古都台南で味わいの旅

先代の味とそして伝統文化を現代に溶け込ませる台南の5店舗

こんにちは、台北ナビです。今日は台湾南部の町、台南に来ています。かつての古都として独自の発展を遂げた台南は、日本で言えば京都のような地域で、現代と歴史が融合し、台湾ならではのオリエンタリズムが感じられます。また一般の古都と異なるのは、古跡だけではなく、伝統の屋台料理「台南小吃」を地域の人が守り抜いているところです。台南の古跡の周囲には、営業70年以上という小さなお店が無数に存在し、一度行っただけでは、その美食のすべてを制覇することは到底不可能です。そんな台南小吃を提供し続けるお店の中から、今日はあまり知られていないお店4軒と有名店1軒をご紹介します。

小西脚碗粿店 円満な愛を伝える碗粿

台南で一番古い歴史を持つ小吃と言えば「碗粿(ワークイ)」。もう300年ぐらい前から台湾にあるもので、在来米ともち米をすりつぶしたものを、蒸して作り上げたでんぷん質のプリンのようなものです。似たようなものが中国南部、インドネシアの方まで伝播しているのですが、台湾のものは「お碗」に入っているのが特徴的です。
さて、今日は、そんな碗粿に人生を注いで数十年の「蔡さん」にお会いすることになりました。台南の夏林路に碗粿店を構える蔡さんは、お父さんから店を受け継ぎ、お店を構えることになったのは約10年前から。外車の営業マンから一転、今は奥様と2人で仲良く手を取り合って、お店を経営しています。先代のお父様は1955年、お母様の嫁入り道具の「金」を売り払い、小さな碗粿の屋台を始めました。当時その屋台は、「小西門」(現在の新光三越新天地付近)のふもとにあったことから、二代目蔡さんは、現在の店名を「小西脚」(小西門の足元)としたのでした。
 「碗粿」の作り方は、実はとても技術と経験を要するらしく、ナビもなかなか「おいしい」といわれるものに出会ったことがありませんでした。蔡さんは、ベチャベチャとしていて、なんとなく、味も風味もないような「碗粿」を食べてしまった人に、ぜひとも「碗粿」おいしさを塗り替えてもらうべく、幸せの意味をも伝えたいと言います。
 中国語で「円満」とは、○=円満=物事が滞りなくスムーズに行く=幸福という意味で、そのため、食卓はほとんどが円卓。玉も丸いものが多いのはそのせいです。碗粿も「半球形」をしているのですが、その形はやはり「円満」を匂わせます。さらに、蒸しあがったばかりの碗粿を手にとると、ジワリと伝わるその暖かさに、「ほっ」とする母の愛が感じとれます

外から見るとお店の上に大きな碗粿が!

外から見るとお店の上に大きな碗粿が!

奥様がいつもお店に立っています。こうやって大きな蒸篭で蒸しています。

奥様がいつもお店に立っています。こうやって大きな蒸篭で蒸しています。

「その「円満」の温かさを伝える責任がある」と、蔡さんの碗粿製作には余念がありません。程よい弾力とやわらかさ、そして、濃厚な出汁の味が三位一体となる碗粿は、材料の選択、下ごしらえ、蒸し方にもちろんそれぞれ秘伝のルールがあり、出来上がりの碗粿はおわんの淵だけ盛り上がり、中央がへこむ形になっているといいます。さらに、その程よい弾力感のおかげで、逆さにしても落ちません!そのプルプルとした濃厚な碗粿は、ほろ甘いソースを掛けて一緒にいただきますが、ぜひ大豆スープも一緒にご注文あれ。
さて、そんな蔡さんは、非常に実直な方で、使命感を持って、まじめに誠実に仕事をすれば、きっとお客さんもついてくると信じています。そして、実際そのように口コミでお客様が入ってきているのだそう。ですから、蔡さんのお友達にも、もちろんそんな風に、まじめ実直に台南の伝統文化を守りながら仕事をしている人がたくさんいます。

男性は十字に・女性は米の字に切込みを入れて、こうして食べます。

男性は十字に・女性は米の字に切込みを入れて、こうして食べます。

良いものは、蒸しあがり後、逆さにしても落ちません。

良いものは、蒸しあがり後、逆さにしても落ちません。

夫婦仲むつまじくこれからも碗粿の円満を伝えていってください!

夫婦仲むつまじくこれからも碗粿の円満を伝えていってください!

