台湾の伝統芸能「獅子舞」「歌仔戲」

おめでたい席に必ず登場する「獅子舞」そして「台湾オペラ=歌仔戲」。人間の心の奥をつかむこの二つの伝統芸能は、今でも台湾の地に深く根付いています。

こんにちは、台北ナビです。中国的伝統芸能といえば何を思い浮かべますか?「京劇」「獅子舞」なんてところでしょうか。でも、知っていましたか?”台湾”の伝統芸能は「京劇」というより「歌仔戲」。獅子舞も日本でよく見られるようないわゆる緑の獅子舞とは全然違いますよ。

歌仔戲 台湾オペラ


中国語(北京語)ではグーザイシーと呼びますが、実は台湾特有の伝統芸能なので、みな台湾語で「ゴアヒー」と呼ぶことが多いです。観光向けには「台湾オペラ」と呼ばれ、歌と劇を通して、民間に伝わる伝説を演じている劇です。特徴的なのは、一切が「台湾語」を使って演じられること。台湾初心者の人には、北京語・台湾語の違いなどわからないかもしれませんが、違う言語です。ナビ自身、中国語(北京語)は理解できるのですが、「台湾語」は聞いてもわからず、そのため、外国人の私たちはもっぱら目で鑑賞し、ストーリーを推測することになります。でも、その派手な化粧や衣装、そして舞台装置などの迫力だけでも十分見ごたえがあります。言葉がわからなくても目でたのしめるのが歌仔戲の特徴です。
30年ほど前までは、台湾のあちらこちら、特に廟の前でおまつりの一環として行われていた歌仔戲。日曜の夜には、テレビで歌仔戲が放映され、視聴率もすごく高かったんだとか。時代は移り変わり、最近は台北市内で歌仔戲を見かけることは少なくなりましたが、それでも、廟の大切なお祭りのときなどに見かけることがあります。

さて、大部分が屋外の仮設ステージで行われる歌仔戲。派手な宮廷衣装を着た役者たちが踊りながら、台湾語で歌を歌い、台詞を発します。もちろん字幕などありません。幕のうしろでは、太鼓やドラを使って中国調音楽が演奏され、とてもオリエンタルです。日本の雅楽が更に派手にテンポが速くなった感じというのがナビの印象です。

今回ナビは迪化街で歌仔戲と獅子舞が行われると聞いて、きてみたわけですが、タクシーを降りると遠くのほうからカラカラと派手な音が聞こえてきました。「えっ予定よりも早く始まってる!」と内心あせったナビは走って城隍廟までむかいました。

幕の裏にはドラムなどがあります。

幕の裏にはドラムなどがあります。

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仮設ステージの裏では、パールミルクティを飲みながら、台本の練習をしている役者もいたり、練習なんてそっちのけで自分の子供とキャーキャー遊んでいる人もいたり、表と裏の差がはげしい台湾です。表はというと、そんな裏の自由さを微塵も感じさせず、重たそうなキラキラの冠と、目がちかちかするほどの色鮮やかな宮廷衣装を着た役者たちが歌を踊ったり、演じたりしています。
じっと見ていること10分「なんか、立ったまま話しているな・・・」なんて印象を受けました。オペラや一般の演劇に比べると動作が少なく感じるのです。立ったまま、座ったまま話すことが多いのですが、それでも指の先や眉間の細かい筋肉の動きなどで、どの人がどんな役回りかなど容易に推測できます。女性と男性にいたっては、動作が全く違い、女性は優雅にやわらかく、男性は力強くサバサバとした印象を観客に与えます。

ナビが見た劇は「覇王庄」というお話なのですが、喜怒哀楽・親子愛・愛憎が見事に入り混じり、いわゆる「メロドラマ」だったのだと容易に想像できます。泣き顔・怒り顔・笑い顔などなど、全てがドラマチックに表現され、人間の「人生」そして「愛」の問題は、時代が変わってもあまり変化しないのですね。
ちなみにナビが推測したお話の内容はこのような感じです。
 

