾人の顧客の支持を集めてきました。

店内拝見

間口が狭めなのですが、天井が高く奥行きがたっぷりあるので、この奥には大きな焙煎機や併配室などがあるのかな?なんて創造が膨らみます。一回部分の内装を新しくしたそうで、白い壁に木の棚で、すっきりと整っています。
過度にモダンでなく、これでもかと復古風でもなく、程よくいい感じです。
先ずは棚に並ぶ茶葉をチェック。おそらくは老板のご性格からか、棚の面積が豊富なせいか、ディスプレイがかなりすっきりしているので、見た目に受けるインパクトは強くありませんが、品揃えはかなり豊富といえると思います。
台湾のお茶が殆どですが、大陸からの珍しいお茶もあります。棚中溢れんばかりに品物を並べれば、観光客受けはしそうですが、こんな風に、余裕の品揃え&ディスプレイも奥ゆかしい感じで好感が持てます。

茶器も程よい品揃え

王さんの気に入った茶器をお店において販売しています。どれも使いやすいと太鼓判。老板の好みが色濃く出た(笑)商品ラインアップです。なんでもあるお店もいいですが、老板の茶器世界を拝見するのも楽しいです。

王錦珍茶荘の魅力

王錦珍茶荘の魅力は、その長い経験と関係をいかして、良い茶葉を仕入れられる事。また、長い間受け継がれ磨きが掛けられた焙煎技術の高さも特筆すべきところ。先代、先々代が精魂こめて築いてきた根底の部分を、若い老板、王煒捷さんがしっかり引き継いでいます。「うちは老主戸(古くからの顧客)が殆どだから」という言葉には、最近の物価の高騰や観光人気に左右されない価格設定と品質安定という、厳しい意味が秘められているはずです。ノリノリの明るい話し好き、という感じではなく、おっとりゆったりとした動きや言葉中に、優しい人柄が感じられます。わからないことがあれば、安心していろいろと質問できそう。必要があれば、淹れ方などを、筆談を交えたりしながら教えてくださるそうです。お茶関係のキーワードは日本語で話せるので、話題がお茶なら大丈夫とおっしゃっていました。時間に余裕のある方は、是非お尋ねしてみましょう。

王錦珍茶荘のイチ押しはのお茶は?

王さんに、お店の一押しは?と聞いたら、即座に「うちの鉄観音は特別です」との答え。最近では、高山茶の専門店や東方美人茶を一押しにする店はありますが、しっかり焙煎の鉄観音をお店のお勧めにしているお店は少ないと思います。ご本人自らがそうおっしゃるからには、これは、期待できそう。

少し余談になりますが、なんと、王錦珍茶荘の鉄観音は、大陸の福建省は安渓から毛茶を輸入して、台湾で焙煎にかけるのだそう。安渓鉄観音は、ここ数年徐々にいろんなお店で扱い始めていますが、大体は焙煎が軽めで独特な花香が豊富、水色は濃い目の黄色といった若めの仕上げで、木柵鉄観音と区別をつけて売られていることが多いのですが、鉄観音の故郷安渓の毛茶を深焙煎したものが、こんなに身近にあったなんて、もうびっくり。

というのも、早期に福建から台湾に移民してきた人々が、木柵などで故郷から持ってきた苗や種を植えて、故郷と同じように鉄観音を作ったというのが、ざっくりとした木柵鉄観音の歴史です。王錦珍茶荘は、もっと後に台湾に移り住んできた先々代によって、違う形で台湾にもたらされた福建伝統の深焙煎鉄観音なのです。ルーツは同じだけど、育った土壌が違うので、どんな味の違いがあるのでしょうか。ワクワクしますね。
福建の最近のお茶事情に詳しい人が言うには、台湾の鉄観音のように焙煎強めの鉄観音は、福建の安渓ではすでに伝統(古い)手法となっていて、最近では台湾の高山茶のヒットにつられ、焙煎をあまりせずに、若い仕上がりにするところが増えていて、深焙煎の鉄観音はあまり見られなくなっているそうです。この流れを考えると、毛茶を安渓から仕入れ、時間を気にせず深焙煎をし続けている茶行が台湾にあるなんて、ちょっと興味深くありませんか?

