国立自然科学博物館 921地震教育園区(台中市)

國立自然科學博物館 921地震教育園區

閉店・移転、情報の修正などの報告

隆起した断層と倒壊した建物が保存され、地震の脅威を多角的に学べます

こんにちは、台北ナビです。
台湾は日本と同様、環太平洋火山帯に属する島です。そのため各地で温泉が湧きでて、手軽なレジャーとして親しまれていますが、その一方で頻繁に地震が発生する弊害を持ち合わせています。

1999年9月21日に起きた台湾大地震では、台湾中部を中心にマグニチュード7.3、最大震度7の揺れが襲い、2400人の死者・行方不明者、1万人以上の負傷者を出す惨事となりました。大きな被害を出した台中市霧峰区には、その時に隆起した断層と、倒壊した中学校校舎を保存した博物館「國立自然科學博物館 921地震教育園區」があり、今回、ナビは地震の脅威と対策の大切さを学んできました。

台湾大地震とは……

地震が起きたのは真夜中の1時47分。震度7の揺れを観測した日月潭のある南投県魚池の自宅で寝ていたナビの友人は、「突然、大きな巨人が僕の家を掴んで、力の限りシェイクしだしたような印象だった」「はじめは何が起きているのか理解できず、ただただ揺れに翻弄されていた」と揺れの大きさを語ります。

建物への被害も大きく、台中県大里市(当時)では地盤の弱い地域に建てられていた13棟の12階建てマンション群「金巴黎社区」では4棟が倒壊し約80人が死亡。ナビの先輩はこのマンションで被災しました。住んでいた建物は倒壊こそ免れたものの、マンション群の外へ出るためのエントランスが崩壊していたため、「住民みんなで助け合って塀を乗り越えて避難した」んだとか。

揺れは台湾全土で観測され、その後広い範囲で停電が起きたほか、余震も頻発。台北でも建物が倒壊するなどし、現在でも多くの人が地震といえば、この台湾大地震を思い浮かべます。台湾社会で地震に対する意識や取り組みを大きく変えるきっかけになった地震でもあるのです。
20年前のことですが、当時中学生だったナビも強く印象に残っています 20年前のことですが、当時中学生だったナビも強く印象に残っています 20年前のことですが、当時中学生だったナビも強く印象に残っています

20年前のことですが、当時中学生だったナビも強く印象に残っています

ビックリ! 隆起した断層を観察

国立自然科学博物館 921地震教育園区は、光復国中という中学校があった場所にあります。敷地内に台湾大地震の原因となった車籠埔断層が横切っており、地震に伴って断層が隆起したため、校舎が倒壊。中学校の敷地が博物館と整備されたほか、隆起した断層が約340mの長さで保存されています。このように断層が地震発生当時のまま残されているのは世界的にも珍しいことなんだとか。

隆起した高さはなんと2.5m。そばに立つと、その落差の大きさに驚かされます。それは思わず言葉を失うほど。台湾大地震で揺れがあった時間は約102秒とされていますが、わずかこの時間にこれだけの地面が動き、多くの強固な建物を簡単に破壊してしまうというのは、知識として理解しているつもりでも、実際に断層を目の当たりにした衝撃は想像以上でした。
かつてここは校庭。真っ平らな場所だったんです。想像がつきません かつてここは校庭。真っ平らな場所だったんです。想像がつきません

かつてここは校庭。真っ平らな場所だったんです。想像がつきません

近くで見ると隆起の大きさに驚かされます

近くで見ると隆起の大きさに驚かされます

裏手は堤防。隆起した部分が階段になっています

裏手は堤防。隆起した部分が階段になっています

日本統治時代の1935年に起きた新竹台中地震は有名ですね

日本統治時代の1935年に起きた新竹台中地震は有名ですね

地震そのもののメカニズム解説や、過去に台湾で起きた地震の詳細、活断層のある場所などについても展示があります。日本統治時代の1935年に起きた新竹台中地震や、1964年に発生し嘉義市内で大火を起こした白河地震などは有名ですが、それ以外にもたくさんの地震が起きていたことがわかります。日本と台湾は隣り合う国ですが、知らないことってたくさんありますね。
台湾大地震と東日本大震災の比較がありました

台湾大地震と東日本大震災の比較がありました

台湾大地震で動いた断層の位置を示した地図。かなり広範囲にわたって動いたことが分かります

台湾大地震で動いた断層の位置を示した地図。かなり広範囲にわたって動いたことが分かります

台湾で過去に大きな地震を起こした場所の震源地。揺れない場所はありません

台湾で過去に大きな地震を起こした場所の震源地。揺れない場所はありません

その場でジャンプするとわずかな揺れを感知するシステム。地震計の仕組みを学べます

その場でジャンプするとわずかな揺れを感知するシステム。地震計の仕組みを学べます

地震が起きたときの断層の動きを学べる道具もありました

地震が起きたときの断層の動きを学べる道具もありました

地震の怖さを感じる展示 倒壊した建物の内部に大潜入!