住所:台南市夏林路1-29号 TEL:(06)224-5000 営業時間10:00-19:00 日本語不可 碗粿 30元 菜頭豆仔湯 40元

矮仔成蝦仁飯 台湾式日本の朝ごはん

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そんなお友達を今日は蔡さんがご紹介してくれることになりました。小西脚から歩いて5分ほどのところにある「矮仔成」。ココは、小海老チャーハン(蝦仁飯)と豚玉スープをメインに扱うお店です。日本時代に始まったこのお店は、現在すでにもう4代目。創始者は1922年当時日本料理学校で日本料理を学んだ後、日本料理の味を小さなお店で提供してきました。最初は市場の中の小さな屋台から始まり、お店は大きくなっても、その調理方法は当時と同じ方法を守り通しています。と、言われても、やはりお味は、ちょっと「台湾っぽいかな?」と思うのが正直なところ。けれどB級グルメとしては、十分おいしいでしょう。台南の安平港で取られた蝦は、朝のうちに店に運ばれ、皮を剥き調理が始まります。蝦とご飯は別々に処理がされ、蝦は醤油と葱で薫り高く炒められ、その蝦のゆで汁と醤油・砂糖などを混ぜ合わせたスープでご飯の炒め煮が始まります。最後にご飯の上に炒めた蝦を乗せて、でき上がり。さらに、セットの豚玉スープは、『母の味』を思い出させます。濃厚なアヒルの卵がたっぷりと入った豚肉スープは、出汁は日本料理らしく鰹節で取ります。アヒルの卵は、専用の農場で飼育され、毎朝店頭で剥かれた蝦の殻をえさとしているので、栄養たっぷりの黄色の卵を産み落としてくれるのです。そんなスープは最後に醤油でしめの味付けがなされるので、日本の澄まし汁とほとんど変わらない味わい。お店は夜の七時まで営業していますが、この蝦チャーハンと卵スープのセットというのは、台南の「外食用朝ごはんセット」でもあるのです。ぜひ、台南に旅行の際はココで「台湾式日本料理の朝ごはん」をお楽しみください。
スープの中でご飯を炒め煮していきます。

スープの中でご飯を炒め煮していきます。

たっぷり卵が入った澄まし汁とともにいただきます。

たっぷり卵が入った澄まし汁とともにいただきます。

住所:台南市海安路一段66号 TEL(06)220-1897 営業時間7:00-19:30 日本語:不可 蝦仁飯 40元  鴨蛋湯 20元

信裕軒 山芋ともち米の綿菓子

立て続けに食べてきたので、ちょっと休みましょうと、蔡さんが次に連れてきてくれたのは、中華菓子を扱うお店・こざっぱりと整う店内には、見た目からしてサクサクしたお菓子がずらりと並んでいます。2000年にOPENしたというこのお店ですが、実はもう90年ほどのお菓子作りの実績があるといいます。実は2000年以前は、問屋さんにお菓子を卸していたため、オリジナルブランドとしての営業はなく、私たち一般人の目には映りにくかったのだそう。これら中華菓子は、バターと砂糖と小麦粉から作られているのかと思いきや、実は原料は、砂糖と山芋、そして、もち米のみというから驚きです。添加物は一切なく、昔ながらの方法をキープして作り上げているお菓子のため、一般のこの手のお菓子よりも、ちょっとしっとりとしているのが特徴的。さらに、珍しいお菓子として、茶色い丸いものを見せてくれました。これは、実は中身は空洞になっていて、中に黒糖が塗りつけられています。よく見かけるのはカリカリとしていますが、伝統方法にのっとって作ると、かなり柔らかく、黒糖のやさしい甘みが味覚を和ませます。限定販売月400個、いつも売っているとは限りませんのでご注意を。若い人はエスプレッソのおつまみにするんだそう!さらに、昔はこの中に、鶏の料理(麻油鶏)と生卵などを入れて、出産直後の栄養食(いわゆる坐月子)としていたんですって。
コロンコロンの丸いお菓子。→

コロンコロンの丸いお菓子。→

食べてみると、中身は綿のようになっていました。

食べてみると、中身は綿のようになっていました。

昔の人は出産後、この中に粟の酒・卵黄・麻油鶏・桂圓を入れて食べたそう。おいしいのかな・・・

昔の人は出産後、この中に粟の酒・卵黄・麻油鶏・桂圓を入れて食べたそう。おいしいのかな・・・

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住所:①台南市民族路二段389号②台南市府中街104号 TEL:①10:00-22:00 ②週末のみ営業 12:00-21:00 日本語ともに不可
予算:一袋150-200元ぐらい。
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度小月 台南文化を代表するお店。ココをはずしては、台南に来たとはいえない。