試飲です


~鉄観音茶王~ (一斤1600元/一斤800元)
木柵の鉄観音とはちょっと違った色艶外見を持つ王錦珍茶荘の鉄観音は、2種類。そして、2等級。
今回の試飲は、焙煎程度の違いを飲み比べてみることに。一斤1600元の鉄観音茶王(深焙煎)と、緑観音茶王(控えめ焙煎)を試飲しました。水色は、深焙煎のほうは、深みのある澄んだ褐色。ナビは、「深焙煎の安渓鉄観音」は始めていただいたのですが、香りが高く、鋭さがなく、甘みが強くてとても美味しいと思いました。味と香りの深み厚みが凄かったです。今いただいているお茶が7~8年かけて焙煎されたものだというので、直近に製茶されたものは、今から7~8年後に市場に登場するのだと思うと、実に根気のいるお仕事だと思います。
深みのある水色の鉄観音

深みのある水色の鉄観音

きれいな金黄色の水色は緑観音

きれいな金黄色の水色は緑観音

同じ一斤1600元の控えめ焙煎の緑観音茶は、前での深焙煎と比べると、若く仕上がっています。これはもう、個人の好みの世界です。植物的な香りが残っている緑観音か、深い焙煎で重厚にしあがっている鉄観音か。それにしても、両方とも、味の割りにお値段がそれほど高くないのが嬉しい。王さん曰く、昔からのお客さまが多いので、申し訳なくて値上げが出来ないのだそうです(笑)。
価格の違いは、原料となる毛茶(焙煎・加工・精製する前の状態のお茶)の品質等級の差。お店で販売している鉄観音茶王はいずれも、7~8年もので、またまたビックリ。弱火でじっくり焙煎してから、余分な活性が落ちるまで十分寝かせ、よい頃合いにまたじっくり焙煎にかけるという方法で、結果納得の行く焙煎度に至るまで7-8年かかってしまうそうです。随分気の長い話しですが、逆に言えば、早く育てて早く作ってドンドン売る、というような現代風の商売ではなく、まさしく昔ながらのスローフード的な作風ではありませんか。茎がきれいに取られているところも、鉄観音らしい伝統的な仕上がりかと思います。結果、小粒な仕上がりになっていて、乾いた状態の茶葉は、焙煎茶なのに何ともいえない清々しい香りがしました。茶葉のツヤがとてもよく、粒の大きさも揃っていて、見た目もとてもきれい。
体格の良い王さんが蓋碗を扱うと、不思議なほど蓋碗が小さく見えます(笑)。お茶屋さん家族で育った王老板は、自然にお茶を淹れる所作を覚えたそうです。「門前の小僧」状態ですね(笑)。茶道関係で訓練された所作も美しくてよいですが、自然と身に付いた所作もまた、良いものだと思いました。

高山茶も試飲

看板商品の鉄観音のほかにも、台湾茶が一通り揃っています。この日は、阿里山茶を淹れていただきました。蓋碗で香り高く淹れてくださいます。茶葉の遜色ない色艶と外観、そして、湯を注ぐときれいに茶葉が開いて、よい香りがナビのお鼻をくすぐります。先ほどの深焙煎鉄観音とはまた違った、ややハイノートぎみな花香が、上等な高山茶の証です。淹れあがった茶湯も、水面が艶々で、ふくよかな甘みがとても魅力的でした。
王錦珍茶荘の高山茶は、阿里山、杉林渓、梨山  一斤2000~4000元
ほかにも、いろいろな種類のお茶を扱っています。
碧螺春 800元
茉莉花茶 320-800元、
文山包種茶 800元
凍頂烏龍茶 600-1600元
四季春 800元
東方美人茶 1200元より
紅玉紅茶 3200元
滇紅金芽 2400元
鉄観音 1600/800元
黄金亀 1000元
ん?良く看ると

ん?良く看ると

ラベルに

ラベルに

日本語で説明が

日本語で説明が

竹の皮で包んだ普洱沱茶。かわいい!

竹の皮で包んだ普洱沱茶。かわいい!

お馴染みの現代風パック

お馴染みの現代風パック

茶梅は一瓶100元なり

茶梅は一瓶100元なり

みずみずしくて美味です

みずみずしくて美味です

本当にいろいろあります。ただ、盛り盛りに品だししていないだけ。店内すっきりしていますよね(笑)。素朴でいいなと思います。

包装も素敵

ちょっとめずらしい、昔ながらのパッケージ。まるで、以前の正露丸を連想させる箱の配色もグッド。中身は水仙。中身のビニールまでレトロなかんじです。また、茎茶の手作りパッケージもいい味出しています。昔の小包みたいです。台湾のレトロは、日本人にとっては懐かしさ溢れるものですね。
別売りの缶や化粧箱のデザインもかわいい。手提げ袋もしっかりしてます。
水仙茶4箱ワンパック