ある村に美しい娘と男がいました。二人は愛し合っていました。しかし、別の裕福な村の庄屋は、その村の美しい娘に恋をし、何とか奪い取ってやろうと村を脅します。結局娘はその裕福な村の庄屋に奪われてしまう・・・という話です。結局最終的に、娘は自分の村と恋人の元に帰り、裕福な村の庄屋も新しい娘を見つけて、円満に解決する・・・といった典型的なメロドラマです。

最初はこの三人(父娘婿)で暮らしていたみたい。

最初はこの三人(父娘婿)で暮らしていたみたい。

そこへとなり村のこの男が現れ

そこへとなり村のこの男が現れ

美しい隣村の娘を嫁にすることを決める。そして召使に指示をする。

美しい隣村の娘を嫁にすることを決める。そして召使に指示をする。

そして無理やり嫁がせる

そして無理やり嫁がせる

無理やり嫁がされ悲嘆にくれる娘

無理やり嫁がされ悲嘆にくれる娘

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取り返しに来る元のだんな

取り返しに来る元のだんな

戦うことになるのだが、

戦うことになるのだが、

簡単に負ける

簡単に負ける

娘の父親は、窮状を皇帝に訴える

娘の父親は、窮状を皇帝に訴える

ナビが見ていて面白いなと思ったのは、なんと俳優・女優共に、演劇中も「マイク」を使うのですね。なので、壇上に上がってきた役者は何をするかというと、まず「マイク」を探して手に持つのです。そしてマイクを持ちながら台詞を話し、マイクを持ったまま演じます。動作が少ないなと思ったのは片手がふさがってしまったからでしょうか・・・まぁ、おかげで声はよく聞こえ、おじいちゃんおばあちゃんにはありがたかったでしょう。
(注:もちろんマイク持たずに演じるところもあります)
 

ココもマイク ココもマイク

ココもマイク

ケンカのときもマイク

ケンカのときもマイク

激しい踊りのときは、マイクナシです。

激しい踊りのときは、マイクナシです。

中華獅子舞

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よく日本の中華街でもイベントの際に披露される中国獅子舞。ナビは日本の獅子舞すらまともに見たことが無いのに、台湾の獅子舞はもう何度も見てしまい、あまりものめずらしさはありませんでした。でも今日は数種類の違った獅子舞が見れるということなので、エンターテイナーナビ、若干気合が入ります。
日本の伝統芸能獅子舞はドンドンと薄れてしまっているのが現状で、ナビ自身も、日本の獅子舞は実際見たことがありません。でも台湾はまだある程度民間に根付いていて、よく開幕式などのおめでたい席には必ず獅子舞が演じられます。台湾でよく見かける獅子は、猫が大きくなったような外観で額が狭く、目がクリクリしているのが特徴的。しかし、そのほかにも、木で作られ、目が動かない客家の獅子なんかも今回は目にすることができました。客家の獅子舞は、日本の獅子舞とちょっと似ていて、口が下駄みたいにカツカツ鳴ります。けっこう獰猛そうな感じがしました。

第一の獅子舞アクロバティック

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最初に行われた獅子舞は、アクロバティックな踊りをすることで有名なチームなんだそう。
観客の前にはまず鉄で作られたなにやら不可思議な柵のようなものが置かれます。そして、その前で、若者2人が情熱的に踊り始めました。若者の隣には、頭と皮だけの獅子がペロンと置かれています。


最初はただの物体だった獅子も

最初はただの物体だった獅子も

台湾の伝統芸能「獅子舞」「歌仔戲」 獅子舞 歌仔戲伝統芸能 生命が宿る!

生命が宿る!


