名刺代わりの擔仔麺!台北でも味わえます、台南の老舗料理
こんにちは、台北ナビです。今日は台湾小吃(一品料理)の代表格、擔仔麺で有名な「度小月」台北永康店へやってきました。
前から気になっていたのですが、度小月とはどういう意味なのでしょう?「度」とは中国語の「度過」=乗り越える、「小月」とは昔台南海域の漁師たちが呼んでいた閑散期のこと。漁で生計を立てていた漁師が小月を乗り越える、というのが度小月の由来なのだそう。
チャーミングな張さん
そう話してくれたのは、現在永康店の店長兼企画部長を勤めている張奉瑜さん。台南本店に勤務していた生粋の台南人である張さんは7年前、この永康店オープンと同時に台北へやってきました。慣れない土地で、ずっと台南の味を発信し続けて来た張さんの話し振りから、度小月への深い愛情を感じたナビなのであります。
台北一店舗目の忠孝店とは異なり、全40席とこじんまりとした永康店。基本的なメニューは変わらないけれど、3~4ヶ月ごとに新メニューの開発もしているそうです。さすが名店、抜かりがありません。
このメニューなくして、こちらのお店は語れません。貫禄の一品、擔仔麺!!
擔仔麺 50元
もちっとした細麺、エビの頭でダシをとったスープに肉燥(豚そぼろ)とエビが載っている、という定番の擔仔麺スタイルは、この度小月が発祥だということを、皆さんご存知でしたか?それはさかのぼること約120年前のお話です。中国福建省の漳州から台南へ移り住んだ洪さん一家は漁師をしていました。台南海域の夏場は台風が多く、その時期は漁業のみで生計を立てるのはとても厳しかったそうです。そこで洪さんは、漳州に居た頃に作り方を覚えたという麺を使って、この時期を乗り切れないものかと考え始めます。漁で捕れたエビでダシをとり、豚肉を炒め、何度も試行錯誤を重ねた結果、独特の風味あるおいしい麺ができあがりました。その麺を、擔仔と呼ばれる天秤棒で売り歩いたことから、かくして「擔仔麺」の誕生と相成ったのだそうです。洪さんの麺はたちまち評判となり、漁を辞め本格的にこの麺を売ることに。それが「度小月」の始まりです。現在4代目まで引き継がれて来た味を、じっくり噛み締めましょう。
リピーターさんは思い切って裏メニュー「米粉麺」をオーダーしてみましょう
パクチー、にんにく抜きの米粉麺!
麺のほか、米粉(ビーフン)50元、粿條(幅広のライスヌードル)50元から選べますが、麺とビーフン、どちらも捨てがたい!という方。メニューにはありませんが、麺とビーフンを一緒に食べられる「米粉麺」(ミーフェンミエン)50元をオススメします!昔からのお客さんがよく使う手段なのだそうですが、モチモチの麺と、ビーフンのシャキッとした食感を同時に楽しめてお値段も据え置き。何だか得した気分になっちゃいます♪
メニューに関しては日本語と英語を話せるスタッフがいるそうなので、パクチー、ニンニク、お酢が苦手な方は、オーダーの際に伝えれば、しっかり抜いて提供してくれるそうです。
奥の黄色が麺、手前がビーフン、お皿にのっているのが粿條
|
|
米粉(ビーフン)50元
|
店内には度小月の米粉麺を愛した詩人、楊乃胡の詩が。
台湾の麺にしては、量が少なめなのがこちらの擔仔麺の特徴。他の料理もしっかり食べたいナビにはとってもありがたい分量であります。ちなみにこちらの肉燥は、豚のひき肉と一緒に、香りの高い台湾の紅頭葱を7~8時間炒め、一晩寝かせて作っているのだそう。肉の中にまで、しっかりネギの香りがしみ込む工夫がされています。
日本も関東と関西で味の好みが違うように、台湾も北と南ではそれぞれ好みが分かれます。度小月が台北(忠孝店)へ進出してきたばかりの頃、濃い味で少量の擔仔麺は台北の人々には中々受け入れられず苦戦したのだそう。お客様の声に耳を傾け改良を重ねた結果、台北でも客足が途絶えない繁盛店へと進化を遂げたとのこと。忠孝店が台北人好みの少々薄味なのであれば、観光客が多いこちら永康店は、本場台南の濃い味を売りとしています。全店舗全く同じ味ということでなく、それぞれの地域に受け入れられる味に調整されている点も、度小月の魅力のひとつかもしれません。
入口横にある黒い鍋の謎・・・
度小月の名物といえば、擔仔麺コーナー。オーダーが入るとサッサッサッサッ、と麺に肉燥を乗せる早業を披露してくれます。肉燥を少しずつ載せながらスープとの配分をコントロールするというこの功名な技を習得するには、厳しい訓練と試験をクリアしなければならないのだそう。「この席に座れるまで半年かかった」と苦笑いの張さんですが、その姿はなんとも誇らしい。あの椅子に座れるスタッフは、各店舗1~2名なのだそうです!