水仙茶4箱ワンパック

ひと箱開けてみました

ひと箱開けてみました

茎茶。安いけど、ちゃんと美味しいそうです。

茎茶。安いけど、ちゃんと美味しいそうです。

お店の裏を拝見

おくつろぎのところ・・・

おくつろぎのところ・・・


王さんと話していくうちに、だんだんと打ち解けてきて、お店の裏舞台を見せていただけることに。ラッキー。歴史ある建物は、奥行きが深いのが特徴の一つというのは知っていましたが、こんなに深いのかとまたまたビックリ。
先ほどお茶をいただいたテーブルの後にご家族の憩いの場があり、その更に奥に、まだまだ空間が続きます。以前からの古いままのビルがそっくり残っています。
二台の焙煎機

二台の焙煎機

焙煎機に入れるラック

焙煎機に入れるラック

必要な分量の茶葉がでてきます。

必要な分量の茶葉がでてきます。

ミシュランタイヤではありません

ミシュランタイヤではありません

中には茶葉がぎっしり!

中には茶葉がぎっしり!

焙煎されるのを待っています。

焙煎されるのを待っています。

大きな焙籠。電気式。

大きな焙籠。電気式。

ここは併配室だったそう。床も壁もステインレス。

ここは併配室だったそう。床も壁もステインレス。

茶葉を鳴らす熊手。

茶葉を鳴らす熊手。

本当に奥が深い建物です。あの扉の後に、まだまだこんなにスペースがあるなんて。いろいろ見せていただいて、凄く興味深かったです。喜ぶナビたちを、さらに2回へと案内してくださるというではありませんか。滅多にないチャンス!二階へレッツゴー!
歴史ある建物なので、建物そのものがとてもレトロチックですてきなのです。上階へ上がる階段も、天井も、床も、すごいすごい。茶葉以外のところで興奮するナビ。
階段もすてきだ!

階段もすてきだ!

廊下が長い長い。

廊下が長い長い。

床の細工がこれまたすてき。

床の細工がこれまたすてき。

ここにも茶葉が待機中

ここにも茶葉が待機中

天井には梅花が

天井には梅花が

古い建物大好きなナビは興奮がおさまりませんでした。お茶やさんの取材そっちのけで、建築物とか細工とかの写真をとりまくり、ハッとわれに返ると、目の前にはまたもや大量の毛茶が焙煎待ちで置いてありました。これだけ広いのに、内部がとても清潔に保たれていて、すごいなとおもいました。食品ですから、これだけ清潔だと安心して買い物が出来ますね。

時代に必要なだけ追いついてみる


1階に戻ってきて、先ほどご家族が歓談していた場所を見ると、壁にはプーアール茶のコレクションが。縦に壁のように並べると、凄く見栄えがして素敵です。
上の階を見せていただき解った事は、リニューアルしたのは1階だけだということ。とはいえ、かなりの面積ではあるのですが、3代目が商売を継いでから、ようやく少し時代に追いついてみた、といった感じでしょうか。
以前から使われている包装を見ると、これもまたとても素敵で、素朴で、王錦珍茶荘の歴史を表しているような外見なのです。

先代まではおそらく、大きな変化を好まず、今焙煎しているお茶を7~8年後にお店に出せるよう、黙々と同じ仕事を繰り返してきたのでしょう。おかげで、いまでも以前と変わらぬ味わいのお茶が飲めるわけで、こういう方々の存在に感謝したいと思います。
若い世代は、それにプラスして品揃えをととのえ、パッケージを一新し、お客様が買物をしやすいような環境を整えたのだとお見受けしました。

古きよきをしっかり残す


つかの間の観光での滞在や、住んでいても言葉がわからなかったりすると、印象に残るのは、声が大きく、アピール力があり、積極的に向こうからこちらの目に入ってくる人の方が圧倒的に多いと思います。でも、実は、大多数を占めるのは、静かなる人々なのです。こちらの王錦珍茶荘の方々は、控えめで、こつこつとやるべきことを続けてきた真面目な台湾人御一家です。
チャンスが廻ってくると利潤を追求するため、必要なプロセスを削り、作業効率を上げたり、かけるべき時間を短縮した結果、お茶の味が以前とは変わってしまうということは実際にあることですが、古き良きことをしっかりと守りながら、新しいことを取り入れてゆくという方法をとっている王錦珍茶荘に、とても好感が持てました。
すっかり王錦珍茶荘ファンになったナビとカメラマンさん。この日、豊かな気持ちでお店を後にしました。伝統を守る、とか職人気質にめっぽう弱いナビ。また、日を改めて、茶葉を買いに来たいと思います。皆さんも、古きよき台湾気質に触れてみませんか?
以上、台北ナビでした。

記事登録日:2012-07-26

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上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。

スポット登録日:2012-07-24

スポット更新日:2014-11-20

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