すると突然その二人の青年がその死んでいる獅子の中に移りこんだのです。今までただの「物体」だった獅子が、まるで生命の息吹が吹き込まれたかように、動き始めます。
この獅子舞は「步步高升」といい、「一歩一歩上り詰める」という意味です。困難なことも多いけれど、一つ一つの難関を克服し、最後には目標を達成させる獅子の様子が目の前で展開されます。
みんな僕のがんばり見てね!

みんな僕のがんばり見てね!

いざ出発

いざ出発

ドキドキ ジャンプしなくちゃ

ドキドキ ジャンプしなくちゃ

こわいなぁ

こわいなぁ

実は前に用意された台の一番先には「步步高升」とかかれた小さな赤い掛け軸が。獅子はこの掛け軸を取り外すために、目の前に用意されたポールの上を飛び越えて、掛け軸に勇猛果敢に突き進んでいきます。途中ポールを踏み外し落ちそうになるシーンや、怖がって、足ばかり舐めているかわいらしいシーンなどもありますが、周りの声援と共に、一つ一つ困難を乗り越える姿は、見るものを明るくします。
おちちゃった

おちちゃった

掛け軸を必死に取る!

掛け軸を必死に取る!

ついにゲット!

ついにゲット!

客家の獅子

これが先ほど話した客家の獅子舞。踊り子がおじさんばかりなのがちょっと悲しいかな。耳がピンと立って、長い胴体が特徴的。猫というより犬的な感じもします。まず踊りの前に、広場に金紙(神様へのお金)をばら撒きます。すると荒れ狂うように踊りだす獅子その上お金を食べてしまいます。でもとってもうれしそう。
お金を撒き散らすと

お金を撒き散らすと

強烈に喜びます

強烈に喜びます

そしてお金を食べます。

そしてお金を食べます。

なんだこれは?

なんだこれは?


しまいにはゴザを引いて、寝転んで子供みたいに甘え始めます。性格的には、三歳児という感じ。ゴザを引こうと思ったときも、めんどうくさいと思ったのかどうなのかわかりませんが、突然地面に座って、足をぺろぺろなめ始めました。「甘えずにしっかりやれ!」と感情移入してしまうのですが、
よく考えたら、これも踊りの一部なのですね。さらに、ゴザの上でごろごろと幸せそうにした後に、踊り子から「現金」が支給されるとまたとたんに元気になって踊り始めます。「獅子」とは言いつつ、その行動はまるで人間の子供。
最後に同じく、赤い掛け軸を解いて踊りは終了です。絶えず「お金」に喜ぶ獅子を見ていると、現実至上主義の台湾の文化をまざまざと目の当たりにした気がします。
よっこいしょ

よっこいしょ

うーん まったり

うーん まったり

足の毛づくろいも大切なの。

足の毛づくろいも大切なの。

わーい 現金が支給されたよ!

わーい 現金が支給されたよ!

たべちゃうもんね。

たべちゃうもんね。

舞龍舞獅

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次にでてきた獅子舞は、なんだか鬼のような顔をしています。しかも、一匹や二匹だけではなく四匹の獅子が踊り狂うのです。獅子舞の色合いも、踊り全体の雰囲気も、前の三つの獅子舞よりもとっても派手。周りで一緒に踊りを行う子供みたいなものや、紙ふぶきは舞うし、しかも獅子が猫じゃらしのようなおもちゃにじゃれるんですね。派手ですが、まぁ、なんともおめでたいのほほんとした雰囲気です。
派手に動き回ります。

派手に動き回ります。

実は四匹もいます。

実は四匹もいます。

四匹はボールにじゃれています。

四匹はボールにじゃれています。

子供とも遊びます。

子供とも遊びます。

さっきのに比べたら一匹一匹は小さいですね

さっきのに比べたら一匹一匹は小さいですね



全体的に、派手で勇猛な中にもかわいらしさを残し、見ているものをフッと和ませるような踊りが、本場の獅子舞のようです。台北ナビでした。
 




 

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記事登録日:2009-06-24

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