擔仔麺コーナーを覗く際、スタッフの手前に置かれている肉燥が入った真っ黒い鍋にも注目してみてください。タレを継ぎ足して使用されてきた鍋肌には、肉のゼラチン質が高く積まれ、各店舗の歴史を感じることができます。一代目から使用されていた百年鍋はもう古すぎて使えなくなってしまったため、お店の宝として本店にしっかり保存されているそうです。どこまで高く積まれているのか、いつかお目にかかりたいものです。
永康店の鍋は開店当初から愛用の7年もの
まだまだあります、台南名物!
烤虱目魚肚 (焼きサバヒー)180元
さすが台南発のお店!しっかりと「サバヒー」の焼き魚も用意されております。サバヒーとは別名ミルクフィッシュともいい、台南の特産品。名前の通りミルクのような白身には脂がたっぷりのっており、その昔まだ貧しかった時代の人々はサバヒーを食べて油分を蓄えていたのだとか。昔から変わらず庶民の健康を担ってきた、ありがたいお魚なのです。こちらのお店のサバヒーは、毎日台南から取り寄せているので鮮度抜群。骨の多いサバヒーですが、全ての骨を抜いてから提供してくれるので、骨のことは気にせずに、ゆっくり召し上がって下さい。
台湾の小吃好きならご存知の方も多いはず。台南の代表的な小吃、黃金蝦捲。「魚のすり身に、エビと豚の脂を少々加えることで香りと瑞々しさが増すんです」と嬉しそうに話す張さん、台南の話になると自然と顔がほころびます。わさび入りの醤油膏(トロリとした甘口醤油)に付けていただきます。カリッとした外側の皮とプリッとしたすり身、そして食欲をそそる香りでどんどん箸がすすみます。こちらも、決して期待を裏切りません。
黃金蝦捲 (揚げエビ巻き)150元
|
|
わさび入り醤油膏
|
なにやら不思議な食べ物がやってきました。張さん曰く、「しょっぱくて、甘い(!?)」カリフォルニアロールならぬ台北ロール?
河粉皮(平たいライスヌードル)で巻かれているのは、アスパラ、桃(!)、肉鬆(豚肉の田麩)、海苔、そしてメインの伊勢エビの卵。我々日本人の感覚からすると、なんとも斬新な組み合わせではありますが、これがまた驚きのおいしさなのです!ほんのり効かせたわさびの風味と、まさに「しょっぱくて、甘い」具材たちが、しっかりと調和します。肉鬆のふわふわ感と、卵のプチプチした食感も絶妙にマッチ。これは、このお店の隠れた名品だと確信しました。香港のお客さんに大人気だそうですが、意外と日本人のお客さんからのオーダーも多いとのこと。度小月でしか味わえない一品、ぜひお試しあれ!
台湾の定番料理もしっかりご用意
清炒大豆苗 (とうみょう炒め)260元
日本のスーパーでもよく目にするようになった豆苗(エンドウの若葉)ですが、台湾の豆苗は茎も太ければ味も濃い!栄養価の高い豆苗は台湾人も大好きな青菜のひとつです。こちらのお店の豆苗は、味と食感を追い求めた結果、花蓮産のものに行きついたのだそうです。この一皿でビタミン、ミネラルを一気に取り込みましょう。
現烤烏魚子 (焼きカラスミ)90元/2つ、360元/10つ
台湾へ来たら一度は食べておきたい烏魚子(カラスミ)。こちらの烏魚子は嘉義縣布袋産を使用。大根のスライス、ネギと一緒にいただくことで、味がマイルドになり食感も楽しめます。張さんの話によると、大根、ネギの代わりにリンゴのスライスと一緒に召し上がる家庭もあるそうで、カラスミをお土産に購入された方はぜひ、ご自宅で試してみて下さい。
天然の甘さを広めたい。永康店限定!!
「冷茶」金萱烏龍茶 35元
レジに並べられたシンプルなラベルのペットボトル。よく見ると、中に茶葉が入っています。これは珍しい!こちら店頭に並べる2日前に水出しするという、阿里山の金萱烏龍茶を使用した冷茶。台湾の伝統的なお茶の文化をもっと多くの人に知ってもらいたいという思いから、観光客の多いこの永康店で販売する事にしたのだそう。飲んでみると、市販のペットボトルのお茶とは違う、茶葉本来がもつ甘さにナビは感動!熱湯で煎じるお茶の苦みもなく、喉越しもまろやかなのです。永康店に行かれる際はぜひお試しいただきたい。茶葉は「七三茶堂」というお茶屋さんのもの。こちらの茶葉も店頭にて購入可能です。
パッケージも素敵な「七三茶堂」の茶葉
|
|
お土産に肉燥も購入可能
|
現在台湾に5店舗、中国北京に1店舗を構える大所帯の度小月。ただいま中国国内と台湾北部で更に出店計画中とのこと。どんな特色ある店舗になるのか、楽しみですね。こちら台北永康店は平日に限り予約可能なので、事前に電話を一本入れておくことをオススメします。狙い目は、14:00~17:30。閑静な永康街を散歩し、十分にお腹をすかせたら、赤提灯がぶら下がる老舗の門をくぐりましょう。 以上、台北ナビでした。