断層を見学した後は、実際に倒壊した建物の内部に入ります。元々は3階建てでしたが、2~3階部分を撤去し、1階部分が見学できます。もちろん、しっかりと補強されていますのでご安心を。ヘルメットなどの防護具の着用もいりません。「南棟」と呼ばれていた建物で、倒壊した建物を保存するだけならまだしも、その中に入れるというのはとても貴重な体験です。

亀裂の入った壁、内部の鉄筋がむき出しになり傾いた柱、20年前の被災当時の姿がそのまま残されていて、地震の恐怖をリアリティを持って感じられます。かつては多くの生徒が肩を寄せて授業を受けていた日常空間が、一瞬で崩壊してしまったことを考えると、さまざまな感情がこみ上げてきます。
崩壊した校舎を内部から見るというのは本当に貴重な経験。怖さが直に伝わってきます 崩壊した校舎を内部から見るというのは本当に貴重な経験。怖さが直に伝わってきます 崩壊した校舎を内部から見るというのは本当に貴重な経験。怖さが直に伝わってきます

崩壊した校舎を内部から見るというのは本当に貴重な経験。怖さが直に伝わってきます

その奥には液状化現象の原理や危険な場所の見分け方、ライフライン維持の大切さなどについても学べる空間があります。また、新しい建物で施されている耐震設計の紹介や古い建物の補強技術の紹介などもあり、台湾大地震以降、台湾で施されている安全対策などについても理解を深められます。
液状化現象を学ぶコーナー

液状化現象を学ぶコーナー

ライフラインを確保する大切さが分かる展示もありました

ライフラインを確保する大切さが分かる展示もありました

地震で怖いのは揺れだけではなく、土砂災害や津波などの影響があること

地震で怖いのは揺れだけではなく、土砂災害や津波などの影響があること

危険な場所を予め理解しておくことって大切ですね

危険な場所を予め理解しておくことって大切ですね

非常食の確保、今一度確かめたいですね

非常食の確保、今一度確かめたいですね

物言わぬ証人 倒壊した校舎を間近に見る!

南棟の見学が終わったら、続いては「北棟」を見学します。こちらも南棟と同じく、3階建ての校舎で、正面玄関のあった場所でもあるのですが、やはり全壊しました。そして、こちらは内部への立ち入りはできないものの、倒壊した建物がほぼ完全な形で残されていて、かなり近い位置で見ることができます。

ぺしゃんこになってしまった校舎は、それだけでも衝撃なのですが、もし地震発生時刻が日中で、校舎内にたくさんの生徒や職員がいたらと思うと、身の毛もよだつ思いで、心が締め付けられます。
北棟と南棟をつなぐ渡り廊下は1階部分が完全に押しつぶされていました

北棟と南棟をつなぐ渡り廊下は1階部分が完全に押しつぶされていました

倒壊した建物というのは、ニュースなどで写真や映像を通じて目にする機会はあるものの、間近で観察する機会はないですよね。ここでは、崩落した梁や壁が目の前に残されています。大きな鉄筋コンクリートの塊が、崩れ落ちてそこら中に散らばっているのです。普段は意識をしないことですが、頭に落ちたり、体を挟まれたり……なんてことを想像すると、人間はひとたまりもないなぁと恐怖を感じます。

北棟の見学は、地上から眺めるだけではありません。北棟を乗り越えるように歩道橋が整備されていて、少し高い位置からも倒壊した状況を理解できます。CG技術が発達した現在ですが、やはり実際に存在しているものをさまざまな角度から目で見て確かめるというのは、伝わるものと迫力が違います。
無機質のコンクリートはただただ凶器にしか見えませんでした 無機質のコンクリートはただただ凶器にしか見えませんでした 無機質のコンクリートはただただ凶器にしか見えませんでした

無機質のコンクリートはただただ凶器にしか見えませんでした

このほか、園内には台湾大地震発生直後から復興までの歩みを追った展示や、映像館、寸劇が見られる劇場などがあり、台湾で暮らす上で避けることのできない地震に対する認識を深められる工夫が施されています。

日本と台湾はこれまでにも数多くの地震に見舞われ、尊い犠牲を払い続けてきました。ただ、その一方で悲しみを乗り越えて力強く前に向かって歩みを進め、その度に復興を遂げてきたことも大事なことです。近年では日本と台湾が災害時にお互いを支援しあう取り組みも広がっていますが、災害とその災害後の協力関係を通じて、お互いの国を理解しあい、日台交流の更なる促進に繋がればいいなぁと思いました。

以上、災害への備えを今一度確かめようと思った台北ナビでした。

記事登録日:2022-12-24

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上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。

スポット登録日:2022-12-24

スポット更新日:2022-12-23

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