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連続3軒、伝統はあっても、まだまだそう有名ではないお店を見て回ってきましたが、やはり台南にきたら行ってください「度小月」へ!台北にも大きなお店がありますが、実は地元台南名物の小吃。日本の中部圏にお住まいの人は良く知っている「激辛台湾ラーメン」は、この「度小月」の看板メニュー「担仔麺」をモデルとして作られたといわれています。とにかく、台南の食文化を代表するお店なだけに、必ず足を踏み入れてもらいたいところです。中正路にもともとの本店があるのですが、お店の規模が小さいため、最近は付近に比較的大型の別店舗を作っています。行ってみると、以前まで台南本店で店長をしていた、美人店長がいるではありませんか!「新しい店がOPENして、私はこっちが担当になったのよ!」と笑顔で答えてくれました。意外にさっぱりした性格で、笑顔が爽やかな方です。美人店長が見たいなら、こっちの店に来れば会えるかも。
そぼろ肉が入っている中央のお鍋の周りには、茶色く大きな塊がくっついています。実はこの鍋は、不眠不休で使われてきているもので、この塊は、10年以上かけてゆっくりこびりついてきたソボロ肉のソースなんだそう。じっくり見ていると、麺の上へのソボロ汁の掛け方にも「秘伝」がありそうで、どの人にも、同じ形で、素早く、まるで踊っているかのように、ソボロが麺の上にかけられてゆきます。
マネージャークラスの人も、注文、机の掃除など、何でも気づいたらおこなっています。代々受け継がれる精神を、今でもかたくなに守っている様子が感じ取れました。

マネージャークラスの人も、注文、机の掃除など、何でも気づいたらおこなっています。代々受け継がれる精神を、今でもかたくなに守っている様子が感じ取れました。

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住所:台南市中正路101号 TEL:(06)223-1744 営業時間11:00-22:30 日本語OK

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奉茶 小細工あふれるお茶だって、立派なお茶!

最後に、食べすぎてもたれてきたら、おいしいお茶でホッコリとリラックスタイム。ナビ一行が向かったのは、公園路の観測所向かいにある「奉茶」。現在ドリンクスタンド「奉茶」は、台北にも進出し知名度をぐんぐんと上げていますが、本店はココ台南。そして台南本店は、テイクアウトのドリンクバーだけではなく、茶葉の販売、さらにはカフェスペース(茶芸館)も備えているのです。表見からはあまりよくわからないのですが、ドリンクバーに向かって左手の古い木製のドアを開けると、そこには風変わりなオーナー葉東泰さんの恥ずかしげな笑顔が待っています。葉さんの座右の銘は「遊び心をこめたお茶作りなんだそう」。伝統的なお茶だけがすべてではなく、昔の人は、安いお茶でも遊び心を含めて、楽しくお茶を持つ時間を考え抜いてきています。葉さんはその精神を受け継ぎ、伝統と現代の遊び心をミックスさせて、新しいスタイルのお茶生活を提供しています。
そんな生活スタイルはお部屋からも伝わってきます。部屋の中はかわいらしい「アート作品」や骨董品に囲まれ、まるで自分の隠れ家やアトリエのよう。恥ずかしがりやの葉さんも、自分の部屋の中では、悠々自適にお茶と戯れています。目につく売り物の茶葉のパッケージも、「かわいら しいさ」と「伝統」、そして「アート」を組み合わせたつくりになっていて、若い女の子へのちょっとしたプレゼントにぴったり。値段も300元程度とお手ごろです。また、売られている商品もウィットがしっかり効いたものが多かったのが印象的でした。茶葉の「水仙花ウーロン茶」などは、ウーロン茶の中に他のお花やジャスミンティーが入っているもの。さらに商品には、杏仁ミルクティー、ゴマミルクティー、自家製蜂蜜酢など、ローカルさと現代をうまくミックスさせたドリンクから、ネーミングにもこだわり、「18歳青茶(発酵度18%)」「想太多緑茶(考えすぎヤクルト緑茶=緑茶にヤクルトが多めにミックスされている。おいしいかどうか考える前に、さっさと飲めという意味)」などなど、新商品にはかならずオーナー葉さんが「詩」を考えてるんだとか。

お茶・ドリンクそのもののテイストは、全体的に「濃厚」。看板商品の「厚道鮮奶茶」は、飲み物の領域を超えた、食べる「飲み物」是非台北でも「奉茶」を見かけたらぜひその一風変わったドリンクをお試しあれ。厚道鮮奶茶 Mサイズ40元(地域によって値段が変わります)

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住所:台南市公園路8号 TEL:(06)2284-512 営業時間:1Fドリンクバー9:00-22:00 2F喫茶店 10:00-23:00
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今日、ナビがお友達になったこの5店舗のオーナーは、「商人」というよりも、「職人さん」気質が漂う人たちでした。お金儲けというよりも、先代が残していった伝統と、この街の文化を、現在の文化の中にどう取り組もうかと真剣に取り組んでいる人たちです。うるさいセールストークなどは飛んでこないお店なので、じっくり味と文化を「味わい」たいときにお勧めです。古都台南で、「味わい」の旅を。台北ナビでした。

その他情報

☆アクセス☆ 台湾高速鉄道台南駅下車、二番出口から、シャトルバスに乗車。終点の鉄道台南駅で下車。その後はタクシーで移動。小西脚と矮仔成はご近所さんなので、徒歩圏内です。
関連タグ:台南小吃B級グルメ台湾料理グルメ

上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。

記事登録日:2009-03-23

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